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いぶし銀の魅力が光る「捜査特化」ミステリー 可燃物 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 群馬県警の葛(かつら)警部は、寡黙で冷静、その捜査能力は折り紙つき。

いぶし銀の面白さで、「2024年 このミステリーがすごい!」をはじめとするミステリー賞3冠に輝いた、可燃物/米澤穂信の感想を書きました。

 

可燃物 (文春e-book)
可燃物 (文春e-book)
 

 

 

可燃物 あらすじ

見つからない凶器、バラバラにされ目立つ場所に置かれた遺体、証言者の意外な共通項、動機不明の放火、立てこもり事件のわずかな違和感…

米澤穂信氏初の、警察小説。群馬県警 葛警部の鋭い推理が光る、5編を収録したミステリー短編集。

 

  • 著者:米澤 穂信 → Amazonの著者作品一覧はこちら
  • 発売:文藝春秋 2023/07/25
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象
    ▶︎5分間の試聴はこちら(リンク先で「▶プレビューの再生」を押下)
    かなり特徴的な「しゃがれ声」で、捜査の緊張感は伝わるのですが、かなり聴き取りづらく残念……気になる方は試聴してご確認を。

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著者 米澤 穂信さんの情報

多彩な作品で、読者を楽しませてくれる、ミステリ作家の米澤穂信さん

などなど方向性はいろいろですが、どの作品も、練り上げられた構成と、丁寧な心情描写、的確に配置される伏線で、「読めば引き込まれる」傑作ぞろいです。

今作可燃物は初の警察小説ということですが、これまた面白いのでびっくりしちゃった。

※書影クリックでAmazonの作品ページへ。

氷菓 「古典部」シリーズ
黒牢城
儚い羊たちの祝宴
春期限定いちごタルト事件
満願
インシテミル

 

 

可燃物 感想

寡黙で冷静、周りからは若干疎まれつつ、優れた判断力で黙らせる。群馬県警の葛警部が主人公。

特徴的な個性を持つ「キャラクター刑事」が主人公のミステリーは多いですが、個性を排し、ここまで「捜査」に特化した警察小説は、最近では逆に珍しいかも。

地道な捜査で犯人の本性が炙り出される過程は、読みごたえがあってたまらない。著者初の警察ものですが、当たり前のように面白いのが、さすが米澤穂信先生だなあ。

濃厚なキャラや物語性は控えめ。よくいる熱血系刑事や、融通効かない系上司は出てきません。とにかく駒として動く刑事の姿はドキュメンタリーのようで、むしろ引き込まれます。

 

米澤穂信作品でよく見かける、

「各章で物語が完結しつつ、全体として大きな物語をなしている」

構成かも?

という期待もありましたが(例:黒牢城氷菓)、可燃物では各話ごとのつながりは特になし。読者によっては、そのあたりに物足りなさを感じるかも。

以下に各章の感想と登場刑事のまとめを書きました。特によかった作品には★を。

 

崖の下

スキー場で遭難した男女5人。うち1人は他殺死体、もう1人は大怪我で発見される。大怪我の1人がもう1人を殺害したのか?しかし遺体の所見に該当する凶器はどこにも見つからず…

冷静で優秀だけど、部下を「たてる」こともしない、葛警部のキャラクター像が描かれる第一話。真相はなかなか「痛そう」だけど、冷たい雪と怒りがあれば痛みも我慢できた、のかも。

 

ねむけ

強盗致傷の有力な容疑者が、偶発的な交通事故で搬送。

「信号無視」の危険運転致傷罪で令状をとれば強盗の捜査に踏み込める場面だが、交通事故の目撃証言に違和感を覚える葛警部。その真相は??

目撃証言が全部一致していたら逆に怪しい、というのは意外だったが、捜査の常識なんだろうか。確かに、いざ自分が事故の目撃者になったら、驚きすぎて、どっちの信号が青だったかなんて、覚えていないかも…

 

命の恩★

行楽地の遊歩道とその周辺で次々見つかるバラバラ死体の一部。捜査線上に上がったのは、被害者の「命の恩人」で…?

ミステリー小説によく登場する切断遺体。「なぜ切断したか?」という理由が謎解きの鍵になってきますが、本作では……??

真相がわかると、なるほど!と膝を打ちました。この理由は思い浮かばなかった。

犯人の思考がなかなか狂っていてよかったです。すごく冷静に判断しているのに、根っこの部分がおかしい。命の恩のために、ここまでするか、というぶっ飛び具合が、冷静な葛警部との対比で、余計に際立ってました。

 

可燃物

表題作。

住宅街での連続放火事件。放火犯の「意外な動機」とは?

