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人類は小惑星国家へ 天冥の標Ⅲ アウレーリア一統 感想と解説

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

地球が冥王斑の災禍に見舞われてから約250年後の23世紀。人類は木星の謎めいた建造物、ドロテア・ワットに降り立つ。

推定8500年前に建造されたとされる、不気味な遺跡とアウレーリア一統の攻防を描いた、シリーズ3作目 アウレーリア一統の、感想と解説を書きました。

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統
天冥の標Ⅲ アウレーリア一統
 

 

 

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統 あらすじ

西暦2310年、肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》の国、ノイジーラント大主教国。かの国で海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカ に暮らす救世群の人々と出会う。

伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたと いう彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うが……

 

 

著者 小川 一水 氏と天冥の標シリーズについて

小川一水氏はSF作家で、ライトノベルから重厚な作品まで、様々な作品を手がけています。作品の一例は以下の通り。

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA)
天涯の砦
疾走! 千マイル急行 上 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-30)
時砂の王
老ヴォールの惑星
アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

大河SF 天冥の標シリーズは、2009年に刊行開始。10年をかけ全10巻・17冊で2019年に完結し、2020年に第40回日本SF大賞および第51回星雲賞・日本長編部門賞の両賞を受賞しました。

壮大でありつつ、ライトノベルような軽やかさも併せ持つ、小川一水さんの代表作!以下にシリーズ一覧を並べました。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ。

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統
天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち
天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河
天冥の標Ⅵ 宿怨 PART1
天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC
天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART1
天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1
冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART1

 

各巻の紹介記事はこちら
1 メニーメニーシープ 2 救世群 3 アウレーリア一統
4 機械じかけの子息たち 5 羊と猿と百掬の銀河(作成中) 6 宿怨(作成中)

5作目以降は記事投稿をゆっくりお待ちください

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統 感想

2作目の冥王斑パンデミックからさらに200年以上が経過。

いったい何がどうなったのか?という疑問から、不気味なドロテア・ワット、からのアウレーリアの活躍、と、最後までワクワクしながら読みました。

1作目 メニー・メニー・シープで登場した、アクリラやセアキの血縁者、カヨやフェオドールらしきもの、救世群やリエゾンドクターなども登場し、かれらがどうやってハーブCにつながっていくのか?という、伏線・謎も大量にばらまかれております。

ますます続編が気になる展開。

 

ドロテア・ワットが不気味すぎる

冒頭、2249年のドロテアワット探索。大変不気味でよいですね。

天冥の標シリーズ ドロテア・ワットの想像図イラスト

ドロテア・ワットの想像図

 

  • 人類の狩猟生活時代(8500年前)から、ドロテアワットが木星にあった
    ↑やばい

  • 木星、大赤斑の直下にドロテアワットは存在する。そもそも木星の大赤斑はドロテアワットによるものかも。
    ↑この設定が最高

  • 明らかに人類文明とは違う造形。7種類の大きさの違う建造物は、「どのような文明がドロテアワットを訪れてもいいように」周到に準備されたもの?
    ↑不気味でやばい

  • 6本脚のサルがいる。
    2作目 救世群で冥王斑の元凶となったクトコトがこんなところに。明らかにドロテア・ワットが元凶じゃん。悪意しかないじゃん。
    2作目 救世群のラストで、クトコトが宇宙から地球にやってきた可能性が示唆されていましたが、3作目で確定的になりました。

    クトコトのイメージ図。猫っぽく描いたけど、ほんとはサルっぽいらしい

 

サンタクルス・クリオーリョ出身のゲルトルッドとアウラ

ゲルトルッド、アウラたちの乗った輸送船が海賊におそわれ、それをアウレーリアたちのエスレル艦が救援。

妹のアウラを守れなかったと悔しがるゲルトルッドですが、実は同じ名前のアンドロイドが4作目 機械じかけの子息たちに登場します。

実はアンドロイドの作成者、ウルヴァーノはゲルトルッドやアウラたちとは親戚関係。要は、妹を守りたい姉の気性をそのまま同名のアンドロイドに搭載したってことですよね。

ウルヴァーノの性癖的にも好みだったんかな、この姉妹の関係性が。うーん、変態的。

 

天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち
天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち
 

 

 

アダムス・アウレーリア艦長 登場!!

颯爽と登場するエスレルの艦長、アダムス・アウレーリア。

その名前、風貌と、体内に蓄積した電気で二酸化炭素還元できる酸素いらず(アンチオックス)の体質。第1作 メニー・メニー・シープに登場する、アクリラ・アウレーリアの先祖であることは間違いなし。アクリラちゃん!

キャラクターの造形に、かなり著者の「癖」を感じますねえ。

  • 結い上げたプラチナブロンドと無垢ダイヤのバレッタ
  • 深緑の眼
  • 少女性と男性性を兼ね備えた美貌の少年 
  • 白と金のネルソンチェックのキルトスカートに胸当て。白のストッキング。
  • 白兵戦では白い抗弾マントに髪を覆うハーフヘルメット

 

しれっとロボット型マネキンメイドのカヨが登場。第1作 メニー・メニー・シープに登場するカヨと同じ機体でしょうか?

