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三体に登場する智子(ソフォン)の仕組みを徹底解説!

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智子(ソフォン)とは、SF小説「三体」及びそのシリーズ続刊に登場する、敵勢力のスパイマシン。
物語の鍵を握る重要アイテムですが、仕組みが難解でややこしい存在でもあります。
そんな智子(ソフォン)の仕組みを、できるだけかみ砕いて説明してみました。

 

\\原作小説「三体」 2月に文庫版になりました//

三体

 

 

CAUTION!
  • この記事にはSF小説「三体シリーズ」の重大なネタバレを含みます
  • 本記事の物理学の記載は、管理人わんこたん(非専門家)の限られた知識と、三体作中の描写をもとにしており、実際の物理現象とは異なる場合があります。

 

智子(ソフォン)の仕組み・目的・弱点は?

三体は原作小説をもとに複数ドラマ化されており、原作とドラマでも智子(ソフォン)の描かれ方が異なっています。

原作とドラマ版での違いも含めて、智子(ソフォン)の仕組みを解説していきます。

 

「三体」には3つのバージョンがあります

 ドラマ版「三体」の情報・配信サービスの比較はこちら

▶:ドラマ「三体」WOWOW版(テンセント版)とNetflix(ネトフリ)版の違いは?最新映像化情報 

 

これだけ分かればOK 智子(ソフォン)の基本情報

智子(ソフォン)は敵である三体星系から地球へ、通信・偵察・妨害機として送り込まれた陽子です。

 

陽子、とは物質を構成する原子、を構成する超ちっちゃな粒。

 

人間側から観測するとただの1個の陽子ですが、それは11次元に折りたたまれた姿。2次元の姿は、惑星を覆うほどに広がる超巨大コンピューターです。

(2次元だと巨大でペラッペラッ。どんなに大きくても質量は陽子1個分)

 

これだけおさえておけばOK!

智子とは

  • ただの陽子なのにすごいコンピューターを搭載
  • 光速で移動可能。4光年の彼方にある三体星系とリアルタイムで通信
  • 人類の科学の発展を妨害、人類の情報は全て三体星人に筒抜け

と理解しておけば、ストーリーを楽しむ分には問題なし!

智子(ソフォン)のせいで、人類側の基礎物理研究はストップし、人類の情報は全て三体星人にばれています。

この絶望的状況をどうひっくり返すか?が三体シリーズ2作目「黒暗森林」の展開となります。

 

\\2024年4月21日 待望の文庫化!//

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 

智子(ソフォン)の仕組み

陽子にすごいコンピューターを搭載するためには、陽子に集積回路をのせなければなりません。しかし、陽子はとても小さいので、作業台の上において、ピンセットで、というわけにはいかず。

 

そこで三体星人では、「高次元構造の陽子にめちゃくちゃエネルギーを与えて、魚を開きにするように、2次元構造(=でっかい平面)に展開し、そこに集積回路を乗せる」という方法をとります。

 

すさまじいですね、わけがわかりません。

原作では丁儀(ディン・イー)博士がもう少しわかりやすく説明しています。

三体の智子(ソフォン)の仕組みを解説したイラスト

3次元構造のタバコのフィルターをほぐすと広い面積の2次元構造があらわれるように、11次元を内包した陽子を展開すると、膨大な情報を書きこめる、、、という理屈らしい。

三体文明の超技術っぷりがよくわかる場面ですね。

 

なお原作では1作目三体の終盤に、三体星人が智子(ソフォン)を製造する描写があります。

 

何度か失敗し、予定していた2次元以外の次元に展開してしまう、というお茶目な(?)描写も。ドラマ版ではカットされていて残念。

 

三体

 

智子(ソフォン)の目的

智子の目的は3つ。

 

  1. 地球世界に「奇跡」を起こすこと
  2. 地球世界の、素粒子レベルの基礎物理科学の発展を阻害すること
  3. 地球世界の情報をリアルタイムで傍受すること

 

智子の目的は、原作小説でもドラマ版でも大きな違いはありません。

 

1.「奇跡」について

1作目 三体の主人公汪森/ワンミャオ(※Netflix版ドラマ三体ではオギー)が襲われたように、網膜にカウントダウンを映し出したり、スクリーンのように地球を覆って映像を映す行為が該当。

 

奇跡(のような現象)を起こして、三体文明を崇拝させたり、非科学的な思想をはびこらせて、科学的で冷静な議論を妨げたりする効果を狙っています。

 

2.科学の発展の阻害について

智子は陽子サイズなので、大型の加速器で行われる粒子の衝突実験のような、最先端の物理学実験を妨害できます。

妨害によって地球の科学技術発展はストップ。次元操作のような三体文明の技術水準まで追いつけないようにします。

 

3.地球世界の情報をリアルタイムで傍受

三体星系と太陽系は4光年の距離があるため、通常の通信では往復で8年の時間がかかります。しかし、なんと智子(ソフォン)同士はどんなに離れていてもリアルタイムで通信可能。どうやって?

