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すべての館はここから始まる 暗黒館の殺人 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

綾辻行人 館シリーズ7作目は、過去最高のボリュームと怪奇幻想の闇をたたえた、その名も暗黒館の殺人

全4棟の暗黒の館に迷い込んだ江南の運命は……?感想を書きました。

 

暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
 

 

 

暗黒館の殺人 あらすじ

霧の峠を越え、湖上の小島に建つ漆黒の館に辿り着く江南孝明。

何かに導かれるように、敷地内の十角形の塔にたどり着く江南だが、突然の地震によって、塔から転落してしまう。

謎に包まれた浦登(うらど)家の人々、座敷牢、美しい異形の双子、藤沼一成の幻視の絵画、そして奇怪な宴……。闇が織り成す、謎と悪意に満ちた、大長編ミステリー!

 

 

講談社文庫版には、以下の著者あとがき、全巻連続解説、さらに特別寄稿を収録。めちゃくちゃ豪華です。

※Kindle版は著者あとがきのみの収録なので、ご注意を!

  • 文庫版あとがき/綾辻行人(第4巻に収録)
  • 全巻連続解説/佳多山大地
    暗黒館の殺人に紛れ込んだ「吸血鬼の名前遊び」についても
  • 館とは何か/恩田陸(第4巻に収録)
    館の物語と、英雄譚。その相似とは?
  • 暗黒の完成/奈須きのこ(第4巻に収録)
    わんこたんも大好きFateシリーズのゲームライター、きのこ氏がこんなところに!
  • この馨しき、闇の光/宝野アリカ(ALI PROJECT)(第4巻に収録)
    お互いにファンである「アリプロ」と綾辻先生。その「闇への愛」とは。
  • 暗黒より出ずる。/京極夏彦(第4巻に収録)
    暗黒館の殺人、講談社ノベルス版の装丁を京極先生が担当したそのエピソードについて

 

著者 綾辻行人さんの情報

十角館の殺人でデビューした綾辻行人氏。十角館の殺人から始まる「館シリーズ」の7作目が、この暗黒館の殺人。

 

歴史的な1作目「十角館」
十角館の殺人〈新装改訂版〉
 

 

暗黒館の殺人は、過去の館シリーズ読了が前提となっています。基本的にはシリーズ1作目から順番に読むのがおすすめ。(人形館は飛ばしても大丈夫)

シリーズの他作品については、以下の紹介記事をご覧ください。

1作目 十角館 2作目 水車館 3作目 迷路館
4作目 人形館 5作目 時計館  6作目 黒猫館
  7作目 暗黒館(当記事)   8作目(記事作成中)   9作目(記事作成中)

 

現在最後の10作目となる、双子館の殺人を執筆中とのこと。楽しみ!

発売中のシリーズ一覧をまとめました。(書影クリックでAmazonのページへ)

 

暗黒館の殺人 感想

全4巻にわたる大ボリューム。

各巻を読み終わるごとに、膨大な謎がうまれ、脳内がぱんぱんになって大騒ぎだったので、1巻ずつ詳細な感想と考察を書きました。

第1巻 感想 第2巻 感想 第3巻 感想 第4巻 感想

 

当記事では作品全体の総合的な感想を書いています。

CAUTION!

ここから先は、暗黒館の殺人 結末にふれる内容になっています。未読の方はご注意ください!

 

トリックを見破ってからが本番

管理人わんこたん、初めて暗黒館の殺人を読んだ際は、何重ものトリックに混乱し、終盤の怒涛の展開に圧倒され、何だかよくわからないまま読み終わってしまった記憶があります。

内容もすっかり忘れ、このたび10年ぶりに読み返しましたが、とにかくめちゃくちゃおもしろかった。

 

大ネタの年代トリックは、あからさまなヒントが随所にあるので、館シリーズのファンならば、すぐに作品の舞台が1991年ではなく1958年であり、中也=中村青司であることに気づいたのでは。

そして、中也=中村青司であるとわかったうえで、中也目線で読むと、暗黒館の殺人の見方ががらりとかわる、そういう設計になっているんですよね。

さらに年代のトリックを見破っても、今度は殺人事件の謎解きが待ち受けていて……

トリックを見破れないまま読んでも楽しいけれど、トリックを見破ってからが、暗黒館の殺人の本番。そういう作品なのだと感じます。

 