 

 

ノイジーラントの文化がぶっ飛んでいて面白い

アウレーリアはじめ、ノイジーラントの人たちはかなりおおらかな文化の持ち主。異性婚、同性婚、3人以上の婚姻関係……様々な形のカップルが愛を育んでいます。

同姓婚でも人工繁殖技術で子供を授かることができ、それをタブーとしない社会。過去の常識や習慣から切り離されることを恐れない社会。

初めて読んだ時は衝撃的だったなあ。そしてその自由な社会の形に憧れを抱きました。

 

一方でノイジーラントのような「極端な」価値観は次第に薄れ、平均化しつつあるという事実も語られます。どうもその傾向の裏では、ロイズ非分極保険社団が一枚噛んでいるようで……

 

救世群たちは小惑星エウレカへ

2作目 救世群で登場した冥王斑回復者集団である救世群(プラクティス)。

最終的にコスタリカに移送→その後は月のキュンティア居留地へ、2992年前のキュンティア居留地での事故を経て、小惑星エウレカに進出していました。

救世群連絡会議の議長はグレア・アイザワ。相澤千茅の子孫のようです。

 

ケープコッドの末裔から買い取ったドロテアレポートを、海賊エルゴゾーンに奪われたと主張するグレア。常に資源枯渇ギリギリで生活している救世群としては、強大な動力炉であるドロテア・ワットをなんとしても手に入れたい様子。

 

太陽系最大の小惑星都市 セレスとロイズ非分極保険社団

250万人が居住。

セレスの北極はロイズ非分極保険社団の経営する自由都市。ロイズは保険であらゆるものを支配しているといわれ、そのお膝元のセレスシティは海賊活動の隠れ蓑になっている、ともいわれています。

このⅢ巻はロイズの初登場シーン。今後のロイズの暗躍に目が離せない……?

この他、ロイズは傘下のコンサルタント企業を通じてアンチオックスの妨害をしたり、あやしげな動きを見せています。

 

アンチオックスたちは、海賊と同じなのか

アウレーリア筆頭に、ノイジーラントのアンチオックスは、かなりの強硬姿勢で海賊エルゴゾーンの殲滅を目指しますが、その代償は大きいものでした。

多くの仲間を失い、挙句の果てに、「アンチオックスも海賊も、メンツのために暴力的に何かを奪い、取り返そうとする存在であり、そこに大きな違いはない」という事実を突きつけられ……

アダムス・アウレーリアがどん底に落ちたところで、やっと救世群(プラクティス)の重い苦しみを少しだけ理解する、というのがグっときますね。

果たして、アンチオックスと海賊を隔てるものはなにか。これが、3作目 アウレーリア一統の大きなテーマになっています。

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統の登場人物・用語

その他、登場するキャラクターをまとめました。

  • ドロテア・カルマハラップ少将
    ドロテアワット調査の指揮官。ケープコッド出身

  • エスレル副長兼航行長(チョッサー)カレン・ミクマック
    アダムス・アウレーリアの右腕(というか恋仲)となって支えます。アダムスは金髪ですが、ミクマックは北米先住民系の血筋。赤い肌にざっくり黒い長髪が印象的。う~ん、お似合い。

  • エスレル の機関長 アマーリエ・ウードホルケ
    白い歯で凶暴に笑う緋色の髪の女性。妖艶。

  • デイム・グレーテル
    ノイジーラント元首。小柄な121歳の高齢女性。純粋なお飾りの象徴。
    ・・・と思うじゃん?

  • ルシアーノ・クルメーロ・ロブレス
    救世群連絡会議(PPL)の副議長。名前からして、2作目に登場し千茅と手を組んだクルメーロの子孫のようです。

  • エルゴゾーン
    海賊集団の通称。「ナインテイル」を象徴するアイコンを掲げている、らしい。
    リーダーはイシス。

  • イシス
    海賊エルゴゾーンのリーダー。冷酷で狡猾な女性であり、本来ならば80近い老齢ですが、自らのクローンを複製して、その若さとカリスマ性を保っているようです。

    イシスのセリフ「おまえが正当で清いと思っている、その法や権威を疑え」

    今後の展開において、敵となる存在を示唆しているようにも思えます。

  • クモヤマ 古い日本人の末裔でとても内気。人間を怖がって操り人形のアリスに接客させている。セレスのパーツやであり情報屋。ちょっとしか登場しいませんが、すごく印象的。

  • 瀬秋 樹野 (セアキジュノ)
    セアキカドムの血縁者っぽいのがここで登場。日本特定患者群連絡医師団調査員 (リエゾンドクター)のメンバー AIのフェオドールも一緒であり、つまりⅡ巻に登場する矢来華奈子の子孫。
    リエゾンドクターは救世群と外の社会の間にたち、両者の利害を調整する団体。一方で救世群に危険な同行がみられないか、監視する役割も持ちます。

  • フェオドール
    セアキジュノの家系に代々くっついているAI。その中身、謎の被展開体ダダーの来歴は、Ⅱ巻の断章に描かれている。
    Ⅲ作目で、念願かなって実物のボディを手に入れるが……なおロイズ傘下のメーカー製品には難色を示し、自らロボットの設計図を作っている。

  • ウルヴァーノ
    機械技師。ノイジーラントと友好国家の、サンタクルス・クリオーリョの主星、ヒギエアに在住。華麗な戦艦、エスレルの換装を担当していた。ド変態じじい。
    この人が生み出した「あるもの」が天冥の標Ⅳに登場……?

