各キャラクターの紹介も交えつつ、率直な感想を書きました。
成瀬は天下を取りにいく あらすじ
成瀬はこの夏を西武に捧げるという。
コロナ禍真っ只中、滋賀県大津駅前にある西武の閉店まで残り1ヶ月となったある日。成瀬の決心は何かを動かすのか、、、?
ちょっと変わった、まっすぐな女子学生成瀬と、彼女を取り巻く人々。今を生きる青春群像劇、開幕!
- 著者:宮島未奈
- 発売:新潮社 2023/3/17
- Kindle Unlimited:対象外
- Audible(聴く読書):聴き放題対象
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成瀬は天下を取りに行く なんだか気になる登場人物たち
成瀬に巻き込まれたり、間接的に影響を受けるキャラクターたち。
主な登場人物は以下の通り。各章でそれぞれの人物に1人称が切り替わる構図となっています。
- 成瀬 あかり(なるせ あかり):主人公
- 島崎 みゆき(しまざき みゆき)
:成瀬とは幼少期からの仲。成瀬を見守り、成瀬に巻き込まれ、さらには成瀬とお笑いコンビを組むことに。 - 大貫 かえで(おおぬき かえで)
:高校デビューに失敗し、東大合格を目指す、ちょっと屈折したキャラクター。成瀬のことを嫌いなようだが…… - 西浦 航一郎(にしうら こういちろう)
:かるた大会で成瀬を知り、心惹かれる。まさかの成瀬デート回! - 稲江 敬太(いなえ けいた)
:Web会社勤務。西武大津店の閉店がきっかけで小学校の同窓会を開催しようとするが、同窓会はコロナ禍で中止になってしまい……
彼らは本来は無関係の人どうしですが、成瀬を通じて、少しだけその線がつながったり。そんな微妙な関係性の変化と、未来への予感をにおわせるラスト。
大きく何かが変わるわけではない。もっといろいろ巻き込んで変わってほしかった、と、物足りなさもある。でもそこにリアリティがあって、超人的な成瀬の行動とは裏腹にすごく「現実の物語」という作品でした。
成瀬をずっと追っかける!島崎みゆき
島崎みゆきは第三者から見ると、成瀬の親友。「第4話 線がつながる」に登場する大貫の視点では「小学5年生の時に成瀬のいじめに加担しなかった」とも、評されています。
でも、当の島崎本人は、最初から「成瀬だい好き!」という感じではないんですよね。
いじめに加担しなかったのも「我が身可愛さに、成瀬を守ることはしなかった」と、島崎自身が語っていますし、そもそも「第1話 ありがとう西武大津店」では冒頭から「成瀬は変だ」との評価。
成瀬から一歩ひきつつ、目を離さないよう観察しているくらいのポジションです。
当の成瀬が島崎のことをどのように考えているか、そして島崎の心境がどのように変化するのか……と、そこは読んでのお楽しみ。
自分から見た自分と、他人から見た自分がちょっとずつ違っているところ。とても現実感があってよかったです。
島崎は続編「成瀬は信じた道をいく」にもばっちり登場します。お楽しみに!
成瀬は天下を取りにいく の文庫化はいつ?
2024年4月現在、文庫化は未定。管理人わんこたんは2026年の3月頃と予想します。
出版元の新潮社では文庫化の目安について発売から2年半後が目安としています。
参考▶出版社のお仕事 小説が本になるまで 〜いずみ委員 新潮社に潜入する〜 |読書のいずみ |全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
一方で、人気のある作品は文庫化が遅くなったり、映像化とあわせて文庫化を展開するケースも。
成瀬シリーズは人気作品のため、当ブログでは発売から3年後の2026年3月を文庫化時期と予想しています。
文庫化が待てないなら、聴く読書がおすすめ!
「成瀬は天下を取りにいく」はAmazonの提供する本の朗読サービス、Audibleの聴き放題対象。初回登録時には無料体験が利用できます。(通常月額1500円)
鳴瀬まみさんの朗読で、成瀬の凛々しい声も、島崎の戸惑いを含んだ感情も、あますことなく再現!
