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水車館の殺人 感想と考察

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館シリーズの2作目となる水車館の殺人。過去と現在を行き来する、シリーズの中でも1番幻想的な本作品について、感想と解説を書きました。

 

水車館の殺人〈新装改訂版〉
水車館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

 

あらすじ

仮面の当主が住まう異形の館、水車館。

1年前ー1985年ーに不可解な惨劇の舞台となった館の謎を解くため、今年ー1986年ーに館を訪れる島田潔。

しかし、1年前をなぞるかのように、惨劇は繰り返され……

 

  • 著者:綾辻行人
  • 発売:講談社 1988/2/5 2008年に新装改訂版が発行
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象外

 

著者 綾辻行人さんと、「館シリーズ」について

十角館の殺人でデビューした綾辻行人さん。十角館から始まる「館シリーズ」の2作目が、この水車館の殺人です。

 

鮮烈な結末で読者の度肝を抜いた十角館の殺人の続編ということで、注目度も高かったはずですが、水車館の殺人は地に足のついたオーソドックスなミステリー。十角館とはまた違う趣向で読者を楽しませてくれます。

前作未読でも楽しめますが、やはり順番通り、十角館の殺人から読むのがお勧め!

 

十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

十角館の殺人 紹介記事はこちら

ネタバレ要注意でお読みください!

新本格ミステリーの代表作「十角館の殺人」の感想と思い出 - わんこたんと栞の森

 

ちなみに、3作目は、その名も迷路館の殺人。水車館とはまた違った、ものすごい間取りの館に注目!

 

迷路館の殺人
迷路館の殺人
 

 

迷路館の殺人 紹介記事はこちら

▶︎迷路館の殺人 感想 - わんこたんと栞の森

 

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水車館の殺人 感想

1985年パート(過去)と1986年パート(現在)が交互に描かれるというトリッキーな構成。

なのにとても読みやすく、ぐいぐい惹き込まれる。さすが、館シリーズでした。

 

仮面の主人 藤沼紀一 というあからさまなヒント

館の主人が仮面をつけている。というわけで、ミステリー好きな方が読めば、仮面の下の人物がこっそり入れ替わるのでは?と予想するのは容易でしょう。

例えば、第一章 現在 1986年9月28日 藤沼紀一の寝室 午前8時30分では

いつものように、は目覚めた。

 

一方で、第ニ章 過去 1985年9月28日 藤沼紀一の寝室 午前8時30分では

いつものように、は目覚めた。

 

と、あからさまに表現を変えており、読者がその点に気づくことは織り込み済み,というか、あえて気づかせようとしているように思えます。

このあからさまなヒントの裏で、些細な描写に伏線を忍ばせていく、という構成はさすが。管理人わんこたん、読み返すまで、「色」の部分には全く気がつきませんでした。

 

十角館の殺人と水車館の殺人 どちらが好き?

伝説のデビュー作、十角館の殺人はまさに、「あの1行」に物語が凝縮されているので、それに比べると2作目の水車館はインパクトが薄いかもしれません。

実際に管理人わんこたんが初めて読んだ際は、十角館から立て続けに読んだこともあり、あまり印象に残らなかった、というのも事実です。

 

でもでも!時を置いて再読すると、地に足のついた丁寧な構成に、さりげなく、でもだいたいに置かれた伏線に、やっぱり面白い!と唸らされました。

(あの数時間で◯◯を解体して風呂場をきれいにするのはかなり大変そうですが……)

 

ただし、由里絵さんの境遇に関する部分は苦手。亡くなった知人の娘を養育という名目で水車館に閉じ込め、妙齢になったら結婚。だなんて、キモすぎる。

関わった男性陣は全員に地獄に落ちるべき所業。まあ実際何人かは死んじゃうんですが。

 

謎の絵画 幻影群像 の異質さ

この水車館の殺人が他の館シリーズと比較して異質なのは、絵画「幻影群像」の存在でしょう。ミステリー小説でありながら、この部分が幻想小説のような雰囲気。結末もミステリーというよりホラー的なのも面白かったです。

この幻影群像、イラスト化されないかなあ。十角館の殺人のコミカライズも完結しましたので、水車館もぜひ、コミカライズを……と、期待してしまいます。

 

十角館の殺人(1)
十角館の殺人(1)
 

この美麗タッチで幻影群像を描いてほしい

 

水車館の殺人 実は伏線だった箇所まとめ

読み返して気づいた、伏線やミスリード箇所を前半部分のみまとめました。極力ネタバレを排しましたが、未読の方はご注意を!

 

第一章 現在パート

そうだ、何事もおこりはしない。何事も。一年前のあの夜、不可能な状況で忽然と姿を消したあの男が、幽鬼のごとくこの館を徘徊しはじめでもしない限りは。

普通に読むとあの男=行方不明になった古川恒仁氏、なのですが、真相を知ってから読むと……

 

敷きつめられた灰色の絨毯に、明るい陽射しが揺れている。(中略)点在する色褪せた植え込み……。

第一章で早速⬛︎⬛︎異常が表現されていました。

 

第二章 過去パート

遠くに近くに、幾重にもなって連なる山々。深い緑色をたたえつつ、山の間をうねり流れる川。

美しく色鮮やかな山並みが表現されています(ニヤニヤ

以降の章にも⬛︎についての伏線があちこちに。いやあ気づかなかったなあ。

 

第五章 現在パート 

(私には弾けない。あの時の、正木慎吾のようには)

藤沼紀一氏の回想、と思わせて、なかなか際どいミスリード描写。そりゃ過去のようには弾けません。だって◯◯を失ってしまったんですから。

 

第六章 過去パート

「なるほど、おいくつでしたっけ」「君と同じくらいかな。まだ独身らしい」「独身、ね」呟いて正木は、左手の薬指に白く光る猫目石の指輪を見た。

正木と古川の会話シーン。独身である古川は指輪をしていませんでした。このことがきっかけで、彼は「◯◯を切断しなければ」という覚悟を決めたのかも?

 

水車館の殺人〈新装改訂版〉
水車館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

水車館の殺人の次に読みたい!おすすめ作品

印象的な絵画が登場する水車館の殺人。絵画が事件の鍵を握るミステリーを集めてみました。

 

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儚い羊たちの祝宴
 

 

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音声で明らかになる事件の真相は?

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きこえる
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