ネトフリでドラマ配信中!三体原作の解説はこちら

(読了)読書感想文/情状鑑定人 逢坂剛

百舌シリーズで有名な逢坂氏の短編集。

情状鑑定人
情状鑑定人
 

百舌シリーズもそうなんですが、暴力と悪徳にまみれたサスペンスを
得意とする作家さん。(と認識しています)

登場人物、男性は暴力的だったり変態的なの多し。
ドラッグ、セックス、暴力、、、と、
個人的にちょっと苦手な読書分野ではあります。

不安なナンバー

このややこしい状況を短い文章で的確に説明する
描写力がすごいです。

 

逃げる男

最終列車で出会った男の書く小説とは?
他の話が一般的な犯罪物なのに対し、「国家陰謀物」という
スケール感がよかっです。

 

都会の野獣

敵なのか味方なのか二転三転する状況に。
刑事のおっさん、こんなに自由に単独行動できるもんかね?
という疑問はあれど、
お互いのハラの読み合い展開はよかった。

 

暗い川

悪徳警官もの、といったところでしょうか。
本書の解説には
「警官は小説ではヒーローとして描かれがちだが、
本書の反骨ぶりは頼もしい」
とも。

とはいえ、普通の警官(というか人間)がそんな簡単に犯罪犯すか?
もっと葛藤とか逡巡とかしない?とも感じてしまいました。

 

悪徳警官が活躍する小説、思いつかないんですが、
他になにかありますでしょうか

普段は暴力団と繋がり私服を肥やすも、
警官としての仕事はちゃんとこなす。
自分を守るためにはどこまでも冷酷非道になれるが義理は守る
悪徳警官Aと

 Aに憧れの感情をもつも、その悪徳っぷりを知ってしまい、
Aに消されそうになるがなんやかやあってAを助けて2人で真犯人を挙げる
まじめ警官Bのバディもの、、、

的な。

「悪い奴にはそれ相応の報いがあってほしい」と思いながら
読む読者が大半なので(多分)
悪い警官を活躍させるのは、かなり気を使いそうですね。

 

むずかしそう。

 

おしまい。

 

うーーーん、難しそうw

 

おしまい。

 

 

掟破りの新本格ミステリー!十角館の殺人の感想

新本格ミステリーを代表する傑作「十角館の殺人」。わんこたんも初めて読んだときは、ものすごい衝撃をうけました。

1987年の出版から長年愛され続け、近年ではコミカライズに実写映像化など、広がり続ける十角館ワールド!その感想と思い出を(できるだけ)ネタバレなしで語ります。

 

十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

十角館の殺人 あらすじと概要

洋上の孤島を訪れる、7人の大学生。

彼らは推理小説クラブのメンバーで、その島でクラブの合宿を行う手筈だったが、宿泊先の建物「十角館」には、あるいわくがあって、、、

 

 

著者 綾辻行人先生と、「館シリーズ」について

十角館の殺人は綾辻行人氏のデビュー作。

デビュー作がこれなんだから、当時のミステリー界にとっては、隕石が落ちたくらいの衝撃だったのではないでしょうか。

 

「綾辻行人」のペンネームはこれまた超有名な「占星術殺人事件」の著者、島田荘司氏が考えたものだとか。

 

トリックがすごい!占星術殺人事件
占星術殺人事件 改訂完全版
占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)
 

 

ネタバレ注意な紹介記事はこちら▶

(読了)読書感想文/占星術殺人事件 島田荘司 - わんこたんと栞の森

 

十角館の殺人は、のちに「館シリーズ」とよばれる全10作(予定)シリーズの第1巻。もっともシンプルな「館」なので、とっつきやすいのも魅力の一つ。

館シリーズの他作品については、以下の紹介記事をご覧ください。

 1作目 十角館  2作目 水車館  3作目 迷路館
4作目 人形館 5作目 時計館  6作目 黒猫館
7作目 暗黒館   8作目(記事作成中)   9作目(記事作成中)

 

現在最後の10作目となる双子館の殺人を執筆中とのこと、楽しみ!

現在発売中のシリーズ一覧はこちら(書影クリックでAmazonのページにとびます)

 

十角館の殺人、映像化決定!

なんとなんと、2023年3月24日、Huluでの「十角館の殺人」 実写映像化が決定!どうやって実写化するの?と、作者本人が首をひねるほどの衝撃!

ネタバレを見る前に、早く読まなきゃ!

 

Huluドラマ版、観ました!

原作と比較した感想はこちら▶

原作ファンも大満足!huluドラマ 十角館の殺人 原作版との違いなどあれこれ - わんこたんと栞の森

 

\ドラマ十角館の殺人はHulu限定配信/

Huluは月額1,026円。ドラマ版十角館の殺人は全5話なので、1か月でさっくり試聴できちゃいます。

 

CAUTION!

以下、ストーリーの核心は避けて解説していますが、展開に触れる内容がございますので、未読の方は読むのをお控えください。

 

十角館の殺人 感想と、その衝撃

わんこたんが「十角館の殺人」をはじめて読んだ当時の衝撃や感想をまとめました。

 

斬新な「トリック」と、それをもたらす構成に脱帽!

登場する推理小説クラブのメンバーたちは、お互いを有名ミステリ作家の名前で呼び合います。登場する「ミステリ作家の名前」は以下の通り。

  • ポウ
  • カー
  • エラリイ
  • ヴァン
  • アガサ
  • オルツィ
  • ルルウ


なんだこいつら、あだ名で呼び合って、きどってるなあ、と思っていたのが懐かしい。

しかも、後から登場する「江南」と「守須」という追加メンバーのせいで、読者は気が付かないうちに「強烈な刷り込み」を与えられます。これにはしてやられた。

あの名作、そして誰もいなくなったを彷彿とさせる、オーソドックスなクローズド・サークルミステリー。

のように見せかけて、最後の最後に読者を(いい意味で)裏切ってくる、というのがよかったです。

 

そして誰もいなくなった
そして誰もいなくなった
 

 

 

探偵役の江南くん

本土で探偵役となる江南くん、熱しやすく冷めやすいと自称してはいますが、めちゃめちゃ熱心に捜査していて、ちょっとホームズっぽいところは面白い。

 

十角館の殺人、実はコミカライズもされていて、なんと江南くん女性になっています。みてください、2巻表紙のこの挑戦的な目つきを。かわいい。

 

十角館の殺人(2)
十角館の殺人(2)
 

 

Huluドラマ版では島田&江南のバディ探偵っぷりがいい味出していました。島田に振り回される江南の様子に要注目!

 

\ドラマ十角館の殺人はHulu限定配信/

 

江南くんですが、十角館の殺人の後、5作目 時計館の殺人でふたたび島田とバディで登場します。お楽しみに!

 

 

本格ミステリーの掟をやぶった「新本格」ミステリー

犯人が〇〇によって、自由に移動できたり、洋上の密室かと思われていた「孤島」が実は、、、だったりと、実は本格ミステリーとしては「掟破り」をしているのです。まさに「新本格」。


そして、ラスト、あの一行の衝撃。やはり傑作だなあと。

なにせ、本書の登場をもって、ミステリジャンルにおいて「綾辻以降」なんて言葉が産まれるくらいですから。

 

十角館の殺人。一番好きなシーン

「カー」とか「エラリィ」とか、あだ名で呼び合っていたメンバーが、最後に新聞記事で実名で報道されるシーン。

 

ふわっとした、まるで夢の中で起きていたかのような事件が現実の世界におりて、標本のように、固定されるのするようで、ぞっとします。

個人的に一番好きなシーン!

