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【小説で読む、死と愛】キッチン / 吉本ばなな 感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

1988年出版、長年にわたり愛されている、短編小説「キッチン」。
そこに描かれる「死と愛」について、書きました。

 

 

小説「キッチン」 あらすじ

「キッチン」に掲載されている3つの短編のあらすじです。

「キッチン」と、その続編「満月ーキッチン2」

若くして両親をなくし、祖母と生活してきた主人公、「桜井みかげ」。

その祖母も亡くし絶望するみかげは、ちょっとしたきっかけで、青年「田辺雄一」と、その母親の「えり子さん」と一緒に暮らすことに。

3人での暮らしは満ち足りたものだったが、そのささやかな幸せは、唐突に終わりを告げる。

「ムーンライト・シャドウ」

恋人を亡くし、失意に沈む主人公「さつき」。

いつかこの苦しみを抜ける日がやってくる、と信じ、孤独を紛らわすためジョギングを始める彼女の前に、不思議な女性「うらら」が現れる。

以下、本作品の内容に触れる箇所があります。ご注意ください。

小説「キッチン」の名言、名場面

「わかる?ひとりで食べたらずるいくらい、おいしいカツ丼だったの。」
幻冬者 Kindle版「キッチン」108ページ

あるショックな出来事がきっかけで、お互いになんとなく距離を置く、みかげと雄一。

ある夜、みかげは仕事先(伊豆)でカツ丼を食べます。そのおいしさをどうしても雄一に伝えたくなり、、、

みかげがこの後どうしたのか、続きは「キッチン」を読んでみてね。

おいしいものを大切な人と分かちあいたい。シンプルだけど、純粋な気持ちが表された、大好きなシーンです。

「虫ケラのように負けまくっても、ごはんを作って食べて眠る」
幻冬者 Kindle版「キッチン」90ページ

こちらはえり子さんのセリフ。ごはんを食べて、心を休めることは、えり子さんからも語られていました。

辛い出来事があって、心に傷を負っても、ご飯を食べて、眠って。やがて傷はかさぶたになって、やがてかさぶたも剥がれてうっすらとした傷跡だけが残る。

そんな、心の回復を感じシーンでした。

タイトルの「キッチン」は、ごはんをつくる場所、そして心を癒す場所の象徴なんだね。

死からの回復について考える

「キッチン」「ムーンライト・シャドウ」いずれの作品も「死」が主人公たちの心に大きな傷を作ります。

当ブログの管理人、わんこたんは、ここ最近、親しい人の「死」を経験していません。

祖父が亡くなったのは小学生のときで、記憶としてはだいぶ古い。両親も存命。

しかし、いずれは大好きな人の死に向き合う時がきます。まだ存命の祖父母も、自分の両親も、亡くなる。いずれは夫も。(夫とわんこたんとどちらが先になくなるかは不明だけれど)

親しい人の死を想像すると、怖いです。想像したくない。

「キッチン」に登場する、キャラクターたちは「死のショック」をゆっくりゆっくり、長い時間をかけて乗り越えていきます。

親しい人の死を受け入れるには、本当に時間がかかるのでしょう。そのときのことを想像するのは怖いけど、そのときがきたら「キッチン」を読み返して、キャラクターたちの心の強さを、ほんのちょっぴりでも分けてもらえたらな、と感じました。

「死と愛」をテーマした他の作品

小説「一緒に絶望いたしましょうか / 狗飼 恭子」も、死や、愛についてハッとする言葉で表現しています。

この作品では死による喪失を「◯◯の存在」として表現しているのが印象的。

\詳しくはこちらの記事でご紹介 //

「一緒に絶望いたしましょうか」では、各章のタイトルが「登場人物がそのとき食べた食事」になっていて、「食べたもの」でその人ができていくことを暗に示しています。

「食事」が心の回復の象徴となっている「キッチン」と読み比べてみるのも面白いです。ぜひお試しくださいね。

 

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