そんな「ゲーム」をテーマにしたSF短編集「スタートボタンを押してください」の感想を書きました。
スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選の情報
ビデオゲームをテーマにした短編SFアンソロジー「Press Start to Play」(2015)の邦訳版です。原書は26編収録ですが、邦訳では、うち厳選された12編を収録。
- 著者:ケン・リュウ、桜坂洋、アンディ・ウィアーなど
- 翻訳:中原 尚哉 、古沢 嘉通
- 発売:東京創元社 2018/3/12
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):対象外
スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選 感想
2010年前後の作品がメインで、うち2編がテキストアドベンチャーを扱った短編。最近のゲームの進化が著しいことも相まって、「レトロ感」が強いので、好みは分かれそう。
わんこたんは、ゲーム小説=明るくて楽しくてポップなストーリーというイメージを持っていましたが、この本の収録作は、どことなく暗くて、内省的で、孤独で、楽しげな表紙とは裏腹にじめじめした雰囲気の作品が多いです。
期待していた作品イメージとはちょっと違っていた、というのが正直な感想。もちろん、面白い作品もあったけどね!
以下に各短編のあらすじと感想を書きました。特に良かった作品には★をつけています。
リスポーン/桜坂洋
救助よろ/デヴィッド・バー・カートリー★
ゲーム没頭しすぎて大学をやめた元彼を探すべく、ゲームにログインしたメグ。メグのもとに、彼から「救助よろ」というメッセージが届く。
現実世界のはずなのに、大剣を身につけたり巨大蜘蛛が出てきたりと、冒頭から違和感マックス。ゲームの世界は楽しいはずなのに、陰鬱な雰囲気がなぜか拭えない。そして結末は……
この世界はどこまで本物なのか?シュミレーション仮説を彷彿とさせる、ホラーな後味の物語でした。
1アップ/ホリー・ブラック ★
オンラインゲーム仲間の訃報。残されたゲーム仲間の3人は、亡くなった友、ソレンの葬儀で初めて顔を合わせる。
葬儀を終え、ソレンの部屋に入る3人。そこに残されていたのはソレンが自作したテキストアドベンチャーゲームだった。
テキストアドベンチャーゲームを解いて真実を見つける、ミステリー風味の作品。もう少し長編で、がっつりゲームと謎解きを楽しんでみたかった。ゲームで生まれる友情。ベタだけどいいよね。
NPC/チャールズ・ユウ
猫の王権/チャーリー・ジェーン・アンダース
病気で脳に障害を負い、強い神経症状で日々を無気力に過ごしている女性と、パートナーのわたし。
脳機能のリハビリのため、王国勃興シュミレーションゲーム「猫の王権」を彼女に与えたところ、驚くべきプレイスキルを発揮する彼女。そこにゲームのリアルトーナメント大会への招待状が届く。
彼女の中で、ゲームの世界は現実の一部になったのでしょうか。取り残された「わたし」の寂しさが伝わります。
神モード/ダニエル・H・ウィルソン
リコイル!/ミッキー・ニールソン
サバイバル・ホラー ショーナン・マグワイア
キャラクター選択/ヒュー・ハウイー ★
小さな娘の昼寝の時間だけ、夫のFPSゲームをプレイするジェイミー。戦場で敵を殺しポイントを稼ぐこのゲームで、ジェイミーが1人も殺さずやり遂げたこととは、、、?
ゲームの「隠し要素」をテーマにしたこの作品。
隠し要素:ゲームのわかりづらい場所にアイテムが隠されていたり、ゲーム内である行動をすると、特定のイベントが発生したり、条件を達成すると秘密のステージに行けたり。クリアには関係ないけど見つけると嬉しくなる要素のこと
平和主義のジェイミーだからこそ発見できた隠し要素。でも最後の謎は、夫(ゲームで敵を倒しまくって次のステージに進んでいる)という演出がニクイ。
赤ちゃんが寝ている最中のゲームに罪悪感を感じるなど、キャラの心情も細やかでよかたです。
ツウォリア/アンディ・ウィアー
主人公ジェイクにいきなり話しかけてくる謎のプログラム「ツウォリア」。その正体は、、、
作者のアンディ・ウィアーは、映画化されるようなヒット作を連発する人気SF作家。「火星の人」「プロジェクト・ヘイル・メアリー」など、わんこたんも大好き。
「ツウォリア」も、作品自体は面白いんですが、訳がいまいち。
ツウォリアは「30年前のネットスラング」でしゃべる設定。それを「漏れ」とか「香具師」に訳しているので違和感がすごい。
無理して日本のネットスラング(というか2ch用語?)にしなくても良かったのでは。
アンダのゲーム/コリイ・ドクトロウ
時計仕掛けの兵隊/ケン・リュウ
ゲームSF傑作選の次に読みたい!おすすめ作品
ゲームにまつわるおすすめSF作品を集めました。
世界に迫る危機の謎を解くヒントが隠された、VRゲーム「三体」に主人公がいどみます。このゲーム描写が文明勃興シュミレーション風で、そこだけでもめちゃくちゃ楽しい!
\\原作小説「三体」 2月に文庫版になりました//
紹介記事はこちら▶読む順番は?文庫化は?三体シリーズ徹底解説&「聴く読書」無料体験も! - わんこたんと栞の森
SF短編集「海を見る人」に収録されている、短編の「キャッシュ」。長期間航行する宇宙船。冷凍睡眠中の乗員が過ごす仮想世界に、ある日事件が起こります。
「魔点」による仮想世界の経済システムなど、短編ながら設定が良く練られた傑作。他の収録作品もおもしろいので、ハードSF好きならぜひお試しを。
さえない中年男性がある日目覚めると、そこは火星のような荒れ果てた大地だった!「デス・ゲームもの」の元祖ともいえる、サバイバルゲームホラー小説。
アイテム選択やルート選択が、後の展開に大きく影響し、、、ゲームとホラーがうまく融合した傑作です。
以下の記事ではSF、ミステリー中心に「とまらない」作品を紹介中。ぜひご覧ください。