
「リラ荘」に集った芸大生たち。だがそこには凶悪な殺人犯が潜んでいた。
次々と発生する殺人事件。その現場には毎回、トランプのカードが残されており……?
日本の「館もの」の元祖であり、鮮烈なトリックが印象的な傑作ミステリー、リラ荘殺人事件。その感想と率直な評価を書きました。
リラ荘殺人事件 あらすじ
日本芸術大学の宿泊所である「リラ荘」。
そこに集った学生7人だが、地元の木こりの老人の転落遺体の発見を皮切りに、リラ荘は恐怖の連続殺人の舞台となる。
果たして犯人は?動機は?
- 著者:鮎川 哲也 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:初版刊行は1958年
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 鮎川 哲也氏(1919-2002)について
多くのミステリー作品を生み出し、日本のミステリー小説の歴史を作った鮎川氏。
リラ荘殺人事件は、名探偵 星影龍三シリーズの1作目にあたります。(といっても、探偵は最後の最後に登場するのみ)黒いトランク など鬼貫警部シリーズも有名。
また、鮎川哲也と十三の謎と題したシリーズ刊行企画をきっかけに、本格ミステリーを題材とした鮎川哲也賞が誕生。同賞からは多くの新人作家がデビューしており、まさに日本のミステリー文化を育てた功労者のおひとりといえます。
管理人わんこたんのおすすめはパーフェクトブルー。宮部みゆき氏はこの作品で長編デビューをはたしました。
紹介記事はこちら▶パーフェクト・ブルー/宮部みゆき 感想 - わんこたんと栞の森
管理人わんこたんのおすすめは2024年第34回受賞作 禁忌の子。
2025年8月には続編:白魔の檻が刊行されます!
紹介記事はこちら▶禁忌の子 感想 一気読み必至の医療×ミステリー - わんこたんと栞の森
以下に鮎川哲也作品の一部をご紹介します。(※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ)
りら荘事件とリラ荘殺人事件の違いとは
出版社によってタイトルが2種類存在しますが、中身は同じです。
もともとの雑誌連載時、そして1958年に世文社から初めて刊行された際のタイトルは「りら荘事件」だったのでこちらが正しいタイトル、と言えそう。
ところが1960年に小説刊行社から再刊される際、なぜか勝手にリラ荘殺人事件と改題されてしまったそうな。
そこから派生して、現在でもりら荘事件と、リラ荘殺人事件の2つのタイトルが存在しています。
(当記事では、管理人わんこたんが読んだ角川文庫版のタイトル「リラ荘殺人事件」に統一して表記しております)
※以下の記事を参考にさせていただきました↓
いろんな出版社の「リラ荘」を集めてみました。↓
一番右の光文社版は、本編以外にデビュー以前に同人誌に書いた“プレりら荘”とも言える中編も収録。Kindle Unlimited対象ですので、一番お得かも。
リラ荘殺人事件には新旧2バージョン存在する
リラ荘殺人事件は1968年に大幅に加筆修正されており、修正前の旧版と修正後の新版の2種類が存在します。新版/旧版の違いとタイトルの違いは関係ありません。
(第八章が「由木の出京」なら旧版、「暑い街で」なら新版)
管理人わんこたんの手元にあるリラ荘殺人事件は1980年の出版。見た目はかなり古いんですが、もちろん新版です。


旧版はかなり古いので現在ほとんど出回っていないんじゃないかな?
もしどこかで旧版を見かけたら、かなりのレア物と思われます。どうぞ大切になすってください。(お宝鑑定団ぽく)
※以下の記事では、旧版のリラ荘殺人事件について紹介されています。
リラ荘殺人事件 感想
とにかく、どんどん人が死ぬんですわ。
殺人が止まらない。警察がやってきてもとまらない。
そして誰もいなくなったのように、大学生全滅しちゃうの?と心配になるくらい。(さすがに全滅はしなかったけど)。ちょっと衝撃だった。こんなストーリーだったのか。
作中ではリラ荘は秩父鉄道の影森駅と三峰口の間に存在することになっていますが、両駅とも実在し、2025年現在でも残っていることに、ちょっと感動。
以下より、リラ荘殺人事件の読了を前提とした記載があります。ご注意ください。
これぞミステリーの醍醐味!鮮やかな解決パート
物語の随所に「このシーン、重要だから覚えておいてね」といったヒントが、これ見よがしに提示されます。さながら読者への挑戦状。
さらに中盤、改めて謎をとく鍵はこの4つ!と提示してくれる親切設計。
- なぜ犯人は、現場にトランプのカードを残すのか
- 行武が「ブルーサンセット」といわれて怒った理由
- なぜ三番目の死体は、延髄を刺して殺害されたのか
- なぜ行武は殺害されたのか。
と、これだけヒントを提示されても、真相は全くわからず。最後に颯爽と現れた名探偵、星影龍三の解説によって、「あの時のあれはそういうことだったのかーーー!」と膝をうつ。
ミステリーの醍醐味を味わえました。
特に「現場にトランプのカードが置かれた理由」が秀逸。まさに発想の転換。
極め付きは第3章のタイトルである、「第二の殺人」。
これ、読む前と読んだ後で章タイトルの意味ががらりと変わってしまうんです。してやらた……
この記事後半に書きましたが、リラ荘殺人事件は、いろいろ「突っ込みどころ」の多い作品ではあるのですが、この「トリックの鮮やかさ」の一点に衝撃を受けた読者は多いのでは。(まさしく、ペンナイフのひと突きのように!)