 

「救いがたい」?のエラリイの最期と妄想

エラリイは最後まで外部犯の可能性を信じていました。

「救いがたい道化役者」と、犯人にも評されてしまう、かわいそうなエラリイ。

 

すごーく好意的に解釈するのであれば。

  • エラリイは誰が犯人かはともかく、犯行動機には当初から気が付いていた
  • 誰が犯人か気づきつつ、「外部犯説」を皆が信じるよう、誘導していた
  • 自分の運命を覚悟していた
    (でも最後に館の地下室の謎は最後に解いておきたかった笑)

、、、と読むこともできなくはない、かも。証拠は一切なく、わんこたんの勝手な妄想です。

 

でもやっぱり、最後まで犯人にたどりつくことのない、愚かなエラリイだったと考えるのが順当だし、そうであってほしいなと。

なおHuluドラマ版ではエラリイの道化っぷりを、望月渉さんがめちゃくちゃ好演されているので、「おい!エラリイ!」「そういうとこだぞ!エラリイ!」などとつっこみながら観るのがおすすめです。

 

\ドラマ十角館の殺人はHulu限定配信/

 

炎に包まれた青屋敷と、中村青司

角島にあった中村青司の居宅であり、火災で全焼した青屋敷。

実は中村青司と「炎」には深い因縁がありました。そのエピソードが明らかになるのは7作目 暗黒館の殺人

中村青司の人物像ががらりと変わる、館シリーズのマスターピース。未読の方はぜひ、シリーズを順番に読んでから、暗黒館の殺人にチャレンジしていただければと!

 

暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
 

 

暗黒館の殺人 紹介記事はこちら

がっつりネタバレしていますので、ご注意ください。

すべての館はここから始まる 暗黒館の殺人 感想 - わんこたんと栞の森

 

十角館の殺人 まとめ

ミステリ界の伝説であり、今なお色あせない傑作。

コミカライズもされましたが、コミックだとなんとかなるけど、さすがに映像化は厳しいだろうなあ。

(2024年1月8日追記)なんて、2021年にこの記事を投稿した際には、そう書いていたのに、まさか実写化されちゃうなんてね!

双子館も執筆中ということで、まだまだ広がる館ワールド。楽しみにしています!

 

十角館の殺人の次に読みたい おすすめ作品

十角館の殺人と同じく、クローズドサークルなミステリーを中心にご紹介します。

 

硝子の塔の殺人/知念 実希人

 

十角館への「愛」がすごい!

雪深い山奥での豪華絢爛な謎解きをご堪能あれ!

特に、十角館の殺人への「愛」が大変重たい作品となっております。館シリーズファンはぜひ挑戦を。

 

硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫)
硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫)
 

 

紹介記事はこちら▶圧倒的なおもしろさ!硝子の塔の殺人の感想と、作中登場ミステリ小説について語りつくす - わんこたんと栞の森

 

方舟/夕木春央

 

息詰まる結末に注目!

地下建築に閉じ込められた僕らの命運は、「殺人犯」にかかっている!?

十角館の殺人を彷彿とさせるような、犯人と探偵の攻防に注目!

 

方舟
方舟
 

 

方舟の紹介記事はこちら▶残る一人に選ばれるのは。極限ミステリー「方舟」の感想 - わんこたんと栞の森

 

 

次に読む「とまらない」ミステリーをお探しの方はこちらをどうぞ

 

 

十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

圧倒的おもしろさ!硝子の塔の殺人 感想と作中登場ミステリ小説を語る

外界から隔絶された雪深い山の中。ガラス張りの尖塔に招かれた6人の客人。毒殺された館の主人。「名探偵」と「犯人」の戦いの行方は、、、

新本格ミステリーの集大成ともいうべき、豪華絢爛な謎解きの世界!
硝子の塔の殺人について、語りつくします。

面白すぎて一気読みしたよね。

硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫)
硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫)
 

 

 

硝子の塔の殺人 あらすじ

生命科学の分野で多大な功績をおさめた神津島は、重度のミステリーフリークにしてコレクターであった。

神津島が巨額の私費を投じて建てさせた「硝子館」。そこで行われる、ミステリの歴史に刻まれる重大発表に招待された客人たち。しかし発表前に神津島が殺され……

謎に挑むのは「名探偵」と「犯人」!? 雪山に閉ざされた硝子の塔で繰り広げられる、豪華絢爛な謎解きの世界へようこそ!

 

  • 著者:知念 実希人
  • 発売:2021/7/30 実業之日本社
  • Kindle Unlimited:対象外
  • 「聴く読書」Audible:聴き放題対象
    冒頭5分の試聴はこちら※リンク先で「▶Audibleサンプル」ボタンを押下
    一緒に閉じ込められたかのような、臨場感ある朗読と、個性豊かなキャラクターたちに注目!
    Audible無料体験の利用で「硝子の塔の殺人」が丸ごと聴けます。

    合わなければ体験中の解約OKで安心

 

硝子の塔の殺人 文庫化はいつ?

2025年7月現在、硝子の塔の殺人の文庫化予定は公表されていません。

同じ出版社の人気作品「クスノキの番人/東野圭吾」が2020年発売→2023年文庫化となっていますので、2024年中には文庫化されそう!

と、思っていましたが、2025年に入っても音沙汰なしとは。

文庫化しなくとも売り上げが落ちない→かなりの人気作品であろうことがうかがえます(他に事情があるのかもしれないけど)

 

文庫化を待てない!→「聴く読書」の無料体験が利用できます

文庫化を待てないあなたにオススメなのが、Amazonの提供する本の朗読サービス、「Audible」

2024年2月現在、硝子の塔の殺人はAudibleの聴き放題対象

月額1500円ですが、初回登録時は通常1か月無料体験が可能。「硝子の塔の殺人」を丸ごときけてしまう、太っ腹ぶりです。本作はキャラクターごとの声の演技が絶妙なので、ほんとに聴いてみてほしい~

合わなければ体験中の解約OKで安心

 

こちらから試聴もできるので、ぜひ試してみてくださいね。(リンク先で▶サンプルボタンを押下)

 

話題のミステリ「方舟」や「村上春樹作品」、本屋大賞受賞作など、人気作の多くがAudible聴き放題対象となっているので、三体を聴き終わった後もいろんな作品を聴いて楽しめます。

 

著者 知念 実希人さんについて

2011年に「誰がための刃 レゾンデートル」でデビュー。

現役内科医師であり、「天久鷹央」シリーズを筆頭に、医療知識を生かしたミステリーを得意とする作家さんです。

天久鷹央の推理カルテ
天久鷹央の推理カルテ
 

 

医師という超多忙な職との兼業でありながら、作品数がものすごい!

 

また、2023年には本格ミステリーでありながら児童書という「放課後ミステリクラブ」シリーズがスタート。児童書なのに2024年本屋大賞ノミネートという快挙を成し遂げています。

 

わんこたんが読みたい(けどまだ読めてない涙)知念先生の代表作を以下に並べました(書影クリックでAmazonのページにとびます)

放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件
天久鷹央の推理カルテ
レゾンデートル
十字架のカルテ
傷痕のメッセージ
となりのナースエイド

 

硝子の塔の殺人 感想

いやーすごかった。

知念先生の「本格ミステリ愛」がつまった、傑作でした。特にミステリ界の大御所、綾辻行人先生への愛がだだもれすぎです。

 

CAUTION!

以下、「硝子の塔の殺人」のネタバレに触れる部分があります。ご注意ください。

 

本格ミステリに詳しくなくても楽しめる

「本格ミステリ愛」「綾辻行人先生への愛」なんて書くと、

  • 本格ミステリってそもそも何?
  • 本格ミステリに詳しい人だけが楽しめるオタク向け作品?
  • ミステリ作家同士の内輪ノリ?

