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禁忌の子 感想 一気読み必至の医療×ミステリー

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 

第34回鮎川哲也賞。2024年の冬に「これはすごい!」とSNSを騒がせたミステリー、禁忌の子の感想を書きました。

 

エンタメ性と医療の問題提起を両立させた、良ミステリ!

 

禁忌の子
禁忌の子
 

 

 

禁忌の子 あらすじ

※実際の登場人物は人間です!

禁忌の子 あらすじ紹介イラスト(1/2)

禁忌の子 あらすじ紹介イラスト(2/2)

救急医・武田の元に搬送されてきた、身元不明の溺死体は、武田と瓜二つであった!

彼の正体は。死の理由は。武田は同僚であり旧友でもある医師、城崎と調査を始めるが、新たな密室死体が発見されて……

第34回鮎川哲也賞受賞作の、医療ミステリー!

 

  • 著者:山口未桜 
  • 発売:東京創元社
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象外

 

著者 山口未桜さんと、鮎川哲也賞について

山口未桜さんは兵庫県出身。禁忌の子で第34回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。

Xのアカウントプロフィール(2024年現在)によれば、未就学児を育てつつ基幹病院で戦うワーママ医師兼物書き、専門は胆膵、とのこと。なんというタフネス。すげー。

禁忌の子、は、当時1歳のお子さんの泣き声で目覚めたときに浮かんだ物語、なのだそう。

作中で活躍する医師、城崎響介が登場するシリーズ第2弾が早くも、2025年に刊行予定!一読者として楽しみに待ちたいです。

 

鮎川哲也賞ってなんだ?

鮎川哲也さんは、日本の推理作家。鮎川哲也賞は、東京創元社が主催する推理長編を対象とする新人文学賞です。

1989年からはじまり、受賞作は毎年10月前後に東京創元社より刊行されます。過去の受賞作で管理人わんこたんが気になっているものを以下に並べました。

読みたい!

 

時空旅行者の砂時計 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)
屍人荘の殺人 〈屍人荘の殺人〉シリーズ (創元推理文庫)
ジェリーフィッシュは凍らない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫)

 

禁忌の子 感想

ラストの怒涛の展開!これは話題になるのもうなずけます。

 

CAUTION!

以下、作品の核心に触れる記載があります。ご注意ください。

 

ミステリーとしてはちょっと弱い、と思いきやラストの勢いがすごい

自分そっくりの遺体、という点、冒頭の登場人物に出てくる「リプロクリニック」という文字から、きっと一卵性双生児なんだろうな、生殖医療がらみだな、と予想がついてしまい、当初はそこまで謎解きにそこまで引き込まれず。

がしかし、最後の着地点にびっくりさせられたなあ。まさか「禁忌の子」がそういう意味でもあったとはね。やられたわ~~

よくよく見返すと、表紙の写真も「3人」いたんですねえ。

 

武田と城崎のバディ いいねえ

野球部出身で体育会系の救急医、武田。感情を表に出さず、陰があって、そして男性でも惹きつけられそうになる美貌を持つ、外科医の城崎。

序盤はこの2人のペア感が強めに押し出されるので、はいはいイケメンバディものね、好きですよ、好きですけど、こうもあからさまにお出しされてもね、そう簡単に釣られませんからね。と、斜に構えてた管理人わんこたん(我ながら捻くれっぷりがひどい)

 

がしかし、最後の最後にいい意味で裏切ってくれました。なんだよう、いいやつじゃん、城崎せんせ。ボイレコを渡すとこ、ブラックな冗談が小気味良かったです。

城崎先生は続編にも登場してくれるようなので、刊行を楽しみにしています。あ、武田先生のその後もちょっと描いてくれたらなお嬉しいw

そして、続編にも武田夫婦のその後を、ちょっとだけでも描いてくれたらもっと嬉しい。

 

(フィクションとはいえ)生殖医療黎明期の無法っぷりがすごい

自分とこでこさえた受精卵を他人の子宮に移植、という選択肢もなかなかですが、よりによって「一卵性双生児の胚それぞれ」を移植に使うとか。

どうみても将来のトラブルの種になるでしょうに。

そしてこの先生が、「妊娠に悩む夫婦を救ってきた」「優しい先生」として対外的には評価されてしまうところとか、恐ろしいなと思いました。

 