琵琶湖のミシガン号の甲板で風を感じているような、爽快な朗読をぜひお試しください。
わんこたんは、洗濯物や洗い物をしながらの読書に、めちゃくちゃ重宝しています。
著者 宮島未奈さんについて
宮島さんは1983年生まれの小説家。
一度は小説家としての道から離れたものの、再びのチャレンジ。初の単行本となった「成瀬は天下を取りにいく」で第39回坪田譲治文学賞、さらに、いきなりの2024年本屋大賞受賞となりました。
単行本出版作品は、2024年現在、成瀬シリーズ+婚活マエストロの以下3冊です。
※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプ。
宮島未奈さんはX(旧 Twitter)のアカウントをお持ちなので、気になる方はぜひフォローを。▶宮島未奈さんのアカウントはこちら
滋賀県で成瀬の舞台をめぐる「成瀬スタンプラリー」にも、著者としてしっかり参加されていました!(※開催は2024/6/30まで)
成瀬は天下を取りにいく 感想
正直な感想をひとことで書くと「物足りない!」
直感的に行動し、色々なことにチャレンジする成瀬あかり。その行動によって成瀬の周りのキャラクターが、少しずつ変化していく、、、のですが、その変化は微々たるもの。
本屋大賞受賞で期待値が高かった分、え、これでおしまい?と物足りなく思ってしまいました。
最後に関係者一同みんな出てきてもっと盛り上がって欲しかった、西浦くんも見にきて欲しかった、もっと成瀬の活躍を見たかった、、、
なんて、もっと見たかったと思ってしまうあたり、管理人わんこたんも成瀬ワールドにハマりつつあるのかもしれません。
成瀬 あかりというキャラクターについて
200歳まで生きたい、シャボン玉を極めたい、けん玉を極めたい、漫才でてっぺんとりたい、、、やりたいことを宣言して実行する、その行動原理は傍目からは理解不能。
「大きなことを100個言って1つでも叶えたら、あの人すごいになる」
「だから日頃から口に出してタネを撒いておくことが重要」
成瀬は天下を取りにいく ありがとう西部大津店 より引用
というセリフから、人にすごいと思われたい、という動機もあるのかも?
物語がすすむにつれて(いい意味で)成瀬のボロもでてきます。
タネをまいても、うまくいかなかったことに見切りをつけるのは早かったり、意外と他人に流されやすかったり(大貫さんの発言で髪を切ったり、大津市民憲章に従って西浦たちをもてなしたりしていますね)。
最終章では、友人 島崎に対する自分の気持ちに気が付かないなど、鈍感な一面も。直感で行動し、才能もあって、でもどこか抜けている、そんな目が離せなくなるような不思議な魅力を持つキャラでした。
成瀬みたいな人間が実在する?→しました
以下のシンカさんの記事で、成瀬のように突発的におかしな行動をとる人物として、朝井リョウさんを挙げていました。
『成瀬は天下を取りにいく』あらすじ感想とレビュー本屋大賞受賞作 - シンカの雑記帳
朝井リョウさんは「何者」で戦後最年少の直木賞を受賞した作家さん。
実はエッセイ作品も豊富で、ゆとりシリーズでは成瀬もびっくりなチャレンジをして、読者のお腹の皮をよじらてきます。
\\Audible(朗読版)を公共の場で聴くの、ダメ、ゼッタイ//
いくら成瀬も、実在の人物には敵わない、というのはシンカさんの評。おそるべし、朝井リョウ。
いやしかし、成瀬の方がずっと品行方正(?)なので、その点はご安心を
なぜ「成瀬は天下を取りにいく」は本屋大賞をとったのか
本屋大賞は、全国の書店員が「ぜひ読んでほしい!」 「自分の店舗で売りたい!」という本に票を投じることで決定されます。
投票方式なので、受賞理由などは特に公開されません。
歴代の本屋大賞を見ると、ジャンルも内容もけっこうバラバラ。
強いて言うならば、青春小説が多く、SFやファンタジーが少なめ(現実・史実を舞台にした作品が多い)、といった傾向はあるでしょうか。
特に、青春とか学生の要素のある作品は強いです。
夜のピクニックや汝、星のごとくは高校生が主人公。かがみの孤城は中学生、蜜蜂と遠雷も青春真っ只中のキャラクターがぶつかり合い、同志少女よ、敵を撃て もちょっぴり青春要素はある、、、かも。
\\青春?な 本屋大賞受賞作品たち(管理人わんこたんの独断チョイス)//
特に夜のピクニックなんかは「地元密着」「高校生」「関係性のわずかな変化」といったキーワードに、成瀬に近しいものを感じます
普段読書をしない人や、若い人に本に親しんでもらい、書店を盛り上げたい!。という思いが本屋大賞に含まれているのだとしたら、純度100%の爽快青春小説、「成瀬は天下を取りにいく」の2024年対象受賞は必然だったのかも。
なーんて、後からなら、なんとでも言えるのよね
成瀬は天下をとりにいく の次に読みたい関連作品
成瀬と共通点のある(!?)本屋大賞受賞作品を選んでみました。
ピアノコンクールでぶつかる4人の奏者。(1人は30代ですが)若き才能がぶつかり合う演奏描写は、本当に音楽が聴こえてくるよう。
そのあまりに濃厚な音の奔流と、いい人ばかりな人間描写に、ちょっと読むのが疲れてしまうかもしれませんが……とにかく本からエネルギーを浴びたい!というあなたにおすすめです。
母の命を奪ったソ連軍への復讐を心に、女性の狙撃兵養成所で技術を磨く主人公。序盤、この養成所で仲間と友情を育むシーンには、青春の煌めきを感じます。
このシーンがあるからこそ、戦場の残酷さ、過酷さが胸にくる。歴史ものとしても面白く、ページが止まらなくなるおすすめの1冊です。
以下の記事では、読み始めたら止まらなくなる小説を紹介中!ぜひご覧ください。
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