なんて思われてしまいそうですが、そんなことはありません。

「面白くて読みやすい」のに「ミステリーマニアも大満足」この二つを奇跡のバランスで実現しているのが、この「硝子の塔の殺人なんです。

 

もちろん、他のミステリー作品を知っていれば、より「硝子の塔の殺人」を楽しめるのも事実。

この記事の最後に、「硝子の塔の殺人で言及されているミステリー作品」をまとめています。

 

そもそも本格ミステリってなんだろう

本格ミステリ小説。これと定まった定義はないですが、一般的には「犯罪の謎解き」を主目的とした小説のことを指します。

 

「謎解き」にも種類がありまして、謎の種類によって以下のどれかに大別されます。

 

  • フーダニット:「Who(誰が)」を解くミステリー。犯人の場合もあり、被害者の場合もあり

     

  • ハウダニット:「How(どうやって)」を解くミステリー。不可能犯罪、密室ミステリなどのトリックを暴くタイプ

     

  • ホワイダニット:「Why(なぜ)」を解くミステリー。犯行動機を解くパターンなど

     

  • ホワットダニット:上記3つとはひとつ上の次元で、「What=そもそも何が謎か?」を読者に考えさせるパターン

 

と、堅苦しく書きましたが、以下の「お決まりのシチュエーション」を聞けば、ああ、あれねと思う方も多いのでは。

 

本格ミステリ あるあるシチュエーション
  1. 「閉じ込められる」
    絶海の孤島、吹雪の山荘、一本しかない吊り橋の切断、ノンストップの列車の中、など

  2. (時に1が原因となって)警察による捜査、特にDNA鑑定等の科学捜査が行われない。ただし、登場人物にそれなりの医学知識をもつものがいて、簡単な検死、死後硬直の具合などが手掛かりとして提示されるケースあり

  3. 外界と接触できない。携帯つながらない。音信不通。


ようは、(初期の)名探偵コナン、金田一少年の世界を思い浮かべればOK。

こどもの頃にコナンやら金田一やらに触れていた我々世代はみな、本格ミステリを読むための準備ばっちり、というわけ。

 

ちなみに、本作「硝子の塔の殺人」。1~3全部入っています。まさにコテコテの本格ミステリスタイルを踏襲しているというわけ。しかも……

 

やった!ここは解けた!と思いきや、、、

物語の途中、いくつかわんこたんにもわかる伏線、トリックを発見。

「知念先生、伏線あからさまにしすぎ。簡単すぎるよ~」

とか調子に乗っておりましたが、、、実はこれが罠。見事にやられました。

 

この「簡単すぎる伏線」について、登場人物のひとりから「失望」「陳腐」などとめちゃくちゃ罵倒されちゃって、己の推理力の低さを恥じ入るばかりです。しくしく。

 

 圧倒的リーダビリティに偽りなし。

Amazonで「硝子の塔の殺人」商品ページを見ると、あらすじ部分に「圧倒的リーダビリティ」と書かれていました。

 

リーダビリティ=読みやすさ

 

例えばミステリ小説を読むと、わんこたんは以下の2点に、よく悩まされます。

  • 登場人物名が覚えきれない
  • 建物の間取り、位置関係を覚えきれない

読みながらわからなくなって、冒頭の人物一覧や間取り図に戻るの、結構なストレスですよね。


しかし、本作品は登場人物の名前も工夫がしてあって覚えやすいし、建物の構造もシンプル。状況や位置関係の描写もわかりやすく、かなりすいすい読めます。

 

(例えば、料理人の酒泉さんとか、執事の老田さんとか、めちゃめちゃ覚えやすいですよね)

 

医学にまつわるミステリー、は少し控えめ

著者(知念実希人先生)が現役医師なので、多少の医学的知識ももりこみつつ(主人公も医師だし)、医学うんちくばっかりにならない、あくまでミステリ作品として構成されているバランス感もよかったです。

 

硝子の塔の殺人 登場人物 

硝子の塔の殺人の登場人物は以下の記事で、イラスト付きで紹介しています。

ぜひご覧ください。

 

 

硝子の塔の殺人に登場する有名ミステリ作品たち

「硝子の塔の殺人」作中で引用されたミステリ作品をまとめました。読めば「硝子の塔の殺人」をより深く楽しめるかも。

わんこたんが読んだことのない作品もまだまだたくさん。これから読んでいくのが楽しみです。

 

「館シリーズ/綾辻行人」

「硝子の塔の殺人」を語る上でかかせないのが、この「館シリーズ」。なにせゲストルームにシリーズ全巻が並べてあるくらい。

 

特に1作目「十角館の殺人」と3作目「迷路館の殺人」は、硝子館のあるじ、神津島先生に多大な影響を与えたようで、、、この2作品は、ぜひ「硝子の塔の殺人」とセットで読むのがお勧めです。

 

十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

 

迷路館の殺人
迷路館の殺人
 

 

迷路館の殺人 紹介記事はこちら

迷路館の殺人 感想

 

「占星術殺人事件」など/島田荘司

占星術殺人事件
占星術殺人事件
 

「十角館の殺人」がうまれる新本格ムーブメントの土壌を作った、と紹介される、島田荘司氏。

「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」「暗闇坂の人食いの木」などの有名タイトルが月夜の口からも語られます。

 

占星術殺人事件
改訂完全版 斜め屋敷の犯罪
暗闇坂の人喰いの木

 

わんこたんは「占星術殺人事件」だけは読了済み。冒頭、いきなり占星術に関する長文説明があり、脱落しそうになりましたが、最後の「超有名トリック」にたどり着けたときの感動はひとしおでした。

 

 

毒殺がテーマのミステリー小説たち

毒殺が描かれた作品として、以下の3作品が登場します。

どれも、超有名作品ですが、特に毒入りチョコレート事件は、「多重解決もの」の元祖としても、よく知られています。

 

毒入りチョコレート事件

通称「毒チョコ」の紹介記事はこちら

元祖傑作ミステリー 毒入りチョコレート事件の感想と解説 - わんこたんと栞の森

 

ねじれた家
Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)
毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫)

 

トランプが登場するミステリー作品

硝子の塔の殺人で、九流間先生が名を挙げる「トランプに関係するミステリー作品」。

トランプとミステリー、不思議な相性の良さを感じます。

  • 鮎川哲也 りら荘事件
    角川文庫ではタイトルが「リラ荘殺人事件」になっていますが、中身は同じ。下記画像の右下、光文社文庫はKindle Unlimitedで読めます。
  • 法月綸太郎『キングを探せ』
  • 泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』
  • 竹本健治『トランプ殺人事件』

書影クリックでAmazonの販売ページにジャンプします。

キングを探せ
11枚のとらんぷ
りら荘事件~増補版~

 

 

踊る人形(シャーロック・ホームズシリーズ)/コナンドイル

硝子の塔の殺人で小道具として登場する、踊る人形の暗号文字。コナンドイルの書いた本家「踊る人形」は、青空文庫で無料で読めます。

 

 

そして誰もいなくなった など/アガサクリスティ

「なによ、その『そして誰もいなくなった』ってどういう意味なの?」

上記は硝子館に閉じ込められた夢読さんのセリフ。タイトルからわかる通り「そして誰もいなくなる」クローズド・サークル・ミステリーの元祖といえる作品です・

タイトルはある意味盛大なネタバレなんですが、それでもめちゃくちゃ面白いんですよね。

 

そして誰もいなくなった (クリスティー文庫)
そして誰もいなくなった (クリスティー文庫)
 

 

 

メインは模型 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 感想

紙鑑定士。て、いったい何者?

紙に関することならおまかせあれ。ちょっと特殊なスキルをもった主人公が謎を解くミステリーシリーズ、紙鑑定士の事件ファイル1作目 模型の家の殺人の感想を書きました。

 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (宝島社文庫)
紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (宝島社文庫)
 

 

 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 あらすじ


どんな紙でも見分けられる「紙鑑定士」渡部が営む紙鑑定事務所。

何の変哲もない紙片や、ジオラマ模型から導き出される真相は……?

