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主人公は緑のデミオ!ガソリン生活/伊坂幸太郎の感想と解説

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

主人公は車!?

愛すべき望月家とその愛車 緑のデミオが大活躍(?)、車たちのおしゃべりがとまらないユーモア溢れる長編ミステリー、ガソリン生活/伊坂幸太郎 の感想を書きました。

 

\文庫版の表紙がめちゃかわいい!/

ガソリン生活 (朝日文庫)
ガソリン生活 (朝日文庫)
 

 

 

ガソリン生活 あらすじ

聡明な弟・亨(小学生)と、のんきな兄・良男。

望月家のでこぼこ兄弟と愛車の緑のデミオ(みどでみ)はある日ドライブ中に超有名女優を乗せるが、その日から一家はさらなる謎と事件に巻き込まれ…!?

車同士が楽しくおしゃべり!ほんわか不思議な世界で繰り広げられる愛すべき家族の「すべてがつながる」冒険譚!

 

ガソリン生活/伊坂幸太郎 イメージイラスト

 

 

著者 伊坂 幸太郎さんについて

重すぎず、気楽に楽しめるエンターテイメント作品を多く執筆されている作家さん。

「いろいろつながる」爽快な展開と読みやすさで、多くの読者から人気を集めています。著者マリアビートルがブラッドピット主演で映画化されたことでも話題になりました。

以下に著者の作品の一部をご紹介。※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。

 

ペッパーズ・ゴースト (朝日文庫)
楽園の楽園
死神の精度 (文春文庫)
777 トリプルセブン (角川書店単行本)
逆ソクラテス (集英社文庫)
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

 

ガソリン生活 感想

かわいい!おしゃべりする車たちがとにかくかわいい!

主人公の緑のデミオ、緑デミ(みどでみ)を筆頭に、旧型カローラのザッパ、配達トラックの黒ニコなどなど、個性豊かな車たちは、排気ガスの届く範囲くらいなら互いに会話できる、というたまらなく愛らしい設定。

  • 車種によってキャラいろいろ
  • T型フォード(世界で初めて大量生産された、歴史的な自動車)は伝説。今でもどこかで走っているという噂がある
  • 自立して進むことを=「自分のライトを点ける」などなど車ならではの言い回し
  • 2輪車はしゃべれる?電車は?

などなど細かいところまで車世界がつくりこまれてていて、とにかく読んで楽しく、癒されます。

車と人間の絶妙な距離感

車たちは行く先々の駐車場や渋滞の車列でおしゃべりがとまらないので、噂も真実もどんどんひろまり、人間たちは何もしらないのに、そこらじゅうの車だけは真相を知っている、という、なんともおかしな世界観。

 

自我を持つ車たちですが、人間との意思疎通は不可能だし、いくらオートボットに憧れても、自分で動くことはできない。だから、車たちが真相を知っても、人間たちには伝えられず、人間たちのピンチに手を(タイヤを)差し伸べることも叶いません。

そして人間たちが無謀な運転をしても、彼らは逃げられない、それでも自分の主人のことを思い続ける車たち。健気だ……

 

読んだら愛車をもっと大事にしたくなること、間違いなし。車たちと人間の絶妙な距離感と哀愁が、なんともいえない唯一無二に空気感を作り上げています。

(ところで、ガソリン生活には登場しませんが、自動運転車が現れたら、いったいどんな会話をするんだろうか)

 

望月家を襲う理不尽な悪意

車たちの会話はほのぼのかわいいんですが、一方で人間の悪意は底知れず、気の毒な望月家はどんどん巻き込まれ、命の危機にもさらされます。

 

日常のすぐそばに悪意は存在していて、悪いやつが本気を出せば、一般人の日常はあっという間に壊れてしまう。というのが実感できてすごく怖かったし、それに対して手も足も出ない自家用車たちの悲哀もじわじわと伝わってきます。

 

だからこそ、玉ちゃんとか、細美氏とか、家族とか、周りで支えてくれる人の暖かさがじんわり沁みてくるんですよね。この幸せな日常がずっと続きますように、願わずにはいられない。

 

ラストシーンの「おしまい」についての解説

翠ちゃんが4台並んだ車のナンバーを読み上げて「おしまい」というシーン。

実は車のナンバーのひらがなって「お」「し」「へ」「ん」が使用できないんですよね。

参考▶ナンバープレートにひらがなの「お・し・へ・ん」が使われない理由|CarMe(カーミー) [CARPRIME(カープライム)]

 

本文中にも記載されているように、「お」と「し」は翠ちゃんの読み間違い。愛くるしさで、読者も幸せいっぱいになる名シーンでした。こどもにだけ「アレ」が聞こえている、ていうのも素敵。

 

ちなみに「い」は軽自動車にしか使用できないひらがな。郁子が軽自動車に買い替えているのも、この演出に一役かっています。

 

ガソリン生活 (朝日文庫)
ガソリン生活 (朝日文庫)
 

 

ガソリン生活の次に読みたい おすすめ作品

いろいろあります、自動車がテーマの小説たち。次に読みたい、管理人わんこたんのおすすめ作品をご紹介。

 

ブレイクショットの軌跡 /逢坂 冬馬

 

それは1台の車のボルトから

自動車期間工の本田昴は、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば重大事故につながる可能性があるが……

サッカー少年、マネーゲーム、中央アフリカの少年兵。バラバラな物語は、1台の車によって少しずつ組み上がっていく。

とにかく、ただ、読んでほしい1冊。絶望と夢、善と悪のうねりに、感情ぐちゃぐちゃになること間違いなし。2025年イチ推しの傑作!

 

ブレイクショットの軌跡
ブレイクショットの軌跡
 

 

紹介記事はこちら▶2025年の最高傑作を読んでしまったかも ブレイクショットの軌跡 感想 - わんこたんと栞の森

 

T型フォード殺人事件(広瀬正小説全集5) /広瀬正

 

伝説のT型フォードをめぐるミステリー

(デミオたちに言わせれば)伝説の自動車、T型フォード。この貴重な一品を買取った富豪宅に集まった7人は、T型フォードをめぐる45年前の密室殺人の謎に迫ろうとするが……

昭和を代表する作家、広瀬正による、ノスタルジー溢れるミステリー。昭和〜大正にかけての、人々の生き生きとした描写にも注目です。

 

T型フォード殺人事件(広瀬正小説全集5) (集英社文庫)
T型フォード殺人事件(広瀬正小説全集5) (集英社文庫)
 

 

感想記事はこちら▶︎昭和ノスタルジー×ミステリーの名作T型フォード殺人事件 感想 - わんこたんと栞の森

 

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読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

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