このミステリーがすごい!2021年 第19回 大賞に輝いた弁護士ミステリ
元彼の遺言状/新川 帆立
元彼の遺言状 原作小説のあらすじ
28歳ながら年収2000万近いエリート弁護士、剣持麗子。
ふとしたきっかけで、彼女は、亡くなった元カレ、栄治の遺言状の謎にかかわることに。
栄治の遺言状は、自分を殺した犯人に遺産を相続してほしい、という奇妙なもの。
栄治は製薬企業の社長の御曹司。この企業の株を大量に所有しています。彼の遺産を相続するということは、この製薬企業の株を相続し、会社の経営に影響を及ぼせるということ。
栄治の遺産をめぐり、製薬企業の重役たちは3つ巴の勢力にわかれて争うことに……
そんななか、殺人事件が発生し、麗子は謎が謎呼ぶ遺産相続スキャンダルに巻き込まれていきます。
- 遺言状の目的は?
- 殺人事件の犯人は?
剣持麗子はこの謎を解けるのか?
原作とドラマ版 最大の違いは 篠田
ドラマ版では綾瀬はるかさん演じる剣持麗子と大泉洋さん演じる篠田敬太郎がタッグを組んで事件を解決。
2話目までは原作の元彼の遺言状のストーリーをなぞりつつも3話目以降は、完全にオリジナル展開。原作と大きく異なる筋書きに。
篠田敬太郎って誰だ?
原作では「篠田」と名字のみ登場のこの人物。麗子と栄治(遺言状書いた元彼)の共通の友人です。
栄治がインフルエンザで亡くなったことを知った篠田は、自分が栄治にインフルエンザを感染させたことが栄治の死因であると主張。「自分が栄治を殺した犯人」となって遺産を相続できないか、弁護士である麗子に、相談する。というのが原作の流れ
篠田が遺産を相続できれば、自分も多額の報酬がゲットできる。それで麗子はこの事件に足を突っ込むことになりますが、結局篠田はストーリーのきっかけだけで登場し、途中からは登場せず。
ドラマ版のように麗子とタッグを組むこともなく、続編にも出番なしという点で、大きく異なります。
ドラマ版はつまらないなあと思った方、ぜひ原作を読んでみて
原作では、著者が弁護士出身ということで、法律周りの描写がしっかりフォローされれています。それでいて難しくなりすぎず楽しめて、キャラクターも魅力的。
すいすい読めて、管理人わんこたんはシリーズ続刊も買っちゃいました。
ドラマ版と原作小説版はストーリーが途中から大きく異なりますので、ドラマ版がいまいちだなあ、と思ってしまたっ方は、ぜひ原作小説で剣持麗子ワールドに引き込まれてほしい!
剣持麗子シリーズ 読む順番は?
2024年6月現在 元彼の遺言状をはじめとする剣持麗子シリーズは、以下3冊が刊行中。
刊行順に、以下の通り読み進めるのがおすすめです。
元彼の遺言状 原作小説のネタバレ感想
元彼の遺言状の感想を書きました。
とにかく話がスムーズでおもしろい
主人公の麗子は弁護士。
弁護士主人公のミステリは、警察でもない弁護士が捜査に深く関わったりと、ストーリーが不自然になることもありますが、この作品は、遺言状をフックに麗子の介入を違和感ないものにしていました。構成がうまい!