依頼の調査を始めた渡部だが、やがてそれが恐ろしい大量殺人計画へと繋がっていることに気が付き――。

第18回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作品です。

 

 

 

著者 歌田 年 氏について

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人でデビュー。

紙鑑定士シリーズとして、2作目、偽りの刃の断罪 3作目、紙とクイズと密室と も刊行中です。

著者ご本人が造形家(ジオラマ制作)として長年活動されていたこともあり、作中には模型作りをはじめとする蘊蓄がたっぷり。

 

以下に作品を並べました。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ

紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪 (宝島社文庫)
紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と (宝島社文庫)
BARゴーストの地縛霊探偵 (宝島社文庫)

 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 感想

模型の家の殺人、というだけあって、ジオラマ模型に関する豆知識が多数登場。これがなかなか面白い。が、それと同時に不満点もあって……

以下に詳しい感想を書きました。

 

タイトルに異議あり

やっぱりタイトルには文句を言いたい。

「紙鑑定の事件ファイル」が表紙に大文字でかかれたうえ、紙がぺりぺりめくれたようなデザイン。いかにも「紙鑑定士」が主題かのように見えますが

実際の中身は「模型」メインです。

冒頭から主人公渡部の「紙知識」が披露され、この知識を生かしてどうやって活躍するのかな、わくわく。と読者は期待してしまうのですよ。しかし話はどんどん模型の方向へ。

模型パートはたしかにおもしろかったです。でも、期待していた「紙知識」があまり出てこなくて、管理人わんこたんはがっかりしちゃったんです。

そしてこのがっかりは、適切なタイトルがつけられていれば、避けられるはずだった。

 

この件、後書きによれば「マーケティング戦略のため」「紙鑑定士なら、物珍しさで売れるという判断」という理由でのタイトル変更だと明かされており、

売る為だからってそんなことしていいんかい、

読者舐めとんのかー!

と、編集・版元サイドには、文句いいたいわんこたんなのでした。

(※シリーズ2作目以降は、もうちょっと紙知識シーンが増えていくみたい)

 

ちょっと変わった?キャラクターたちが大活躍

  • 主人公の紙鑑定士、渡部。
    調査の途中で人に会うたび、きちんと手土産を持っていく、丁寧なビジネススタイルに、なんだかほっこり。
    お土産のペコちゃん焼き、食べてみたい。

 

  • 雑誌編集部の「新人」野上。
    電話嫌いで登場するのはメール文だけですが、そのメールの文体だけで強烈な印象を残してきます。しかし作中ではその後登場がなく残念……
    続編では活躍してくれるかな?

 

  • 主人公渡部の相方となる、土生井(はぶい)。
    土生井は凄腕の造形師であり、この知識が捜査に大いに役立ちます。

 

なお、土生井は自宅で認知症の老いた母を介護しており、その母が遠因となって土生井自身が入院してしまう、といったシーンがあるのですが……

これらのエピソードはあまりストーリーに影響しません。

 

本作がミステリであるがゆえに、細かい描写やエピソードも「何かの伏線かも?」と思えてしまう。しかしそれらの伏線・フラグが必然性をもって回収されないため、すっきりしないなーと感じてしまいました。

 

ミステリとしては、ちょっとぶっとびすぎ!?

 

CAUTION!

以下、作品の結末に関する内容が書かれています。未読の方はご注意ください。

 

  • 唐突な「紙片」の登場
    冒頭、推理のカギになる「財布の中の名刺の紙片」が登場しますが、そもそも名刺って、そんな簡単に財布の中で破れて紙片になるかしら?という疑問が、、、

    多分「紙鑑定士」として活躍するための「紙片」だと思いますが、ちょっと無理矢理かなあと思ってしまいました。

 

  • 犯人の不可解な行動。その理由は二重人格でした。えー。
    二重人格が明らかになるのが唐突で、なんだか都合よく二重人格を利用しているなぁと感じてしまったのが不満。
    二重人格って、ミステリーではよく出てくる題材ではありますが、うまく処理しないと「何でもあり」になってしまうところがあり、取り扱いが難しいなぁと。

 

  • さらに犯行の動機として出てくる「人柱信仰」もかなり突飛。
    常人とは異なる、サイコな動機を持つ犯人、というのは、やはりミステリ小説では珍しくないですが、「二重人格」というだけでかなりぶっ飛んでいるのに、さらに「人柱信仰」という濃いめのキーワードがぶちこまれる。
    まとまりがつかないなあ、という印象を受けてしまいました。

 

装丁にこだわりあり!

「紙鑑定士」ということで、装丁に5種類、本文中に4種類の紙を使用している豪華っぷり。さらに証拠品の手紙の実物が綴じこまれた、豪華な装丁になっています。

どのページがどの紙か?というのもちゃんと説明されていますが、うーん、素人には微妙に色が違う、ということしかわからなかった笑

紙鑑定士、すごいスキルだ……異世界転生したら活躍できたりして。

(※特殊装丁は、文庫版では再現されておりませんのでご注意を

 

模型の話をもっと読みたい 

辛口の感想になってしましましたが、模型やジオラマに関する蘊蓄はとってもおもしろかったです。

ミステリという形にこだわらず、ジオラマの世界を堪能できるような作品を、ぜひ、読ませていただきたいな、と思いました。

キャラクターも、どこかにくめない奴ばかり。シリーズ続刊の活躍に期待です。

 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (宝島社文庫)
紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (宝島社文庫)
 

 

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人の次に読みたい おすすめ作品

紙鑑定士 渡部のような「その道のプロフェッショナル」が活躍する、ミステリー小説をご紹介します。

 

元彼の遺言状 /新川帆立

 

エリート弁護士、遺言状の謎を解く!

28歳、年収約2000万のエリート弁護士、剣持麗子は、亡くなった元カレの遺言状の対応をすることに。

その遺言状には「自分を殺した犯人に全財産を相続する」と書かれていて…?

金にうるさく個性的、だけど仕事っぷりは超優秀な麗子をあなたも応援したくなるはず。

法律関連の描写がきちんとしている部分にも注目です。

 

元彼の遺言状
元彼の遺言状
 

 

感想記事はこちら▶︎小説 元彼の遺言状がおもしろい!ドラマ版と原作の違いを解説 - わんこたんと栞の森

 

作家刑事毒島 /中山七里

 

作家兼刑事、が、謎を解く!

編集者殺しの容疑者は編集者に恨みを抱く新人作家たち!?

売れっ子作家でもある毒舌刑事、毒島真里(ぶすじま しんり)が謎を解く、作家×事件な5作品を収録した短編集。

出版業界の「裏事情」が次々明かされる点にも注目です。

 

作家刑事毒島
作家刑事毒島
 

 

感想記事はこちら▶︎出版業界をぶった斬る問題作!?作家刑事毒島の感想を書きました - わんこたんと栞の森

 

おすすめ作品、他にもいろいろ!

読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。

 

 

御子柴礼司シリーズ1作目 贖罪の奏鳴曲 感想と登場人物の紹介

 被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士、御子柴礼司。

三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を記者に知られ強請られる。記者の死体を遺棄する御子柴。しかし彼には、鉄壁のアリバイがあった。

御子柴シリーズの1作目、贖罪の奏鳴曲(ソナタ)の登場人物紹介と感想を書きました。

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
 

 

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 あらすじ

 どんな罪名で起訴されても、必ず執行猶予を勝ち取る、と噂の無敵の弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄する。警察は、御子柴に辿りつき事情を聞くが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった――。

 

  • 著者:中山七里 →  Amazonの著者作品一覧はこちら
  • 発売:講談社 2011/12/1
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象
    ▶︎5分間の試聴はこちら(リンク先で「▶プレビューの再生」を押下)
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著者 中山七里氏について

幅広い作風を得意とするミステリー作家の中山七里先生。とにかく作品数が多いうえに、睡眠時間2時間だとか、トイレは1日1回とか、それほんと?なウワサ多数。(作家刑事毒島 の後書き参照)

代表作としては、第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞した「さよならドビュッシー」や、「連続殺人鬼カエル男」など。

ある作品では脇役だった人物が、別の作品では主人公に、といった「登場人物のリンク」があり、つながりを感じられるのも楽しいです。

 

以下に作品の一部をご紹介。※書影クリックでAmazonの作品ページへ

連続殺人鬼カエル男 (宝島社文庫)
鑑定人 氏家京太郎
さよならドビュッシー (宝島社文庫)
テミスの剣 (文春文庫)
護られなかった者たちへ
作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 感想

主人公御子柴礼司は弁護士。ですが、

・いきなり死体遺棄
・あくどい詐欺師から高い弁護費用をふんだくる


こいつはダークヒーローだ!!……けど、一味違う??と、気になり、一気読みでした。続編の追憶の夜想曲はじめ、シリーズ5作品、全部読んでみたいなあ

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
追憶の夜想曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
恩讐の鎮魂曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
悪徳の輪舞曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
復讐の協奏曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

午前3時の死体遺棄。倒叙ミステリーの結末は?