こちらもまた、犯人の動機がぶっ飛んでいてよかったです。怨恨や愉快犯的な理由の放火を想像していましたが、まさかこうくるとは。

火災は怖いよね。

 

本物か★

ファミリーレストランで、立てこもり事件発生。

避難した客たちの証言から、葛警部はどこか違和感を感じて…

意外性があって収録作の中では1番好きでした。収録作の1番最後が傑作だと、満足度高いよね。証言を頼りに捜査する様子は,安楽椅子探偵みたいで面白かったです。

 

可燃物の登場人物について

出版社の紹介ページでは「群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。」とあるので、葛警部シリーズとして、続編も刊行されるのかも?

捜査に特化しキャラクター性を極力排した作品、とはいえ、シリーズ化するとなると、警察キャラを、今後どう膨らませていくか、は気になるところです。

シリーズ化に備えて(?)可燃物に登場する警察関係者をまとめました。

 

  • 葛(かつら)警部 群馬県警本部 刑事部捜査第一課
    冷静で優秀。事件解決のためなら部下をたてることも上司の顔色をうかがうこともしないので、組織の中では疎まれているが、その捜査能力、判断力は信頼されてもいる。
    葛警部の入る現場は行き詰まり、冗談ひとつでない。
    事件発生の一報が入ったら、まず空を見るのが習慣。

  • 小田警視 刑事部捜査第一課 強行犯捜査指導官
    葛を直接指揮する立場の人物。辣腕の刑事だったが、現在は上層部と現場の間を取り持つ調整型の指揮官。

  • 川村 捜査本部副本部長
    「ねむけ」で交通課と刑事課の間の調整を取り持っている描写あり

  • 新渡戸四郎 群馬県警本部 刑事部 捜査第一課長 
    葛の上司にあたる。可燃物ではかなり珍しく、キャラクターが深掘りされ、フルネームも明らかになっているので、今後のシリーズで活躍する可能性大?(と、管理人わんこたん 勝手に予想)

    新渡戸は周囲をイエスマンかつ有能な部下で固めたい
    →しかし有能な刑事を引っ張ってくるゆえ、イエスマンとは真逆の実力主義の集団を形成。
    →誰も新渡戸にイエスしてくれないので、部下に対していつも機嫌が悪い。(そして部下の葛は、新渡戸が不機嫌でも一向に気にしない)

    という、気の毒、というか一周回って笑える人物設定になっています。

  • 主藤 検視官

  • 桐乃教授 前橋大学医学部教授 司法解剖を行う
    主藤も桐乃教授も、余計な断定はしないタイプ。どことなく葛とキャラが似ています。

  • 佐藤 葛班内随一の聞き込み名人

  • 村田 葛班内二番手の聞き込み名人 葛警部に反感を抱きつつ、ちゃんと有能なので、取り調べでは、葛警部との阿吽の呼吸を見せる場面も。

  • 宮下 刑事
    葛の部下

  • 桜井 鑑識班長

 

可燃物 (文春e-book)
可燃物 (文春e-book)
 

 

可燃物の次に読みたい おすすめ作品

オーソドックスな捜査モノからクセ強刑事まで!名作揃いの警察ミステリーの中でも、さらっと楽しめるわんこたんおすすめの2作品を紹介します。

 

誰かが私を殺した /東野 圭吾

 

人気シリーズ最新作が、朗読で登場

突然背中に衝撃を受け、殺された「私」。どうやら誰かに撃たれたらしいのだが……いったい、なぜ、誰によって?

警視庁捜査一課 加賀恭一郎警部の背後霊になって捜査の行方を見守る「私」が主人公の、異色のミステリー。

異例の朗読版で登場となった加賀恭一郎シリーズの第13弾ですが、本作単体でもちゃんと楽しめます。豪華なキャスト陣にも注目。

 

感想記事はこちら▶︎朗読だけで楽しめるミステリー 誰かが私を殺した/東野圭吾 感想 - わんこたんと栞の森

 

作家刑事毒島 (幻冬舎文庫) /中山七里

 

葛警部と真逆!?クセ強毒舌刑事

作家でありながら刑事?作家刑事毒島が、出版界の闇をぶった斬る!

承認欲求こじらせモンスター犯人が、毒島の毒舌でバッサバッサと切り捨てられるシリーズです。

いかにもなテンプレ感ある犯人像は好みが分かれますが、痛快なミステリーでスカッとしたいなら、おすすめ!

 

作家刑事毒島
作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)
 

 

感想記事はこちら▶︎出版業界をぶった斬る問題作!?作家刑事毒島の感想を書きました - わんこたんと栞の森

 

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