2017年に本屋大賞と直木賞をダブル受賞し、映画化もされた小説「蜜蜂と遠雷」。
その公式スピンオフ小説「祝祭と予感(2019年)」のあらすじと感想です。
「蜜蜂と遠雷」の世界の続きを楽しみたい方
恩田陸さんの美しい文章が好きな方
「祝祭と予感」の概要
コンクールに挑む4人のピアニストの戦いを描いた、恩田陸さんの長編小説「蜜蜂と遠雷」。
本屋対象と直木賞を受賞、映画化もされた人気作品のスピンオフが、本作「祝祭と予感」です。
「蜜蜂と遠雷」で登場する曲のコンピレーション・アルバムの付録として執筆された2つの短編「祝祭と掃苔」「伝説と予感」それに書き下ろしを追加し、「蜜蜂と遠雷」の映画化に合わせて発売されました。
恩田氏が各メディアに寄稿した、音楽関係のエッセイも加え、短編集115ページ+エッセイと後書き54ページという構成になっています。
蜜蜂と遠雷、読了者向けの作品です。
\\「蜜蜂と遠雷」本編はこちらの記事で//
「祝祭と予感」の映像化は?
「祝祭と予感」は映像化されていません。本編となる「蜜蜂と遠雷」は2019年に映画化されており、U-NEXTをはじめとする配信サイトで視聴できます。
「映画版 蜜蜂と遠雷」は、2023年5月現在、U-NEXT見放題対象 のため、無料体験を利用して視聴可能!
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本ページの情報は2023年5月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
「祝祭と予感」各話のあらすじ
「祝祭と予感」各短編のあらすじです。
祝祭と掃苔
芳ヶ江国際ピアノコンクールを終えた亜夜、マサル、塵。
3人は入賞者ツアーの合間を縫って、亜夜とマサルの恩師である綿貫先生のお墓参り。塵の家族のこと、これからのこと、ホフマン先生のことなど、コンクールのちょっとした裏話が明かされます。
獅子と芍薬
マサルの師匠、ナサニエル・シルヴァーバーグと、嵯峨三枝子。のちに結婚し、離婚する2人。お互いに第一印象は最悪だったが、、、?
袈裟と鞦韆(ブランコ)
芳ヶ江国際ピアノコンクール課題曲「春と修羅」を作曲した菱沼忠明の物語。
早すぎる弟子の訃報。そして宮沢賢治「春と修羅」との出会い。
竪琴と葦笛
マサルとその師匠、ナサニエル・シルヴァーバーグのエピソード。もともと別の人物に師事していたマサルが、なぜナサニエルの弟子になったのか。破天荒なマサルのキャラクターがかわいい。
鈴蘭と階段
亜夜と塵を世話したヴィオラ奏者の奏。マイ楽器の選定に悩む彼女の元に、思いがけない電話がかかってくる。
伝説と予感
ユウジ・フォン=ホフマンと風間塵の出会い。「蜜蜂と遠雷」のはじまりの物語。
「祝祭と予感」感想
とにかく美しい物語。
登場人物の苦悩、訃報、離婚など暗い話題もありますが、それすらも美しい宝石のように描く筆力。
特に最後の短編「伝説と予感」では、風間塵とホフマンとの出会いが、舞い降りた天使のような神秘性をもって描かれます。
ふとした描写すらハイセンス
三枝子がナサニエルの髪型を評して「連獅子踊れそうな頭」と表現したり、
奏がヴィオラ選定に悩む様子を「豆もやしと豚バラ肉のチゲ鍋」に使う出汁へのこだわりで表現するなど、表現が全体的にハイセンス。
このあたりの表現の仕方にも恩田陸さんらしさを感じました。
「若者の青春の輝き」という点で、同氏の作品「夜のピクニック」と近いものを感じます。
夜のピクニックも本屋大賞受賞作。すごいなあ。
ドス黒い人間模様とは無縁の世界観
「蜜蜂と遠雷」の世界観が好きだった方には「祝祭と予感」はぴったりはまること間違いなし。
逆に、どす黒くて、じっとり陰湿な小説が好き方に、この世界観は合わないでしょう。
もっとむき出しの人間模様を読みたい!という方には以下の小説がおすすめです。
恩田陸さんの音楽好きが伝わるエッセイ
「祝祭と予感」は恩田陸さんの音楽にまつわるエッセイが全体の3分の1を占めます。エッセイから伝わる、恩田氏のクラシックへの並々ならぬこだわりと愛情。
「蜜蜂と遠雷」の作劇のために、様々な曲を何度も聴き、コンクールの演目を練りに練って書き上げたそう。どうしても入れたかったが、断念した曲も多いとか。
わんこたん、蜜蜂と遠雷の感想記事で、「あまりに演奏パートのボリュームが多くお腹いっぱい」と書きましたが、このエッセイを読んで、その理由に納得。
音楽を愛するあまり、演奏シーンを削れなかったんだなあ。
まとめ
「蜜蜂と遠雷」の世界観が好きだった方には「祝祭と予感」はぴったりはまること間違いなし!ぜひ読んでみてくださいね。