激しい拷問を受け死亡した捜査官。彼が決死の思いで残した手掛かりには、市場に流出した新型機甲兵装の情報が残されていて……
SFでありながら、今一番熱い、警察小説でもある機龍警察シリーズ。 その3作目、龍機兵搭乗者、ユーリの過去にせまる、暗黒市場の感想を書きました。
7/14まで。三体、プロジェクト・ヘイルメアリー、アガサクリスティ作品など、SF・ミステリーの傑作のまとめ買いチャンスです。
\2025/7/17まで/
機龍警察 暗黒市場 あらすじ
唐突に、警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部。ユーリは旧知のロシアン・マフィアに近づいていた。
一方、市場に流出した新型機甲兵装が〈龍機兵〉の同型機ではとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手。
闇に潜むロシアの犯罪集団に、ユーリと特捜部が立ち向かう!
- 著者:月村 了衛 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:早川書房 2020/12/03
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 月村 了衛氏と機龍警察シリーズについて
小説家、月村了衛氏は「機龍警察」でデビュー。
「警察組織」「悪い奴ら」が登場する作品を多く執筆されています(←管理人わんこたんの個人的なイメージ)
以下に著者の作品の一部をご紹介(書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ)。
虚の伽藍は直木賞候補作として話題になりました。
そのデビュー作である機龍警察シリーズは、世界中にテロリズムが蔓延し、市街地での近接戦闘を主眼におく兵器「機甲兵装」が台頭した世界が舞台。
テロの危機から国家を守るため、新設された警視庁特捜部。特捜部に配備された3台の新型龍機兵の搭乗者、姿、ライザ、ユーリの戦いを中心に描かれる、警察×SF×ミステリー×国際サスペンスな物語です。
おもしろすぎて、管理人わんこたん、ドはまり中なわけです。シリーズ既刊は以下の通り。
3作目 暗黒市場はこのミステリーがすごい!2013年版 国内編で3位、第三十四回吉川英治文学新人賞に輝いています。
機龍警察の良さが、多くの人に知られるようになったきっかけ、といえるかも。
機龍警察 暗黒市場 感想
- 1作目 機龍警察では 姿俊之(機体名:フィアボルグ)が活躍
- 2作目 自爆条項では ライザ・ラードナー(機体名:バンシー)が活躍
ついに3作目ではユーリ・ミハイロヴィッチ・オズノフ(機体名:バーゲスト)にスポットが当たる展開。待ってました!
しょっぱなからユーリと警視庁の契約解除
↓
ユーリがロシア裏社会と手を組む?裏切り?というきな臭い展開ですが、さすがにこれは潜入捜査だよね、と、読者みんな思ったはず。
そこから第2章で語られるユーリの過去が、またとにかく泣かせるんですわ。
あくまで警察官として、正義と公僕をつらぬくユーリが最高すぎる
龍機兵操縦者の3人のうち、専門の戦闘訓練をうけてきた(と思われる)姿やライザと違って、ユーリは警察出身。
陰謀にはめられ、ロシアから逃亡し、流れ着いた日本で生き延びる為にバーゲストへの搭乗を選択。
おそらく戦闘スキルは姿やライザより劣る。でもそれを信念でカバーするユーリはやっぱりかっこよくて最高なのです。
- 過去にユーリを助けたロシアンマフィア、ゾロトフとの邂逅・対峙・決着。
- 1巻から身に着けていた黒い皮手袋
- 痩せ犬の三カ条
などなど、散りばめたキーワードをきれいに、もっとも熱いタイミングで回収してくる。泣けますわ。ダムチェンコ副局長……
ゾロトフとの契約は破棄され、残されたのは龍機兵との契約。
契約にしばられる、という点で依然と変わらなくても、今度は自分の選んだ道を歩いていくユーリ。。
警察官というのは正義の象徴でありつつ、その国の政府には絶対に逆らえない、公僕(犬)でもある。
ロシア警察官時代には、成し遂げられなかった信念。今度こそ日本の警察官として、正義の公僕でありたい。そんなユーリの決意を感じるラスト!最高でした!
