もしナチスドイツの時代に、プログラミング技術が発達していたら?
IFの歴史を辿るドイツを描いて数々の賞を受賞したNSAの感想を書きました。
NSA あらすじ
もし、第二次大戦中のドイツで、携帯電話とインターネットが発展していたら?
すべてのデータを監視し、保存しているドイツ国家保安局NSA。視察に訪れた親衛隊の高官にNSAの有用性を示すため、アナリストのレトケとプログラム作成係のヘレーネはあるデモを行う。そのデモがもたらす驚愕の「歴史」とは……
クルト・ラスヴィッツ賞を受賞した、ドイツ発の長編SF!
- 著者:アンドレアス エシュバッハ →Amazonの著者作品一覧はこちら
- 翻訳:赤坂 桃子
- 発売:早川書房 2022/01/06
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 アンドレアス エシュバッハ氏について
アンドレアス エシュバッハ氏はドイツのSF作家。邦訳作品は少なくいものの、ドイツ内外の多くのSF賞を受賞し、ヨーロッパで人気を博しています。
他の作品もなかなか面白そうな。ちょっと読んでみようかしら。
- イエスのビデオ イスラエルの2000年前の墓から、明らかに現代の歯の治療をした人骨と、副葬品のソニーのビデオカメラの「解説書」が見つかり……?
- パーフェクトコピー 幼い頃からチェリストになるための英才教育を受けている十五歳のヴォルフガング。自分の才能に自信のないヴォルフガングですが、医者である父親は、なぜか、息子はすばらしいアーティストになれるのだと、自信満々で……?
※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。
NSA 感想
冒頭、ドイツ国家保安局NSAに、ナチ親衛隊全国指導者 ハインリヒ・ヒムラーが訪れます。
一体何がおころうとしているのか、この本、ちゃんとおもしろくなるの?
不安になりながら読み進めると、プログラミングを使ったデータ抽出と分析のデモが実演され、あの有名な一家が連行され、あの有名な日記が押収される衝撃的なシーンが。
そうか、この世界の歴史はこういうふうに改変されるのか……と、ぶん殴られたような衝撃で、物語ははじまります。
序盤は、スパイ小説のようでおもしろい
序盤は、第二次世界大戦下のドイツで、いかにして、プログラミングが発達していくのか、プログラマーであるヘレーネの視点から描かれます。
この時代にどんなデータをもとに、いかにしてプログラミングを構築するか、あるいは逆にプログラミングを出し抜くか、という歴史改変SF×スパイ小説のようで、読みごたえがあってワクワクしました。
というか、ありとあらゆるデータが構造化されて、すぐに呼び出せるようになってるの、すごすぎませんか……
アルゴリズム(プログラムをどのような順番で組み立てるか、という概念)が、効率的な家事の手順を考えるやり方ににていることから、「プログラミングは女の仕事」なんて固定観念があるのも面白いです。
下巻は不気味で読むのがしんどかった
ところが下巻から、ドイツのシステムはへレーネたちの手を離れて進化し始めます。ニューラルネットワークや、AIのようなものまで生まれ、数年で一足飛びに技術が進化。
終盤はとにかく畳み掛けるような「救いがない」→「気持ちが悪い」→「救いがない」のサンドイッチで、ちょい胃もたれでした。グロくはないけれど、上下巻でページ数が多いのもしんどかった。
しかし、こんなディストピア、現代だったら逆に簡単に発生しうるんじゃない?むしろもうディストピアは始まってるんじゃない?とぞくっとさせられます。
長いし展開が重たいのでオススメはしづらいけど、暗い系SF好きならぜひチャレンジしてみてほしい1冊です。
このディストピアは、現代世界の投影?
ネットワークが発達して世界中がつながっているこの世界で、カリスマ的なリーダーがあらわれたら、国境を越えて、軍事力がなくても、精神的に人々をいっきに支配してしまいそう。
現代のネットの言論の場って自由に発言できて賛否両論が活発に買わされるように見えて、その実、ひとつの強い意見(バズる意見)があっという間に本流になったら、反対意見なんてろくに表示もされず話題にもならず、無視されますからね。
わたしは無口なんじゃない。言うことがないだけだ。本当に。機械が全部読み、全部聞き、許される発言と許されない発言、疑わしい発言と賞賛に値する発言とを分類してくれるからだ。関心の対象は、誰かがなにを言うかではなく、誰かが正しいことを言うか、それともまちがったことを言うか、それだけだ。そこまで来てしまうと、なにかを言ったってなんの意味もない。(NSA 下巻 Kindle版より引用)
結末はもう大変に気持ち悪いもので……いうなれば、へレーネも、レトケも、国家を動かすコードの一部になり「コードで書かれた全体主義」に巻き取られていきます。
かなりの長編を読み切った後に待ち構えているのが、この救いのない結末で、もう疲労感と胃もたれがすごかった……へレーネとレトケ、当人たちは幸せそうなのが、またもう……
NSAの次に読みたい おすすめ作品
独裁ディストピア、歴史改変ものを中心に。IFの世界を描いたおすすめSFを集めました。偽史SFって、いいよね。
新世界より /貴志祐介
■■年の日本。神栖66町の集落。現代社会より、かなり質素ではあるものの、人々はごく普通の平和的な生活を送っていました。
皆、呪力を使えること、変な生き物を使役していること、そして、時々こどもが消えることを除いては。
徐々に明らかになる世界の真実に読む手がとまらない、傑作長編SFです。
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タイム・シップ〔新版〕 /スティーヴン バクスター
ウェルズの古典SF、タイム・マシンの続編となる作品。未来旅行で救えなかった女性のため、タイム・マシンの発明者である主人公は再度、未来へのタイム・トラベルを敢行しますが……?
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感想記事はこちら▶︎元祖タイムトラベルSF!タイム・マシン(HGウェルズ著)とタイム・シップ(Sバクスター)」感想 - わんこたんと栞の森
円 劉慈欣短編集/劉慈欣
三体シリーズでおなじみ、劉慈欣氏の著作を集めた短編集。表題作「円」は秦の始皇帝と暗殺者の荊軻が、まさかの○○を開発!?
もうここから先は読んでのお楽しみ。圧倒的な発想力と、切ない人間ドラマに注目!
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