 

智子は、2個の智子ペアで1セット。陽子は「量子もつれ」によって互いのスピンの向きを検知し、片方のスピンの向きが変われば、即時にもう片方のスピンの向きも変わるという性質を持ちます。

 

Netflix版ドラマにも「量子もつれ」が登場

Netflix版ドラマ、日本語字幕では2個の陽子を「量子レベルでつなげた」と言っている部分

英語では"Each pair is entangled, connected on the quantuim level"となっており、量子もつれを意味する"entangle"が使われていることからも、量子もつれを利用したリアルタイム通信を行っていることが、わかります。

 

陽子が互いにどんなに離れてもその効果を失わないため、4光年離れた三体星系に、地球の情報すべてを伝えることができる、という設定です。

 

智子(ソフォン)は本当に三体星系とリアルタイム通信できるのか?

どんなに離れていてもリアルタイムで通信できると書きましたが、実際には情報伝達速度には限界があるようです。

量子もつれの伝達速度限界を解明 | 理化学研究所

 

そもそも理論上智子(ソフォン)を製造することが可能なのか、だいぶアヤシイですが、そこはSF、おおらかな気持ちで読みましょう。

 

あくまで智子は作品の舞台装置。舞台装置をどうやってぶっ壊すか?という思考バトルが三体の面白さの本質です。

たとえ智子が、理論上作成不可能だとしても、それが三体という作品の面白さを損ねるものではないとわんこたんは考えています

 

陽子のスピンについて

そもそもどうして陽子はスピンするのでしょうか?

そこには陽子を構成する素粒子、クオークやグルーオンが関わっているようです。

www.riken.jp

 

素粒子?クオーク?グルーオン?興味はあるけどよくわからない、という方にぜひお勧めしたいのがこの本「宇宙は何でできているのか」。

素粒子物理学分野の第一線で活躍する著者が、「素粒子」の秘密を宇宙の成り立ちと絡めて楽しく解説してくれる、良書です。

 

宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎
宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎
 

 

紹介記事はこちら

 

智子(ソフォン)の弱点は?

智子(ソフォン)には、というか、三体星人には、ある重大な弱点があります。

ネタバレすぎるので記載は控えますが、三体シリーズ2作目「黒暗森林」の冒頭で明かされるので、未読の方はぜひチェックしてみてくださいね。

 

\\「黒暗森林」は4月に待望の文庫化!//

三体Ⅱ黒暗森林 上
三体Ⅱ 黒暗森林 上
 

 

智子(ソフォン)の攻撃力は?人体への影響は?

智子(ソフォン)は三体艦隊より先に地球に到着しており、智子(ソフォン)で攻撃できれば艦隊到着前に人類を滅亡させられるような気がします。

原作ではそのような展開にはなりませんが、智子の攻撃機能について考察(妄想)してみました。

 

2次元展開したソフォンは、大きな鏡になる

原作1作目 三体でも、Netflixドラマ版でも、2次元展開したソフォンが惑星を覆う巨大な鏡になる、という描写があります。

鏡ならば、地球全体を覆って太陽光を地球外に全反射→地球を寒冷化させたり、凹面鏡のようにして太陽光を収束→地表を熱攻撃できたかもしれません。

 

一方でソフォンの2次元展開の開閉にはそれなりに時間がかかる、という描写もあり、2次元展開した状態で人類側から攻撃されればソフォンは壊れてしまうでしょう。

 

そうしたリスクを避けるためか、ソフォンの2次元展開で地球を攻撃する、という展開にはなりませんでした。

 

ソフォンは人体に影響する?

ソフォンの人体への影響は、原作とドラマ版で描写に若干の違いがあります。

 

  • 原作小説「三体」: 人体に影響なしと明記。網膜にカウントダウンや文字を映すことは可能。

  • テンセントドラマ版「三体」: 網膜にカウントダウンを映すほか、強い光を見せて標的を発狂させることが可能。

  • Netflixドラマ版「三体」: 網膜にカウントダウンを映すほか、ありえない映像を見せて偽装工作をする描写あり?