結局、<敵>の正体はつかめず
暗黒市場で、龍機兵搭乗者3名全員の見せ場が一通り出そろいました。
しかし結局、日本の警察に巣くっているらしい<敵>の正体はわからず。
警備企画課の小野寺と、その上司、堀田課長が敵なのか味方なのかも、相変わらず不明。<敵>が警察組織内だけでなく外務省にもいるらしい、というふんわりした情報しかわからなかった……
相変わらず先を見通しつつ内心を明かさない、謎めいた沖津さんの行動も、「沖津さん、いったいどこまで考えているんだ。。。」と驚いてばっかりの城木・宮近コンビもちょっと見飽きてきたので、そろそろ新展開に期待!
關 剣平(クワン・ジェンピン)が、またまた暗躍
第1巻で登場した、香港有数の実業会「馮グループ」の日本代理店「フォン・コーポレーション」のCEOとして登場した馮と、その右腕、關(クワン)。
中国黒社会とのつながりが匂わされ、いかにも怪しい動きをしていた關が、3作目 暗黒市場で、またも動いていました。
今回の關は、中国政府の手先として、バララーエフ捕縛のために動いており、実は4つ巴(5つ巴?)の戦いであったことが明らかになります
- 武器商人バララーエフ:東日本大震災で壊滅した日本の漁村跡を隠れ蓑に、武器取引で一儲け
- 中国政府:ロシアの汚点であるバララーエフを捕まえて、天然ガス輸出をめぐるロシアとの対立を有利に進めたい
- ロシア政府:中国の手に落ちる前にバララーエフを始末したい。(実はゾロトフは、マフィアと見せかけてロシア政府の手先だった)
- 日本警察:日本で武器取引を行うバララーエフを逮捕したい
- <敵>:???(日本警察の妨害をしてくる)
今回、結果的に關はユーリの命を助けることに。(バララーエフを捕まえたいという、利害の一致のため)
いずれ關と正面切って戦うことになるのでしょうか。今後の展開に注目したい!
しかし勢力関係がややこしい。こうしてブログに書かないと、忘れてしまう。
今回新しく登場した機甲兵装
- 新型機甲兵装 キキモラ
パキスタン政府が機体返還を要求しているが、日本政府は応じていないとのこと。
- バーバヤーガ
- フレヴニク
- ドヴォロヴォイ
今回は対ロシアマフィアということで、スラヴらしいネーミングの機体が多数登場。
新しくでてきた人物たち。今後のストーリーに関わってくるのか?
- 伊良賀 久平
長年ロシアとの北方領土返還交渉に取り組んできた古参議員。ロシアに太いパイプを持ち、対露交渉に欠かせない人物とされ、外務省も頭が上がらない様子。
どこかのムネオを思い出します笑
- <海>の黄
サハリン周辺組織のリーダーの老人。抜け目のない「玄人」らしい、というのは關の評。ロシア警察から逃亡したユーリは、一時期この黄のもとにいました。
いずれ再登場なんてことも……ありうる?
機龍警察 暗黒市場の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。
同志少女よ、敵を撃て /逢坂 冬馬
独ソ戦が激化する1942年。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために、戦うことを選ぶソ連の女性狙撃兵セラフィマ。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?
リアルな戦場描写と、結末が心にしみる傑作長編。すべてを失い、新たな仲間を得て、真の敵を見定めようとするセラフィマの姿は、機龍警察のユーリにつながるものがあります。2022年本屋大賞受賞作。
感想記事はこちら▶︎同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 あらすじとネタバレ感想 - わんこたんと栞の森
可燃物 /米澤 穂信
寡黙で冷静、周りからは若干疎まれつつ、優れた判断力で黙らせる。群馬県警の葛(かつら)警部が主人公。
龍機兵に搭乗者するメンバーのような個性はなくとも、地道な捜査で犯人の本性が炙り出される過程がたまらない!「捜査特化型」の警察小説です。
感想記事はこちら▶︎いぶし銀の魅力が光る「捜査特化」ミステリー 可燃物 感想 - わんこたんと栞の森
おすすめ作品、他にもいろいろ!
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