冒頭、御子柴による死体遺棄。時刻は午前3時。犯罪を行っているにも関わらず冷静沈着。おまけにこの男、どうやら過去に女児殺害をしでかしているようで……

不穏な死体遺棄から御子柴弁護士事務所の朝の様子、そして、弁護士として拘置所への面会業務。警察の古手川・渡瀬ペアとの火花散る舌戦……

流れるような描写で、物語に入り込みやすい。さすが中山七里作品です。

 

CAUTION!

以下、贖罪の奏鳴曲の内容に触れる箇所があります。ご注意ください。

 

フィクションだからこそ 王道展開が胸にせまる

凶悪な少年犯罪者が、美しいピアノの音色、恩師と仲間の言葉によって、自身の罪に向き合い、生き方を決断する……

あまりにご都合主義的な展開かもしれませんが、フィクションの世界くらい、そういう「希望」があってもいいのかもしれない。

 

一方で御子柴が「罰された」かのようなラストの展開

  • 犯罪者であっても、罪を償おうとする者には一抹の救いを
  • だが、一生かけて償っても犯した罪は消えない 。

そんな、永遠に混ざり合わない2つの視点も、贖罪の奏鳴曲の魅力なのかも。

 

トリックはかなり専門的 

「特殊なシステム」「専門知識」を活用するトリックであり、読者が推理してトリックにたどり着くのはかなり難しい内容な気がします。

トリック・謎解きよりも、人間同士の微妙な駆け引きや、主人公の冷静な思考を楽しむタイプのミステリー、というかリーガルサスペンスと言えるでしょう。裁判での、額田検事との攻防は、結末が読めず一気に読んでしまいました。

裁判員制度や人工呼吸器の仕組みに関連する小ネタは面白かったです。こういう「小説にはさまっている勉強になる小ネタ」、大好き笑

 

贖罪の奏鳴曲 登場人物について

中山七里さんの作品は、よくも悪くも「いやなやつ」が極端ではっきり。贖罪の奏鳴曲でいえば、柿崎。

別作品ですが、毒島刑事シリーズも、イヤなやつはとことんイヤな奴として、単純化されるので、その点はわんこたんちょっと苦手。

 

とはいえ、ダークヒーロー御子柴を始め、魅力的なキャラクターもたくさん。シリーズものということで、次回作以降にも登場するのを楽しみに読みたいと思います。

以下に贖罪の奏鳴曲に登場した主要キャラクターをまとめました。

 

埼玉県警・所轄警察関係者

  • 古手川和也 埼玉県警捜査一課 
  • 渡瀬 埼玉県警捜査一課 班長
  • 栗栖 埼玉県警本部課長
  • 鍋島 狭山警察署 署長

古手川と渡瀬は、感情がつい表に出る若手刑事と百戦練磨のベテラン刑事のペア。2人のいい具合のコンビ感良かったです。

埼玉県警のメンバーは、中山七里先生の連続殺人鬼カエル男にも登場。古手川は過去の事件で犯人に襲撃されたようですが、その「カエル男」のことでしょうか?

 

連続殺人鬼カエル男 (宝島社文庫)
連続殺人鬼カエル男 (宝島社文庫)
 

 

加害者・被害者の関係者

  • 加賀谷竜次 フリーランスの記者で強請りの常習犯。御子柴は彼の死体を遺棄しますが…
  • 東條彰一 東條製材所の社長。大怪我を負い人工呼吸器をつけられていましたが、呼吸器が停止したことで死亡。
  • 東條美津子 彰一の妻。保険金目当てに彰一の呼吸器を停止させた疑いで起訴される。最高裁から御子柴が弁護を担当。
  • 東條幹也 18歳の青年。彰一と美津子の長男。脳性まひで左手以外は不随だが、携帯を使って意思疎通ができる。
  • 高城 東條製材所の工場主任。
  • 安武里美 御子柴に嫌がらせを繰り返す女性。御子柴が過去に関わった事件に関係しているようです。
    安武の存在と行動は、やや唐突に感じましたが、御子柴の抱える罪の重さ、復讐の虚しさを象徴するキャラクターでした。

 

法曹関係者

  • 御子柴礼司 主人公。悪辣で敏腕。金にうるさい弁護士。14歳のときに5歳の女児を殺害し、少年院で過ごした経歴の持ち主。
  • 日下部洋子 御子柴法律事務所の事務員

日下部洋子はどういった経緯で、こんな変わり者の弁護士の事務員になったの?

 

  • 宝来兼人 40代前半の弁護士。東京弁護士会会長を目指す野心の持ち主
  • 谷崎 東京弁護士会会長 79歳。何かと御子柴をフォローする。
  • 額田 東條彰一の人工呼吸器が停止した事件の最高裁で、御子柴が闘う検事。

宝来や谷崎などは出番は少ないながらも存在感を放っていました。2作目 追憶の夜想曲では、序盤でさっそく2人の弁護士が深掘りされています。

 

追憶の夜想曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
追憶の夜想曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
 

 

御子柴 少年院時代の関係者

  • 佐原みどり 御子柴(当時は園崎信一郎 14歳)が殺害し、死体を切断した5歳の女児。死体配達人とよばれ、社会を騒然とさせた。
  • 稲見武雄 医療少年院 御子柴の担当教師。
  • 柿里 医療少年院 嘘崎の担当教師 噓崎を執拗にいじめる。
  • 嘘崎雷也(仮名)16歳 少年院の入院者。御子柴が弁護士を志望するきっかけとなる人物。
  • 夏本次郎 少年院の入院者。身体欠損があり、しゃべることができない。
  • 島津さゆり 少年院女子寮の入院者。 教育の一環としてピアノを練習している。

島津さゆりはその後保護司となったようで、連続殺人鬼カエル男にも登場。

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司の次に読みたい おすすめ作品

個性的な刑事に弁護士!?強烈な主人公のキャラクター目が離せない、そんなミステリー作品を集めました。

 

作家刑事毒島 /中山七里

 

中山作品を代表するダークヒーロー!

その男、御子柴以上の毒舌家。作家でありながら警察に協力するほどの推理力の持ち主、毒島が、出版業界に蔓延る毒を、「毒を持って」制します。

中山七里先生の本音が見え隠れ?出版業界ならではの本音トークにも注目!

 

作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)
作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)
 

 

感想記事はこちら▶︎出版業界をぶった斬る問題作!?作家刑事毒島の感想を書きました - わんこたんと栞の森

 

元彼の遺言状 /新川帆立

 

キツイけれど憎めない 敏腕弁護士!

28歳、年収約2000万のエリート弁護士、剣持麗子は、亡くなった元カレの遺言状の謎にかかわることになって…?

金にうるさく個性的、だけどどこか憎めない麗子をあなたもきっと応援したくなるはず!

 

元彼の遺言状
元彼の遺言状
 

 

感想記事はこちら▶︎小説 元彼の遺言状がおもしろい!ドラマ版と原作の違いを解説 - わんこたんと栞の森

 

おすすめ作品、他にもいろいろ!

