その魅力について、本作を3回読んだわんこたんの考えをまとめました。
小難しい批評はいっさいなし!気楽な気持ちで最後までお読みください。
あの「やみくろ」のオリジナルイラストも!
- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドのあらすじ
- 【考察】なぜ「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は最高傑作といわれるのか
- 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の結末で、主人公は何を失い、何を得たのか?
- Audible版「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を正直に評価する
- 「村上春樹作品」の人気・特徴とは
- まとめ
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドのあらすじ
村上春樹さんの初めての書きおろし長編小説であり、第21回谷崎潤一郎賞受賞作。
「私」と「僕」2つの世界が、交互に描かれ、その謎が解かれていきます。
- 「
私」サイド 〜ハードボイルド・ワンダーランド〜
計算士として働く「私」は、博士からとある依頼を受けるが、そのことをきっかけに記号士たちに狙われることになる。
- 「
僕」サイド 〜世界の終り〜
高い壁に囲まれ、獣と共に生きる世界。その世界に流れ着いた「僕」は、番人に言われるがまま、自分の影を切り離し、夢読みとなる。
ここから先はネタバレに注意!
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの基本情報
- 著者:村上春樹
- 発売:新潮社 1985/6/15
- Kindle Unlimited:対象外
- 「聴く読書」Audible:2024年5月現在 聴き放題対象
→5分間の試聴はこちら ※リンク先で「▶Audibleサンプル」を押下
Amazonの提供する本の朗読サービス Audibleでは、「世界の終りと~」を含む、村上春樹作品多数が聴き放題対象。
海辺のカフカ(上下巻)、ねじまき鳥クロニクル(全3巻)、他多数
対象作品一覧はこちら
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大森南朋さんによる、心に染みる朗読、ぜひお試しを。
【考察】なぜ「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は最高傑作といわれるのか
わんこたんは村上春樹作品をいくつか読んでいますが、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドが一番おもしろい、と考えています。
- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
- 海辺のカフカ
- ねじまき鳥クロニクル
- ノルウェイの森
- 1Q84
ねとらぼの2020年の人気調査でも世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドが人気No1でした。
▶【投票結果】最も人気な「村上春樹の長編小説」が決定 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が第1位に!(1/3) | 本 ねとらぼ調査隊
2023年4月13日に最新長編作「街とその不確かな壁」が発売されたので、このランキングも変わる可能性はありますが、なぜ「世界の終りと~」が一番人気なのか、考えてみました。
理由①「計算士」「記号士」「百科事典棒」「意識の核」「やみくろ」などSF要素がおもしろい
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」はジャンル的にはSFに近く、意味の分からない言葉がたくさん登場します。この意味不明さが、確固たる世界観を作り題していて、すごくいい。
以下に一例をご紹介します。
計算士、シャフリング
- 主人公の私は計算士
- 脳内に埋め込まれた意識の核を使って、計算処理(シャフリング)を行う。
このシャフリングというシステムには、ある恐ろしい秘密があって……というのも本作の見どころ
意識の核=世界の終わり
そもそも意識の核とはなにか。
意識の核はひとつの物語であり、そのタイトル■■■が……
この、理解できるけど、ふしぎな世界観にやみつきになるところが、管理人わんこたんが世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドを気に入っている点だったり。
図書館の女の子との会話で登場する「失われた世界」。
実はシャーロック・ホームズシリーズでおなじみ、コナンドイルのSF小説。
舞台は崖に囲まれた台地。獣ではなく「恐竜」が登場します。
紹介記事はこちら
【恐竜求めて南米へ!】失われた世界/ コナンドイル あらすじと感想 -
なんだかすごい、百科事典棒を図解
「棒」を1本用意し、そこに正確な「刻み目」をひとつつけるだけで、この世の情報を全て収納できてしまう、という「百科事典棒」
博士の説明の中に出てくるたとえ話の一つですが、理論的には実現可能っぽいところにわくわくさせられます。
これ、元ネタがわからないのですが、村上氏独自のアイデアなのでしょうか?
謎の存在、「やみくろ」をイラスト化してみた
敵勢力として登場する「やみくろ」。
なんだかかわいい名前とは裏腹に、人間を食べるともいわれる恐ろしい存在ですが、その姿を見せることはありません。
せっかくなので想像図を描いてみました。
理由②ストーリーがわかりやすい
村上春樹作品、全般的に「わかりづらい」です。
主人公がどんな状態か、目的はなにか、夢なのか現実なのか、混乱させられることも。
- 二つの世界を交互に描写している
- 片方が現実、片方は空想(脳内)
- 脳に時限爆弾がしかけられたのでなんとかしないといけない
- 壁の外にでなければならない
のように、話の構成、キャラの目的がとても明確で、村上作品を初めて読む方にもおすすめです。
理由③結末の美しさ
- ハードボイルド・ワンダーランド の主人公(私)
→自分の結末を受け入れ、旅立ちを決意。ラストは晴海ふ頭で……
- 世界の終わり の主人公(僕)
当初は、壁に囲まれた世界から脱出することを目指していましたが、最後にある決断をすることに。
「壁に囲まれた世界」は不自然で、心がなくて、間違った世界。しかし、それを生み出したのが■■■であったことに、僕は気づきます。
思い出の音楽「ダニーボーイ」の登場場面は、村上作品を代表する名シーン!
