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【ネタバレ注意!】殺戮にいたる病 /我孫子 武丸 伏線と感想、あらすじイラスト紹介も!

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

殺戮にいたる病 / 我孫子 武丸
(さつりくにいたるやまい / あびこたけまる)
その驚愕のラストと、そこに至るまでの伏線をまとめました。

あらすじ

都内で猟奇的殺人を重ねる「蒲生稔」。くり返される惨殺。そして、死体からの切り取り。蒲生稔の恐るべき行為と、それを追う刑事、母親、被害者遺族。果たして事件の結末は?(初版 1992年)

殺戮にいたる病 連続猟奇殺人 切り取られた遺体 犯人 蒲生稔 犯人を追うもの① 蒲生雅子

殺戮にいたる病 犯人を追うもの② 被害者の妹 島木かおる 元刑事 樋口武雄 驚愕のラスト 

  • 著者:我孫子 武丸
  • 発売:1992/9/1 講談社
  • Kindle Unlimited対象
  • Audible (聴く読書):未対応

【注意点】読む前に!

性的描写、グロ描写を多く含むため、苦手なかたはご注意ください。

ただし、頑張って読み進めれば、結末に驚かされること間違いなし!

自信をもっておすすめします。

この小説は「ネタバレ厳禁」です。未読の方は読了後にお越しください。
Amazonで購入したら、コメント欄はいっさい見ずに読みましょう。

殺戮にいたる病 ネタバレ感想

最後まで読みました。
騙されたーーーーーーーー!

まさか蒲生稔が「息子」ではなく「◯」だったとは!
また一つ、すばらしい叙〇トリックに出会えて、感激です。

 

読み返すと、第一章の時点で、「蒲生稔=雅子の息子であり大学生」というミスリーディングが大量に仕掛けてありました。同時に、雅子の夫が「育児への関わりが消極的」であることを印象付け、夫の描写が少ない点に、読者が違和感を感じないよう、工夫もされていました。

 

ここまで爽快にやられたのは、硝子の塔の殺人以来かも。

※「硝子の塔〜」はトリックが異なりますのでご安心を!

 

 

実は伏線はたくさんあった!

本作でさりげなく登場する伏線、ミスリーディングポイントをまとめました。

 

伏線① 隠された「義母との同居」

本作のトリックの鍵となるのが「義母」の存在。

蒲生雅子や蒲生稔が「義母=雅子の夫(稔)の母親」と同居していることが、読者に気づかれないよう、巧妙に描写されています。

 

彼(※夫=稔)がもともと両親と住んでいた一軒家も、五年前に義父が他界してからは夫の名義となっている (第一章)

ここで、雅子一家が義母と同居していることが、さりげなく匂わされていました。 

「稔さん。大学はどうしたの?」彼女(※稔の母)は不服そうに言った。
「(中略)一回くらい休講してもかまわないさ」 (第三章)

「彼女」というのは稔の母(雅子の義母)ですが、読者が雅子のセリフと誤認するよう仕向けられています

 

「休講してもかまわない」も不自然でした。休講するのは「教師(大学助教授)の稔)」であり、学生(雅子の息子)の立場で「休講する」とは、普通言いません。

 

とはいえ、学生さんが「自主休講する=講義をさぼる」と言うシチュエーションもありますし、、、あまり違和感を感じず見逃してしまいました。

 

伏線② 隠された「夫の職業」

稔のいる東洋文化大は私大にしては入学試験が遅く(中略)それが終わる頃にはみんなが多少は暇になっているはずだから (第5章より)
上記は雅子が家族旅行について考えるシーン。

稔が大学生(=雅子の息子)なら大学の入試のスケジュールなんて、関係ないからね。

稔が大学の助教授(=雅子の夫)で入試シーズンに忙しくなる立場だからこそのセリフでした。
 

伏線③ 武田教授の指摘

連続殺人事件の犯人を追う元刑事の樋田。犯罪心理学に精通した竹田信教授のもとを訪ね、犯人特定の糸口を探ります。
以下は武田教授のセリフ。
(犯人の)年齢の推定はほとんど無意味だと思う。(中略)敢えて限定を行うとすれば、二十代後半から五十歳までというところかね。(第7章より)

年齢を限定しすぎるな、と、しっかりクギを刺していたね。

しかし読者はこの時点で稔は大学生、と思い込んでいるわけで、指摘が頭に入るわけもなく。私もしっかり騙されました。
 

伏線④ 足りないビニール袋

黒いビニール袋が出てくる。全部で、三つ (第9章)
稔が遺体の一部を入れた袋を庭から掘り起こし、5つあった袋が3つに減っていることに気がつくシーン。
 
消えた2つのうち1つは雅子が掘り返したことがのちに判明しますが、もう1つは?
もう1つの袋は雅子の息子(深夜に庭に出ていた)が掘り返したと推測されますね。
ここはかなり決定的なシーンでした。気づかなかったけど。
 

蒲生雅子の母性と殺人〜読者の思考の偏見〜

この小説、トリックとは別に、さらなるひっかけが。
読者視点だと、息子のことを心配するあまり、偏執的な愛情をむける母親と、育児に非協力的な父親。という構図に見えますよね。
 
読者は「雅子の息子が犯人である」と誤認しているので、このいびつな家庭環境が息子を殺人に走らせたのでは?と、心のどこかで思ったはず。
 
彼女(※雅子)はほぼ毎日、息子のいない間に彼の部屋をくまなく調べて変化を探してきた(第一章)
子供部屋のゴミ箱を漁ってマスターベーションの頻度を確認するほどの偏執的な母性。母親の過剰なまでの愛情と息子への過介入、そして父性の不在によって、息子の精神が歪んでしまったのでは?
 
しかし、ラストで事件の原因と、雅子の母性は全くの無関係であったことが明らかに。
 
父性の不在や強すぎる母性は、こどもの成長に悪影響なのでは?そんな自分の中の偏見がえぐりだされるのも、本作のすごいところ。「ただの叙〇トリックで終わらせない」筆者の技術に感服です。
 

同じ作者の別作品も読みたくなってきた!

殺戮にいたる病 タイトルの元ネタは?

「〜にいたる病」
似たようなタイトルのエンタメ作品、他にもどこかで聞いたことがあるような。
例えば
ちなみに

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本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
 
 
この「死に至る病」の第一部はずばり「死に至る病とは絶望である」というタイトル。その中で「絶望とは自己の喪失でもある」とも述べられています。
 
自分が何のために罪を犯しているのか、その理由(自己)を喪失したまま、人を殺し続ける「蒲生稔」のイメージに、ピッタリハマったタイトルでした。
 

「殺戮にいたる病」がおもしろかったならこちらもおすすめ!

「驚きに満ちたミステリ」というテーマで長編と短編それぞれ1つずつ選びました。

①長編ならこれ!「硝子の塔の殺人」

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