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ここはすべての夜明け前

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 

九州の山奥で、わたしはかぞく史を書き始める。始まりは100年前、わたしがゆう合手術じゅつを受けた時のこと。
独特な文体と、雨のように心に染み込む物語。SF小説ここはすべての夜明け前の感想を書きました。
 
ここはすべての夜明け前
ここはすべての夜明け前
 

 

ここはすべての夜明け前 あらすじ

かぞくがみんないなくなって、ひとり残った「わたし」。

苦しかったこと、死にたかったこと、お父さんのこと、シンちゃんのこと。書き始めたかぞく史から明らかになる、わたしの過去とは……?

 

  • 著者:間宮 改衣
    本作ここはすべての夜明けまえで第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞を受賞し、デビュー!
  • 発売:早川書房 2024/3/6
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象外

 

ここはすべての夜明け前 感想

2024年に読んだ本の中でいちばん美しい物語でした。(と、書いている今現在、まだ2024年7月ですが)。

物語の設定上、前半部分はひらがなだらけの文章が改行なしに書き連ねられていて、決して読みやすい文章ではない。けれど、のどが渇いた時に水を飲んでしまうように、雨が降ったら土に水がしみるように、心に沁みる文体でした。

 

無感情のわたし、だから書ける新しい文章。

物語の語り手である「わたし」はすごくフラットな視点で文章を書きます。融合手術をしても感情を失うわけではないようですが、その文章はとにかく無感情。

 

無感情な文章ゆえに、登場する周りの人の感情や戸惑いが、むしろ際立って伝わってくる、というのは意外でした。

 

内包するテーマはすごく重いです。性的虐待とか、働きながら育児をする苦労だとか、親の介護とか、安楽死制度、社会の崩壊などなど。普通の文章だったら重すぎて胃もたれしそうな内容でもさらさらと読み下せてしまう。

いやはや、すごい「文学」が登場したな、と。

 

すべての夜明け前ってなんだろう

そして読み終えてから改めて考える、タイトルの意味。「わたし」がずっと明けない夜を過ごしてきたことを意味しているのでしょうか。

明けない夜、といっても決してネガティブな意味ではなく、「わたし」という存在の曖昧さをよく表しているタイトルだと思いました。

 

  • 夜と朝の間
  • 機械と人間の間
  • 愛している と 愛しているふりの間

 

そんな絶妙な「間」を表現したタイトルかなあ、と管理人わんこたんは考えています。

 

ボーカロイドの楽曲が意外な形で登場

「わたし」が眠れない夜にずっと聴いていた、と語る、「アスノヨゾラ哨戒班」「DAYBREAK FRONTLINE」はYouTubeで聴けるようなのでペタリ。

いろんなものが滅びた後に、ボーカロイドが歌った曲が世界の終わりまでずっと聞き継がれていくっていうのも、なんだかエモSFチックでいいじゃないですか。

 


www.youtube.com

 


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冷静に考えると、意味がわからない

「わたし」の周りの人物は、わりと好き勝手に、いいように私のことを取り扱います。

 

コウにいちゃんは、「わたし」を憎みつつ、「わたし」に父親のことを全部お任せして、60歳になったら急に自分は早く楽になりたい、と言いはじめる。

最後に「わたし」にごめんな、って謝るけれど、「わたし」には謝罪される意味がわからない。

 

そりゃ冷静に考えたら意味がわからない。勝手に憎んで、勝手に任せて、勝手に楽になって。そんな「わたし」の冷静な思考がぐっとこの物語を引き締めている。

 

同じようにシンちゃんも「わたし」に不誠実なことをしていて謝るシーン。これも「わたし」には意味がわからない。謝るくらいなら最初からしなければいいのにね。

 

愛させるように仕向ける、ということ

「わたし」はシンちゃんが自分を愛させるように仕向けてしまった。シンちゃんの人生を破壊してしまったと、語る。

 

でも、人間って究極的には「他人に自分を愛させる」ように行動する生き物なのでは。赤ちゃんですら、他人から愛してもらえるようにむにゃむにゃとかわいい動きをするじゃないですか。

 

シンちゃんというあだ名で呼び続けることも、12月うまれのシンちゃんにちゃんと誕生日とクリスマスで別々にプレゼントを買ってあげることも、決して異常な行動ではない、普遍的な行為のはず。

 

それを「シンちゃんが『わたし』を愛させる行為だった」と書いている部分にドキッとしました。果たしてわたしたちは本当に誰かを愛しているのでしょうか?それともただ「相手に自分を愛させているだけ」なのでしょうか?

 

最後に残るもの

シンちゃんからの愛を搾取してしまった。でもその記憶を消してしまうのはいやだ。どこまでも冷静な「わたし」の中に最後の最後に残った、感情のような部分。

 

物語を読み終えると、その先どうなるんだろうとか未来を想像することが多いですが、このここはすべての夜明け前には絶対に未来がなく、ずっと夜明け前のまま、私の中で閉じて終わる。そういう切なさのようなものが美しかったです。

 

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