これこそ、リラ荘殺人事件が長く読み継がれる理由なのかもしれません。
リラ荘殺人事件の登場人物
- 日高 鉄子(芸術学部)
ショートカットに男ものの太ふちの眼鏡、マドロスパイプを愛用。
黒い絵ばかりを描くので、あだなはブラック女史。
同じくリラ荘を訪れた、橘に思いを寄せていたが…… - 行武 栄一(美術学部の洋画科→音楽学部に転向)
意地がわるく冷酷。尼リリスにホッテントットといわれ反発する場面も。
昔は酒をたくさん飲んだが、最近は飲まなくなったらしい。 - 尼 リリス/南カメ(音楽学部 ソプラノ)
ふっくらした女性。本名は南カメだが、作中では舞台名である「尼リリス」で呼ばれている。気まぐれでつかみどころのない性格。 - 牧 数人(音楽学部、尼リリスの婚約者)
3つのオペラで主役になるほどの、実力者。 - 松平 紗絽女(音楽学部)
小柄で目の大きな女性。紗絽女(サロメ)は本名。 - 橘 秋夫(音楽学部 ピアノ 松平紗絽女の婚約者)
度のうすいふちなし眼鏡をかけ、みどりのアロハに空色ズボンというキザな男性。 ジャズピアノを志向している。 - 安孫子 宏(音楽学部 バス)
背が低く童顔で、こどもと大人が混ざったようと評される男性。
バス(声楽)担当だが体格がなく声量がないのが悩み。気位が高く傲慢。 - 園山 万平 リラ荘の管理人。
- お花さん 万平の妻。同じくリラ荘で働いている。
- 由木刑事 秩父警察署の刑事
リラ荘の近くのがけ下に、炭焼きの老人の転落死体が見つかったことで、調査のためリラ荘を訪れる。 - 剣持警部 埼玉県警本部の刑事
炭焼きの老人の死体の調査のため、由木刑事とともにリラ荘を訪れる - 二条 義房
芸術大学の卒業生。第5の事件のあと、リラ荘を訪れ推理を披露しようとする - 星影 龍三
最後の最後に唐突に登場する名探偵
いろいろつっこみどころも多い、リラ荘殺人事件
リラ荘殺人事件が、日本の館ミステリーの先駆者であることに疑いの余地はないのですが、非常におおらかというか、つっこみどころの多い作品でもあります。
後続の作品が「リラ荘」の影響を受けつつ、粗削りな部分を洗練させ、進化し、やがて十角館の殺人のような新本格ブームとなったことを思うと、感慨深いものがありますね。
わんこたんが気になったリラ荘殺人事件の不可思議な点をまとめました。
学生たち、そもそもなぜこのメンバーでリラ荘へ?
最初にリラ荘を訪れる7人の芸大生ですが、「美術系」と「音楽系」の2つのグループに分かれています。そしてこの2グループは、基本的に仲が悪いらしい。
実際、物語のあちこちで、けんかをしたり、嫌味を言いあったり。いったいどういう経緯でこの7人が一緒に来ることになったのか、謎。
このあたりは読者の想像におまかせ、ということでしょうか。
リラ荘への出入りが自由
リラ荘殺人事件は、館ミステリーではありますが、「クローズドサークルミステリー」ではありません。
基本的に館への出入りは自由。登場人物のひとり、日高 鉄子なんかは来て早々に一度、リラ荘から東京に帰ってしまいますし。
そのほか、後から急に卒業生の二条 義房がやってきたり、それどころかお通夜のシーンでは近所の人が大勢リラ荘に出入り。
外部犯の存在が否定できない、とかそういうレベルじゃない。フリーダムすぎてびっくり。
そんな理由で殺すのか!驚きの動機
連続殺人の動機が最後に明らかになりますが。なんというか……
「そんな理由で殺すな」
警察……仕事して!
犯人は不明だけど、人が亡くなったのだからリラ荘(※連続殺人現場)で通夜をしなければ。という発想もちょっと現代では理解しがたい。怖いから逃げようとか、ないんか。
当時(1958年)だと、遺体が傷んでしまうとか、そのあたりの事情もあるのかな。
刑事もそのお通夜にしっかり参加して、お酒を飲んで居眠り、そのすきにまた殺人事件が発生。ちょっと!刑事さん!
人が死ぬ→お通夜をする→(警察がしくじる)→また人が死ぬ→お通夜をする、というミラクルコンボな流れに思わず笑ってしまいました。刊行当時の読者は、どう思っていたのだろう……
と、なんだかんだツッコミを入れつつも、読み返すと改めて、偉大なトリックだなぁと感心してしまうのでした。
古い作品と侮るなかれ、皆さんもぜひリラ荘殺人事件を読んで、星影探偵に挑戦してみてはいかがでしょうか。
リラ荘殺人事件 の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。トランプが登場するミステリー!
11枚のとらんぷ /泡坂 妻夫
奇術の仕掛けから出てくるはずの女性が、マンションの自室で殺されていた。
鍵を握るのは、奇術仲間が書いた『11枚のとらんぷ』……!?
自身が奇術師でもある、泡坂妻夫氏による、驚きのミステリー!
地雷グリコ /青崎 有吾
勝負ごとにめっぽう強い女子高生、射守矢真兎(いもりや・まと)が、並み居る強敵をなぎ倒す!
トランプは、物語の大トリを飾る「フォールームポーカー」に登場。いったいどんなゲームなのか?読んでみてのお楽しみ!
ゲーム×青春×ミステリーが楽しい1冊です。
紹介記事はこちら▶友情×青春×爽快頭脳バトル! 地雷グリコの感想 - わんこたんと栞の森
おすすめ作品、他にもいろいろ!
当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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