ミステリ映画の終盤パートの撮影を前に、監督が失踪……!?
結末を知るのは監督のみ。果たして、残されたスタッフと演者はストーリー上の「真犯人」を探し出せるのでしょうか。推理談義&メタミスの合わせ技が美しい、探偵映画/我孫子武丸の感想を書きました。
この結末、見破れるか!?
探偵映画 あらすじ
映画界の鬼才・大柳登志蔵が、映画の撮影中に謎の失踪。結末を知るのは監督のみ。映画が失敗したら会社の存亡も危ういというのに!
残されたスタッフは、撮影済みのシーンからスクリーン上の犯人を推理していくが……
- 著者:我孫子武丸 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:文藝春秋 1994/7/7
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 我孫子武丸さんのについて
1989年 8の殺人 でデビュー。
管理人わんこたんとしては、ゲーム かまいたちの夜のシナリオや、殺戮にいたる病 のような、暗い・怖い・グロい小説のイメージが強かったのですが、この探偵映画はコミカルなタッチで意外でした。
人生で一度は読んでほしい衝撃のミステリー。グロいのでちょっと注意。ネタバレ情報なしで読んでいきたいので、リンク先の記事は読了後にお読みください。
腹話術人形(!?)が活躍する、人形シリーズ(人形はこたつで推理する 等)や凛の弦音 のような学校を舞台にした青春小説もあるそう。いろいろ読んでみたくなってきた!
以下に著者の作品の一部を紹介します。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ
探偵映画 感想
真の結末への着地が見事で唸りました。面白かった!
大柳登志蔵 監督はやはり天才だった!(クズだけど)
失踪し、関係各所に迷惑をかけまくる大柳登志蔵 監督。
どうせ最後にちゃんと現れるんだろうなぁこのクズ監督は。
という大半の読者の予想にこたえて、無事、最後に監督は現れ、映画の真のエンディングが明かされるのですが……
この監督、やっぱり天才だ!という感想と、この監督、やっぱりクズ野郎だ!という感想。2つを見事に成立させる、すばらしい「エンディング」でした。
終盤に「ま、待て、」と慌てふためく監督も痛快でよかったし、なんだかんだ結末もスッキリ。まるで1本映画を観終わったかのような、満足感。よかった!
主張の激しい「探偵」たちに、ニヤニヤ
5人の出演者もこの推理合戦に参加するのですが、全員自分の演じる役を犯人にしたがるので、収集がつかなくなってきます。
犯人役は映画の中で1番目立つ存在。おいしい役をいただいてしまおうというわけです。
推理談義ものの元祖 毒入りチョコレート事件/アントニイ・バークリー にも、自分が犯人だと主張するナルシスト探偵が登場しますが、それを彷彿とする展開に、思わずニヤニヤ。
往年の名作映画を多数引用
登場人物ほぼ全員が映画関係者なので、映画に関する知識も豊富。往年の名作タイトルが多数引用されます。
がしかし、管理人わんこたんはほとんどの作品を知らず……知らなくとも探偵映画を楽しむのに支障はありませんが、知っていたらもっと楽しめたかも??
以下に引用されている映画の一部を紹介します。
- オリエント急行殺人事件(1974年版)
当時38歳のアルバート・フィニーがポワロ役。若いですが、メイクと姿勢を工夫し、「原作のイメージに、どんぴしゃり」なポワロが生まれました。
- マッドマックス2
砂漠で暴徒がヒャッハーなイメージの作品。冒頭、主人公マックスについて、ある人物が語るシーンが、実は……という構造を、「映画ならではのトリック」として引用しています。
- サン・ロレンツォの夜
イタリア、トスカーナ地方。とある人物が語る戦争の思い出が幻想的に描かれます。
誰がこの話の聞き手なのか?というのがポイントなのですが、Amazonのページにはしっかりネタバレが書かれているので、観る際には気を付けて。
探偵映画の次に読みたい 他のおすすめ作品
映画×ミステリーな、おすすめ書籍をご紹介!
愚者のエンドロール/米澤穂信
神山高校文化祭に向け、2年F組は自主製作のミステリー映画を作成するが、脚本担当の女生徒が倒れてしまい、撮影途中で「犯人不明」に。
映画に登場するのは6人。「犯人役」は誰なのか?おなじみ古典部メンバーの1年生が謎に挑む!
巻末で、先例として、当記事の探偵映画が紹介されています。かくいうわんこたんも、この紹介文をきっかけに、探偵映画を手に取りました。きっかけに感謝。
シリーズ作品の2作目ですので、まず1作目 氷菓からお楽しみください。
おすすめ作品、他にもいろいろ!