  • 汎天体動的共同体(パナストロ・ダイナミック・コミュニティ)
    エオス族小惑星軍を中心に2500万人の人口を擁する大国。ノイジーラント大主教国とはライバル関係にあるらしい。

  • 小惑星セナーセー
    ノイジーラントの本拠地となる小惑星。2つの天体(小惑星?)をワイヤでつなぎ互いに公転させ、1Gの重力を生み出すという特異な形態をしている。
    天冥の標Ⅰでも、「海の一統」が拓いた街に同じ名前がつけられているが、関係は……?

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統の背景情報

1作目 メニー・メニー・シープが2803年、2作目 救世群が201X年、そして3作目のアウレーリア一統が2310年、と、年代がとびとびに。あれ?人類いまどうなったの?がわかりにくかったので、あらためて整理しました。

 

  • 201X年 冥王斑の流行と、救世群(冥王斑の回復患者群)の登場
    この経緯は2作目 救世群にて。救世群はその後、居留地を月にうつされています。

     

  • 21世紀のころ
    人類は小惑星帯への進出を進めていきます。小惑星帯には氷や生命に必要な有機物や資源が見つかっていた……というのが天冥の標シリーズの設定。

  • 2222年 クアッド・ツー締結。
    正式名称は第三次拡張ジュネーブ条約。先制的に大規模殺戮につながる宇宙戦闘を禁止。要するに宇宙で大規模核戦争すんな。小惑星国家が一発で滅亡しちゃうだろ。という理屈。

    ちなみに、この法律を施行し、違反者に罰をくだす組織が設置され、のちに登場するロイズ非分極保険社団の原型となります。←この組織、天冥の標シリーズでは重要なので要チェック。

    大規模殺戮兵器が宇宙戦争で使えなくなり、白兵戦を想定した強襲戦艦が活躍する時代に。アダムス・アウレーリアが艦長をつとめる強襲戦艦「ドライな淑女(ミス・ディフ)」ことエスレルも、こうした背景から生まれました。

  • 2249年 ドロテアワット探索と、ケープコッド・地球連合軍による戦争
    3作目 アウレーリア一統の冒頭に描かれた通り、ドロテアワットの探索によりドロテアワットが木星から切り離されます。

    同時に小惑星国家ケープコッド・地球の連合軍と他の小惑星国家との間で戦争が勃発。地球・ケープコッド軍が敗北します。

    ちなみに、1作目 メニー・メニー・シープで、アクリラがハーブCの地下でドロテアを発見していますが、ドロテアとドロテアワット、どのように関係していくのでしょうか?

 

天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち に続く

4作目にも引き続き救世群たちが登場。結局ドロテアワットを手に入れることのできなかった彼らは、この後どうなっていくのでしょうか。4作目 機械じかけの子息たち以降も感想と解説を書いていきますので、ぜひ読んでみてくださいね。

 

天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち
天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち
 

 

4作目 機械じかけの子息たちの紹介記事はこちら▶天冥の標Ⅳ シリーズ屈指の大問題作!? - わんこたんと栞の森

 

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統の次に読みたい おすすめ作品

木星の巨大建造物、ドロテア・ワット。そんな木星とその衛星が登場するおすすめSF作品をご紹介!

 

星を継ぐもの 巨人たちの星シリーズ /ジェイムズ・P・ホーガン

 

謎が謎よぶ!古典SFミステリーの傑作

月面で見つかった遺体「チャーリー」は、人類と同じ姿をしていながら、死後5万年経過していた…… この謎に正解はあるのか?地球、月、そして木星の衛星 ガニメデへ…謎解きの旅の終着点を目指す、科学者たちの物語です。

 

星を継ぐもの 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
星を継ぐもの 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
 

 

感想記事はこちら▶︎謎の死体 チャーリーの正体は?星を継ぐもの 感想 - わんこたんと栞の森

 

さよならジュピター / 小松左京

 

木星どころか太陽系大ピンチ!?

22世紀。木星太陽化計画。冥王星軌道外からやってくる彗星の数の激減……

やがて明らかになる太陽系最大の危機とは?

日本SFのレジェンド、小松左京氏による小説。そもそも木星太陽化ってのがめちゃめちゃ気になる!

読め次第感想を書きたいと思います!

 

さよならジュピター (徳間文庫)
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