読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

じっくり読みたいミステリーならこれ!

 

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)
 

 

(読了)読書感想文/パレード

パレード (幻冬舎文庫)
パレード (幻冬舎文庫)
 

映画化で話題の吉田修一の小説。都内の2LDKマンションに暮らす男女4人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作 

 

1章では↑の「男女4人」のうち、大学の経済学部3年の「杉本良介」
一人称となって、物語が進みます。
良介くんは、自分と相手の関係性(特に男女関係)を客観的に見つめるのが
苦手なようです。
それなりに普通の学生生活を送っていて、いろいろ悩みもあるようです。


なお、大学での勉強のことは彼の思考にはほとんど登場しないようです。

私は大学時代、頭の3割くらいは常に
「大学の勉強難しいなあテスト勉強しなきゃなあ」
で構成されていたタイプなので、良介くんのようなタイプの大学生とは
多分相いれないでしょう。(偏見)

 

登場人物5名、順番に視点が切り替わり、
2章では「大垣内 琴美」が一人称となります。
琴美は、怠惰な生活を送っているようで、自分や他人に対する
分析力はなかなか高そう。
どちらかといえば客観的に自分を見つめているようで、良介くんとは対極な
タイプのように見えます。

そして、物語のキーパーソンとなりそうな、「サトル」がここで登場。

ここからどのように物語が進むのか、
琴美いわく「うわべだけの人間関係だけだからちょうどよい」共同生活が
どのように変化していくのか、

 

不穏さをなんとなーく感じつつ、、、

 

楽しみに読み進めております。

 

 

 

描写の足りなさにモヤっとする部分もありましたが、
個人的にはけっこう楽しめました。

先の展開が気になりスルスル読めますし、
映像化された話題作、というのもうなづけます

 

以下、できるだけ避けてはいますがかなりネタバレを含むので
未読の方はご注意ください!!

 モヤっとした部分

 

・結論から述べてしまうと


ある凶悪犯罪が発生し、共同生活を送る5人の中に1人、その「犯人」がいて、
物語のラストで「犯人」以外の4人は、
実はその1人が「犯人」であることを知りつつ黙っている(らしい)。

 

ということが明かされます。


しかし、なぜ4人がそのことを知ったのか、「きっかけ」の描写
(=伏線・フラグ)
がほとんどなく、読者の想像任せになっています。
(kindleの検索機能で確認したので間違いないはず)


ミステリ小説ではないので、描写がなくてルール違反、とまでは思いませんが、
もう少し、フラグがあったほうが、読者としては楽しめたのかなと。

 

・犯人が犯行を始めるきっかけも不明瞭です。
1件目の犯行は「サトル」登場前なので、サトルがきっかけではなさそう。
ではなぜ犯人が「このタイミング」で犯行に及んだのか?
ここも読者の想像任せですが、もうちょっと説明がほしかった、、、

・「犯人」が犯罪を犯す動機ですが、「犯人」の過去の行動(●●への侵入)が、
罪を犯す精神性の重要ファクターとなっている、


という風に作者は書きたかったようなのですが、
よく考えると犯行内容と関連性がほぼ無いような気が、、、

以下青地、わりと重大なネタバレ

 

女性をボコボコ(半殺しレベルに)殴りつけるのと、
過去の行動(山小屋に侵入してわが物のようにふるまいたいという衝動)に、
そんなに共通性、ないのでは、、、??

 

モヤっとしつつ、ラストは結構好き

 

・自分たちの中に1人「犯人」がいることに気づきつつ、
表面上だけの心地いい共同生活を続ける為に全員が黙っている、という構図。

狂っているのは犯人だけと思いきや、残りのメンバー全員が犯人以上に
狂ってたぜ!という感じ、好きですw

 

2002年の作品ですが、「表面上だけの付き合い」というテーマには、
SNSが発達した現代でも(現代だからこそ?)失われない新鮮さ、
があるような気がします。

 

・一方で、犯人以外の4人について、新しい何かが始まりそうな、
表面だけの関係性が破たんしていきそうな、
そんな予感を感じさせつつ、物語は幕を閉じます。


物語の冒頭で「秩序だって流れる車の列」を描写し、
一方ラストで「追突事故」を描いているのが象徴的。

 

表面上だけで成り立ってきた5人の関係性が変化したとき「犯人」がこの中に
居続けられるのか、、、不安と緊張を感じさせるラスト、良かったです。

 

 ・それにしても、kindle超便利

 

重要なフラグかな?と思ったらマーカーひいておいて見返せるし

 

気になる文章にはコメント入れておけばブログ書くときに役立つし

 

例えば「犯人の名前」で検索し、犯人の行動に何か伏線があったか確認できるし

 

紙の本も好きですし、買うこともありますが、
感想ブログのまとめやすさだけでいえばkindleは超便利。

というのを今回改めて実感しました。


記憶力の衰えを感じて、登場人物の多いミステリを読むのがしんどい方!!
(私だ!!)


kindleおすすめです!!!

 

おしまい。

 

 

怖くて美しいラスト1行 儚い羊たちの祝宴 感想と考察

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。そんな、優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。ようこそ、甘美で暗黒なミステリの世界へ。
米澤穂信(ダークサイド)を代表する1冊として名高い、儚い羊たちの祝宴について、感想を書きました。

 

儚い羊たちの祝宴
 

 

儚い羊たちの祝宴 あらすじ

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目には、、、

優雅なバベルの会をめぐる邪悪な五つの事件。ようこそ、甘美で暗黒なミステリの世界へ。

 

作者の米澤穂信さんについて

管理人わんこたんが初めて読んだのは春季限定いちごタルト事件

儚い羊たちの祝宴は2番目に読んだ米澤穂信作品ということになります。

 

春期限定いちごタルト事件
春期限定いちごタルト事件
 

 

春季限定いちごタルト事件は明るめの青春ミステリもの。

儚い羊たちの祝宴はミステリの体裁をとってはいますが、トリックや謎解きよりもじんわり染み出す恐怖を楽しむ作品。

同じ作者さんとは思えない作風の振れ幅!

 

他にも、デビュー作の氷菓では、日常の謎を解くほろ苦い青春ミステリーを。直木賞受賞作となった黒牢城は、戦国時代を舞台にした重厚で悲劇的な史実ミステリーを。作品の方向性が多彩なんですよね。

 

氷菓 「古典部」シリーズ
氷菓 「古典部」シリーズ
 

 

 

黒牢城
 

 

黒牢城の感想記事はこちら

控えめにいってめちゃめちゃおもしろかったです。

戦国時代が舞台の傑作ミステリー!黒牢城 / 米澤穂信 感想 - わんこたんと栞の森

 

一方で、緻密な話づくり、練り上げられた構成、丁寧な心情描写は、どの作品も共通。「読めば物語に引き込まれる」な、作家のおひとりだと感じます。

 

儚い羊たちの祝宴 感想

5篇の作品、いずれも

  • 名家のお嬢様
  • 立派だけど、どこか陰のあるお屋敷
  • その家に仕える人(奉公人、料理人など)

 

3つの要素が核となっています。そしてどの作品も最後の1行で驚きが。

 

5篇、似たような雰囲気を醸しつつも、ラストのベクトルはそれぞれ全然違います。決してワンパターン化することはなく、どの作品も新鮮な驚きを味わうことができました。まるで料理のコースを味わっているかのよう!