例え失うものがあっても、壁の中の者たちを大切にしたい という「僕」のおもい、やさしさが心に響きます。
私と僕の切なくも美しい結末。読んだことのないあなたは、ぜひチェックしてみてくださいね。
理由④暴力シーンが控えめ
村上春樹作品、意外と暴力的、グロいシーンが多く、管理人のわんこたんも正直苦手です。(「ねじまき鳥~」の〇剥ぎ男、海辺のカフカのジョニーウォーカーなど)
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」でも主人公が敵に襲われるシーンがありますが、へその下を浅く切られるだけ。安心ですね。
安心とは
ところで、、、
村上春樹氏の最新作「街とその不確かな壁」も、Amazonレビューを見る限り暴力シーンはほぼなし。安心して読めそうです。
「図書館」「壁」など「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」と共通するキーワードが多く、気になります。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の結末で、主人公は何を失い、何を得たのか?
「壁の中」で生きることで「僕」が何を失い、何を守ったのかは、作品中では明言されません。村上作品ではありがちですが、はぐらかされます。
何を失い、何を得たのか、読者サイドの想像に委ねられている。
そして、読者が 「自分の中にある、失われない、確固たるものはなんだろうと」それぞれ考え、「僕」に当てはめることが、この小説の結末であるように感じました。
Audible版「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を正直に評価する
「聴く読書」サービス、Audibleで、本作を全編聴いてみました。
結論
Audible版「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」本当に素晴らしかったです。
\\ ▶Audibleサンプル を押して冒頭5分を視聴できます //
語り手は大森南朋(おおもりなお)さん
「世界の終わり〜」を朗読している大森さんは、多くのテレビドラマ、映画に出演している人気俳優さん。ちょっと怖いシリアスな役から、愛嬌のある役、優しい包容力のある役など、幅広い役がらで活躍してます。
ドラマ「コウノドリ」(Prime Videoで見られます)では、新生児科部長の今橋先生役。命の瀬戸際で戦う母子を支える、温かいキャラクターを演じていました。
ファンです(直球)
大森さんの声と、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの世界観がベストマッチすぎる
村上春樹作品の特徴は、なんといっても淡々、飄々とした主人公のキャラクター。そのどこか現実感のないキャラクターに、大森さんのざらついた声がベストマッチ!
あくまで俳優さんであり、感情の込め方、聞き取りやすさはプロの声優さんのそれに劣るかもしれません。
しかし、大森さんボイスでの「ふうん」「やれやれ」を聴くと、もうこの人しかいない!という気持ちに。
実際に世界の終りとハードボイルドワンダーランドをぜんぶ聴きましたが、何度も読んだ作品なのに「聴く」ことで、新たな発見があり、とても楽しめました。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだことがある方にも、Audible版、オススメです!
ここが残念!Audible版「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の欠点
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」文庫版にある「世界の終わり」の地図が付属していないのが、非常に残念でした。一部挿絵のデータはAudible版にも添付されているのに、このイラストがないのはもったいなすぎる!
地図がないのは残念ですが、ドライブしながら、家事をしながら、耳から村上春樹作品の世界にひたってみませんか?
Audibleの使用感を、こちらの記事でも紹介しています。
「村上春樹作品」の人気・特徴とは
わんこたんが考える「村上春樹作品」の特徴を書きました。
村上春樹作品は「ものすごいブーム」を引き起こした
村上春樹作品が「大人気」となったのは1987年発表の「ノルウェイの森」がきっかけといわれています。
2023年現在、50代前後の方々にとっては、まさに「青春の1ページ」となる作品。
2000年頃、わんこたんが教室の片隅で、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでいると、その年代の教師から「おお~村上春樹を読んでいるのか!」と、何度も声をかけられたり。
間違いなく、「かなりのブーム」であったのでしょう。
淡々と描写される「性」
わんこたんが本作品を初めて読んだのは中学生のとき。「性」について淡々と語られるシーンが多く驚きました。
いわゆる「濡れ場」的な、エッチな表現ではなく。「勃起した」とか「勃起しない」とか「この娘とセックスをするかどうか」みたいなことを主人公が黙々と考えるシーンが多いのです。
「大人になるとこういうかっこいいこと(?)を考えるようになるのか」と、当時はとっても憧れました。
大人になったけど別にそんなことはなかった
村上春樹作品の中、キャラクターたちはいとも自然に、朝起きたら歯を磨くような感覚で「セックス」します。
「セックス」は村上春樹作品の中でも重要なキーワード。「この人とはセックスをする」「この人とはしない」というのも大事な意味をもっているようで、
まとめ
村上春樹作品の中でもファンの多い「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」について、書きました。
ストーリーもわかりやすく、SF的要素もあって楽しめる本作品、未読の方はぜひチャレンジしてみてください!
読んだことある方も、「聴く読書」Audibleで、新しい「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を体験してみてくださいね。