麗子は弁護士なので、証拠を集めてトリックを暴くことせず、あくまで依頼を達成するのが主目的。ですが、法律の観点から犯人の動機を解明、それが事件解決につながる流れがスムーズで、一気に物語に引き込まれました。
法律関係の監修もばっちり
鍵となるこの遺言状。
一見ふざけているように見えて、相続の欠格事由、遺留分、公序良俗の問題など、法律上の問題もしっかりフォローされているのもいいですね。
作者の新川帆立さんが弁護士出身なので、そこは安心してよめます。
キツイだけじゃない!お金大好き剣持麗子がかっこいい
主人公麗子は自他ともに認めるお金好き。
初っ端から彼氏の信夫のプロポーズを、婚約指環が安すぎるという理由でキレて断るほど、金銭的価値に執着します。
ボーナスの額に納得がゆかないと上司にくってかかり、その勢いで所属する弁護士事務所を休職。
栄治の遺言状問題に足を突っ込んだのも、うまくすれば遺産の一部を依頼料として手に入れられるとふんでのものです。
冒頭の婚約指輪のシーンは、さすがに信夫が気の毒で、管理人わんこたんも麗子を嫌いになりかけましたが……
しかし、ストーリーが進むにつれ(お金のために)仕事に責任を持ち、(お金のために)依頼人を守るためなら警察相手にも一歩も引かない、麗子の強さに惹かれるはず。
なぜ彼女がここまでお金に執着するのか?も、事件と並行して徐々に明らかになります。謎解きを通じて変化する麗子の心境にも注目。
麗子以外のキャラも個性豊か
さらに登場人物は(麗子含め)全員、かなり個性的。
全員腹の中に何を抱えているのか、読めず、物語は二転三転し、目が離せません。
冒頭でふられた信夫くんはどうなるのか?気になるあなたは続編、剣持麗子のワンナイト推理を要チェック!続編には新たなクセ強キャラが登場するのも見逃せません。
元彼の遺言状、原作続編について
元彼の遺言状の続きとなる、2作目剣持麗子のワンナイト推理、3作目倒産続きの彼女の感想をまとめました。
シリーズ第2弾 剣持麗子のワンナイト推理
剣持麗子がまたまた活躍!!
前作元彼の遺言状事件がきっかけで、とある弁護士の仕事を引き継ぐことになった麗子。そんな彼女のもとに舞い込む5つの事件。
相変わらずお金は好きだけど少し優しくなった?かもしれない麗子が、睡眠時間を削って一晩で事件を解決していく短編集です。
前作では会社法や民法が主戦場でしたが、ワンナイト推理は刑事事件がメイン。
ホストの黒丑(くろうし)や自称「捜査本部潰し」の橘刑事など、前作以上に癖強キャラに振り回される麗子。
ひとつひとつの話も楽しめつつ、それぞれの話がパズルのピースのようにはまっていくのも展開も見事です。
シリーズ第3弾 倒産続きの彼女
今作の主人公は麗子と同じ弁護士事務所の美馬玉子。祖母を世話しながら弁護士としても働く苦労人。
麗子と玉子、対照的な2人がバディを組んで「転職するたびに転職先を倒産させる」従業員の謎に迫ります。
殺人事件も発生し、二転三転する展開に目が離せない!謎の黒幕の存在もほのめかされ、次回作への期待も膨らみます。
ところで麗子の所属する山田川村・津々井弁護士事務所。川村弁護士と津々井弁護士は登場しますが、本作でもまだ、山田弁護士は登場していません。
これも次回作の伏線だったりするのでしょうか?
著者 新川帆立さんの新作も続々
刊行中の剣持麗子シリーズ3作品(2024年6月現在)を解説しましたが、どれも読者を飽きさせない展開ではずれなし!とても楽しめました。
著者の新川帆立さんはこのミステリーがすごい!大賞を受賞した元彼の遺言状(2021年1月発売)」がデビュー作でしたが、2022年11月現在ですでに6冊目刊行!ものすごい速筆です。
剣持麗子シリーズ以外もおもしろそうな作品がたくさん。読めたら、当ブログでも記事にしていく予定です。
また、こちらのkimkimさんのブログでも、元彼の遺言状についての感想を公開しています!
ぜひご覧くださいね。
元彼の遺言状の次に読みたいおすすめ作品
弁護士×謎解きな、元彼の遺言状。同じくお仕事×ミステリな作品をご紹介。
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