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地獄のような奇書〔少女庭国〕矢部 嵩 感想と考察

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 

少女庭国 イラスト

無限に増える部屋、無限に増える中3女子
いったい我々はなにを読ませられているのか
奇書と名高い〔少女庭国〕/矢部 嵩の考察を書きました。

 

〔少女庭国〕
〔少女庭国〕
 

 

〔少女庭国〕のあらすじ

卒業式会場に向かっていたはずの中学3年生、羊歯子は

――――――――暗い部屋で目を覚ます。


隣の部屋に続くドアには貼り紙。

“下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1 とせよ”。

少女庭国 あらすじ イラスト

羊歯子がドアを開けると、そこにはまた新たな卒業生「村田 犬子」が。

 

ここまで、ドアの開いた部屋nは「2」(開いたドアでつながった手前側の部屋と
奥側の部屋を2部屋とカウント)

n-m=1を満たすには、羊歯子と犬子のどちらかが「死んだ卒業生」となってm=1にする必要がありそうです。

 

しかし2番目の犬子の部屋にも同じ貼り紙付きの扉があり、その奥にはまた別の卒業生藤子が横たわっていて……

少女庭国 あらすじ イラスト

結果、計13部屋を解放し13人となったお互いに面識のない中3少女たち。彼女たちの運命は……??

 

〔少女庭国〕著者  矢部 嵩さんについて

とにかく「奇妙なホラー」を書くことで知られている作家さん。

2024年現在、Amazonでは〔少女庭国〕含め4作品が購入可能です。

〔少女庭国〕がけっこうな衝撃作だったので、怖がりなわんこたんはまだ他の作品を読む勇気がでません。

 

紗央里ちゃんの家
保健室登校
魔女の子供はやってこない

 

矢部 嵩先生ご自身のX(旧:Twitter)アカウントとブログ「粉」はこちら。

なんとなく、アカウントからすでに不穏な感じが漂っているような。

 

〔少女庭国〕感想と考察

〔少女庭国〕について考えたことをまとめました。

CAUTION!

以下より、〔少女庭国〕の展開に触れています。未読の方はご注意ください。

 

羊歯子の結末→少女庭国補遺へ

最後は生き残った羊歯子の独白で幕を閉じる〔少女庭国〕。羊歯子が脱出できたかどうかは不明のまま。

と、この時点で残りページがまだ4分の3残されていることに読者は気がつくでしょう。

ここからが本作品のメイン、少女庭国補遺であり、あまりに奇妙な地獄の始まり。

以下からは真のネタバレ考察となっておりますので、読了前提でお読みください。

 

〔少女庭国〕
〔少女庭国〕
 

少女庭国補遺 のあらすじ

少女庭国「補遺」では、まるで観察日記のように中3女子が目覚め、迎える結末が羅列されていきます。

羊歯子はどうなったのか、この世界の黒幕は?といった説明は一切なし。次々に目覚めては死んでいく中3女子たち。

その中で、この世界のルールも少しずつ明らかに。

 

  • 部屋をのドアをひとつ開けるごとに中3女子は一体ずつ増える
  • 部屋の数は無限にある
  • 壁は硬いが掘り進めることは可能。どこまで掘り進んでも外には出られない
  • 部屋のドアを開けるまで中の女子は生命活動を停止している。ドアを開けることで生命活動を再開する。
  • なのでドアを開けずに壁を壊して隣室に入ると、隣室の中3女子は目覚めない
  • 各女子の性格や体格、持ち物はランダム

 

何度も試行される中で、部屋を開けて得られる「中3女子の身体という素材」をもとに、文明が発展するパターンも。作者の頭の中、どーなってるの。

 

少女庭国補遺 ネタバレ考察

少女は全員同じ学校の中学3年生のはずですが、だれひとり、お互いに面識がありません。(有名な先輩、教師などの共通認識はある)

また、同学年の卒業生は本来200人のはずが、部屋を開ければ無限に中3女子は増え、集団は1000人規模に膨れ上がります。

 

こんなのが物理的に実現されているとは考えにくいので、全て「シミュレーター内で演算」された世界であり、「少女庭国補遺」はシミュレーターを観察する外部者が記載した。という可能性もありでは。

 

道具を作る少女が現れた際、「人骨の利用」「道具の量産」等歴史の教科書のような太字の注釈が入れられているあたり、まさに観察日記のよう。

 

シミュレーターを操る外部者の正体は不明ですが、読み手側もシミュレーターの外側の
「観察者」という位置付けで、本作品に巻き込まれていると考えると、おもしろいです。

 最後の1人になって脱出したとみられる少女も、実際には条件を満たしてシミュレーターから削除されたのかな、と想像。

 

なおこの考察には、生身の少女がこんなめにあうなんてかわいそすぎるからせめてシミュレーター内のできごとであってほしい、というわんこたんの願望が含まれております。

 

〔少女庭国〕というタイトル

中3女子は全員、胸元にいろんな種類の生花を挿しています。(卒業式の飾りのため)

少女ひとりひとりを花に見立て、温室の草花を観察するように記録する。ということでしょうか。

そしてこのタイトル「少女庭国」ではなく、「〔少女庭国〕」というカッコつきになっているんですよね。(わんこたん、このことに最近気づきまして、当記事を2年ぶりに全面修正しました)

このカッコ、閉じられた世界のメタファーなんでしょうか。

 

〔少女庭国〕の次に読みたいおすすめ書籍

〔少女庭国〕のような、まるでシミュレーターのような「世界」を舞台にしたおすすめ作品をご紹介!

 

想像を超える不思議な世界!海を見る人/小林泰三

収録作品の「キャッシュ」では、長期間の宇宙航行での人工冬眠中、冬眠者の意識が滞在する仮想世界が登場。しかし仮想世界に崩壊の危機が迫っていて……?

他にも不思議で想像を超えた「世界」がいろいろ登場!知る人ぞ知る、傑作SF短編集です。

 

海を見る人
海を見る人
 

 

 

夢とリンクする殺人!?アリス殺し/小林泰三

こちらは小林泰三さんのミステリー作品。不思議の国でハンプティ・ダンプティが塀から落ちて死ぬ夢を見た後、亜理が大学に行くと、玉子というあだ名の人物が転落死。

夢の世界の死は現実の死?明らかになる「世界」の真実は……

 

アリス殺し
アリス殺し
 

 

 

仮想リゾートに迫る危機 グラン・ヴァカンス シリーズ/飛浩隆

ゲスト(人間)を、自我をもったAIがもてなす、仮想リゾート。

バーチャル世界でバカンスできるラグジュアリーで優雅な世界と思いきや……この美しいメッキがはがれ、リゾートの闇、人間の欲が明らかになる構成にゾクゾク。

シリーズ未完ですが、続編執筆継続中ということで、楽しみにしてます!

 

グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ
グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ
 

 

 

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