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迷路館の殺人 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

実際に起きた事件をもとに書かれた、ミステリー小説「迷路館の殺人」。小説の結末は?そして小説に隠された真実とは?

迷宮のような地下の館にいざなわれた、8人の客人。綾辻行人作「館シリーズ」の3作目。「迷路館の殺人」の感想と解説です。

館シリーズの中でも、屈指のいやらしい間取りだね!

迷路館の殺人
迷路館の殺人
 

あらすじ

まるで迷路のような地下邸宅「迷路館」に招かれた4人の作家を含む8人の客人。大作家宮垣葉太郎の遺志に基づき、ここで作家たちの推理小説の競作が行われることに。

しかし、そのさなかに本物の殺人事件が発生し、、、

 

シリーズ第1作「十角館の殺人」第2作「水車館の殺人」でおなじみの島田潔がまたもや探偵役として登場。奇妙奇天烈な迷路館の謎に挑みます!

 

  • 著者:綾辻行人
  • 発売:講談社 1988/8/30
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象外

 

著者 綾辻行人さんと、「館シリーズ」について

十角館の殺人でデビューした綾辻行人さん。十角館の殺人から始まる「館シリーズ」との3作目が、この「迷路館の殺人」です。

 

ギリシャ神話のミノタウロスの迷宮をモチーフにしたこの館。おおかたの読者の予想通り、客人が閉じ込められ、惨劇が繰り広げられます。

 

現在最後の10作目となる、双子館の殺人を執筆中とのこと。楽しみ!

歴史的な1作目 十角館の殺人の記事はこちら

 

現在発売中のシリーズ一覧はこちら(書影クリックでAmazonのページにとびます)

 

以下は、同じくミステリ作家の下村淳史さんの「館」(ご自宅)で、なぜかラスボスオーラを醸し出す、綾辻先生のお姿です(リンク先写真4枚目)。楽しそう!

 

 

下村淳史さんの代表作「同姓同名」

ミステリ作家仲間 下村淳史さんの代表作「同姓同名」はこちらの記事で解説。

 

迷路館の殺人 感想と 元ネタギリシャ神話の解説

「迷路館の殺人」の感想を書きました。モチーフとなったギリシャ神話の解説と一緒にどうぞ。

CAUTION!

以下、迷路館の殺人のネタバレに触れていますので、ご注意ください!

 

多重トリックに酔いしれる!

  • 犯人は誰なのか?
  • 真犯人は存在するのか?
  • 「迷路館の殺人」の作者は誰か?という三重のトリック。

三重の仕掛けが施された本作品。犯人までは予想がつきましたが、そこからの真犯人、は予想外で、楽しめました。

 

館シリーズならではの掟破りトリックが炸裂!

流石は館シリーズ。本格ミステリと見せかけた掟破りは本作でも健在。

 

ちなみに、館シリーズへのリスペクト作品でもある「硝子の塔の殺人/知念実希人」でも、この掟破りがあるんです。館シリーズがお好きな方は、この「硝子の塔の殺人」も絶対に楽しめるはず。ぜひお試しを。

 

館シリーズファンにおすすめ!「硝子の塔の殺人」

ミステリー界へのラブレターであり挑戦状。雪深い山奥での豪華絢爛な謎解きをご堪能あれ!

特に、十角館の殺人への「愛」が大変重たい作品となっております。館シリーズファンはぜひ挑戦を。

 

硝子の塔の殺人
 
 
↓感想記事はこちら↓

 

かわいそうな被害者の皆さま

今回の被害者たち、全員ほぼ落ち度なく殺されているので、本当にお気の毒さまです。

 

館の秘密と真相を知っている、という理由で秘書の井野さんも犠牲になってしまいました。「医師」の黒江辰夫さんも、館にずっと滞在している住み込みの医者だったら、危なかったかも。

 

これは女性名なのか?

迷路館の殺人では、「女性とも男性ともとれる名前」が、ストーリーの鍵になっています。が、

正直、女性で「この名前」というのはあまりイメージが沸かず、どちらかといえば男性を想起させがちな名前だなあと思ったので、わんこたん的にはちょっとモヤモヤ。

 

名前のイメージは人によっても時代の流行によっても変わるので難しいですね。極端なことを言えば「小野妹子」も、現代のイメージでは女性っぽく見えてしまうように。

 

わんこたん的には「瑞樹」「蓮」「春」といった名前には中性的なイメージがあります。みなさんはどうですか?

