
家族を失い、死をも恐れぬテロ組織となった、女性たち。彼女たちの憎悪に、特捜部はどう立ち向かうのか。
現実社会と創作の境目がますますわからなくなってくる、機龍警察シリーズ4作目 未亡旅団の感想を書きました。本作も涙なしには読めない傑作となっております。
機龍警察 未亡旅団 あらすじ
チェチェン紛争で家族を失った女性のみのテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入。
自爆テロを主体とした、死をも恐れぬ彼女たちの戦法。構成員には未成年も含まれ、公安部と合同捜査する特捜部は難しい対応を迫られる。
一方、特捜部捜査班主任の由起谷志郎は、偶然にもテロ組織の一員と、街中で接触し……?
- 著者:月村 了衛 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:早川書房 2023/06/06
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象
▶︎5分間の試聴はこちら (リンク先で「▶プレビューの再生」を押下)
本作は女性戦闘員が多数登場するのですが、朗読は緒方恵美さん!豪華~~!
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著者 月村 了衛氏と機龍警察シリーズについて
2010年に 機龍警察 でデビュー。
「警察組織」「悪い奴ら」が登場する、ノワール系作品を多数執筆されており(←管理人わんこたんの勝手なイメージ)、虚の伽藍は直木賞候補作として話題になりました。
以下に著書の一部をご紹介(書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ)。
機龍警察シリーズは、世界中にテロリズムが蔓延し、市街地での近接戦闘を主眼におく兵器「機甲兵装」が台頭した世界が舞台。
テロの危機から国家を守るため、新設された警視庁特捜部。
特捜部に配備された3台の新型龍機兵の搭乗者、姿、ライザ、ユーリの戦いを中心に描かれる、警察×SF×ミステリー×国際サスペンスな物語です。
おもしろすぎて、管理人わんこたん、ドはまり中なわけ。シリーズ既刊は以下の通り。
シリーズの他作品については、以下の紹介記事をご覧ください。
| 1作目 機龍警察 | 2作目 自爆条項 |
| 3作目 暗黒市場 | 4作目 未亡旅団 |
| 5作目 火宅(準備中) | 6作目 狼眼殺手(準備中) |
| 7作目 白骨街道(準備中) |
機龍警察 未亡旅団 機龍警察 感想
- 1作目 機龍警察では 姿俊之(機体名:フィアボルグ)
- 2作目 自爆条項では ライザ・ラードナー(機体名:バンシー)
- 3作目 暗黒市場では ユーリ・ミハイロヴィッチ・オズノフ(機体名:バーゲスト)
ここまでの3作で、特捜部の保有する龍機兵3機のそれぞれの見せ場を作ってきたので、4作目はどうなるのか?というのが気になるところ。
ご安心ください(?)全機大活躍します。
未亡旅団のテーマ チェチェン紛争について
カスピ海とバルト海にはさまれたエリアに位置するチェチェン共和国。
カフカス地方のチェチェン共和国がロシア連邦からの分離独立を求めて蜂起したのがチェチェン紛争。こちらのページが参考になります。
2002年には、チェチェン共和国の独立を主張する武装グループによって、169名が死亡したモスクワの劇場占拠事件が引き起こされました。あれからもう20年以上経つのね…..
実在の「黒い未亡人」も、このテロ事件に関わっていたとされています。
近年は報道でチェチェンの話題を耳にする機会こそ減ったものの、未亡旅団を読むと、「大国による少数民族の抑圧」という問題が今も世界中で引き起こされている、という事実を思い出させてくれます。
機龍警察、めちゃくちゃ面白いんだけど、現実の世界と地続きになっているから読んでるとほんと辛い。
戦闘シーンは本作も圧巻!
相変わらず特捜部の警部3人がかっこいい!
<剣の妻>ジナイーダと対峙するのはライザ・ラードナー警部。北アイルランド時代のカモギーの得意技を活かしつつ、亡くなった機動隊の武器でとどめを刺すっていうのがね、またいい。
終盤に逃走した<砂の妻>シーラを追うのはユーリ・オズノフ警部。
陰謀にはめられ、ロシアから逃亡したユーリと、ロシア軍に仲間を皆殺しにされたシーラが最後に激突するというのがドラマティックでした。
3作目 暗黒市場で今度こそ日本の警察官として、正義の公僕でありたいと決意したユーリ。もうかっこよすぎですよ泣くわこんなん。
結局、<敵>の正体はつかめず
わたし、3作目の感想でも同じこと書いてますがw
4作目 未亡旅団でも日本の警察に巣くっているらしい<敵>の正体は判明せず。うやむやにおわりました。えー。
- カティアの裏切りをテロ組織に密告
- 宗方亮太郎議員(城木の兄)は<敵>とつながっていたようだが、真相は闇の中
- 警備企画課の小野寺と、その上司、堀田課長は敵か味方か?3作目に引き続き相変わらず不明
堀田課長は城木に特捜部の情報を流せと迫りますが…… - 警備局の海老野局長もあやしい?
