この謎に正解はあるのか?地球、月、そして木星の衛星 ガニメデへと至る謎解きの旅の行方は。伝説的な傑作SFミステリー 星を継ぐもの の感想を書きました。
こいつはめちゃくちゃおもしろかった!
星を継ぐもの あらすじ
月面調査隊が発見した、真紅の宇宙服をまとった死体は、生物学的には現代人とほとんど同じにもかかわらず、5万年以上前のものだった……
「チャーリー」と名付けられた、その死体の正体は?そして、木星の衛星ガニメデで発見されたもうひとつの事実とは?壮大なる謎に人類が挑む、SFミステリーの金字塔です。
- 著者:ジェイムズ・P・ホーガン → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 翻訳:池央耿(いけひろあき)
- 発売:創元SF文庫 1980/5/23
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 ジェイムズ・P・ホーガンと、巨人たちの星シリーズについて
ジェイムズ・P・ホーガン氏はイギリス生まれのSF作家。
1977年「星を継ぐもの(Inherit the Stars)」でデビュー。日本でも根強い人気を誇る、ハードSF作家です。
星を継ぐものは、巨人たちの星シリーズとよばれる、全5部作の1作目ですが、それ単体でも物語としては完結しており、楽しめます。
以下にシリーズ全5部作6巻を並べました(書影クリックでAmazonのリンクにジャンプします)
最終巻となる5作目ミネルヴァ計画の邦訳版は、2024/12/13に発売!管理人わんこたん、いつか全5部作読める日は来るのかな…...
星を継ぐもの 感想
SFミステリーの傑作と言われる星を継ぐものですが、噂にたがわぬ大傑作!きちんと謎解きミステリーとして成立しており、驚愕のラストにも大興奮でした。
詳しい感想を以下に書いていきます。
以下、星を継ぐもの の内容に触れる箇所があります。未読の方はご注意ください。
謎を理詰めで解き明かす、ここちよさ
人間と同じ姿かたちでありながら、月でみつかった遺体は5万年前のものだった、という謎。この謎に主人公のハントはじめ、世界中の研究者がいどみます。
月の死体(仮名:チャーリー)の所持品から言語構造を特定し、カレンダーを解読して1日の長さを計算……などなど、理詰めで一歩ずつ、事実を解き明かす様子が丁寧に描写される展開。まさに「SFでありつつミステリー」なんですよね。
ハント博士とダンチェッカー博士
主人公ハントが冷静な研究者として描かれる一方で、生物学者のダンチェッカーは、なんだか頑固でチャーリー地球人説に、こだわる、偏屈なキャラクターとして登場します。
なんだか、やなやつ笑 なダンチェッカーですが、彼もきちんと理論の裏付けがあったうえで、自説を主張しているのですよね。最後にダンチェッカーが、驚愕の仮説を披露するシーン。ゾクゾクしました。
ハント博士とダンチェッカー博士、正反対なようで、根底に通じ合うものがあるのか、二人で仲良く「飲みにいく」シーンもあったりして、ほほえましいです。
このコンビ、続刊でも活躍するようなので、続きが楽しみ!
ハント博士のトライマグニスコープ
ハント博士の発明したトライマグニスコープは、ニュートリノビームで物体の内部を完ぺきに走査できるという代物。5万円前の遺体と、その所持品を調査するのに大活躍。
ニュートリノではありませんが、ミューオンを使ってピラミッド内部の巨大空間を発見することに成功した、という最近のニュースを思い出しました。
参考:クフ王のピラミッド内に巨大空間を発見!|社会技術・社会基盤|事業成果|国立研究開発法人 科学技術振興機構
ちなみに、ニュートリノで物体を透過して内部を観測する、というアイデアは、円 劉 慈欣短編集収録の、鯨歌にも登場します。
▶「円 劉慈欣短編集」のネタバレ感想。短編から味わう劉慈欣SFの魅力! - わんこたんと栞の森
傑作ぞろいで、かつ読みやすい。SFならまずこれ読んでみて!といいたくなる、おすすめ短編集です。
なんでも透過できて、精度も高くて、非侵襲の検査装置が発明されたら、世界はどんなふうに変わっていくでしょうか?なんだかワクワク。
ユートピアな未来社会の描写が楽しい
大前提として、星を継ぐもの、の世界ではエネルギー問題が解決したことで大国同士の対立がなくなり、民族・国家・宗教の境目が曖昧になって融和し、世界中がその技術を宇宙開発に向けている、というユートピア社会。
イギリスからサンフランシスコまで約2時間で移動できたり、飛行機の中で到着先のエアカーを予約したり、という細かな未来描写に、わんこたんニヤニヤしちゃうんだよなあ。
おかえり、チャーリー。で、ガニメアンて何者よ?
調査によって明らかになった驚愕の事実。それはチャーリーと、そしてミネルヴァの人々の苦難の道のりを示すものでした。
読者は冒頭で5万年前のチャーリーの最期の様子を知っているので、なんだかチャーリーがやっと帰ってきたような、「おかえり」と言ってあげたくなるような。そんな切ない気持ちになります。
がしかし、まだまだ謎は残っています。
チャーリーと一緒にいた巨人 コリエルは、ガニメアンなのでしょうか?巨人文明(ガニメアン文明?)とミネルヴァ文明の間になにがあったのか?
このあたり続編で明かされるのかどうか。続きを読めたら記事を書く予定。読まねば!
星を継ぐもの の次に読みたいおすすめ小説
月が舞台のSF小説や、不可解現象の謎解きが楽しい、ハードSFミステリー要素のある小説を集めました。
SFで描かれる月世界、集めました。
球電の謎を解く!三体0【ゼロ】球状閃電/劉 慈欣
嵐の夜に現れて、人を消失させるなぞの「球電」。球電の軍事転用をめざすため、その謎に挑む研究者たちでしたが……
ちなみにタイトルに「三体」とありますが、あの「三体シリーズ」とのつながりはほとんどないので、いきなりゼロから読み始めてもOK!
謎が解かれていくハードSFミステリー。ページをめくる手が止まらない!
紹介記事はこちら▶︎