こどもって、「自分の意志ではなく親の意志で産まれさせられる」んですよね。全員。生まれるかどうかの選択肢を子供側からは選べない。それってすごく残酷なことだし、だからこそ、こどもの知る権利が守っていかなければと、思ったのでした。

 

医療の進歩と増えた選択肢は、本当に私たちを幸せにしているのか

禁忌の子を読んで、管理人わんこたんが次女を妊娠・出産したときのことをふと。

私たち夫婦も、医療の介入なしでは次女を望めないことがわかり、不妊治療を選択しました。世間的には「2人目不妊」と呼ばれるやつです。

 

不妊治療という選択肢がある!幸せ!となったかというと、そうでもなかったなあ。

治療しても授からなかったらどうしよう。うまくいかなかったら、どこまで治療を続けるか、という点で、当時は胸の奥がチクチクしていた気がします。

 

科学の進歩で治療の選択肢が増えるっていうのは、プレッシャーでもあると思う。

選択肢があるんだから、夫婦で検査受けなよ!不妊治療を受けなよ!諦めないで!…という善意のアドバイスは、逆に患者さんたちを追い詰めていないだろうか。

(不妊治療に限らず)いろんな選択肢がありますよ、と一方的に提示することは、患者さんに希望だけじゃなくてプレッシャーをかけていないだろうか。そんなことを、禁忌の子を読みながら思いました。

じゃあどうしたらいいのか!と言われたら言葉が無いんですけど。ううむ。

 

そもそも、作中の登場人物のように、子どもまだ?とか、孫はまだ?なんて、周囲がプレッシャーかけるのは、論外だからね!

 

苦しいことって、忘れちゃうからこそ

で、最終的に治療は成功し、次女を妊娠・出産。

それから3年たって、禁忌の子を読んだとき、当時の苦しさをすっかり忘れている自分に愕然としました。あんなに悩んでたのに!

不妊治療の当事者の辛さって、子どもを授かるとあっという間に過去のものになってしまうん。多分苦しい記憶って、人間うまく薄れるようにできているんでしょうね。そうしないと辛いから。

当時の苦しさとか、そういう、忘れかけていた大事なことを思い出させてくれました。禁忌の子、ありがとう。

 

気になるところなど

一卵性双生児だからといって、そこまで似るか?という点は、読みながらずっと気になっていました。

生活習慣で体型も変わるし、髪型やヒゲで見た目はだいぶ変わるので、実際に搬送されたらおや?と思うかもしれないけど、意外と気づかないんじゃないかな。なんて。

体格や見た目がそっくりだった点は、もう少し説明があったらよかったな。

 

禁忌の子の次に読みたい おすすめ作品

禁忌の子の著者、山口未桜さんのような、医師出身作家の方々による、おすすめ作品をご紹介!

 

硝子の塔の殺人/知念 実希人

 

本格ミステリ愛にあふれた1冊

雪深い山中に閉ざされた硝子の塔。一癖も二癖もありそうな登場人物。ちょっと変わった名探偵と、巻き起こる連続殺人…いかにもな設定がたまらない!

著者の知念 実希人先生は医師ですが、この作品、「医療の知識もトッピングされつつ、本格ミステリとしての完成度がすさまじい」のです。ぜひ読んでみて。

 

硝子の塔の殺人
 

 

感想記事はこちら▶︎圧倒的なおもしろさ!硝子の塔の殺人の感想と、作中登場ミステリ小説について語りつくす - わんこたんと栞の森

 

チーム・バチスタの栄光/海堂 尊

 

心臓手術チームに何が起きた?

心臓の“バチスタ”手術専門の天才外科チームで原因不明の連続術中死が発生。内部調査担当に任じられる医師 田口と、そこへ厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔がやってきて……。

医療の描写もさることながら、田口・白鳥のコンビ感も楽しい、大ヒット医療ミステリーです。

 

新装版 チーム・バチスタの栄光【電子特典付き】 (宝島社文庫)
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読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

じっくり楽しめるミステリーならこれ!

 

 

禁忌の子
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