
「ぼくの名前は山手線。ぐるぐる回るのが仕事です」
使われなくなった山手線を加速器に転用することに。しかしこの加速器、おしゃべりすぎないかい???
ポストパンデミックの世界をえがく、ゆるくてちょっとあったかい、SF短編集 山手線が転生して加速器になりました。 の感想を書きました。
山手線が転生して加速器になりました。 あらすじ
ウイルスパンデミックにより、都市を放棄しリモート社会を気づいた人類。人のいなくなった東京で、使われなくなった山手線が加速器に転用される??
変わっていく社会と、変わらない人。新しい社会と壮大な人類史をやさしく描く、ユーモアSF短編集です。
- 著者:松崎 有理 → Amazonの著者作品一覧はこちら
- 発売:光文社 2024/08/07
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
著者 松崎 有理氏について
2010年 短篇 あがり で、第1回創元SF短編賞を受賞しデビュー。
以下に著者の作品の一部を並べました。※書影クリックでAmazonのページにジャンプ。
山手線が転生して加速器になりました。 感想
奇想天外なのに、ほわんとした希望に、じんわり暖かくなれるSF小説でした。以下に書く短編の感想を。
山手線が転生して加速器になりました。
表題作。
パンデミックで人類は都市を捨て地方に分散移住。
そんなわけで使われなくなった山手線が目覚めると、意思と記憶を持つ加速器、正式名称:ミューオンリングコライダーに転生していた!な、なんだってーーー!?。
山手線って、綺麗な円環じゃないよね?だいぶ縦長だよね?という疑問は当然湧いてくるんですが、そのあたりはなんとかなるらしい。なんとかなるんだ。
新しい粒子を発見したり、もしかしたらダークマターなんか発見しちゃったり?ワクワクする研究者チームに対し、山手線くんは素朴かつ爆弾的な問いを投げかけます。
「それってなんの役に立つの??」
果たして人類は山手線くんの問いに答えられるのか??
未来人観光客がいっこうにやってこない50の理由
かの有名な理論物理学者 スティーヴンホーキング氏は、かつてこんなことを言ったらしい。「もし過去に戻れるタイムマシンが発明されたなら、今頃未来からやってきた観光客がいるはずに違いない」
そんなホーキング氏の言説をベースに、「未来人観光客がやってこない50の理由」というコラムを連載中の、理論物理学者 真坂。しかし最後の50番目の理由がどうしても書けず、悩む彼は経済学者の幼なじみに相談することに。
タイムマシン、金利、贈与。理論物理学と経済学の、思いもよらない融合が楽しい一編。未来、もっと良くなっているといいな。
不可能旅行社の冒険ーーけっして行けない場所へ、お連れします
あのパンデミックで、人々は多くのものを失った。
大切な肉親を、そして旅行の楽しみを。
最新のVRデバイスを使った究極の旅行体験。そのコンテンツ制作コンペに挑むこととなった、チカ、保谷、天ノ川、ポールおじさん、ビーバーの5人のチーム。
しかし制作中に予想外の事態が発生して……
VR旅行なんて本物には敵わない、なんて思っていたけど、これはかなり楽しそう。「和田の湖」なんてVRで体験したら、頭バグりそうだけどw
山手線が加速器に転生して一年がすぎました。
稼働から1年。順調に粒子を加速し、ぐるぐる回し、衝突させる山手線と中央線。
研究活動の宣伝のためSNSアカウントを与えられた2人(2機?)ですが、新たなアカウント「リサコ=レーザー干渉計宇宙アンテナ自立型観測施設」と宣伝活動のため3人でおしゃべりをするよう依頼され……?
運用1か月目にして勝気なリサコの勢いにやられ、失言・炎上(※SNSで)する山手線と、へどもどする中央線がとにかくかわいい。知らず知らずのうちに、またもや地球を救ってるとこもかわいい。
ひとりぼっちの都会人
パンデミックによって東京の店をたたみ、ひとり離島でリモート料理業を営む、料理人の味田村援悟と、住人のいなくなった東京で、児童相談所の保護の手を逃れて生きる少年。
人がいなくなり、かつての自然を取り戻した東京で、2人の出会いからうまれる究極のフルコースとは。
すべてが集まる首都、東京。たとえ人がいなくても、そこは文化が、自然が、すべてが集まる都市。東京の懐の深さに、じんわりと心がほぐれます。
そして、登場する料理が本当においしそうなんだなこれが。ごくり。
ところで「そでがさきいぃぃぃ」と鳴く大猫ちゃん。元ネタは袖ヶ崎の大猫の怪異のようですが、どうしてそんなものをイマジナリーフレンドにしていたのだろう……?笑
みんな、どこにいるんだ
ある日、ミダコ(蛸の一種)が海からやってきて、このような文字を浜辺に書きました
ワタシタチヲ タベナイデ
突如訪れたファーストコンタクトに慌てふためく人類。そこには地球生命誕生の秘密が隠されていて……?
全編インタビュー形式で進行する作品。「インフォーマント」は聴き慣れない単語ですが、文化人類学や言語学などのフィールド調査で、研究者にデータを提供してくれる人のことなのだそう。「情報提供者」くらいの意味で読み進めればよさそうです。
一歩間違えればおそろしいホラーSFになりそうな展開でしたが、結果的に地球の持続可能性問題への議論も深まったようで、めでたしめでたし、かな?
総論 経済学者の目から見た人類史
未来人である行方ユクエ氏が執筆した、人類の経済史が登場。
巻末の年表も併せて、パンデミックにしゃべる山手線から贈与経済時代の幕開けまで。壮大な人類史と宇宙史を俯瞰できます。
人類は贈与経済社会に移行し、貨幣経済は消失。もちろん経済学、という学問も消失。
なのでタイムマシンで過去にいけるようになっても、過去の金利に影響を及ぼすことはありません。パチパチパチパチ。
果たして、現実の人類がこの域に到達することはできるのでしょうか?できるかどうかはわからない。でも希望を感じる。そんな、心がほっとするSFでした。
あのしゃべる山手線たちも、全世界同時多発停電に巻き込まれてしまったのかなあ、なんて心配になりますが、なんやかんや復活して、3機で頑張っていろんなものを発見して、その成果が巡り巡ってワームホールタイムマシン開発に繋がってたら、いいな。
山手線が転生して加速器になりました。 の次に読みたい おすすめ作品
次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。しゃべる山手線の次は、しゃべる車で!
ガソリン生活 /伊坂 幸太郎
聡明な弟・亨(小学生)と、のんきな兄・良男。
望月家のでこぼこ兄弟と愛車の緑のデミオ(みどでみ)はある日ドライブ中に超有名女優を乗せるが、その日から一家はさらなる謎と事件に巻き込まれ…!?
車同士が楽しくおしゃべり!ほんわか不思議な世界で繰り広げられる愛すべき家族の「すべてがつながる」冒険譚です。
感想記事はこちら▶︎主人公は緑のデミオ!ガソリン生活/伊坂幸太郎の感想と解説 - わんこたんと栞の森
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