 

各短編の感想を以下に書きます。

 

身内に不幸がありまして

  • 閉鎖的な富豪一族
  • 怪しげな秘密を抱えたお嬢様と彼女に惹かれる使用人
  • 凄惨な殺人事件

この仄暗い感じがもうたまらん。

 

お嬢様の蔵書の著者名が描写され、その後にタイトルが描写されて真相が明らかになる、という構図が良かったです。登場していた作品、読んでみたいなあ。

というわけで、管理人わんこたんはドグラ・マグラ/夢野久作に挑戦中。

 

ドグラ・マグラ(上)
ドグラ・マグラ(上)
 

 

 

屋敷内の殺人事件が富豪パワーで簡単にもみ消されたりするあたり、ちょっとファンタジーですが、それはそれでおもしろく読めました。

 

ミステリとはいえ閉鎖的な環境が舞台で登場人物は多くありません。犯人あて、という点ではそこまでのひねりはなく。

が、ラスト、そうきたか!!というオチまでしっかり堪能できました。

読み終わって、え(^▽^;)と絶句。

 

北の館の罪人

六綱家には、いわくつきの「北の館」があった。館に閉じ込められた長男、早太郎と、彼を世話することになった腹違いの妹、あまり。

早太郎はあまりに、不可思議な買い物をいいつけるが……

 

いやあこわいこわい。

早太郎は全てを承知で「手袋」を残したのでしょうか。丁寧に髪を塗りこめるなど、証拠を残そうとする執念がすさまじい。

 

バベルの会の会員である、詠子

第5篇 儚い羊たちの祝宴で、バベルの会の会長はこう語ります。

(バベルの会に集うものは)ただの偶然を探偵小説のように味わい、なんでもない事故にも猟奇を見出すのです。

微笑みながら赤い手袋について語る詠子は、どこかこの状況を楽しんでいるかのような、この事件を物語として楽しんでいるようで、底知れない不気味さがあります。

 

管理人わんこたんとしてはこの「北の館の罪人」が一番良かったです。ラストの、主人公あまりにせまりくる、じんわりにじみ出るような、絵の具の染みが広がっていくような恐怖感はたまらないですね。

 

山荘秘聞

うつくしい別荘、飛鶏館。そこで働く屋島は、いつかお客様を飛鶏館に迎えることを願って、屋敷を隅から隅まで管理するのですが……

 

この主人公も、バベルの会に狂わされたひとり、ということになるのでしょうか。どう考えても血なまぐさい展開になると思ったのですが……

「死ぬと思った?残念でしたー☆」と、米澤穂信先生の手のひらで転がされているかのような、気分になりました笑

 

全編に共通して言えることですが、この作品、物語の核となる「女中さん」の働きぶりが非常に丁寧に描写されているんですよね。

富豪の邸宅を丁寧に掃除したり、料理を作ったり、備品をそろえたり。細やかな仕事ぶりに、なんだか自分がその豪邸に入り込んでしまったような、閉じ込められてしまったような、不思議な感覚を味わえるのも、楽しいです。

 

玉野五十鈴の誉れ

ネットで儚い羊たちの祝宴の感想を拝見すると、この4作目「玉野五十鈴の誉れ」が特に評判がよいです。

わかります。この作品のラストの恐ろしさは群を抜いていました。が、最後の1行があまりに恐ろしすぎて私はちょっとトラウマ。

自分に小さい子どもがいることもあって、これだけは思い出したくもない、ということで感想は割愛。

 

儚い羊たちの晩餐

バベルの会を除名された主人公、鞠絵。彼女の日記に残された、恐ろしい真実とは……

 

作中に、「チャーリーとチョコレート工場」の原作者として有名な、ロアルド・ダールの短編集 より『豚』、ダンセイニの『二壜のソース』が登場しますが、どちらも「■肉食」を題材にした物語。というわけで、本のタイトルでラストを暗示していたのですね。こわ~。

 

「豚」が収録された、ロアルド・ダールの短編集

キス・キス
キス・キス
 

こちらの記事が、ロアルド・ダールについて詳しいです。

短編の名手、ロアルド・ダールのおすすめ本5選 | ホンシェルジュ

 

二壜の調味料
二壜の調味料
 

 

厨娘(ちゅうじょう)の原点は?

厨娘は、書物の王国 14 美食に所収の、その名も『厨娘』(洪巽 作、大木 康)から。管理人わんこたんも読んでみましたが、以下のような描写があり、儚い羊たちの晩餐では、この『厨娘』の設定をそのまま利用しています。

  • 雇い主の対面を保つため、迎えを要求する。
  • 羊肉やネギなどを大量に買い込み、おいしい部分以外はほぼ捨てる
  • 宴席のあとに謝礼を要求する

 

書物の王国14 美食
書物の王国14 美食
 

 

知識豊富な凄腕料理人「厨娘」なら、当然アミルスタン羊も知っているはず。

というわけで「厨娘」と「アミルスタン羊」というふたつの物語を組み合わせて物語に落とし込む、というのがいいですね。

 

メデューズ号の筏について

作中に登場する絵画、ジェリコ策のメデューズ号の筏は、難破した筏に取り残された人々の運命を克明に描いた作品。

すでにパブリックドメインなので、以下に貼ります。

大寺家に納品された複製画は残念なできばえだったようですが、これが応接間にあったら、確かに生々しい。

 

アミルスタン羊とは?

作中でも明記されていますが、これはスタンリイ・エリン作、特別料理からの引用。その正体は「儚い羊たちの晩餐」を読めば明白ですが、自分の魂のような味。というのは言いえて妙ですね・・・

ちなみに特別料理で饗されるアミルスタン羊は必ず「雄羊」のようです。

 

特別料理
特別料理
 

 

本家特別料理では、絶品料理を出すレストラン、スビローズに足しげく通う、上司ラフラーと部下コステインの2人組が登場。

おいしい料理を堪能するため、勧めに従って酒もタバコも断つふたり。やがてラフラーは念願かなって、スビローズの厨房を特別に見学させてもらえることになるのですが……

上品な文体と、ぞっとする結末。エラリイ・クイーンも絶賛した「名品」です。

 

蓼沼に集った、「現実と物語の区別がつかない夢みがちな羊」たちが、物語から引用された料理になって■される。という結末。

まさに最終話を飾るにふさわしい、美しく恐ろしい結末でした。

 

ちなみに、第一話「身内に不幸がありまして」に登場する吹子お嬢様だけは、蓼沼の読書会には参加しないので、難を逃れたはず笑 彼女ならば、この事件のことすら、物語として楽しんでいたりして。

 

儚い羊たちの祝宴の結末について

ラストがどうなったか……はっきりとは描かれません。

管理人わんこたんがはじめて儚い羊たちの祝宴を読んだときには、もっとわかりやすいオチがいいなあ、と思ったものです。

でも改めて読み返すと、うまれては滅び、そしてまた復活する、というバベルの会の循環のようなものが感じられる、絶妙な結末がいいなあ。と感じます。

 

一度読んだあなたも、よかったらぜひ、儚い羊たちの祝宴を再読してみては。

 

儚い羊たちの祝宴
 

 

ところでこの物語を書いた「1冊の日記」がバベルの会のサンルームに置かれていたのは……なぜなんでしょうね。

 

儚い羊たちの祝宴 時代設定はいつ?

第一話「身内に不幸がありまして」の中に夜歩く/横溝正史が登場しますので、1949年より後なのは間違いないでしょう。名家のお嬢様が大学に通い、読書会を称して集う、という状況を考えると、思いのほか現代に近いのかもしれません。

 

夜歩く
夜歩く
 

 

また、各短編で時系列が同一かは不明ですが、第5話「儚い羊たちの晩餐」に、製薬の六綱(第2話登場)、丹山(第1話登場)の名前があがるので、すくなくともこれらの話は、同一時期の話とみて、よさそうです。

 

とはいえ、ラストで滅びたバベルの会は、夢見がちな女生徒?によってまた復活します。

もし、バベルの会が生まれては滅び、というサイクルを繰り返しているのであれば、短編の中には「別時代のバベルの会」「再結成されたバベルの会」が含まれている可能性もありますね。

 

儚い羊たちの祝宴 の次に読みたいおすすめ作品

ネタバレ厳禁!なラストに痺れる、おすすめ作品をご紹介。

 

ハサミ男

ハサミ男
ハサミ男
 

 

タイトルは物騒ですが、展開に度肝を抜かれます。

とにかく、ネタバレ抜きで、amazonのレビューとか一切見ずに読みましょう!

