人形館の殺人 あらすじ
父が遺した京都の「人形館」に移り住む、飛龍想一。しかし、その周りでは不可思議で不気味な現象が起きるように。
自身に向けられた正体不明の悪意、連続児童殺害事件、断片的な記憶……追い詰められた飛龍想一は、大学時代の友人、島田潔に助けを求めるが……
- 著者:綾辻行人 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:講談社 1997/7/25
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 綾辻行人さんと、「館シリーズ」について
十角館の殺人でデビューした綾辻行人さん。十角館の殺人から始まる「館シリーズ」の4作目が、この「人形館の殺人」です。
感想記事はこちら(ネタバレ注意)
人形館の殺人は、シリーズ4作目ではありますが、前後のシリーズとの関係性は薄いため、1作目である十角館の殺人を読んでさえいれば、人形館単体で読んでも問題なし。
館シリーズの他作品については、以下の紹介記事をご覧ください。
- 1作目 十角館の殺人
- 2作目 水車館の殺人
- 3作目 迷路館の殺人
ちなみに現在最後の10作目となる、双子館の殺人を執筆中とのこと。楽しみ!
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人形館の殺人 感想
館シリーズの中でもかなり異色の作品でした。シリーズの1冊というよりは、外伝として、ミステリーではなく幻想サスペンスとして読んだほうが楽しめるかも。
過去3作品は、館にメンバー集結→事件という、ある種ミステリーの王道が展開され、中村青司の手による、館の間取りもかなり特徴的。
一方で人形館の殺人は普通の日本家屋住宅に、別棟の集合住宅が舞台。主人公飛龍想一の周りに巻き起こる不穏な現象の描写が長く、なかなか進まない展開に、じりじりしてしまった。。。
以下、人形館の殺人の結末に触れる記載があります。ご注意ください。
人形館の殺人 登場人物相関図
主要な登場人物をまとめました。
- わたし(飛龍想一)
物語の主人公であり一人称担当。 - 飛龍高洋
わたし(飛龍想一)の父。芸術家であり、妻 美和子の死後は想一を親戚に預けて京都の人形館で一人暮らしをしていた。 - 池尾佐和子
わたし(飛龍想一)の育て親 - 島田潔
シリーズおなじみの探偵役。わたし(飛龍想一)とは大学時代の友人
主人公 飛龍想一の魅力が今ひとつ
人形館の殺人は、主人公飛龍想一の一人称で物語がすすみます。
この飛龍想一が、ずっと暗い。脳内に浮かぶ過去の記憶の断片が何度もフラッシュバックするのに、過去の記憶の正体をなかなか思い出してくれません。
読者的にはちょっとジリジリします笑
こんなのあり?な結末に唖然
館シリーズの異色作と言われるだけあって、こんなのあり?という結末に茫然。
しかも、中村青司も、島田潔も、なーんにも登場しないなんて。
途中で挿入される連続児童殺害事件に関しても、理由づけはあるものの、4人も亡くなる必然性がなく…読んでいてちょっと徒労感がありました。
さらに、今回の館は間取りが複雑で、1回では覚えきれず何度も本文と間取り図を往復したのですが、結局間取りはあんまり関係なかった、というのも残念。
記憶喪失かつ多重人格という設定は、どうしても「舞台装置としての都合の良さ」が目立ってしまうので。取り扱いが難しいものですね。
そう考えると、その設定でラストまで押し通して成立させたドグラ・マグラってすごい作品だったんだなあ。
マサシゲは架場久茂の兄なのか?
飛龍想一が小学生時代に死なせてしまった「マサシゲ」という名の子。彼は、架場久茂の兄だったのでしょうか。
作中では名言されていません。が、もし実際にマサシゲが架場久茂の兄であり、そのことが原因で飛龍想一を積極的に救おうと行動しなかったのであれば……
巻き込まれた希早子さんが、ちょっとかわいそうですね。
あのアゾート殺人がちらっと登場!
島田潔の名前の元ネタとなった、占星術殺人事件/島田荘司 が、作中で過去に起きた実在の事件として紹介されています。
やはり名前を取っている以上、登場させないわけにはいけない、ということでしょうか。
「何でも犯人は、六人の身体の、それぞれ星座の祝福を受けた各部を集めて、『アゾート』っていう理想的な一つの人体を造り上げようとしたらしいんだけれども、これが実は…...」
人形館の殺人 より引用
これが実は……なんだったのでしょう笑
気になる方は、ぜひ占星術殺人事件を読んでみてくださいね。
長くて読みづらい作品であることは否めません。しかし、ミステリー史に残るあの伝説的なトリックを、ネタバレせずに読めたときの感動はひとしお!
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