 

原作2作目「黒暗森林」では、物理学者の丁儀博士が「ソフォンは人体に影響しない」と明言しています。ミクロの粒子なので、1作目「三体」で汪森の網膜にカウントダウンを映したような嫌がらせレベルの介入しか、できない、という設定でした。

 

テンセントドラマ版では、網膜に強い光を感じさせ、標的を発狂させるという描写が。標的となった人物は大怪我をしていたので、その点では人体を攻撃できる、と言えそうです。

 

Netflixドラマ版では、より進んで、網膜にありえない映像を映しているかのような描写があります。

 

ソフォンが人体を直接攻撃したら?

陽子1個で人体を攻撃することは可能なのでしょうか。

 

例えば、放射線の一種であるα線は陽子2個と中性子2個からなる小さな「粒」が高速で飛んでいる状態です。

α線は人体への影響が高く、プルトニウムなどが体内に入ってしまった場合の内部被ばくの原因となります。ただし、遮蔽されやすく、紙1枚でも防ぐことが可能です。

 

ソフォンは陽子1個。α線の4分の1の質量ですが、人体を光速で飛び回れば、もしかすると、α線のように遺伝子を破壊してがんを引き起こすくらいは可能だったかもしれません。

 

智子(ソフォン)原作とドラマ版の違い

人体への影響の他にも原作とドラマ版では智子(ソフォン)の描写に違いが。

原作と同じ部分、違う部分をまとめました。

 

原作と同じ ソフォンの特徴
  • 網膜にカウントダウンや文字を映す
  • 三体世界とのリアルタイム通信(量子もつれ効果による)
  • 地球人の行動、通信を見張る
  • 2次元状態で巨大なスクリーンになる

 

原作と異なる Netflix版ソフォンの特徴
  • 網膜に映る情報を欺瞞する?(ジャック◯◯シーンが外から見えない)
  • 電子データの改竄?(タチアナが監視カメラに映らない、いろいろなデバイスに文字を表示)
  • 巨大なスクリーン状態になって、肉眼でわかるくらい夜空を点滅させる
    (原作では宇宙背景放射の点滅のみ、肉眼では見えない)
  • 巨大なスクリーン状態になって、鏡のように地表を映したり目玉を表示させたり
  • 地球上には2機しかいない?(原作では、当初2機だったが、後から追加で送られてくる描写あり)

以下で、重要そうな点を解説します。

 

智子(ソフォン)の数は?

当初、地球には2個のソフォンが到達。原作2作目「黒暗森林」では、後からたくさんのソフォンがやってきていて、ソフォンに対し手がつけられない状態であると描写されています。

 

Netflixドラマ版では、ウェイドが「ソフォンは製造に時間がかかるので、追加のソフォンは来ない」とやたら強調していました。

ソフォンを妨害するため、地球にも月にも加速器を作って、ソフォンを忙しくしてやろう、という発言も。

 

もしかすると、Netflix版では人類側がソフォンを攻略するという、オリジナルの展開が見られるかもしれませんね。

 

智子(ソフォン)は電子データを改竄できる?

Netflix版ドラマ「三体」では、監視カメラに暗殺者(タチアナ)が映らない、という描写が2箇所あります。

原先にはないこのシーン、本当にソフォンの仕業なのかは不明。

 

ソフォンが電子データを改竄。できなくはなさそうですが、そうなるともはや「なんでもあり」。

人類の科学の発展を妨害する以前に、電子データの改竄によって人類は何もできなくなり、物語して破綻するリスクもありそう。

 

原作ファンとしては、今後のNetflix版ドラマ「三体」シーズン2に向けて、心配している点だったりします(余計なお世話)

 

ソフォンの仕組みについて、まとめ

ここまで解説してきましたが、やっぱり難解な「ソフォン」。しかし、こいつの存在が三体という作品をグッと面白くしてくれています。

 

科学的には実現不可能かもしれませんが、この「ハッタリ」こそ、SFの醍醐味といえるでしょう。

人類はソフォンを打ち破れるのか?気になる方はぜひ原作2作目「黒暗森林」を読んでみてくださいね。

 

\\「黒暗森林」は4月21日に待望の文庫化!//

三体Ⅱ黒暗森林 上
三体Ⅱ 黒暗森林 上