館シリーズの「エピソードゼロ」

中村青司がいかにして謎めいた建築をするようになったのか、その人格形成になにがあったのか、というのがよくわかる、暗黒館の殺人

黒猫館までの過去作での中村青司のイメージ(謎めいた/冷酷な/狂気の建築家)が、ガラリと塗り替わってしまいました。

中村青司の人生は、ずっと暗黒館と玄児とともにあったんですね。

 

暗黒館に登場するモチーフが、その後建築される、十角館、水車館、迷路館、時計館、黒猫館に登場しているのも見逃せません。

また、暗黒館の殺人の後、綾辻先生はびっくり館の殺人と奇面館の殺人を刊行。そして現在、館シリーズの掉尾を飾る双子館の殺人を執筆中とのこと。

これらの後続作品の布石となる「びっくり箱」「始祖ダリアの仮面」「双子の姉妹」といった要素が、暗黒館の殺人にきっちり登場しているのも、おもしろい。

 

まさに、暗黒館の殺人は、館シリーズのエピソードゼロでありマスターピース!

 

やっぱり、長い!そしてじれったい

物語は大部分が中也の視点から語られ、特に序盤は建築に関するコメントが随所にみられます。

暗黒館は擬洋風建築であり、そもそも擬洋風建築とは文明開化の時代に、大工たちが見様見真似で西洋建築を建てようとしたときの……といった解説から始まり、日本の近代建築の事例が随所に登場。

中也の正体を考えれば当然の視点ですが、ただでさえ長大なストーリーに、膨大な建築物の情報が入ってくるので、かなりしんどい。

 

また、解説役(?)となる玄児も、「これはいずれわかる」「いずれ君にも教える」などとはぐらかすものだから、中也と一緒に、読者のイライラもMAX。

暗黒館の殺人、読むのがしんどいのも事実。登山と一緒で乗り越えちゃえば、めちゃくちゃ楽しいんですけどね。

 

ちなみに登場する山形市 旧済生館本館や、福島県戸畑の旧松本邸などは現存しており、画像だけでも、圧倒されます。

中也の気持ちに近づけるかも?

参考▶

旧済生館本館 | 山形県

旧松本邸について | 北九州 小倉 旧松本邸 西日本工業倶楽部

 

中也の立ち位置に気づくかどうかで、読み味が変わる

繰り返しになりますが、第1巻を注意深く読んで、中也の正体に気づいた状態で読むと、暗黒館の殺人はかなり面白くなってきます。

一方で(管理人わんこたんの1回目がそうであったように)中也の正体をわからないまま読むと、なかなか事件は起きないし、よく知らない人たちの謎の因習やら謎めいた関係性やらを延々と読まされることになるので、かなりじれったく退屈に感じることは否めません。(なんせ、最初の殺人が起きるのは2巻に入ってから!)

 

長くて疲れていまいちだな……と感じた方も、ぜひ時間をおいて、暗黒館の殺人を再読してみると、新たな驚きと発見があるかもしれません。

 

暗黒館の殺人 全4巻合本版
暗黒館の殺人 全4巻合本版
 

 

暗黒館の殺人の次に読みたい おすすめ作品

キーワードは<暗黒>。心にまで侵入してきそうな、深い黒が印象的な作品をご紹介!

 

黒牢城 /米澤 穂信

 

暗黒の牢でうごめく、探偵に注目!

織田信長に反旗をかかげ、有岡城に立てこもった荒木村重。毛利の援軍を待つ荒木勢ですが、厳重な見張りの中で人質が変死をとげるなど、立て続けに変事が。

悩む村重は有岡城の地下に閉じ込めた「あの有名軍師」に助けを求めますが……

戦国時代×囚人探偵という異色のミステリー。史実を知っていても知らなくても楽しめる、第166回直木賞受賞作です。

 

黒牢城
黒牢城
 

 

感想記事はこちら▶︎戦国時代が舞台の傑作ミステリー!黒牢城 / 米澤穂信 感想 - わんこたんと栞の森

 

儚い羊たちの祝宴 /米澤 穂信

 

お嬢様の集いに隠された、暗黒の秘密

表紙の「黒」が印象的なこの作品も、米澤穂信先生を代表する一冊。

読書サークル<バベルの会>にまつわる物語からなる連作短編集です。どの短編にも、ゾクリとする毒が仕込まれており、要注意。暗黒の米澤ワールドに浸ってみませんか?

 

儚い羊たちの祝宴
儚い羊たちの祝宴
 

 

感想記事はこちら▶︎怖くて美しいラスト1行 儚い羊たちの祝宴 感想と考察 - わんこたんと栞の森

 

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