呪詛をあやつる少女と、その従者。
絶版により入手困難となった、伴名練さんのデビュー作 少女禁区の感想を書きました。濃厚な、血と愛の世界を、あなたもご賞味あれ。
悲しいことに絶版!図書館で探してみてください
中古の流通はありますが、プレミア価格に……角川さんなにとぞ復刊を〜!
少女禁区 あらすじ
SF小説作家である伴名練さんのデビュー作、少女禁区を含む、蕩けるような甘さと、血と、痛みに溢れた珠玉の2編を収録した、短編集です。
- 著者:伴名 練 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:角川書店 2010/10/23 (2024年現在、絶版)
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 伴名 練さんについて
伴名 練さんは覆面兼業SF作家。早川書房に「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と称されています(※)が、そのデビューはSFではなくホラージャンルの 少女禁区 でした。
とはいえ、少女禁区にも、体験を配信できる「サイネット」という架空システムや並行世界などのSF要素が、散りばめられていて、SF小説としても読めるようになっていることに気づかされます。
その後、初の単著となったなめらかな世界と、その敵や、古今東西の名作や作家ごとの傑作群を編んだアンソロジー『日本SFの臨界点』シリーズを、刊行中。
なめらかな世界と、その敵。こちらの記事で紹介しています。めちゃくちゃおもしろかった!
※参考▶『なめらかな世界と、その敵』伴名練インタビュー - 「もっとみんなが活躍できるジャンルであってほしい」伴名練のSF論(KAI-YOU Premium)
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少女禁区 感想
甘美な快楽と凄絶な呪い。濃厚な甘さと痛みが凝縮されていました。
各短編の作品は以下よりどうぞ。
chocolate blood, biscuit hearts. あらすじと感想
そう、あたしたちは焼き菓子。
鏑木技研の跡取りとして、亡父、鏑木陶彌(とうや)の意向により、24時間厳密な管理生活を強いられてきた14歳の夕乃と12歳の相馬の姉弟。
それはまるで、オーブンでこんがり炙られ、かわいらしく飾りつけられ、陳列される、焼き菓子のよう。壊れてしまいそうな相馬の心を守るため、夕乃はある決断をするが……
なんという甘ったるくて、血に塗れた、物語なのでしょう。ねっとりと堕ちていく姉弟。全てに対する復讐を果たすかのような結末は、たまらなく美しく哀しくて、読んでいて気分が悪くなりました(褒め言葉です)
というか、電車の中でラストシーンを読んでいたら、マジでめまいを起こして倒れかけました笑。危ない危ない。読まれる際はご注意を。
少女禁区 あらすじと感想
表題作。
呪いが当たり前に存在する世界で、とくに強力な呪詛の力を持ち、両親と継母を呪殺したと忌み嫌われる少女。
その少女に心と体を握られ、呪詛による痛みによって、無理やり従わされる男。
釘食様(くぎはみさま)と呼ばれ、生贄を捧げられる大蛇。
おどろおどろしい展開に、驚愕のラスト。第17回日本ホラー小説大賞で短編賞を受賞した、伴名練さんのデビュー作です。
この作品について、審査員の荒俣宏さんは「私のような老人には甘口すぎる」と評しています。そう、呪いに溢れた世界でありながら、チョコレートのように甘口なのです。本当に信じられないくらい甘口でした。もう最高なんだから!
(甘口大好き 管理人わんこたん)
先述のchocolate blood, biscuit hearts. が「チョコレートのような血」ならば、少女禁区は、血のようなチョコレート、と言ったところでしょうか。
この濃厚で癖になる読み味、ぜひお試しを。
改めて読了後に表紙を見ると、紅の蝶、人形、針(かんざし)など、ちゃんと描かれていました。ふつくしい。。。
少女禁区の次に読みたい おすすめ作品
少女禁区のような「呪い」「彼岸」の要素に関連するおすすめ作品を紹介します。
梅雨物語/貴志祐介
俳句に残された記憶の断片、黒い蝶がもたらす極彩色の悪夢、ひとり暮らす男の自宅に現れた異常な現象……凝縮された恐怖と謎解きを味わえるホラー3作品を収録。
収録作のジャンルが「ヒトコワ系」「呪い系」「霊界系」といい感じに分散しているのもおすすめポイント!
お手軽だけど、怖くて面白くてとまらない、ホラー初心者にもぜひおすすめしたい1冊です。
感想記事はこちら▶︎極上のホラーをお手軽に 梅雨物語 感想 - わんこたんと栞の森