
地面が天に、宙が地に。
地面から手を離せばまっさかさまに宙へと落ちてしまう過酷な世界で生き延びる人々が、地面の上をめざす!
予想を超えた展開で読者を翻弄する、小林泰三SFの真骨頂、天獄と地国(長編版)の感想と解説を、ヤスミスト(小林泰三作品ファン)の管理人が書きました。
天獄と地国 あらすじ
頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を求め地面にへばりつき生き延びていた。
世界の果てにもっと暮らしやすい別天地があると確信したカムロギは、生き残りを賭けた戦いを経ながら、楽園をめざす旅を続ける――。
傑作短篇の長篇化完全版!天地が逆転した驚きの世界での冒険を描く長篇宇宙SF。
- 著者:小林泰三 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:早川書房 2011/04/20
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 小林泰三氏と天獄と地国について
小林泰三(こばやしやすみ)氏はホラー、ハードSF、サスペンス小説家。
1995年、「玩具修理者」で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビューしました。
2020年11月に残念ながら逝去され、未来からの脱出(角川ホラー文庫)が遺作に。以下に代表作を並べました。(書影クリックでAmazonのページへ)
当ブログでは、小林泰三氏の傑作たちを紹介中です。
天獄と地国には短編と長編がある
当記事で紹介している天獄と地国ですが、SF短編集 海を見る人に収録されている同名の短編を、長編としてブラッシュアップしたものです。
短編版は、世界に隠された秘密をほのめかしつつ、「最後に出てきたアレ、いったいなんなんだ!?」というところで終わってしまっています。
長編版では「アレ」の全容を明らかにしつつ、主人公たちの旅路を終着点まで描いてくれていますので、短編版を読んで気になっていた方は必読!
天獄と地国の前日譚??
天獄と地国、実は前日譚が存在するのをご存じでしょうか? SF短編集 見晴らしのいい密室/小林泰三に収録されている、囚人の両刀論法がそれです。
囚人の両刀論法では、エネルギー問題を克服するため、主人公は太陽を覆う巨大なダイソン球を提案。
その結果、太陽系がどうなったかというと……そこから先は読んでのお楽しみ!天獄と地国に登場する、「爬虫類にも昆虫にも、巨人のように見えるアレ」も、しっかり登場しています。
むちゃくちゃ系から量子物理学系まで、小林泰三エッセンスが凝縮されたSF短編集です。
天獄と地国 感想
短編版の天獄と地国には登場しなかった巨大生物兵器が登場し、小林泰三先生らしい、にっくにくでぐっちょぐちょまみれの展開に。(巨大兵器を、こんなキモいデザインとシステムにする必要ないやろ!!w)
小林先生お得意の会話劇はもちろん健在。ザビたんの「正体」には笑いました。油断してた。小林先生ミステリー作家でもあるからなあ。
極限環境下でも命を繋ごうとするヒトの営みに胸が熱くなるとともに、技術がどんなに進歩しても争いをやめられない、「人類の業」に複雑な心境になる、隠れた名作だと思います。兵器はキモいけど。
天獄と地獄の世界はどういう形なのか?
この世界は、太陽を取り巻く不完全な球殻型で、回転しています。
主人公カムロギたちは球殻の外側表面におり、球殻側に落ちる力(太陽の引力)よりも、球殻の外に飛び出す力(遠心力)が大きいため、球殻(地面)に固定していないと、宙に落ちてしまう。という状況。
管理人わんこたんは詳しい計算はできないので(ごめん)、実際に計算された先人の記事を紹介します。▶過去の雑記02/ 7下
計算によれば球殻の半径は、太陽-地球間の距離のほぼ2倍。太陽を覆う巨大なサイズのダイソン球の外側表面を描いた世界、ということです。でかい!
1960年に物理学者のフリーマン・ダイソンが提唱したアイデア。
高度文明の発電施設のアイデアのひとつで、恒星を取り囲む形で覆う構造物によって、恒星のエネルギーの全部もしくは大半を取り込めるようになっています。
参考▶https://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/POPULAR/98sf/dyson/dyson.htm
また、この世界にあるウインナー村と第四帝国間で、電波通信に片道24分ものタイムラグがあることも、世界の大きさの傍証に。
太陽-地球間でさえ、電波通信(=光の速さ)のタイムラグは8分ちょっと。いかにこの世界が巨大かわかります。
(ちょっと疑問。球殻の表面上での電波通信、どうやって電波を中継しているんでしょう。もしかして「飛び地」は電波を中継する衛星のような役割もあったりするのかしら?)
天獄と地国の世界は球殻?円筒?
と、調べていたところで、この世界は円筒型(リングワールド)なのでは?という意見も見かけました。▶海を見る人/ネタバレ感想
たしかに、海を見る人に収録されている短編版の天獄と地国だけだと、この世界が球殻型なのか、円筒型なのかは、判断がつかないんですよね。わんこたんも読みながら悩んでいました。
長編版の天獄と地国を読むと、ラストにはっきりと「球殻」と明言しているので、球殻型なのは確定なのですが、南北部分はないので、球殻としては不完全な形になっているようです。完全な球殻(ダイソン球)と、リングワールドの中間みたいな形でしょうか。
小林泰三ワールドで、このダイソン球を考案したイデアルくん(囚人の両刀論法/見晴らしのいい密室に収録に登場)は、まずリングワールドを作成したうえで、徐々にダイソン球へと成長させていくことを提案していたので、この天獄と地国の世界は、まだ不完全な形態である、と言えそうです。
天獄と地国の世界観をイラストにしてみました。

天獄と地国の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。
タイム・シップ〔新版〕 /スティーヴン バクスター
「予想を超えた世界の姿」に驚くSF小説2作品をご紹介。
ダイソン球といえばこの作品!と言っても過言ではないのが、このタイムシップ。
ウェルズの古典SF、タイム・マシンの続編となる作品で、ドイツ軍がタイムマシンで攻撃してきたり、歴史を大幅に書き換えたり、想像を超えた時空の冒険が描かれます。
感想記事はこちら▶︎元祖タイムトラベルSF!タイム・マシン(HGウェルズ著)とタイム・シップ(Sバクスター)」感想 - わんこたんと栞の森
天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上) /小川 一水
全10作からなる巨編サーガ。地球から遠く離れた植民星ハーブcそこで巻き起こる事件をきっかけに、ハーブcと、人類の壮大な歴史が徐々に明らかになっていきます。壮大な人類史の果てに待ち受ける運命は!?
長いけど、読み始めたらとまらなくなること、間違いなし!
感想記事はこちら▶︎人類の運命は?天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープの主要キャラクターと謎を考察 - わんこたんと栞の森
おすすめ作品、他にもいろいろ!
当ブログでは、他にもさまざまな小説を紹介中。ぜひブクマして、気になる記事をチェックしてみてくださいね。




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