新本格ミステリーの集大成ともいうべき、豪華絢爛な謎解きの世界!
「硝子の塔の殺人」について、語りつくします。
面白すぎて一気読みしたよね。
硝子の塔の殺人 あらすじ
生命科学の分野で多大な功績をおさめた神津島は、重度のミステリーフリークにしてコレクターであった。
巨額の私費を投じ、神津島が建てた「硝子館」。そこで行われる「ミステリの歴史に刻まれる重大発表」に招待された客人たち。しかし神津島が殺され、惨劇の幕が上がる。
謎に挑むのは「名探偵」と「犯人」!? 雪山に閉ざされた硝子の塔で繰り広げられる、豪華絢爛な謎解きの世界へようこそ!
- 著者:知念 実希人
- 発売:2021/7/30 実業之日本社
- Kindle Unlimited:対象外
- 「聴く読書」Audible:聴き放題対象
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硝子の塔の殺人 文庫化はいつ?
2024年2月現在、硝子の塔の殺人の文庫化予定は公表されていません。
同じ出版社の人気作品「クスノキの番人/東野圭吾」が2020年発売→2023年文庫化となっていますので、2024年中には文庫化される可能性は高そうですが、果たして。
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2024年2月現在、硝子の塔の殺人は
月額1500円ですが、初回登録時は通常
こちらから試聴もできるので、ぜひ試してみてくださいね。(リンク先で▶サンプルボタンを押下)
話題のミステリ「方舟」や「村上春樹作品」、本屋大賞受賞作など、人気作の多くがAudible聴き放題対象となっているので、三体を聴き終わった後もいろんな作品を聴いて楽しめます。
著者 知念 実希人さんについて
2011年に「誰がための刃 レゾンデートル」でデビュー。
現役内科医師であり、「天久鷹央」シリーズを筆頭に、医療知識を生かしたミステリーを得意とする作家さんです。
医師という超多忙な職との兼業でありながら、作品数がものすごい!
また、2023年には本格ミステリーでありながら児童書という「放課後ミステリクラブ」シリーズがスタート。児童書なのに2024年本屋大賞ノミネートという快挙を成し遂げています。
わんこたんが読みたい(けどまだ読めてない涙)知念先生の代表作を以下に並べました(書影クリックでAmazonのページにとびます)
硝子の塔の殺人 感想
いやーすごかった。
知念先生の「本格ミステリ愛」がつまった、傑作でした。特にミステリ界の大御所、綾辻行人先生への愛がだだもれすぎです。
以下、「硝子の塔の殺人」のネタバレに触れる部分があります。ご注意ください。
本格ミステリに詳しくなくても楽しめる
「本格ミステリ愛」「綾辻行人先生への愛」なんて書くと、
- 本格ミステリってそもそも何?
- 本格ミステリに詳しい人だけが楽しめるオタク向け作品?
- ミステリ作家同士の内輪ノリ?
なんて思われてしまいそうですが、そんなことはありません。
「面白くて読みやすい」のに「ミステリーマニアも大満足」この二つを奇跡のバランスで実現しているのが、この「硝子の塔の殺人なんです。
もちろん、他のミステリー作品を知っていれば、より「硝子の塔の殺人」を楽しめるのも事実。
この記事の最後に、「硝子の塔の殺人で言及されているミステリー作品」をまとめています。
そもそも本格ミステリってなんだろう
本格ミステリ小説。これと定まった定義はないですが、一般的には「犯罪の謎解き」を主目的とした小説のことを指します。
「謎解き」にも種類がありまして、謎の種類によって以下のどれかに大別されます。
-
フーダニット:「Who(誰が)」を解くミステリー。犯人の場合もあり、被害者の場合もあり
-
ハウダニット:「How(どうやって)」を解くミステリー。不可能犯罪、密室ミステリなどのトリックを暴くタイプ
-
ホワイダニット:「Why(なぜ)」を解くミステリー。犯行動機を解くパターンなど
-
ホワットダニット:上記3つとはひとつ上の次元で、「What=そもそも何が謎か?」を読者に考えさせるパターン
と、堅苦しく書きましたが、以下の「お決まりのシチュエーション」を聞けば、ああ、あれねと思う方も多いのでは。
- 「閉じ込められる」
絶海の孤島、吹雪の山荘、一本しかない吊り橋の切断、ノンストップの列車の中、など - (時に1が原因となって)警察による捜査、特にDNA鑑定等の科学捜査が行われない。ただし、登場人物にそれなりの医学知識をもつものがいて、簡単な検死、死後硬直の具合などが手掛かりとして提示されるケースあり
- 外界と接触できない。携帯つながらない。音信不通。
ようは、(初期の)名探偵コナン、金田一少年の世界を思い浮かべればOK。
こどもの頃にコナンやら金田一やらに触れていた我々世代はみな、本格ミステリを読むための準備ばっちり、というわけ。