 

超奇抜建築「迷路館」

その名の通り、見取り図からしてあからさまな迷路構造。入口方面で火事起きたら絶対に逃げられないし、建築基準法で絶対に許可降りない感がすごいです。さすが中村青司。

 

しかも入口にある大広間から各部屋に向かうためには、必ず長い廊下を歩かなければならないデザイン。長い廊下に隔てられた、館の両側同士の部屋の行き来は困難を極めます

 

この館、カラクリの都合、一部の廊下には少し傾きがあるようです。宇多山さんが深夜に廊下を歩きながら悪夢に苛まれるシーンがありますが、この傾きが精神に微妙な悪影響を与えていたりして。

 

島田勉、鹿谷門実、内田直行について

勉という名の島田兄が登場。伏線もなくいきなり出てくるので、ちょっとズルくはありますが、最後のちょっとしたひっかけということで。

 

「島田潔」のアナグラムである「鹿谷門実」というペンネームは、これ以降の館シリーズではさも当然の事実として登場するので、館シリーズはやはりシリーズ順どおりに読むのがよさそう。

 

そして、、、それよりも作中作である「迷路館の殺人」の編集者の名前「内田直行」。こちらは綾辻先生の本名なんだそうです。遊んでるなあ。

 

失われたテクノロジー「親指シフト」「フロッピーディスク」について

出版から年月を経るとどうしても出版当時の最先端技術が古臭くなってしまいます。

「ワープロ」という言葉も通じるか、そろそろあやしい。

このような技術をトリックに使うリスクについては、著者の綾辻先生も文庫版の後書きで回顧されています。

 

そのうち迷路館の殺人もさらに改訂されて「ワープロ(※注釈)」「フロッピー(※注釈)」なんて記載されたら、ちょうど世代のわんこたんとしては、ちょっと切ない気持ちになりそう。

 

実は日本語向き!画期的すぎた「親指シフト」

「親指シフトキーボード」ですが、一般的なキーボード(JIS配列キーボード)よりも、日本語を楽にうてる、という特徴があります。

 

例えば

「かきくけこ」とうつのに、一般的なキーボードなら「k」「a」「k」「i」「k」「u」「k」「e」「k」「o」と10回タイピングしなければならないところ、「親指シフト」なら5回のタイピングで入力できるので、疲れにくいんだそう。

 

親指シフトキーボードについては、詳しくておもしろい解説記事がありましたので、紹介させていただきます。

「気持ちよく日本語が書ける」伝説の入力方式 親指シフトを激しくオススメされてきた | i:Engineer(アイエンジニア)|パーソルクロステクノロジー

 

 

迷路館の殺人 登場人物と部屋名のギリシャ神話的解説

迷路館入口から時計回りに。登場人物と割り当てられた部屋について解説しました。

参考にさせていただいた記事:

残念な英雄テセウスを超解説!恩を仇で返す天才? - アートをめぐるおもち

  • 大広間 Ariadne
    迷路館入口にある大広間。
    その名、アリアドネはミノス王の娘であり、若者テセウスに怪物ミノタウロスの迷宮の道しるべとなる糸玉を授けた人物です。
    大広間を出たところにはアリアドネのブロンズ像。その手のひらは空っぽのようですが、、、

  • 角松フミヱ Polykaste
    迷路館でお手伝いをする老女。やたら廊下の長い迷路館でのお勤めは、さぞかし大変だったことでしょう、、、
    ポリュカステは、ミノタウロスの迷宮を建築した名工ダイダロスの娘の名です。

  • 島田 潔 Kokalos
    館シリーズでは探偵役でおなじみの「島田」さん。
    コカロスは、ミノタウロスの父、ミノス王の元から逃れたダイダロスを保護した、人物です。伝説では、その後ダイダロスを追ってきたミノス王を謀略で殺してしまうんだとか。

  • 空室 Medeia
    第2の事件現場。メデイアは魔女であり、テセウス(ミノタウロスの迷宮を攻略した若者)を毒殺しようとした人物。ギリシャ神話では毒殺は失敗しますが、本作では、、、

  • 清村淳一 Theseus
    迷路館での競作に参加するミステリー作家のひとり。舟丘まどかの元夫。
    ギリシャ神話でのテセウスは怪物ミノタウロスを倒したヒーローですが、糸玉を授けてくれたアリアドネを捨てるという、クズな一面も。
    本作では、なぜか部屋のプレートが外れています。なんでだろーねー。