- <敵>は外務省にもいるらしい
カティアと由起谷
テロ組織<黒い未亡人>の構成員として潜入したカティアと、偶然に接触した由起谷。
由起谷も過去につらい経験をしていますが、カティアは由起谷のそれとは段違いの凄絶な人生を歩んでいます。
本当なら2人の人生の間には大きな断絶があるのだけど、それを乗り超え、絆を結んだ2人。ラストの手紙のシーン、泣くしかないじゃんこんなの。
2作目 自爆条項といい、3作目 暗黒市場といい、機龍警察はどれもこれも後半からずっと泣きっぱなしになります。
カティアが逃亡したことを知って、なんとなくほっとする由起谷。気持ちはわかる。日本にいてもロシアにいても厳しい境遇になることは間違いないから。
これからカティアはイスラム過激派全てから追われる身になってしまうのでしょうか。どこかで由起谷と再会できないものでしょうか。お願いします月村先生……
発端は、愛と、憎しみの手紙だった
宗方亮太郎議員(特捜部理事官 城木貴彦 の兄)の妻 日菜子(故人)がかつてシーラに送った手紙。それがすべての発端だったことが明らかになりました。
宗方議員は、若いころにその世間知らずさと純朴さをロシア軍に利用され、結果的にシーラが大事にしていた難民キャンプ壊滅の引き金をひくことに……
でもおそかれ早かれロシア軍は何らかの理由を作って難民キャンプに攻め込んでいたでしょう。宗方議員だけの責任ではないけれど、もうとことん巡り合わせが悪かった。
そしてシーラはともかく、正直日菜子はかなり無神経。シーラに対し、あんな手紙を出すとは。自分の傲慢さに気づいていないのだから質が悪い。
宗方議員、つくづく女運がなかったなあ……
日菜子の「憎しみは人を罰するけれど、愛はきっと人を赦すもの」
という考え方は、シーラとは相容れないものでした。
シーラはかつて「憎しみは人を赦す、されど愛は人を罰す」
そんなことをカティアに語っています。
その一方で、シーラはカティアの裏切りについて、テロ組織幹部にこんなことを言っているんですよね
「カティアを憎まないで。できればカティアを赦してあげて」
この「赦す」は憎しみの裏返しなのか、それとも母の愛ゆえなのか。
シーラの複雑な思いが垣間見える場面です。
今回新しく登場した機甲兵装
- 第一種機甲兵装 エインセル
後ろ向きに搭乗する<バックワーダー>システムを採用することで、極限までサイズを小さくした機甲兵装。それゆえに搭乗できるのは身長156cm以下、つまり少年兵を前提とした設計となっている。ひどいもんだ。
イングランド北部ノーサンバーランドに棲むといわれる、尖った耳を持つ少女の妖精の名前だそうです。 - 第二種機甲兵装 ヌアラ
『黒い未亡人』3人の幹部が使用する機体。機甲兵装には神話やその土地の伝承にちなんだ名前が付けられることが多いようですが、ヌアラが語源がわかりませんでした。 - 第二種機甲兵装 ルーダック
北カフカスの武装勢力がよく使う機甲兵装で、ネーミングの由来は「ぼろをまとった女の悪霊の名」とのこと。
気になるキャラクター情報
- 桂絢子主任
特捜部 庶務。仕事に極めて厳しい才媛との評判。鈴石主任に優しく声をかけたり、城木理事官の変調に気づいたりと、かなりの気配り上手。特捜部の潤滑油のような存在です。
女子の井戸端会議が情報源、とのこと。こういう情報通キャラ、実は<敵>の内通者なんじゃないかとつい心配になってしまうw - 特捜部技術班の柴田
残業続きで死にかけていたが、鹵獲されたエインセルのシステムに興味津々で、逆に生き返ったという。柴田さんかわいいよ柴田さん。 - 直立不動の沖津さん
新潟県警機動隊に出された無謀な指示。そのことで沖津を責める新潟県警 諏訪部長と、彼を直立不動で見送る沖津さん……
沖津さんと新潟県警のものすごい覚悟が伝わるシーンです。 - 外事三課 馬面の曽我部さん
2作目 自爆条項で登場したときは怪しさ満点だった曽我部さん。当初は特捜部を設立した沖津さんのことをいろいろ疑っていたようですが、とりあえず味方ってことでいいのかな?
お饅頭食べながらテロの報道見てびっくりする曽我部さん、かわいいなと思えてきましたw
というわけで、そろそろ<敵>の核心に迫ってくれることを祈りつつ、機龍警察 5作目 火宅を読んでいきたいと思います。
機龍警察 未亡旅団 の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。戦う女性が印象的な2作品!
ババヤガの夜 /王谷晶
暴力が唯一の趣味の女、依子はその実力を買われ、暴力団の会長が溺愛する一人娘、尚子の運転手、兼護衛を任される。
最初は互いに反発する2人だったが、尚子の過酷な秘密を知った依子は……
圧倒的な暴力で駆け抜ける、熱く美しいシスターフットミステリー。とにかく読み始めたら一瞬です!
感想記事はこちら▶︎熱い血潮と、2人の絆 ババヤガの夜 感想 - わんこたんと栞の森
同志少女よ、敵を撃て /逢坂 冬馬
独ソ戦が激化する1942年。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために、戦うことを選ぶソ連の女性狙撃兵セラフィマ。
死線の果てに、彼女が見出す<真の敵>とは?
リアルな戦場描写と、結末に圧倒される傑作長編。2022年本屋大賞受賞作です。
感想記事はこちら▶︎同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 あらすじと感想 - わんこたんと栞の森
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当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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