
不気味な噂の立つ館に住む、老人と少年。2人との出会いと、友情がもたらす結末は……
館シリーズにして、児童文学レーベルからの刊行となった異色づくしの8作目、びっくり館の殺人 の感想を書きました。
びっくり館の殺人 あらすじ
あやしい噂が囁かれるお屋敷町の洋館、その名もびっくり館。
館に住む病気がちな少年トシオと友だちになった三知也たち。しかし少年の祖父が演じる腹話術劇は、あまりに異様で……
そしてクリスマスの夜に巻き起こる密室の惨劇!悪夢の果てに待ち受ける戦慄の真相とは。
- 著者:綾辻行人 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:講談社 2010/08/12
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 綾辻行人さんの情報
十角館の殺人でデビューした綾辻行人氏。十角館の殺人から始まる「館シリーズ」の8作目が、この、びっくり館の殺人です。
館シリーズ、基本的にはシリーズ1作目から順に読むのがおすすめですが、このびっくり館の殺人は、児童向けレーベルから刊行されたという異色の経歴もあって、単体で読んでも楽しめるようになっています。
シリーズの他作品については、以下の紹介記事をご覧ください。
| 1作目 十角館 | 2作目 水車館 | 3作目 迷路館 |
| 4作目 人形館 | 5作目 時計館 | 6作目 黒猫館 |
| 7作目 暗黒館 | 8作目(記事作成中) | 9作目(記事作成中) |
現在最後の10作目となる、双子館の殺人を執筆中とのこと。楽しみ!
発売中のシリーズ一覧をまとめました。(書影クリックでAmazonのページへ)
びっくり館を生んだレーベル ミステリーランドについて
「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」というコンセプトから講談社で生まれた、このレーベル。
小学校4〜6年生が対象、かつ、大人の読者の鑑賞にも堪えうる推理小説を、というわけで、綾辻先生はじめ、ミステリ小説界を代表する執筆陣が名を連ねています。ルビ入りで、小学生にも読みやすく。
あの館シリーズの正式ナンバリング作品をこの児童向けレーベルで出してしまおう、という、綾辻先生の遊び心を感じますね。
以下のように穴の空いたカバーがセットで、表紙の一部が見えるようになっているんです。しかも背表紙部分は布張り。なんとも気合いの入った装丁です。
レーベルはなくなってしまいましたが、ミステリーランドから生まれた作品の多くは文庫化されて刊行中。以下にいくつか並べてみました。
島田荘司先生に、有栖川有栖先生に……とにかく作家陣が豪華すぎる!気になる方はぜひチャレンジを。
びっくり館の殺人 感想
あの、これほんとに児童向けですか?と、確認したくなるくらい、怖いです笑
館シリーズって、ミステリーの中に怪奇幻想が織り交ぜられているところが特徴であり魅力でもあると思うのですが、びっくり館の殺人に至っては、ミステリー1:怪奇幻想9 くらいの割合のような。ほぼホラーじゃん。
さすが綾辻先生、子供向けだからって、手加減ゼロです笑
館シリーズの、もう一つの入り口、という位置付けの作品
多くの読者は、館シリーズを 1作目 十角館の殺人 から読み始めることになりますが、子どもたちにとっては、このびっくり館が初めて読む館シリーズになる。かもしれないのですよね。
てことは、びっくり館の殺人 は館シリーズのもう一つの玄関。と言えるのかもしれません。短くて読みやすいのもいいところ。
ミステリーランド版の後書きで、綾辻先生はこんなことを書いています。
読みおえて、もしもあなたが少しでも、「こういう本っておもしろいな。」と思ってくれたならーー。
綾辻という作家の名前といっしょに、作中に出てくる「中村青司」という建築家の名前も、心のどこかにとどめておいてください。
こうして「館の種」を、こっそり子供達の心に撒き、ある日他の館シリーズの本に出会えたら、その種が芽吹くように仕込むというw
これ、主人公の永沢 三知也が、2005年の6月5日に偶然手に取った 迷路館の殺人 で、子供の頃の記憶を呼び覚ますのと同じ構図ではないですか。
策士 綾辻行人先生の含み笑いが目に浮かぶようです。
ホラー要素 かなり強め
冒頭にも書きましたが、このびっくり感の殺人、ミステリーでありながら9割はホラー要素で構成されています。
怖い!怖いよ!小学生びっくりしちゃうよ!