  • 林 宏也 Aigeus
    迷路館での競作に参加するミステリー作家のひとり。緻密で手堅い作品を書く一方で、パワーに欠けるというのが宇田山の評。
    アイゲウスはアテナイの王で、テセウスの父。テセウスのうっかりで、息子が死んだと勘違いし、海に身を投げたかわいそうな父親です。(その海の名は、彼の名を取ってエーゲ海とよばれます)

  • 須崎 昌輔 Talos
    迷路館での競作に参加するミステリー作家のひとり。中世ヨーロッパを舞台にした本格物を得意としますが、かなりの遅筆とのこと。
    タロスはダイダロスの甥であり、その才能をダイダロスに嫉妬されて殺されかけます。(その際、女神アテナがタロスをヤマウズラへと変身させたとか)

  • 舟丘まどか Ikaros
    迷路館での競作に参加するミステリー作家のひとり。清村淳一の元夫。
    父親ダイダロスとともにミノタウロスの迷宮に閉じ込められたイカロスは蝋の羽を作って脱出するも、太陽に近づきすぎて墜落する、というよく知られたエピソードでおなじみです。

    こうして見ると、作家陣が全員なんとなく不吉な謂れのある名前の部屋に置かれているような、、、

  • 娯楽室 Daidalos
    ビリヤードが置かれた部屋。迷路館の殺人がゲームだったら、この部屋で重要なアイテムを入手するシーンが入ることでしょう。
    ダイダロスはミノタウロスの迷宮を設計した名工。しかし、テセウスがミノタウロスを倒したため、テセウスを手引きしたとミノス王に疑われ、迷宮に閉じ込められてしまいます。

  • 応接室 Minotauros
    ミノタウロスの迷宮の主、ミノタウロスの名を冠した部屋であり、第一の事件現場。迷路館の一番奥という、いかにもな配置です。

    ポセイドンから贈られた白い雄牛をミノス王が返さなかったことでポセイドンが激怒。ポセイドンはミノス王の妻、パーシパエーに呪いをかけ、パーシパエーがこの雄牛に欲情するように仕向けます。

    結果、産まれたのが牛頭人身の怪物、ミノタウロスでした。
    困ったミノス王は、ダイダロスに命じて迷宮を作らせ、そこに息子ミノタウロスを閉じ込めたうえで、定期的に食料として生贄を迷宮に送るのでした。

  • 図書室 Eupalamos
    作中ではあまり出番のない図書室。本好きとしては、図書室のある家を建ててみたいものです。エウパラモスはダイダロスの父の名前。
    ギリシャ神話に詳しくなくても、図書室の本を使えば館の謎を解くことができる、という配慮だったりして。

  • 書斎 Minoss
    ミノタウロスの、迷宮を作らせた張本人、ミノス王の名がついた部屋。
    本来の綴りは「Minos」ですが、この館では、なぜかsの数がひとつ多いようです。

  • 井野 満男 Europe
    宮垣葉太郎の気の毒な秘書。エウロペはミノス王の母であり、「ヨーロッパ」の語源でもあります。

  • 鮫島  智生 Pasiphae
    なんだか影の薄い評論家さん。パーシパエーはミノス王の奥さんで、ポセイドンの呪いでミノタウロスを産み落とします。奥さんね、奥さん。なるほどね。

  • 宇田山 英幸 Poseidon
    宮垣 葉太郎の担当編集者。妻の桂子さんと一緒に、迷路館を訪れます。
    ポセイドンは言わずと知れた海神ですが、ミノス王に雄牛を送ったことで、結果ミノタウロスの出生につながります。

  • 宇田山 桂子 Dionysos
    妊婦さんなのにこんな館に閉じ込められ、医師だからと検死までさせられる気の毒な方。わんこたんが桂子さんなら、後で本件の埋め合わせに、夫の英幸氏にいろいろ要求したに違いない。おいしいご馳走とか。

    しかも、冒頭、桂子さんがうっかり宮垣先生のご遺体に近づいて不審に思おうものなら、下手すると命を狙われていたかもしれません。恐ろしや。

    終盤に「妊婦であること」の作劇上の必要性が明かされ、なるほどね、と納得しました。

    ディオニソスはギリシャ神話では酒の神。テセウスに捨てられたアリアドネをめとったと言われています。

まとめ

館シリーズの中でもコンパクトにまとまりつつ、驚きの仕掛けもつまってライトに楽しめる本作「迷路館の殺人」。重要情報(?)も登場しますので、シリーズ制覇を目指す方は、忘れずに読みたいですね。

 

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