貴志祐介作「新世界より」の感想と考察です。アニメ版の無料視聴方法も!
\\全3巻!Kindleの合本版がおトクです//
小説「新世界より」あらすじ
舞台は■■年の日本。神栖66町(現代の茨城県)の集落。現代社会と競べ随分質素ではあるものの、人々はごく平和的な生活を送っていました。
皆、「呪力」を使えること、変な生き物を使役していること、そして、時々こどもが消えることを除いては。
徐々に明らかになる世界の真実と、絶望に立ち向かう少年少女。
第29回日本SF大賞 受賞作です。
- 著者:貴志祐介
- 発売:講談社 2008/1/24
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 貴志祐介さんについて
日本のホラー小説界を代表する作家さん。ホラー以外にも人間ドラマ、ミステリーそしてSFと幅広く展開しています。
そのどれもがおもしろく、映像化された作品も多数。
わんこたんはクリムゾンの迷宮が好きだった!
代表作を集めてみました。あなたの知っている作品はありますか?
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貴志作品のおもしろいところてんこもり!
新世界よりの魅力
「新世界より」はホラー要素を下敷きにしつつ、SFならではの綿密な世界設定、社会設計が魅力。
呪力を扱える人間の登場で社会が、環境がどのように変化したのか?という点が念入りに描写されています。
そのうえで、これまでの貴志作品の要素が随所に取り入れられているところもポイント!
- 生物の遺伝子改変のくだりは「天使の囀り」
- 恐ろしい■■からの逃避行は「クリムゾンの迷宮」
- 絶望に立ち向かう少年少女の決死の覚悟は「悪の教典」「青の炎」を彷彿とさせます。
文庫版で全3巻。
かなりのボリュームですが、次々に展開される手がかりと謎により、寝不足になること確実です。
原作小説とアニメ版の違いについて
「新世界より」は2012年にアニメ化されています。
アニメ版「新世界より」Prime Videoのページはこちら
物語の大筋は原作版と変わりませんが、「旧時代」の登場タイミングが異なります。
- 原作:中盤で「旧時代」の歴史が明らかに。
- アニメ版では第1話~第3話の冒頭に断片的に旧時代の映像が挟まれます。「これはいったい、、、?」と謎を提示し、序盤から不穏な空気を感じさせる良演出!
また、原作版だと視覚的にわかりづらいシーン(全人学級での競技シーンや、東京での戦闘シーンなど)も映像だとわかりやすく、原作既読勢にとっても新たな発見があります!
かわいらしいキャラビジュアルで描かれるアレなシーンやコレなシーンのギャップも魅力。奇狼丸のビジュアルのケモみがカッコイイ!
dアニメストア for Prime Videoの無料体験で新世界よりを見てみる
新世界より 解説と考察
新世界よりの「あれ、どうだったんだろう?」について、考察してみました。
ネタバレを含みます、ご注意ください!
スクィーラはいつから「神栖66町襲撃計画」を考えていたのか?
本作で重要な役割を果たすバケネズミのスクィーラ(野狐丸)。呪力を持つ人間たちによる支配を破ることを悲願とする、「もう1人の主人公」です。
スクィーラの策略によって壊滅的な被害を受ける人類。彼はいつからこの作戦を練っていたのか。主人公たち(子ども時代)と出会った時から?それとも真理亜と守が行方不明になったことを知ってから?
明言はされていませんが、バケネズミたちは、ミノシロモドキ等を元に、人間についてかなり詳細な情報を得ていた、ということをにおわせる描写があります。
自分たちバケネズミの出自や、愧死機構などについてかなり初期から(主人公たちと初めて出会う前から)把握し、人間に復讐するチャンスをうかがっていたのかもしれません。
真理亜と守の結末は?
合本版の761ページで「失踪してから二、三年後」「遺骨を回収した」「DNA鑑定までしてもらった」とあるため、2人が失踪して2、3年以内に亡くなったことは確実。
2人の死因は不明です。野狐丸の計画では2人が産んだ子を幼いうちに手に入れる必要があったでしょうから、子どもを産んですぐにバケネズミに殺されてしまった、という可能性が濃厚でしょう。
悪鬼と業魔、なにが違うの?
