小説「同姓同名」あらすじ
女児殺害事件発生。犯人の名前は「大山正紀」。事件は無関係の「同姓同名の大山正紀」の人生に影響を及ぼします。
7年後、事件当時未成年だった大山正紀が出所したことをきっかけに“大山正紀”同姓同名被害者の会が発足。しかし、彼らを襲うものが現れ始め、、、?
- 著者:下村淳史
- 出版社:幻冬舎
- 発売:2020/9/17
- Audible、Kindle Unlimitedの読み放題:対象外
※Audible版は、2024/6/14に配信開始予定!
著者の下村淳史さんについて
小説「同姓同名」の後書きより、著者の略歴をまとめました。
- 1981年 京都府うまれ。
- 2014年に「闇に香る嘘」で江戸川乱歩賞受賞。
- デビューから9年で22冊刊行。ペースが速い!
作風もジャンルも多種多様。
などに次々と挑む、「オールラウンダー作家」です。
著作を一部ご紹介!(画像クリックでKindleのページにとびます)
2024年2月には、下村先生ご自身の自宅を舞台にした(!?)そして誰かがいなくなる、を刊行。ミステリーのために家をささげるなんて、すごすぎる……
同姓同名の登場人物「大山正紀」たちを解説
小説「同姓同名」に登場する大山正紀を、解説していきます。
※()内は初登場シーン
殺された大山正紀と殺した大山正紀 (Kindle版5ページ)
冒頭に登場する2021年1月25日の新聞
早くもここで作者のしかけた1発目の「だまし」が登場です。
君は見破れるか?(見破れませんでした)
殺された大山正紀と、殺した大山正紀
犯人の大山正紀(Kindle版7ページ)
9月のIOC総会で東京オリンピック開催が発表された、2013年のこと。
公園で女児を付け狙う大山正紀(まさのり)。
女児殺害事件の犯人です。
女児殺害事件の犯人
ここで「正紀(まさのり)」のルビが登場。
勘のいい読者なら、「まさのり以外の読み方をする「正紀」が、あとで登場するのでは?」と気づくはず。
その後逮捕され、16歳の高校生であったことが判明。週刊誌の報道で実名「大山正紀」がすっぱぬかれます。
高校3年生 サッカー部の大山正紀(Kindle版12ページ)
サッカー部で活躍する大山正紀くん。
名門大学への推薦も決まり、明るい未来が約束されているはず。が、愛美ちゃん殺害事件の犯人と同姓同名であったことから、人生が狂いはじめ……
将来有望な高校サッカー選手
3年後、大学3年生になり「お遊びの部活動」でボールを追いかけながら、鬱屈した日々を送る様子が描かれています。
この4人目くんが、ラストにいい味出してます。要チェック!
幼児好きな 大山正紀(Kindle版24ページ)
冬弥というTwitterアカウントを持ち、ロリの泣き顔最高!などと発信。
公園で園児を眺めて楽しむなどあからさまに怪しげですが、、、?
ロリ好き、泣き顔好きをSNSで公言。公園で園児を眺めて楽しむ。
Twitterでのとある発言が炎上し、泣く泣くアカウントを削除。
茫然自失の中、笑顔で遊ぶ園児を見つけ、誘われるように公園に足を踏み入れ……
と、この一見やばそうな行動が後の伏線になっていました。想像つかなかった!
コンビニバイトの大山正紀 (Kindle版32ページ)
コンビニバイト。定時制高校学生。
凡庸な人生に鬱屈し、何者かになりたがる、コンビニバイトの大山正紀。
しかし、その願いは「愛美ちゃん殺害事件の犯人と同姓同名」という、最悪の形で叶えられることに。
それから7年後、犯人の大山正紀が出所し世間を再び賑わせることに。そこで、コンビニバイトの大山正紀は「“大山正紀”同姓同名被害者の会」の発足を決意します。
引きこもり?の大山正紀 (Kindle版 125ページ)
アニメを唯一の癒しとし、引きこもる大山正紀
自分とは別の「大山正紀」のせいで不登校になり、人生を狂わされたと憤ります。
「大山正紀」に強い殺意を抱いているようで、、、?
