
2人以上殺したら地獄行きの世界で、3人以上の連続殺人は成立しうるのか?
特殊設定×館の本格ミステリーで注目をあびた 楽園とは探偵の不在なり の感想を書きました。
楽園とは探偵の不在なり あらすじ
2人以上殺した者は"天使"によって即、地獄に引き摺り込まれるようになった世界。
探偵 青岸は大富豪 常木に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった……
- 著者:斜線堂 有紀 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:早川書房 2022/11/16
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 斜線堂 有紀 氏について
2016年に キネマ探偵カレイドミステリーで、第23回電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞しデビュー。ミステリー・SF中心に多数の作品を刊行されています。
ペンネームは 斜め屋敷の犯罪/島田荘司 からとられたのだとか。
紹介記事はこちら▶豪快なトリックが超楽しい 斜め屋敷の犯罪 感想 - わんこたんと栞の森
以下に著者の一部をご紹介。書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。
楽園とは探偵の不在なり 感想
率直に書きます。
2人以上殺すと地獄行き、という設定にはすごくわくわくしました。
だってこんな情報を与えられたら、頭の中でめちゃくちゃ想像が膨らみません?
- 地獄行き覚悟なら2人まで殺害可能かな?
- 1人1殺で複数犯だったら、成立するかな?
- あくまで事故として死んだら、「地獄行き」のカウント外かな?
などなど……
物騒ですが、ルールの裏をかくような、戦略的パズルミステリーが展開されるのかと思うわけです。
「特殊設定」以外の要素が多い!
しかし、予想に反し、事件はなかなか起こりません。
天使出現の経緯、いろんな「地獄行き」事例、主人公の回想に駆け足で登場し退場する、かつての仲間たちの記憶。
もちろん、中には推理に必要な情報もあります。ですがパズルのような謎解きを楽しむ前から情報量が多く、肝心の推理を楽しめなかった、というのが正直なところ。
特殊設定ミステリーって「特殊」なだけあって、読者はまず設定を理解し、世界観に没入しないといけない、というハードルがあるんですよね。なのに、なかなかそのハードルを越えられない、もどかしさがありました。
主人公の過去は重いのに、キャラは軽い
主人公 青木焦の過去がなかなか重いのですよね。
何度も挿入される、主人公の過去回想に、感傷的な内省。
ふつうのミステリーだったら、主人公への感情移入の助けになるであろう場面が、特殊設定ミステリでは、世界観への没入の妨げになってしまうのが残念でした。
そして主人公の過去は重いのに、バディとなる女性ジャーナリスト 伏見弐子 キャラクターが、やたら青臭くてやたらキャピキャピしているのも、アンバランスで苦手。
トリックや動機に違和感も
以下、楽園とは探偵の不在なり の解答に触れる箇所があります。未読の方はご注意ください。
- 代議士 政崎來久による、常木王凱の殺害について
常木が政崎への援助を打ち切るから、殺害するというのがよくわからない。
殺してしまったら、それこそ援助してもらえる可能性はゼロになってしまう。常木の弱みを握って恐喝する。ではなく殺害するというのがよくわかりませんでした。
常気が死んだところで、政崎に常木の資産が入ってくるようでもなさそうですし……
- 天使の習性を利用したトリック
砂糖を撒くと天使が寄ってくる。という習性が、いかにも「トリックのためだけにつけられた天使の特徴」という感じがしてしまいました。
その習性になんらかの理由やエピソードがあったら、もっとトリックに納得感があったかも。天使の造形・見た目は好きだったので残念。
- 自分で自分を刺殺
喉を刺すの、かなり難易度高そう。
でも、続編は読んでみたい!
うーん、ここまで辛口の感想になってしまいました……が!
2人死んだら地獄行き、という設定はシンプルだけど応用性がありそうで面白いし、本作でキャラクターへの理解も深まったので、続編があったら読みたいなあと。
実は続編、現在連載中なのです。
ミステリマガジン2025年1月号に、続編となるその名も 「楽園こそ探偵の遍在」の第5話 「荒野(前篇)」を掲載。
これが実際に刊行されるかは全くの未知数ですが、ひっそり楽しみにしております。
楽園とは探偵の不在なりの次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。ザ・特殊設定ミステリー!
アリス殺し 〈メルヘン殺し〉シリーズ /小林 泰三
不思議の国でハンプティ・ダンプティが塀から落ちて死ぬ夢を見た後、亜理が大学に行くと、玉子というあだ名の人物が転落死。
夢の世界の死は現実の死?亜理は同じ夢を見ているとわかった同学年の井森と、真犯人を捜しもとめるが……
悪夢と現実が交錯する、ワンダーランドをぜひ。
感想記事はこちら▶︎妄想解説&考察 アリス殺し/小林泰三 - わんこたんと栞の森
クローズドサスペンスヘブン /五条紀夫
俺は、死んだ――。はずが、気がついたら天国のリゾートビーチに??
どうやら、現世で惨殺された6人が記憶をなくした状態で天国に返り咲いたらしいのだが……
謎を解いても、どうせ死んじゃってる系ミステリー。管理人わんこたんも気になっております。未読なので、読め次第感想を書きます!
おすすめ作品、他にもいろいろ!
当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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