他の方のブログを読むまで気づかなかったのですが、永沢 三知也の同級生で、一緒にびっくり館を訪れた 湖山あおいの誕生日が1月17日であることに対し、びっくり館の少年、古屋敷俊夫がこんなセリフを言っています
「じゃあ、そのときに何か別のものをあげるよ。」
で、実際にその誕生日を迎えた1995年1月17日に、神戸で起きた出来事といえば……
参考▶︎【ちょこっと感想】びっくり館の殺人 - ふっくらほっぺブログNEXT
ミステリーランド版は挿絵がすんごい素敵!
現在刊行中の講談社文庫版には、残念ながら収録されていないのですが、ミステリーランド版には精緻な絵柄のカラーイラストと、鉛筆タッチのモノクロ挿絵が入っています。
まず表紙にリリカ、表紙をめくったところに古屋敷俊夫(左右で目の色が違う……)と青い蝶が描かれ……
挿絵ではナイフで刺された死体に、死んだセルフィムとケルビムなんかも描かれているので、かなりぞくっとします。
さらにカバーが付属しているのですが、このカバーには丸い穴が空いており、カバーをつけると穴から表紙のリリカがこんにちわしてきます笑
ミステリーとしては、あっさりだけど
びっくり館の殺人は、児童書であることを意識してか、ミステリーとしてはあっさりめ。
ですが、根底にある「命題」=「故あって罪人となったものを、庇うべきか、裁くべきか」は大変重たいものとなっています。
罪を犯した友人を庇うか、否か。奇しくもその迷いは、かつて永沢 三知也の父親が、他人を巻き込んで自殺した長男 十志雄に対して迫られた逡巡と重なるようで。
いやあ、この選択を、小学生(+大学生)に担わせるのはきついて……
主人公 永沢 三知也は、結局自分の父親とは違う決断をするわけですが、果たしてそれは正しかったか。
罪深い決断によって生まれた邪悪な何か。三知也も、あおいも、それに取り込まれていくことを予感するラストでした
これ、本当に子供向け??
親子同士の禁断の関係とか、もはや虐待とも取れる古屋敷老人の異常な様子とか、館シリーズではお馴染みの要素もしっかり盛り込まれています。
児童書なので、流石にそこは手加減しても良かったのでは?と思いますがw
でもちゃんと、登場人物のセリフで「児童相談所」というワードが出てくるんですよね。「これ、虐待だからね?児童相談所で対応するべきだからね?」と、他の館シリーズでは考えられないような、丁寧なフォローが入っているあたりは、流石に少年少女向けだなあと。
中村青司とびっくり館とマリオネットと
びっくり館は作中の情報によれば1964年建築。建築家 中村青司がまだ20代の頃の作品となります。
まだ暗黒館での美鳥、美魚、の記憶も新しかった頃と思われますが、古屋敷氏の館で、美音に出会った青司は、どのような気持ちだったのでしょうか。
(びっくり館のモチーフとなった「暗黒館のびっくり箱」は、暗黒館の殺人 第2巻に登場します!)
それと、主人公 三知也が書籍 迷路館の殺人に出会った古書店の店主の黒衣の老人ですが、どうしても暗黒館の鬼丸老をイメージしちゃう。いや当然、暗黒館のあの老人とは別人のはず、なんですが……
ところで、ミステリーランド版の後書きには
旧友の我孫子武丸くんにも、ちょっとだけ感謝を。大事なマリオくんを触らせてくれてありがとうね。
という綾辻先生のメッセージが。
我孫子先生の鞠夫シリーズのモデルとなった人形なのでしょうか。意外なところで館シリーズと鞠夫シリーズがコラボしていたようです。
さて、次なる館シリーズは、奇面館の殺人!もう少しでシリーズ制覇です。じっくり読んでいこうと思います。
びっくり館の殺人の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。親子で楽しめる、不思議あり謎解きありの作品たち! びっくり館みたいに怖くないので、ご安心を。
予測不能ショートストーリーズ 文化祭編 /にかいどう青
未良来(みらくる)中学校の文化祭 ミラクル祭を舞台にした、ちょっぴりふしぎな青春群像劇。12の短編は、それぞれ独立しつつ、つながったり、分岐したり、、、?
ティーンズ向けと侮るなかれ、SF的仕掛けが随所にあって、大人でもしっかり楽しめます。わんこたん家も、小2の娘と親子で楽しんじゃいました。
放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 /知念実希人
あの知念実希人先生が書く、児童書ミステリー!?
夜の学校のプールに放たれた金魚の謎を、4年1組の「ミステリトリオ」が解決します。学校にミステリトリオ用の部屋があるの、うらやましい!笑
おすすめ作品、他にもいろいろ!
当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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