方舟を読んだ感想を、できる限りネタバレなしで詳しく書きました。「週刊文春ミステリーベスト10」2022国内部門1位、「MRC大賞2022」1位、他いろんなランキングに登場しまくった、傑作です!
あらすじ
とある山中の地下。謎の建造物「方舟」に僕ら10人はやってきた。探検がてら一晩を過ごそうとするが、予期せぬ地震で、方舟の中に閉じ込められてしまう。
徐々に浸水していく方舟。脱出するには誰かひとりの犠牲が必要。そんな極限の状況で発生する不可解な殺人。犠牲になるべきは殺人犯か。
倫理と恐怖に追い詰められる、極限状況ミステリー!
- 著者:夕木春央
- 発売:講談社 2022/9/8
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):聴き放題対象
→「方舟」5分間のサンプル試聴はこちら
(リンク先で「▶Audibleサンプル」を押すと、音声が流れます)
Amazonの提供する朗読サービスAudible。地下に閉じ込められたメンバーの恐怖と焦りが伝わって、怖さ倍増です。
ただし、地下建築の見取り図が見られない点と、任意の場所を再読しづらいのは欠点。
そこで、初読は目で読む文字書籍、再読は耳からAudible、をオススメ!耳からの再読で、細かい伏線が浮かび上がります!
読み終わった方だけが楽しめる、講談社の特設サイトも!パスワードを入力して、ご覧ください。(句読点は無視して、大文字は使わず、半角英字小文字だけで入力しましょう)
>特設サイトはこちら:『方舟』読者専用ネタバレ解説
「方舟」著者 夕木春央さんについて
2019年「絞首商会の後継人(出版時には「絞首商會」に改題)」で第60回メフィスト賞を受賞し、デビュー。
「方舟」「十戒」などのヒット作で、今大注目のミステリー作家さんです。
以下に著作を並べました。※書影クリックでAmazonのページにジャンプします。
全部読んで夕木春央マニアを自称したい
「方舟」感想
この先、物語の核心には触れませんが、内容に触れる記載があります。ご注意ください
「方舟」は、クローズドサークルミステリー。誰が殺人を犯したか、その理由はなぜか、というのがメインの謎です。
そこに、地震という誰も(犯人も)予期していなかった自然現象が発生。誰か一人が地下に残って犠牲にならないと、ほかの人が助からない、という、別次元の要素が加わり、物語を面白くしています。
この作品、犯行動機が本当に不可解。閉じ込められて脱出しないといけない。最後に残る犠牲者に選ばれたくない、という状況で、なぜ殺人を犯すのか。納得いく回答は得られるのか。
、、、大丈夫、納得度100%の回答を提示してくれる、大満足の1冊でした。根底から足場が崩され、奈落の底に突き落とされる、快感。未読の方はこのあたりで本記事を読むのをやめて、ぜひ「方舟ワールド」を楽しんでいただけたらと思います。
「方舟」の探偵役と犯人役について、雑感
- 探偵役
本作の探偵役。警察の捜査が及ばない中で、冷静に考察し犯人に迫る姿はさすが。犯人追求の論理も、納得感がありました。
本当に、有能なんです。みんなにとっても、犯人にとっても……
犯人の動機なんて考えても仕方がない、というのが探偵の意見でしたが、ここで犯人の動機を重要視していたら、事件はまた違った結末を迎えたかもしれません。
- 犯人役
とにかく判断が超早い!
地震が起きてすぐにモニターを確認し、浸水に気づき、あの細工をしたうえで犯行を決断。躊躇なし。
そのあまりにも冷徹で論理的な思考にしびれます。
クライマックスの会話シーン、ただ1人全てを理解し、ゲームマスターとして君臨する様子は、まさに、旧約聖書で大洪水を引き起こし、ノア一家だけを助けた、神のごとしでした。
切られた◯のミステリー
犯人に繋がる証拠などを隠滅するために遺体の一部を切断するのは、昔からミステリーで使われる常套手段。
あの有名な孤島ミステリーでは手首を、あの有名な星占いミステリーでは、遺体をパーツに、あの18世紀イギリスを舞台にした解剖学ミステリーでは四肢を切断していました。(リンク先で作品名がわかりますのでご注意を)
本作でも同じ手法が使われますが、その理由がとっても「令和」。切断の理由に気づいた人も多かったのではないでしょうか。わんこたんは気付けなかったけど!
「方舟」表紙と裏表紙に重要情報が……!?
Kindle Paper Whiteで読むと、画面表示が白黒なので、わからなかったのですが、表紙のイラストもおもしろい!
岩の隙間に見え隠れするのは3層構造の方舟でしょうか。最下層は浸水して真っ暗、2層目の赤い部屋は、惨劇を予感させます。
「方舟」の文字が下から水に浸かったようにちょうど3層目と2層目の境あたりで揺らいでいるのもいいですね。
裏表紙には侵食してくる青いものが描かれています。浸水する水のイメージでしょうか。
とにかく強烈な読後感
クライマックス、全ての謎に明確な解答が提示され、本当に本当にスッキリする。だからこそ、ずううんと胃もたれみたいにのしかかってくる結末がたまらない。
スッキリなのにずううん。このギャップ感にしびれました。
ウェスってなんだ?
途中で登場するアイテム「ウェス」。犯人特定につながる重要なアイテムですが、わんこたん、ウェスを知りませんでした。
もちろん作中でウェスの説明はありますが……キッチンペーパーのようなものを想像していましたが、もっと厚手でしっかりした材質のよう。なるほどキッチンペーパーで◯◯するのは大変そうですが、もっと厚手なら◯◯するのに使えそうですね。
拭き掃除などに使う、厚手の紙や布。雑巾とは違い、使い捨て前提です。
語源は英語の「waste(廃棄物、捨てるもの)」から来ています。掃除の時に古布やフルシャツを切って雑巾がわりにすること、ありませんか?あれもウェスの一種、といえるらしい
ウェスは商品として販売されています。毛羽立ちにくいなど特殊加工されたウェスもあるんですって。
ちなみにXでウェスの知名度をアンケート調査してみたところ、3人に2人はウェスをご存じでした。管理人のわんこたん少数派。しょぼん。
「方舟」感想まとめ
この強烈な読後感は読んだ人にしか伝わらない……!
「方舟」、論理がきっちりしていて、読みやすい点も含め、めちゃくちゃおもしろかったです。
「方舟」の次に読みたいおすすめ作品
「方舟」のような、とまらなくなる作品を集めました。わんこたんの一押しは爆弾魔との心理戦を描いた「爆弾/呉勝浩」!そのほかの作品は、ぜひ記事をご覧ください。
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