 

十角館の殺人

十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

綾辻先生のデビュー作にして、ネタバレ厳禁の代表作。

「館シリーズ」の1作目ですが、私はやっぱり一番最初のこちらが、シンプルで好き!

 

十角館の殺人 感想記事はこちら

ネタバレもりもりのため、読了後にぜひお越しください。

新本格ミステリーの代表作「十角館の殺人」の感想と思い出 - わんこたんと栞の森

 

殺戮にいたる病

 

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)
新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 

殺戮にいたる病 感想記事はこちら

ネタバレ要注意です!

殺戮にいたる病/我孫子 武丸 伏線を徹底解説 - わんこたんと栞の森

 

江戸川乱歩「人間椅子」の感想と、その世界観を堪能できる作品たち

「人間椅子」
あまりにも有名な江戸川乱歩の小説。
その世界観を十二分に味わえる
作品たちをご紹介します。

あの「結末」についても考察してみました。

 

人間椅子~乱歩奇譚~ (光文社文庫)
人間椅子~乱歩奇譚~ (光文社文庫)
 

 

まずは江戸川乱歩の「人間椅子」

原作の著作権は切れており、
Amazon(kindle)の青空文庫であれば
無料で読むことができます。

 

以下があらすじです。
短いので20分もあれば読めます。

ある女性作家のもとに届いた
一通の手紙。
それは差出人である椅子職人が
自身の罪を告白した手紙でした。
その恐るべき内容とは?

読む前は、
「人間の体をパーツに椅子を作成する
猟奇的なお話かなあ」なんて
勝手に想像しておりました。

猟奇的な展開は一切ありませんが
それよりもずっと不気味な、
「背中に張り付くような」不安感を
味わうことができます。

以下は乱歩の「人間椅子」読了を
前提とした内容となっています。
ぜひ、人間椅子を読んでから、
続きをお読みください。

「人間椅子」結末の解釈について考察
(ネタバレ注意)

人間椅子は、
創作話とも実話ともとれる、
読者によって解釈が分かれる
結末となっています。

が、

私は「実話であった」説を推したいです。

ポイントは最後に登場するこの一文

ある理由の為に、原稿の方は、
この手紙を書きます前に
投函致しましたから、
已に御覧済みかと拝察致します。

「ある理由の為」、が何を指しているのか
作中では明示されていません。
私は「ある理由」
=女性に事情を知らせないまま
一通目の手紙を読ませて恐怖を与えるため
と解釈しました。

 

そして
恐怖におののき震える女性の肢体を
実際に椅子の内側から堪能していた、、、
と。

いやーーーー変態ーーーーーー!!

 

さらに女性が一通目の途中で恐怖して
離席することを見込んで、
女性が離席したタイミングで
自分も椅子から抜け出して、
郵便受けにあらかじめ用意しておいた
ニ通目を投函した、、、なんて😱😱😱

 

もちろん、これは私独自の妄想ですが、
このように読者が想像する余地を残し、
楽しませてくれる点が、本作が時代を超えて
長く読まれている理由のひとつなのでしょう。

 

人間椅子に登場する二六時中ってなに?
四六時中なら知ってるけど、、、

 

「二六時中」は「1日が12刻」であることから
「一昼夜、一日中」や「いつも、年中」
という意味で使われる言葉じゃ。
「四六時中」は1872(明治5)年に
24時間制が採用されたあとから、
「二六時中」と同じ意味で使われるように
なったようなんじゃ。

参考

二六時中? 四六時中? - ことばマガジン:朝日新聞デジタル

江戸川乱歩といえば、、、
名探偵 明智小五郎!!!
その彼のデビュー作が「D坂の殺人事件」です。
ほろろさんのブログで紹介されていますので、
是非ご覧ください。

apotheker2.fun

 

人間椅子ー乱歩奇譚ー

人間椅子~乱歩奇譚~ (光文社文庫)
人間椅子~乱歩奇譚~ (光文社文庫)
 
人間椅子ー乱歩奇譚ーは同名のアニメ作品の
ノベライズ小説です。
あらすじ

始業前の教室。
何者かに眠らされていた
小林少年が目覚めると、
そこにあったのは変わり果てた
担任教師の姿だった。
バラバラにされ椅子の形状に
組み合わされた首無し死体――。
高校生にして名探偵の明智は、
容疑者となった小林に、
自分で事件を解決してみせろというのだが……。
全体的な書き口はラノベ文体であり
人によっては受け入れづらいかもしれません。
ラノベ(ライトノベル)文体:
しゃべり口調、効果音や擬音を多用しつつ、
どこか芝居がかった大仰なセリフを
多用する文体
※わんこたんの独断です


ですが
犯人のモノローグ(と思しき箇所)は
原作の人間椅子にかなり寄せた表現を
しており、ノベライズならではの工夫を
楽しむことができます
以下に一例を示します。

 

原作 人間椅子より引用

何という坐り心地のよさでしょう。
フックラと、硬すぎず軟かすぎぬ
クッションのねばり工合、
態と染色を嫌って灰色の生地のまま張りつけた、
鞣革の肌触り、
適度にオンモリとふくれ上った、
両側の肘掛け、それらの凡てが、
不思議な調和を保って、渾然として
「安楽(コンフォート)」という言葉を、
そのまま形に現している様に見えます。

 

人間椅子ー乱歩奇譚ー より引用

肘掛けの優しい曲線、縊れのある美脚、
包み込むように抱擁する、
ふくよかな緩衝座布団、艶めく皮革の淫靡な光沢。

(中略)

あの、母の膝の上での尊いひと時こそが、
文字通り、私にとっての
「安楽(コンフォート)」であったのだと。

 

椅子を女性の肉体のように表現したり、
安楽(コンフォート)のルビなど、
原作を意識していることが見て取れます。

 

この作品、実は前半を読んだ時点では
わんこたん評価「低」でした。

江戸川乱歩作品の名を借りて、
見栄えのするエログロ耽美で
まとめただけでしょ。
その手にはのらないもん!!

ところが、ラストではきっちり
「原作の人間椅子のテーマ」
に回帰してくる

ことに驚かされました。

 

 原作がアニメであり、
キャラ付け、セリフが
かなりぶっ飛んでいる点。

推理物の体をしてはいますが、
色々と無理のある点。
は難点ですが、
あくまでエンターテイメント的に
楽しんでほしい作品であり、

そういうのが気にならない方には
大変オススメです!
続編もでていますよ~

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魔人探偵脳噛ネウロ 第11巻収録
第92話 「机【つくえ】」/松井優征

魔人探偵脳噛ネウロ モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)
魔人探偵脳噛ネウロ モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)
 

2005年~2009年に週刊少年ジャンプで
連載されていたマンガです。

歴代の所有者の命をうばってきた
「呪いの机」が登場する回ですが、
(椅子を含む)家具に魅入られすぎた職人が
登場します。

ただし、

乱歩の作品の椅子職人は
「椅子に座った人間との接触」
に悦楽を見出す
のですが、

ネウロに登場する職人は
「家具そのものに崇高さを見出し
家具と一体化すること」

を重視し、
座る人間のことをむしろ軽視しています。
ある意味、乱歩の人間椅子とは

対極的なスタンスともいえます。

 

なお、人物の変態性は乱歩の人間椅子に
負けず劣らずです。

いやーーーー変態ーーーーーー!!

 

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※当ブログでは松井優征先生を
応援しています。
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いかがでしたでしょうか。
この記事が、よき人間椅子ライフの
助けになれば幸いです。

他に「人間椅子」関連作品があれば
ぜひコメント欄で教えてほしいんじゃ

いや、正直もうおなか一杯だよ?!

おしまい。