本記事の前半は「ネタバレなし」のため、安心してお読みください
- 「三体シリーズ」とは?
- ギャップ感がたまらない、ド級のおもしろさ
- 魅力的なキャラクター
- 第1作「三体」のわかりづらい点を解説!
- 「三体」シリーズの伏線・気になる点
- 三体の続編「黒暗森林」は三体を上回る面白さ!
「三体シリーズ」とは?
初めての方はこの1作目「三体」から読み始めればOK!
作者は劉慈欣(リュウ・ジキン)さん。その壮大すぎる物語が世界的大ヒットとなり、映像化プロジェクトも進行中です!
三体シリーズの詳しい概要は以下の記事にまとめています。ネタバレなしで全容をつかみたい方はこちらをどうぞ。
1作目「三体」あらすじ
文化大革命で父親を惨殺された
汪はやがて、地球に迫る脅威との戦いに巻き込まれていきます。
ギャップ感がたまらない、ド級のおもしろさ
冒頭の血なまぐさい文化大革命の描写、一方で、空虚で現実感のないVRゲーム「三体」の世界感。ふたつの世界のギャップに思考が揺さぶられます。
冒頭、文化大革命で命を落とす知識人と、現代の世界で自殺する科学者。負の歴史を繰り返しているかのような演出にもゾクゾク!
VRゲーム「三体」とは?
本作の主人公「汪」がたどり着くVRゲーム「三体」。そこでは
この「謎解き」要素も本作品の魅力。
ゲーム内では「始皇帝」や「コペルニクス」などの歴史上の有名人が登場。彼らと会話しつつ、わずかな情報をもとに「文明の滅亡」を回避すべく思考をめぐらせます。
このゲーム内描写がとてもおもしろい!というわけで、
魅力的なキャラクター
「三体シリーズ」中でも(わんこたんの中で)1番人気を誇るのが
史強
1作目「三体」の登場人物は、政治闘争にあけくれる文官か、天才で精神がちょっとアレな科学者ばかりなので、
史強は粗暴で、登場時は印象最悪ですが、中盤から刑事らしい洞察力と直感力で窮地を切り抜け、主人公を励まします。時に元軍人らしく、冷酷に敵を追い詰め、時に暖かく主人公たちを奮いたたせ,,,史強の八面六臂の活躍も本作の見どころ!
ここから先、本作の展開に触れている記載があります。
ネタバレにご注意ください。
ネタバレをくらう前に、三体を読もう!kindleならスマホアプリですぐに読めるよ。
第1作「三体」のわかりづらい点を解説!
「三体」おもしろいですが、複雑な科学設定、中国の歴史的背景なども相まって、難しいのも事実。できるだけ解説してみました。
いきなり登場する「文化大革命」ってなに?詳しい歴史を解説
冒頭にいきなり登場する文化大革命。日本人には馴染みの薄い歴史描写に、面食らった読者も多いのでは。
ざっくり言うと、毛沢東の思想に共鳴した学生たちが「紅衛兵」となり、暴動を起こして多くの知識人をリンチするなどした事件です。
紅衛兵の暴動がエスカレートし、逆に自分の立場が危うくなる、と考えた毛沢東は「味方」であった紅衛兵の若者たちを地方の農村に追いやります。
これは「上山下郷運動」と呼ばれ、苛酷な山奥での伐採活動の様子は「三体」でも描写されています。
文化大革命は現在でもなお、中国の政治的にデリケートな問題と言われています。そのため、中国出版当時、もともと「三体」の冒頭にあった文化大革命描写は物語の中盤に移動させられてしまいました。(英訳版、日本語版では冒頭に復活しています)
また、毛沢東に関する記述がほとんど登場しないのも、政治的配慮によるものと、わんこたんは予想しています
「文化大革命」のより詳しい詳細は以下の記事でもまとめています。
(読了/後編)読書感想文/そうだったのか!中国 - わんこたんと栞の森
わんこたんは三体をキッカケに、「そうだったのか!中国」を読んで、中国近代史を知りました。著者はあの池上彰さん。期待通りのわかりやすさで、とっても勉強になりますよ。
文化大革命では多くの知識人が命を落とします。時は流れ、再びその命を狙われる科学者たち。文化大革命と重ね合わせた、皮肉に溢れたストーリーだと思わずにはいられません。
智子(ソフォン)の仕組みは?
