映画化で話題の吉田修一の小説。都内の2LDKマンションに暮らす男女4人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作
描写の足りなさにモヤっとする部分もありましたが、
個人的にはけっこう楽しめました。
先の展開が気になりスルスル読めますし、
映像化された話題作、というのもうなづけます
以下、できるだけ避けてはいますがかなりネタバレを含むので
未読の方はご注意ください!!
モヤっとした部分
・結論から述べてしまうと
ある凶悪犯罪が発生し、共同生活を送る5人の中に1人、その「犯人」がいて、
物語のラストで「犯人」以外の4人は、
実はその1人が「犯人」であることを知りつつ黙っている(らしい)。
ということが明かされます。
しかし、なぜ4人がそのことを知ったのか、「きっかけ」の描写
(=伏線・フラグ)
がほとんどなく、読者の想像任せになっています。
(kindleの検索機能で確認したので間違いないはず)
ミステリ小説ではないので、描写がなくてルール違反、とまでは思いませんが、
もう少し、フラグがあったほうが、読者としては楽しめたのかなと。
・犯人が犯行を始めるきっかけも不明瞭です。
1件目の犯行は「サトル」登場前なので、サトルがきっかけではなさそう。
ではなぜ犯人が「このタイミング」で犯行に及んだのか?
ここも読者の想像任せですが、もうちょっと説明がほしかった、、、
・「犯人」が犯罪を犯す動機ですが、「犯人」の過去の行動(●●への侵入)が、
罪を犯す精神性の重要ファクターとなっている、
という風に作者は書きたかったようなのですが、
よく考えると犯行内容と関連性がほぼ無いような気が、、、
以下青地、わりと重大なネタバレ
女性をボコボコ(半殺しレベルに)殴りつけるのと、
過去の行動(山小屋に侵入してわが物のようにふるまいたいという衝動)に、
そんなに共通性、ないのでは、、、??
モヤっとしつつ、ラストは結構好き
・自分たちの中に1人「犯人」がいることに気づきつつ、
表面上だけの心地いい共同生活を続ける為に全員が黙っている、という構図。
狂っているのは犯人だけと思いきや、残りのメンバー全員が犯人以上に
狂ってたぜ!という感じ、好きですw
2002年の作品ですが、「表面上だけの付き合い」というテーマには、
SNSが発達した現代でも(現代だからこそ?)失われない新鮮さ、
があるような気がします。
・一方で、犯人以外の4人について、新しい何かが始まりそうな、
表面だけの関係性が破たんしていきそうな、
そんな予感を感じさせつつ、物語は幕を閉じます。
物語の冒頭で「秩序だって流れる車の列」を描写し、
一方ラストで「追突事故」を描いているのが象徴的。
表面上だけで成り立ってきた5人の関係性が変化したとき「犯人」がこの中に
居続けられるのか、、、不安と緊張を感じさせるラスト、良かったです。
・それにしても、kindle超便利
重要なフラグかな?と思ったらマーカーひいておいて見返せるし
気になる文章にはコメント入れておけばブログ書くときに役立つし
例えば「犯人の名前」で検索し、犯人の行動に何か伏線があったか確認できるし
紙の本も好きですし、買うこともありますが、
感想ブログのまとめやすさだけでいえばkindleは超便利。
というのを今回改めて実感しました。
記憶力の衰えを感じて、登場人物の多いミステリを読むのがしんどい方!!
(私だ!!)
kindleおすすめです!!!
おしまい。