ちなみに、本作「硝子の塔の殺人」。1~3全部入っています。まさにコテコテの本格ミステリスタイルを踏襲しているというわけですが、その真相は、、、
やった!ここは解けた!と思いきや、、、
物語の途中、いくつかわんこたんにもわかる伏線、トリックを発見。
「知念先生、伏線あからさまにしすぎ。簡単すぎるよ~」
とか調子に乗っておりましたが、、、実はこれが罠。見事にやられました。
この「簡単すぎる伏線」について、登場人物のひとりから「失望」「陳腐」などとめちゃくちゃ罵倒されちゃって、己の推理力の低さを恥じ入るばかりです。しくしく。
圧倒的リーダビリティに偽りなし。
Amazonで「硝子の塔の殺人」商品ページを見ると、あらすじ部分に「圧倒的リーダビリティ」と書かれていました。
リーダビリティ=読みやすさ
例えばミステリ小説を読むと、わんこたんは以下の2点に、よく悩まされます。
- 登場人物名が覚えきれない
- 建物の間取り、位置関係を覚えきれない
読みながらわからなくなって、冒頭の人物一覧や間取り図に戻るの、結構なストレスですよね。
しかし、本作品は登場人物の名前も工夫がしてあって覚えやすいし、建物の構造もシンプル。状況や位置関係の描写もわかりやすく、かなりすいすい読めます。
(例えば、料理人の酒泉さんとか、執事の老田さんとか、めちゃめちゃ覚えやすいですよね)
医学にまつわるミステリー、は少し控えめ
著者(知念実希人先生)が現役医師なので、多少の医学的知識ももりこみつつ(主人公も医師だし)、医学うんちくばっかりにならない、あくまでミステリ作品として構成されているバランス感もよかったです。
硝子の塔の殺人 登場人物
硝子の塔の殺人の登場人物をネタバレになりすぎない範囲でまとめました。
一条遊馬
硝子館の主、神津島氏の専属医師。
「硝子の塔の殺人」の主人公にして「犯人」となる人物です。犯人なので冒頭でいきなり捕まっています。果たして彼の運命は?
碧月夜
神津島氏に招かれた女性名探偵。高身長、英国風のチェック柄スリーピーススーツに身を包み、男装の麗人、といういで立ち。
身だしなみからも名探偵を意識しているようです。
国内外の推理小説にも深い造詣があり、ミステリ作家の九流間氏に熱っぽく語り掛けるシーンも。高い知能で事件を解決に導きながら、ミステリーマニアとしての並々ならぬこだわりを見せつけてきます。
九流間行進
神津島氏に招かれた、ミステリー作家の大御所。小柄な和装の老人。
名前の由来は、特にお気に入りの作品「ディクスン・カー」の作品に登場するマーチ大佐から。
その人生経験の長さゆえ?館の中で巻き起こる異常事態においても、冷静さを保つシーンが見受けられます。
「硝子の塔の殺人」に登場する有名ミステリ作品たち
「硝子の塔の殺人」作中で引用されたミステリ作品をまとめました。読めば「硝子の塔の殺人」をより深く楽しめるかも。
わんこたんも読んだことのない作品が多いので、これから読んでいくのが楽しみです。
「館シリーズ/綾辻行人」
「硝子の塔の殺人」を語る上でかかせないのが、この「館シリーズ」。なにせゲストルームにシリーズ全巻が並べてあるくらい。
特に1作目「十角館の殺人」と3作目「迷路館の殺人」は、館のあるじ、神津島先生に多大な影響を与えたようで、、、この2作品は、ぜひ「硝子の塔の殺人」とセットで読むのがお勧めです。
「占星術殺人事件」など/島田荘司
「十角館の殺人」がうまれる新本格ムーブメントの土壌を作った、と紹介される、島田荘司さん。
「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」「暗闇坂の人食いの木」などの有名タイトルが月夜の口からも語られます。
わんこたんは「占星術殺人事件」だけは読了済み。冒頭、いきなり占星術に関する長文説明があり、脱落しそうになりましたが、最後の「超有名トリック」にたどり着けたときの感動はひとしおでした。
トランプが登場するミステリー作品
硝子の塔の殺人で、九流間先生が名を挙げる「トランプに関係するミステリー作品」。
わんこたんは全て未読ですが、このテーマでまとめ記事を書くのも面白そう、、、!
- 鮎川哲也『りら荘事件』
角川文庫ではタイトルが「リラ荘殺人事件」になっていますが、中身は同じ。下記画像の右下、光文社文庫はKindle Unlimitedで読めますので、お得にチャレンジしたい方はぜひ。(※2024年3月現在) - 法月綸太郎『キングを探せ』
- 泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』
- 竹本健治『トランプ殺人事件』
書影クリックでAmazonの販売ページにジャンプします。
踊る人形(シャーロック・ホームズシリーズ)/コナンドイル
硝子の塔の殺人で小道具として登場する、踊る人形の暗号文字。コナンドイルの書いた本家「踊る人形」は、青空文庫で無料で読めます。
そして誰もいなくなった など/アガサクリスティ