1年3組の大山正紀と1年4組の大山正紀
舞台は学校の教室へ。大山正紀が大山正紀をいじめています。
アニメ風イラストを描くのが好き。キモオタだとしていじめられている。
8人目の大山正紀をいじめるメンバーの1人。
キモオタの大山正紀とは違う、ちゃんとした大山正紀、という評価を受けている
身長が高くコミュ力のある、上位互換の大山正紀。
このパートから読者への「騙し」が徐々に加速。
鋭い方なら、以下の点を怪しいと思うかもしれません。
- 「1年3組」「1年4組」とあるが、高校か中学か明記されていない
- 「大山正紀の起こした事件」に言及しているが、何の事件かぼかしている
“大山正紀”同姓同名被害者の会に集まる大山正紀たち
6人目(元コンビニバイト)の大山正紀の発案で、同姓同名被害を解決すべく、「被害者の会」が発足。初回会合には9人の大山正紀が集まります。
※先述の9人目までと同一人物も含みます。
- 細目の青年の大山正紀=埼玉
- 団子っ鼻の青年の大山正紀=営業職
- 中肉中背の青年の大山正紀=スポーツマン風で家庭教師をしている 2回目の被害者の会の集まりのあと、何者かに殴打される
- 長身痩躯の青年の大山正紀=会の発足者。4人目、元コンビニバイトの大山正紀
- 茶髪の青年の大山正紀=法学部の大学生
- 中学生の大山正紀=いじめを受けており、相手を殺してやりたい、とつぶやく一面も
- 眼鏡をかけた中年の大山正紀=研究者
- 野球帽の中年の大山正紀 音楽関係の仕事。オフ会の提案者。その正体はフリーの記者。愛美ちゃん殺害事件の犯人を探し出し、素顔を公表することを提案する
- 元サッカー部の大山正紀
奥多摩の崖下に転落した大山正紀
奥多摩のがけ下に男性の転落死体が。この大山正紀、いったい何者なのでしょうか?
転落遺体となって、発見される。
コンビニで人を脅す大山正紀
とうとう、のべ20人目の大山正紀が登場。
「出所した女児殺害事件の犯人」を名乗り、相手を恫喝する大山正紀?
上記には同一人物の「大山正紀」や「大山正紀を騙るニセモノ」も含まれますが、単純に数えると20名以上の大山正紀が登場。
多すぎる~混乱!
「同姓同名」ネタバレありの感想
小説「同姓同名」の感想をまとめました。ネタバレを含むので未読の方はご注意ください
「ミステリ小説に慣れた読者ほど」だましに警戒したくなる
大量に同姓同名の人物が登場する、となれば、ここぞとばかりに読者を騙そうとしているんだな?と予想するのは自然なこと。
多少ミステリを読み慣れている読者ほど、どこに「ひっかけ」があるか、想像がつくかもしれません。
- 読み仮名が違う大山正紀がいるかも?
- 年齢を誤認させてるかも?
- 今は2020年、と思わせて過去(未来)の話が紛れ込んでる?
- 同一人物のように見えて、別人?
- 別人のように見えて、同一人物?
予測を超える「だまし」の量に大混乱!
絶対にだまされるもんか!
しかし、小説「同姓同名」では、ありとあらゆる手段で、読者をだましにかかります。
ミステリーを読んで、「だまされ疲れた」と感じたのは初めての経験。
冒頭の新聞記事に登場する、「殺された大山正紀」「殺した大山正紀」は誰なのか?最後の最後まで気を抜かず、読みましょう。
ミステリではなく社会派サスペンス
「トリック」よりも、読者をだます仕掛けがメインにおかれており、ミステリーというよりもサスペンスというべきかも。
犯罪者への私刑の是非、SNSなど、社会的な話題も多く、SNSで容疑者の住所を特定し炎上する「一般人」たちの姿には寒気を感じます。
結末は後味悪いけど、、、
冒頭で女児が殺され、結末もなかなかの後味の悪さ。読んでスッキリ!とは、残念ながらなりません。
そんななか「サッカー部の大山正紀」が、少しだけ希望を見せてくれるのが救いでした。
とにかくだまされたい!というあなたは、ぜひ「だまされたと思って」で読んでみてくださいね。
同時収録短編 「もうひとりの同姓同名」感想
には書きおろし短編「もうひとりの同姓同名」が収録。
まさに「同姓同名」本編と対をなす、良作でした。
同姓同名の後に読みたいおすすめ小説
同姓同名のような、しかけが楽しいミステリーを中心にご紹介。あなたはどこまで見破れる?
硝子の塔の殺人/知念 実希人
雪山の不思議な館に集められたゲストたち。
いかにもな舞台でおこる、いかにもな事件。なんて油断していると……
この謎、あなたは見破れるか??ミステリ愛にあふれた、豪華絢爛な謎解きをお楽しみあれ!
感想記事はこちら▶圧倒的なおもしろさ!硝子の塔の殺人の感想と、作中登場ミステリ小説について語りつくす - わんこたんと栞の森
しかけがすごい小説、集めました
管理人わんこたんのイチ押しはきこえる/道尾秀介。
他にもしかけにこだわった作品いろいろ、記事で紹介しています。
読み始めたら止まらない小説、あります
以下の記事では他にも読み始めたらとまらない小説を紹介中。ぜひご覧ください。