そんな挑戦的な小説「きこえる」の解説と感想を書きました。
音声ならではトリック!楽しかった〜
あらすじ
小説と「音」を融合させた、体験型ミステリーの短編集。
急死したシンガーソングライターのデモテープ、再会した2人の会話、古いラジカセ、盗聴器、そして、死者の耳。
小説を読んで、途中で登場するQRコードを読み取ることで、文字ではわからなかった真実が浮かびあがります。
- 著者:道尾秀介
- 発売:講談社 2023/11/22
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
「きこえる」を楽しむ前におさえておきたい、お役立ち情報
- ホラー要素なし。怖い音は流れません。
物語自体に「怖さ」を含む箇所はありますが、音でびっくりさせるような演出はないので、ご安心を。 - 音声の左右差はトリックに影響しません
左右から聴こえる音の違いがトリックで、、、という箇所はないので、片耳が聴こえづらい方でも問題なく楽しめます。 - 音声はQRコードでリンクを読み取るか、電子書籍の場合はリンクをタップすることでも再生できます。再生はYouTubeなので、ネット接続環境のご準備を。
著者 道尾秀介さんについて
2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。2007年「シャドウ」で本格ミステリ大賞、2009年「カラスの親指」で日本推理作家協会賞 などなど、多数の受賞歴をお持ちの作家さん。
読む順番で物語が変わる(!?)「N」や、小説と写真を組み合わせたミステリー「いけない」シリーズ、本作「きこえる」など、小説の新しい形にも挑み続けています。
わんこたん、きこえる が初道尾作品でしたが、他の作品も読みたい!
以下に著者の作品の一部をご紹介。この他の作品は、Amazonの著者作品一覧ページでチェックしてみてくださいね。
※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。
小説だけに留まらず。オフィシャル webサイトをチェック!
実は音楽活動もされていて、きこえる に収録の2楽曲は、道尾さん自ら収録!
多彩な活動の様子は、公式ホームページでも公開されていますよ。
道尾秀介オフィシャルサイト | 道尾秀介 Official Website
Webサイトには「あなたにおすすめの道尾作品チャート」もあり、質問に答えるだけでおすすめの道尾作品を教えてくれる謎機能で楽しめます。
「きこえる/道尾秀介」各話の感想
きこえる 各話の感想を書きました。読んだけどどうしてもわからなかった……という方も大丈夫。ほんのりヒントもありますよ。
第一話 聞こえる
亡くなったシンガーソングライター夕紀乃が残したデモテープ。親友の良美は、そこに不自然な声が録音されていることに気がつくが、、、
この作品、最初と最後の2か所に「音」があるのですが、最後の「音」の存在に気が付かず(電子書籍でページをめくったところにあったので)しばらく意味がわからなかったのは内緒。
オカルトな物語でそこまでの謎、はなく、ミステリーを期待していた分拍子抜けでしたが、第一話目なので、読者のための予行練習として考えた方がよさそうです。
第二話 にんげん玉 解説ヒントあり
「65歳からの必勝資産運用セミナー」(なんて胡散臭いセミナーなんだ、、、)に参加したケンジ。そこに偶然、講師として登壇した寺門徹。
25年前、ケンジは殺人事件の被害者のアパートから、まだ学生の徹が出ていくところを目撃していたのだ!二人を結ぶ因縁の行方は、、、
話中に登場する、100円玉の裏表の話。どちらが裏でどちらが表だったのか?そんな展開に、おどろきました。音声を活用した演出、おみごと!
にんげん玉の意味がわからなかった、という書き込みを見かけたので、ヒントを。以下をクリックしてお読みください。ネタバレ注意!
ここをクリックで開きます
小説だけ読むと、徹が25年前に殺人を犯した犯人であり、ケンジが徹を脅しているようです。
しかし、音声ではどうでしょう。脅している声と脅される声、どちらが年配者の声でしょうか?ということは、25年前の殺人事件の犯人は、、、
第三話 セミ 解説ヒントあり
両親のいない「僕」と、僕の転校先で出会った少年「セミ」。
2人の交流と友情が主題なのですが、セミの異様な行動と雰囲気がどこか不気味で、田舎の閉塞感も相まって、心にざらっとひっかかる。そんな物語でした。
1回目の音声で「ふつうの意味」、2回目の音声で「裏の意味」が伝わる仕掛け。
音声部分が少々聴きとりづらく、逆に1回目の時点で「裏の意味」のほうが伝わってきてしまい、ちょっと混乱しました。
「セミ」のヒントはこちら。以下をクリックしてお読みください。ネタバレ注意!
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1回目の音声「僕の父親の心臓の病気の話」と「まだ赤ちゃんだった僕のおむつが足りなくなって、セミ家からもらいにいく話」が聞こえてきます。
しかし、状況をしらない第三者がこの音声だけを聴くと「誰の心臓が病気なのか」「セミ家に何をもらいにいくのか」がはっきり聴き取れません。
音声を聴いたセミは、いったいどのように感じたでしょうか?
第四話 ハリガネムシ 解説ヒントあり
にんげん玉、セミ、ハリガネムシというタイトルの連なりに、不穏さを感じたのは私だけではないはず。
ハリガネムシは、カマキリを宿主とする寄生虫。そのおどろおどろしい生態を知っている方はタイトルだけでゾワゾワするかも。(作中に本物は登場しないので、ご安心を!)
塾講師の「僕」は塾生の「高垣沙耶」に目を付ける。こっそり彼女の部屋に盗聴器をしかけることに成功するが、盗聴器を通じて僕が耳にした音とは、、、
たった数秒の「音」で真相が明らかになる構成、めちゃくちゃよかったです。
「ハリガネムシ」のヒントはこちら。以下をクリックしてお読みください。ネタバレ注意!
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高垣沙耶は盗聴器の存在に気づいていました。ラストに沙耶の声が大きくなった部分は、盗聴器にこっそり聞いている僕に向けたメッセージ。いったい沙耶は、僕に何を手伝わせたのでしょうか?
最終話 死者の耳
タワーマンションの一室で不可思議な死に方をしていた「滝沢鐘一」。妻の怜那、その友人の美歩、不動産業を営む飯田。
彼らにいったい何があったのか。真相を知るのは、死者のみ。
これは一言叫ばせていただきましょう。
「ずるいよ!道尾先生!」
流し聴き厳禁!わからなかった方は、最後の最後まで気を抜かないず、「動画に」ご注意ください。
きこえる/道尾秀介 感想まとめ
耳で楽しむ、新感覚のミステリー小説「きこえる」。音声を存分に生かしたトリックを堪能できる、おすすめの1冊です。
続編、、、期待していいですか?
きこえるの次に読みたい!しかけにはまるおすすめ作品
きこえる の次に読みたい、しかけが楽しい小説を紹介します。
イニシエーション・ラブ
合コンで出会った、大学4年生の僕と、歯科衛生士のマユ。初々しい2人。徐々に愛を育み、初めてを経験し、しかし、僕の就職、転勤とともに、雲行きが怪しくなり......
……なーんて陳腐なラブストーリーと思いきや、、、後は読んでのお楽しみ!
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