そんな作家×刑事の職業系ミステリ、「作家刑事毒島」の感想を書きました。
作家で刑事でしかも性格にクセがありすぎる!
作家刑事毒島 あらすじ
作家志望者たちの新人賞応募作に、辛口の添削コメントをしていた編集者が殺された!
難航する捜査。頼みの綱は作家兼、刑事の毒島真里(ぶすじま しんり)。しかしこの刑事、かなりのクセ者ようで、、、
作家×事件な5作品を収録した短編集。
出版業界の裏を暴く系ミステリー、ここに登場!
- 著者:中山七里
- 発売:幻冬舎 2016/8/10
- Kindle Unlimited(本の読み放題):対象外
- Audible(聴く読書): 対象外
作家刑事毒島シリーズについて
作家刑事毒島シリーズは2024年1月現在、全3巻が発売中。
この記事で紹介している「作家刑事毒島」が一番最初です。
以下にシリーズの一覧をのせました。「毒島刑事 最後の事件」がラストではなく2作目であることに注意。
これからも続くのでしょうか?
※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。
作家刑事毒島 著者の中山七里さんについて
幅広い作風を得意とするミステリー作家さん。とにかく作品数が多い多い!
たくさんの作品から絞るのも大変ですが、代表作としては、第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞した「さよならドビュッシー」や、「連続殺人鬼カエル男」があげられるでしょうか。
また、ある作品では脇役だった人物が、別の作品では主人公に、といった「登場人物のリンク」があることで知られています。
例えば「作家刑事毒島」で若手警官のトレーナー役として登場する捜査一課の犬養刑事は、刑事犬養隼人シリーズの主人公である、犬養隼人、と思われます。
中山七里さんは◯◯人間!?
作家刑事毒島の文庫版後書きは、同じくミステリー作家の知念実希人さんが寄稿。
知念さんも、医師業の傍ら、兼業で執筆活動を続け、かなりお忙しいと思うのですが、その知念さんをして、「改造人間」と言わしめる、中山七里さんの執筆量、、、
睡眠時間2時間とか、トイレは1日1回とか、どこまで本当なの???
作家刑事毒島 各話の感想
各短編の感想を書きました。
ワナビの心理試験
小説新人賞応募作に、辛口の添削コメントをしていた編集者が殺された!
容疑者は添削に恨みを抱いた作家志望者たち?
とにかくヒヤヒヤします。毒島刑事のズバズバっぷりに。
もちろん毒島刑事≠著者の中山七里さん、のはずですが、毒島刑事の新人作家さんに対する厳しい指摘に、作家である中山七里さんの本音、絶対入っているよね?入ってるよね?
この章に登場する作家の卵たちは、とにかくいろいろな意味で「ひどい」のですが、しかもこれを中山七里さんが書いているっていうことは、本当にこんな作家志望者が大勢いるということ、なのでしょうか、、、?こわいこわい。
そんな彼らに、刑事でありプロ作家の毒島さんはニヤニヤしながらグサグサと現実を詰めていきます。ダメダメな作家たちがプロの作家にズタボロにされる様子は、ヒヤヒヤと同時にエンタメ的爽快感すら感じてしまい、読みながら後ろめたい気持ちになること間違いなし。ぜひご一読を。
ところでこのトリック、実際ならかなり大きな音がしそうなものですが、どうなんでしょう。いや、実行されたら困るけど!
編集者は偏執者
ひたすら売上重視の編集者が殺された!
第1篇に続き、また編集者が殺されてしまいました、、、
作家との関係性を蔑ろにし、売るためだけに一点集中する編集者。一方で、。編集者に頼り切りで、なにか起きればすぐ編集者のせい。自分をプロデュースする意識もない若手作家。
なんという世界。本作のメイン担当刑事の明日香もどんびきです。そして、相変わらず作家をズバズバ切り捨てつつ、謎をあばく毒島さんのスタイルは、ついつい読んでしまうゴシップ記事のような背徳感にみちています。
人を殺したことよりも、◯◯の凡庸さをけなす毒島刑事の捻くれ方も、クセになりますね。
章を獲ってはみたものの
文芸の新人賞、といえば若手作家の登龍門。しかし、章を獲ってはみたものの、後が続かず苦労する若手作家もいるとか。
この章ではそんな若手作家に檄を飛ばすベテラン作家が登場。案の定、若手作家の恨みを買ってしまい、、、
第一章ではデビュー前の作家の苦労が描かれますが、作家はデビューしてからが本番。良い作品を生み出せなければ、あっという間に淘汰されてしまう。
そんな作家の苦労を感じつつ、中山千里先生の毒島刑事の、若手作家への厳しい意見、そして出版界の厳しい現実に、またヒヤヒヤしてしまうのでした。
時々、デビューして次々とヒットを飛ばす作家さんがいますが、本当にすごい才能だと思います。いっぱい応援しよう!
愛瀆者
あいどくしゃ(愛読者)とかけたタイトルでしょうか。
売れっ子人気作家にまとわりつくアンチとファン。しかしその作家が殺されてしまう。犯人は誰なのか?
この話は読んでいて1番辛かった。というのも、編集者さんからみた批評家気取りの読者(つまり書評ブロガー)への印象の最悪っぷりがこれでもかと書かれるから。
そりゃ、ネタバレの感想や書評をブログに書いたり、本の感想サイトやSNSに投稿するなんて、出版社から見たら営業妨害もいいところ。
私もネタバレにならない、その本を読みたくなるような本の紹介を書きつつ、その本を既読の方にも楽しんでいただけるような感想文を書かなければと、改めて決意したのでした。。。
原作とドラマの間には 深くて暗い川がある
毒島刑事の著作がドラマ化されることに!しかし原作への敬意のカケラもない改変に、毒島刑事と担当編集の辛坊さんは、制作陣と話し合いを行いますが、、、
最後の犯人あてシーンはちょっとドラマチックに過ぎるかもしれませんが、そこはほら「ドラマ」がテーマということで。
文庫版 後書きのあとの、アレ
この物語は完全なるフィクションです。のあとに続くあれ!
最後までヒヤヒヤさせてくれます。
もし気づかなかったかた、いらっしゃったら、文庫版の後書きの次のページをチェックしてみてくださいね。
作家刑事毒島 感想まとめ
出版界をズバズバぶった斬る、毒島刑事のダークな爽快感がくせになる本作。
一方で「作家としての」中山七里さんの本音がすけてみえるようで、読者がヒヤヒヤしてしまう一面も。
売れ残った本の行く末を見せつけたり、犯人に「ドラマチックに」自白させるシーンなど、ちょっとやりすぎな演出もあるので、謎解きを楽しむミステリーというよりは、出版界の裏話と毒島刑事のキャラクターをライトに味わう作品ととらえた方が、楽しめるかも。
業界の裏話を楽しむお仕事ミステリが好きな方、ぜひ読んでみてね!
作家刑事毒島の次に読みたい!おすすめミステリー小説など
毒島刑事シリーズのような、お仕事系ミステリーや、ライトに楽しめるミステリーを集めてみました。