そこに描かれる「死と愛」について、書きました。
小説「キッチン」 あらすじ
「キッチン」に掲載されている3つの短編のあらすじです。
「キッチン」と、その続編「満月ーキッチン2」
若くして両親をなくし、祖母と生活してきた主人公、「桜井みかげ」。
その祖母も亡くし絶望するみかげは、ちょっとしたきっかけで、青年「田辺雄一」と、その母親の「えり子さん」と一緒に暮らすことに。
3人での暮らしは満ち足りたものだったが、そのささやかな幸せは、唐突に終わりを告げる。
「ムーンライト・シャドウ」
恋人を亡くし、失意に沈む主人公「さつき」。
いつかこの苦しみを抜ける日がやってくる、と信じ、孤独を紛らわすためジョギングを始める彼女の前に、不思議な女性「うらら」が現れる。
以下、本作品の内容に触れる箇所があります。ご注意ください。
小説「キッチン」の名言、名場面
「わかる?ひとりで食べたらずるいくらい、おいしいカツ丼だったの。」
幻冬者 Kindle版「キッチン」108ページ
あるショックな出来事がきっかけで、お互いになんとなく距離を置く、みかげと雄一。
ある夜、みかげは仕事先(伊豆)でカツ丼を食べます。そのおいしさをどうしても雄一に伝えたくなり、、、
みかげがこの後どうしたのか、続きは「キッチン」を読んでみてね。
おいしいものを大切な人と分かちあいたい。シンプルだけど、純粋な気持ちが表された、大好きなシーンです。
「虫ケラのように負けまくっても、ごはんを作って食べて眠る」
幻冬者 Kindle版「キッチン」90ページ
こちらはえり子さんのセリフ。ごはんを食べて、心を休めることは、えり子さんからも語られていました。
辛い出来事があって、心に傷を負っても、ご飯を食べて、眠って。やがて傷はかさぶたになって、やがてかさぶたも剥がれてうっすらとした傷跡だけが残る。
そんな、心の回復を感じシーンでした。
タイトルの「キッチン」は、ごはんをつくる場所、そして心を癒す場所の象徴なんだね。
死からの回復について考える
「キッチン」「ムーンライト・シャドウ」いずれの作品も「死」が主人公たちの心に大きな傷を作ります。
当ブログの管理人、わんこたんは、ここ最近、親しい人の「死」を経験していません。
祖父が亡くなったのは小学生のときで、記憶としてはだいぶ古い。両親も存命。
しかし、いずれは大好きな人の死に向き合う時がきます。まだ存命の祖父母も、自分の両親も、亡くなる。いずれは夫も。(夫とわんこたんとどちらが先になくなるかは不明だけれど)
親しい人の死を想像すると、怖いです。想像したくない。
「キッチン」に登場する、キャラクターたちは「死のショック」をゆっくりゆっくり、長い時間をかけて乗り越えていきます。
親しい人の死を受け入れるには、本当に時間がかかるのでしょう。そのときのことを想像するのは怖いけど、そのときがきたら「キッチン」を読み返して、キャラクターたちの心の強さを、ほんのちょっぴりでも分けてもらえたらな、と感じました。
「死と愛」をテーマした他の作品
小説「一緒に絶望いたしましょうか / 狗飼 恭子」も、死や、愛についてハッとする言葉で表現しています。
この作品では死による喪失を「◯◯の存在」として表現しているのが印象的。
\\ 詳しくはこちらの記事でご紹介 //
「一緒に絶望いたしましょうか」では、各章のタイトルが「登場人物がそのとき食べた食事」になっていて、「食べたもの」でその人ができていくことを暗に示しています。
「食事」が心の回復の象徴となっている「キッチン」と読み比べてみるのも面白いです。ぜひお試しくださいね。