ゲストである人間をAIがもてなす、この「区界」では
人間の訪問が途絶えて1000年が経過していた。
そこに突然襲い来る〈蜘蛛〉の大群。
区界に取り残されたAIたちの生き残りをかけた
凄惨で絶望的な戦いの結末は。。。
全何部作?「廃園の天使」の構成
1992年~2001年にドラフトが書かれ、
2001年の推敲を経て完成した作品となります。
2006年出版。
1作目の続編、ではなく、
過去の物語が展開される中短編集で、
「グラン・ヴァカンス」の誕生背景、
設立の謎などが明かされます。
そして、、、
SFマガジンで連載中のため、
あと数年したら、読むことができる、
はず!
長編3作で完結予定とのことなので、
この「空の園丁」が2作目となるようです。
一番大事なこと
「グラン・ヴァカンス」
「ラギッドガール」
2冊セットで読むべし
1作目「グラン・ヴァカンス」では
ひたすらに絶望的な展開が続く中、
謎だけが積み重なり
え、それでおしまい?
となってしまいます。
2作目「ラギッド・ガール」で
区界の成り立ち、
現実世界のできごとなど
過去を中心に説明してくれるので、
2冊セットで読むのが
おすすめです。
これがメタバースの未来?
テクノロジー×人間の欲から生まれた
「数値海岸」
本作は仮想世界、AIを題材としています。
1作目の出版から20年が経過しており、
決して新しい小説ではありません。
しかし、メタバースという言葉が乱舞し
AIが飛躍的に進化した現代。
本書の現代を見据えたかのような内容に、
逆に驚かされます!
自我をもったAIがもてなす、
仮想リゾート『区界』」
バーチャル世界でバカンスできる
ラグジュアリーで洗練された世界
と思いきや、
物語の進行とともに
この美しいメッキがはがれ、
区界の闇、人間の欲が
明らかになっていく構成に
ゾクゾクします
グラン・ヴァカンスより引用
「ジュリーは誕生日が大嫌いだった。
なぜなら自分の誕生日が、
じつはゲストのためにあることを
思い知らされるからだ。」
また、2作目ラギッド・ガールでは
区界の技術的な背景が明らかになります。
SF作品にありがち
「人間をデータ化してデジタル世界に送る」
というファンタジー技術ではなく
もしかしたらギリギリ実現できるのかも?
という現実感あるシステムであり、
この「現実感」ゆえに
仮想空間という点においては
三体にもVRゲームが登場しますが
現実か、それとも虚構か
不明瞭に感じられる恐怖感としては
→少女庭国に近いものもある、かも。
注意点-グロい-
特に1作目のグラン・ヴァカンスは
なかなかキツイですね。
後書きより引用
ただ、清新であること、残酷であること、
美しくあることだけは心がけたつもりだ。
飛にとってSFとはそのような文芸だからである。
というわけです。
SF小説って、
なぜかグロが多い気がします。
未知なる技術を描くということは、
未知なる残酷さを追求することと
背中合わせ、
なのでしょうか。
人体破壊描写が苦手な方は
ご注意ください。
ラギッドガールで残された謎(ネタバレ注意!)
グラン・ヴァカンスで
生き残ったジュール、
アナドナルナの三姉妹の動向は?
ラギッドガールに登場する
「30人の人間の盾」は
まだ区界に存在するのか?
「蜘蛛の王 ランゴーニ」が
対抗しようとしている
「天使」「災害」の正体は?
など、まだまだたくさんの
謎が残されている本作。
次回作が楽しみ!
上記の謎について、
すでに作中で解決済みでしたら
ごめんなさい。
それはわんこたんの見落しですので、
気づいたらコメントいただけますと幸いです。
3作目「空の園丁」については
著者飛氏のこちらのインタビューにも
言及が。
「眼鏡っ子女子高生」がでてくる?
どういうこと??
なぜこんな物語を書こうとしているんだろう?|飛浩隆 インタビュー|monokaki―小説の書き方、小説のコツ/書きたい気持ちに火がつく。
おしまい。