2025年本屋大賞受賞作、カフネ/阿部暁子。
ご飯を食べて癒される、そんなほのぼの系の物語を想像していましたが、実際には、痛みと、そこからの再生について、鋭く描いた作品でした。
本記事では管理人わんこたんの率直な感想をまとめました。
カフネ あらすじ
29歳の、最愛の弟 春彦が急死した。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと再会する。
不愛想なせつなに対する薫子の印象は最悪。しかし、意外なきっかけで、薫子はせつなの勤める家事代行サービス会社「カフネ」の仕事を手伝うことになり……?
- 著者:阿部暁子 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:講談社 2024/05/22
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象
▶︎5分間の試聴はこちら(リンク先で「▶プレビューの再生」を押下
せつなの不愛想な声や、春彦のさわやかさな声が印象的。物語に、より深く入り込めて、よかったです!
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著者 阿部暁子氏について
阿部 暁子氏は、岩手県出身の小説家。デビュー作は2008年の屋上ボーイズ(現在は絶版)。
調べるまで存じ上げなかったのですが、人気マンガ、アオハライドのノベライズ版のご担当でもあったんですね。
以下に作品の一部を紹介します。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプす。
カフネ 感想
本屋大賞を受賞し、心温まる、心に沁みるといった感想を多く拝見したので、読む前は、「傷ついた人が、おいしい食事とであって再生していく」よくありがちなストーリーだと思っていました。
序盤は確かにそんな雰囲気なんですが……終盤、物語は思いもよらぬ変調を見せます。
不妊治療で傷ついた、薫子の心の行方
不妊治療、離婚、両親とのギクシャクした関係、愛する弟の突然死。心を傷つけられた40代の公務員、薫子が物語の主人公です。
特に不妊治療部分のエピソードは、不妊に関して辛い経験のある人は本作を読むのは注意した方が良いかもしれません。
管理人わんこたんも妊娠にいたるまでちょっとハードルがあって、受診していたことがあり、当時のことが思い返されて、読むのがちょっと辛かったです。不妊治療って、心の余白が全部赤ちゃんのことで占められちゃう、苦しさがあるんですよね。
今回は妊娠するかな?→生理きてリセット、になるたびに、募る焦り。
忘れようとしても、赤ちゃんほしいなあっていう気持ちがこんこんと湧き出て、精神を圧迫する、あの感じ。
だからよりによって、薫子がカフネのボランティア活動で双子ワンオペ育児ママのお宅に派遣されたときは、心が締め付けられました。薫子、よく耐えたな… 私だったら子どもがいるお宅への訪問は、全部断るぞ。
さらに弟の死に、離婚に、両親との不仲。おいしいご飯を食べてボランティアするくらいで、この傷が簡単に癒せるはずはない。序盤はそんな印象でした。
せつなの料理で心を癒す物語 に見せかけた、狂気の物語
やがて、せつなの過去と心の傷が明らかになったり、国際支援活動に従事して、子どもを諦めた夫婦が登場したり。物語は新たな展開を見せます。
実はちょっと心配してました。
- せつなにこんな過去があったなんて……私の苦しみなんて大したことないぞって、薫子が立ち直る
- こどもがいなくても、幸せに生きることはできるんだって、薫子が立ち直る
- せつなの作るおいしいごはんで、薫子が立ち直る
そんな、薫子が受けたこれまでの苦しみを軽視するような展開だったら、ちょっと怒っちゃったかもw
しかし、カフネでは、ちゃんと(?)薫子の苦しみを最後の最後まで描いてくれました。
以下、物語の結末の展開に触れる記述があります。ご注意ください。
薫子は授かれなかった我が子への、行き場のない愛情をせつなに全振りする決断をします。
終盤、せつなの背中をさすりながら、まだ見ぬ我が子に語りかけるシーン。薫子の抱えてきた思いがじわじわと染み出してくるようで、ゾワッとしました。
そして薫子は突拍子もない、せつなもドン引きの決断します。 もはやこれを愛と表裏一体の狂気と言わずしてなんという。それでいて、薫子の心の着地点としては、このうえなく妥当だし、すごく納得できるんですよね。
もはや薫子の心は、誰かを庇護することでしか、満たされないんだな、と思うと、本当に悲しくて、読んでいて本当に辛かったし、結末としては120点満点でした。
ラストシーンの「カフネ」の意味 誰かを助けたい、という傲慢さ
誰かを支えてあげたい救ってあげたい、孤独な人とつながってあげたいって、優しそうに見えて、めちゃくちゃ傲慢だし、エゴなんですよね。
薫子のせつなに対する最後の提案なんて、傲慢さの塊でした。
けどこの傲慢さが、薫子の心を癒すのもまた事実。
本当に気の毒で、優しい薫子。自分の努力で全てを切り開いてきた、と豪語する、傲慢な薫子。そう、それでいいんだよ。
せつなの方も、傲慢な薫子の態度に混乱し反発しつつ、助けてほしい、という相反する気持ちが混ざっていたような。ラストシーンの「カフネ」は、せつなの混ざりあった気持ちをよく表していて印象的でした。
※「誰かを助けたいという傲慢さ」について、春彦くんはまたちょっと違うんですよね。
彼は、「助けたい」というよりも、自分を空っぽにして、人になにかを与えることが、もはや呼吸するかのように当たり前になっていたように思えます。
物語の展開にちょっと強引さあり
細かいことをいうと、物語の都合上の、展開の強引さはちょっと気になりました
- あの薫子が、ケーキを落としたとしても、せつなの前でいきなり泣き出すのは唐突だった。
ケーキを落としても、せつなの前では気丈にふるまう薫子と、それをせつなが無言でサッとパフェにするところが見たかったかな(わんこたんの妄想) - 斗季子さん、せつなの過去をベラベラ話してしまうのは、さすがに……
公孝のことは許せそうにない
一人の女性の人生を大きく傷つけた、薫子の元夫、公孝。
物語ではすごく優しく誠実な態度で許されてる感じだけど、私は許さないぞw
あの春彦くんが怒るのも当然やて。春彦くん、ここぞというときはちゃんと怒れるんだよな。ほんと、いいやつだし、彼がいないことを思い出して、やっぱり悲しくなります……
カフネ 感想 まとめ
薫子とせつな、2人が手を取り合って生きていく、温かい物語として受け取めることが、おそらく著者の想定している読み方であり、多くの方が受け止める感想なのだと思います。
ただ、管理人わんこたんは、過去の経験もあって不妊治療の印象が強く、ちょっとこれは温かい、というよりも、行き場をなくした愛情を昇華させようとする、狂気の物語だな、と受け止めました。
みなさんはどう感じましたか?コメント欄に感想をお寄せいただけたら、嬉しいです。
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