「智子」は三体世界から地球へ通信・偵察・妨害機として送り込まれた「陽子」(原子を構成する超ちっちゃな粒みたいなやつ)です。
ただの1個の陽子ですが、それは11次元に折りたたまれた姿。2次元の姿は、惑星を覆えるほどに広がる超巨大コンピューターです。(2次元なのでペラッペラッですが)
なるほどわからん!
智子のせいで、人類側の基礎研究技術はストップさせられ、人類の情報は全て三体星人に筒抜けという絶望的状況。智子にどう対抗するか?が2作目「黒暗森林」の展開となります。
智子(ソフォン)の仕組みや目的について、より細かく説明した記事を書いたので、あわせてご覧ください。
「地球三体協会(ETO)」の派閥の関係性が分かりづらい
三体星人に味方し、人類に敵対する
結論から言えば「地球三体協会」は続編ではあまり重要でなくなるため、関係性が理解できなくても問題ありません。参考までに各派閥のスタンスをまとめました。
降臨派
エヴァンズがリーダー。人類社会に絶望し、人類なんて絶滅してしまえ!という考え方。三体星人に従っているが、特に三体星人に好意はなく、とりあえず人類が破滅すればよいと思っている。後述の救済派と敵対している。
救済派
三体文明に憧れを抱き、崇拝。困難に直面する三体文明を救い、かつ三体文明との出会いによって人類は一歩進化できると考えている。
最終的に「三体星人」と「人類」両方とも救うことを理想とするが、実際の「三体星人」たちはとても冷酷なので、実は救済派の理想がかなうことはない。先述の降臨派と敵対している。
生存派
三体文明にへりくだって、三体星人の侵略後にもなんとか生き延びたいと願う派閥
結局三体星人の戦略ってなに?
①地球に大艦隊を送り込む(速度が遅いので450年後に地球に到達する)
↓
②ミクロのスーパーコンピューター「智子」を地球に送り込む(①より先に到着)
↓
③智子を使って地球上に「地球人に対する」反逆者を増やす。
↓
④③に加え、智子の妨害で人類の科学技術の発展を遅らせ、三体人の艦隊が到着するまでに地球人の戦力・科学技術が増強されることを防ぐ。
「三体」シリーズの伏線・気になる点
完結後に第1作を読み返すと、続編への伏線とも思える箇所がありました。
この宇宙の最期の姿?
この宇宙のすべての原子は、悠久の時間の果てに、最後は■■■に展開するのかもしれない。だとしたら、われわれの宇宙の最期の姿は(後略)
三体「34 虫けら」より
ネタバレ防止のため一部伏字にしましたが、三体シリーズの最終作「死神永生」の展開を予言するような発言が、第1作で登場していました!
林雲(リン・ユン)と球電研究
「34 虫けら」で丁と汪の会話に少しだけ登場する女性研究者「林雲(リン・ユン)」と「球電研究」の名称。三体シリーズの前日譚「三体0【ゼロ】 球状閃電」についての情報も、第1作に断片的に登場していたことがわかります。
他、気になったところなど
- 予測不能な軌道を描く3恒星に翻弄される「三体文明」。過酷な環境で何度も凍り付いたり燃えたり引きちぎられて200回以上滅亡しているのですが、そのたびにしぶとく生命が復活し、過去の文明の記録が残っているの、すごい。
- 三体星人の策略によって、地球上で物理法則の研究がストップさせられ、これまで発見されてきた物理法則は嘘だった??と科学者達が動揺するのはうなずけますが、それに絶望し自殺までするのはやりすぎのようにも感じました。
なお、揚冬の自殺の経緯については、3作目(最終作)「死神永生」で補足情報が登場します。お見逃しなく! -
物語の前半とラストで、人類の比喩として「イナゴ」が登場します。
前半では「人類の後先考えない環境破壊」の象徴として。ラストでは「どんな環境でも決して負けずに繁栄する人類」の象徴として。全く逆の意味で描かれているのが印象的でした。
三体の続編「黒暗森林」は三体を上回る面白さ!
1作目「三体」の時代から400年以上先が舞台。上下巻にわかれ、地球と「三体星人」との戦いの模様が描かれます。
2作目「黒暗森林」の記事はこちらからどうぞ