神栖66町の子供たちは、繰り返し、正体不明の「悪鬼」と「業魔」の恐ろしさを教えられます。
最初は悪鬼の上位存在が業魔なのかな?と思っていました(名前的に強そうだし)。やがて、両者はそれぞれ全く異なる「〇〇」であることが明かされます。
悪鬼
ラーマン・クロギウス症候群 別名:「鶏小屋の狐」症候群の患者を指す呼び名
「攻撃抑制」を持たず、かつ「愧死機構」が機能しない状態の人間。
300万人に1人の確率で、生まれてくるとされる。
245年前に神栖66町で悪鬼が発生した際の描写は身の毛もよだつ恐ろしさ。必見です。
業魔
橋本・アッペルバウム症候群の重篤期患者に対する呼び名。
大量の呪力漏出がとめられなくなってしまった状態。
本作では⬛️が業魔となりますが、その前(合本版、420ページ)に、早季の持つ業魔よけのお守り(無垢の面)が溶ける、という描写があります。
この時点で⬛️からの過剰な呪力漏出が始まっており、その影響で無垢の面が溶けてしまった、⬛️の業魔化の伏線だった、と考えられます。
物語の最後には以下のような分析もされています。
著しい緊張、動揺に曝される→呪力の漏出によって遺伝子が変異→攻撃抑制と愧死機構が不完全な子供が産まれやすくなる→悪鬼になりやすい?
精神的に不安定な両親によって育てられた子供→業魔になりやすい?
八丁標(はっちょうじめ)の意味は?
人間の居住地を囲むんでいる「八丁標」
子ども時代には「外から悪いものが侵入するのを防ぐため」と説明される八丁標。
実は人間から常に漏出する呪力を、外に逃がす安全装置であることが、示唆されます。
漏出する呪力が原因で、八丁標の周辺では生物の遺伝子が改変。
現代社会から1000年しか経過していないにも関わらず、生物の進化が大幅に進んでいます。
「新世界より」キャラクター解説
作中で特に印象的なキャラクターについて解説します。
「最強の人間」鏑木 肆星(かぶらぎ しせい)
鏑木 肆星 は、最強の呪力をもつ人間で、神栖66町の、いわば「軍事力」の中心となる存在。「最強」ゆえに畏敬の念を集めています。
瞳孔が左右に2つずつ、計4つあるのも特徴。
以下は子供時代の覚のセリフ
あの人、本気で集中したら、地球を真っ二つにするくらいの呪力があるんだって......
(新世界より Ⅰ若葉の季節 より)
他にも
「宙に真空のレンズを作って望遠鏡のようにできる」
「遺伝子を改変したり発生過程を操作して思い通りの生物を作り出せる」
等の逸話が登場。
⬛️が業魔となる前、教室で⬛️の異変に一瞬で気づいたかのような描写も。
アニメ版では、原作イメージよりも若々しい見た目で描かれていたね。
鏑木 肆星は なぜ負けた?「最強の呪力」の結末
鏑木 肆星氏はスクィーラによる襲撃を受け、バケネズミたちを一方的に殺戮します。
しかしスクィーラが連れてきた「赤毛の子」になすすべもなく敗北。
あっさり殺されてしまって、絶望感がすごかった。
鏑木 肆星 が負けたのは、以下の呪力の弱点を突かれたためです。
- 呪力で呪力を防御することはできない
- 人間に備わっている「攻撃抑制」と「愧死機構」のため、「人間」は「人間」を攻撃できない。
スクィーラが連れてきた「赤毛の子」を同じ人間である「鏑木氏」は攻撃できません。
このため、鏑木氏は一方的に「赤毛の子」の呪力で攻撃され、敗北してしまいました。
じゃあなぜ「赤毛の子」は同じ人間である「鏑木氏」を攻撃できたの?
当初「赤毛の子」は「悪鬼=愧死機構の作動しない人間」と思われていましたが、、、
その真相は終盤で明らかになります。