ネトフリでドラマ配信中!三体原作の解説はこちら

機龍警察〔完全版〕自爆条項 ライザの過去に触れる第2弾

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

機龍警察シリーズの2作目、自爆条項。1作目からより進化した面白さ。深まるキャラクターの背景、現実世界との絶妙なリンクも相まって、最高でした!
その面白さをできる限り解説しています。
 
機龍警察 自爆条項〔完全版〕
機龍警察 自爆条項〔完全版〕
 

文庫版もありますが、収録特典が異なるので注意!

収録特典の違いは記事の途中で解説しています。

 

 

あらすじ

機甲兵装の密輸事案、日本に潜入したテロ組織IRFの幹部、そして、元IRFテロリスト、ライザ警部の壮絶な過去。全てが絡み合い、恐るべき策略が明らかになる。

極限状況の中、ライザは、姿は、ユーリは何を決断するのか?SF✖️リアル警察小説な、機龍警察シリーズ第2弾!

 

  • 著者:月村 了衛
  • 発売:早川書房 2016/5/25
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(Amazonが提供する「聴く読書」):聴き放題対象
    ▶︎5分間の試聴はこちら ※リンク先で「▶Audibleサンプル」を押下

    家事をしながら読書できるのが、Amazon提供サービス、Audibleのいいところ。管理人わんこたんは、洗濯物干しタイムに愛用中です。
    //合わなければ体験中の解約OKで安心\\

 

 

機龍警察シリーズについて

世界中にテロリズムが蔓延し、市街地での近接戦闘を主眼におく兵器「機甲兵装」が台頭した世界。

テロの危機から国家を守るため、新設された警視庁特捜部。特捜部に配備された3台の新型龍機兵の搭乗者、姿、ライザ、ユーリの戦いを中心に描かれる、警察×SF×ミステリー×国際サスペンスな物語。

 

これがまあめちゃくちゃおもしろくて管理人わんこたん、ドはまり中。

 シリーズ1作目は、以下の、機龍警察〔完全版〕となります。

 

機龍警察〔完全版〕
機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ・ミステリワールド)
 

 

 

機龍警察〔完全版〕自爆条項、各バージョンを解説

1作目機龍警察〔完全版〕もそうですが、2作目自爆条項も、どれを読んだらいいのか?がとってもわかりにくいので、解説します。

 

① まず2012年に発売された自爆条項(上下巻)がこちら。電子版はありません。

機龍警察自爆条項 上
機龍警察自爆条項 上
 

 

機龍警察自爆条項 下
機龍警察自爆条項 下
 

 

② ①に、加筆修正を加えた自爆条項〔完全版〕(ハヤカワ・ミステリワールド) がこちら。下記2点が追加されています。

  • 大幅加筆
  • 特別付録の短篇自作解題

 

機龍警察 自爆条項〔完全版〕
機龍警察 自爆条項〔完全版〕
 


③ ②を文庫化したのが自爆条項〔完全版〕(ハヤカワ文庫JA版 上下巻)。文庫化にあたり、霜月蒼氏の解説が加わった一方で、②にあった、特別付録の短編自作改題は付いていません。つけてほしかった!

 

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上
機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上
 

 

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下
機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下
 


④ ③の電子版には霜月蒼氏の解説が付いていません。ただし、霜月氏の解説は以下で全文公開されていますので、電子版を買った方もご安心を。

【特別公開第二弾!】『機龍警察 自爆条項〔完全版〕』霜月蒼氏文庫解説|Hayakawa Books & Magazines(β)

 

つまり、②自爆条項〔完全版〕(ハヤカワ・ミステリワールド) を購入して霜月氏の解説をネットで読めば、この作品を1番に楽しめるのですが、②はハードカバー価格で、ちょっとお高いです。

ちなみに管理人わんこたんは④自爆条項〔完全版〕(ハヤカワ文庫JA版 電子版)を購入しましたが、自作改題がついているとわかっていたら②を買ったのに。ぐぬぬ。

 

この後、機龍警察は3作目 暗黒市場へと続きますが、暗黒市場以降は完全版の執筆や自作改題といった予定はないそうなので、一安心。

 

機龍警察 暗黒市場 上
機龍警察 暗黒市場 上
 

 

以下に機龍警察シリーズ既刊一覧を並べました。

※書影クリックでAmazonの作品ページへ

機龍警察〔完全版〕
機龍警察 自爆条項〔完全版〕上
機龍警察 自爆条項〔完全版〕下
機龍警察 暗黒市場 上
機龍警察 暗黒市場 下
機龍警察 未亡旅団
機龍警察 火宅
機龍警察 狼眼殺手
機龍警察 白骨街道

 

機龍警察〔完全版〕自爆条項 感想

2作目は機龍警察搭乗員の1人、ライザラードナー警部の過去と人生にフォーカスしています。前作より、テロリストの設立背景などが、現実の歴史とリンクされた描写になり、より、SFだけどめちゃくちゃ現実の物語、という設定が色濃くなりました。

 

明らかになるライザラードナー警部の過去

1作目では死に場所を求めているかのようなライザ警部でしたが、その過去は悲惨なものでした。

 

バンシーの換装オプションがまたひとつ

1作目では3号装備が登場しましたが、今回はまた別に装備。

作戦に合わせて装備を付け替えるという、サンダーバード2号のようなオプション。かっこいいではないですか。こういうところの設定が実にワクワクする。

 

敵となる架空テロ組織IRFについて

2作目で敵となるのはアイルランドのテロ組織IRF。IRF自体は架空のテロ組織ですが、そのベースとなった、アイルランドの独立を目指す武装組織「アイルランド共和軍」(Irish Republican Army:IRA)は実在の組織です。

 


北アイルランドではイギリスから分離を求めるカトリック系住民と、反対するプロテスタント系住民との長年にわたる激しい対立が続いていました。

 


1972年1月30日、北アイルランドのロンドンデリーで、デモ行進中の市民27名がイギリス陸軍落下傘連隊に銃撃され14人がなくなった「血の日曜日事件」。

 


このような痛ましい歴史を歩みつつ、1998年にイギリス・アイルランドの間での和平合意(ベルファスト合意)を経て、IRAは武装解除を進め、平和的な形での解決を模索しています。

 


2024年2月には北アイルランド自治政府でアイルランドとの統一を掲げる政党から、初めて首相が就任。アイルランド統一の賛否を問う住民投票を10年以内に行いたい、と述べました。またひとつ、アイルランドの歴史が動くのかもしれません。

参考:北アイルランド自治政府首相“10年以内に統一問う住民投票を” | NHK | 北アイルランド

 

この自爆条項を読まなければ、管理人わんこたんがここまでアイルランド近代史を知ることもなかったでしょう。まさに現実に手を伸ばしたSF小説、なのです。

 

実際の歴史から分岐した偽史SFとしてもおもしろい

一方の機龍警察の世界では、史実とは異なり、2000年代に「第二の血の日曜日=アゲン」と呼ばれる、機甲兵装を用いた殺傷事件が発生。

アイルランド世論は世論は和平反対に大きく傾き、テロ組織IRF(Irish Republican Force)が台頭。世界で暗躍している、という設定になっています。

 


そして、アゲンに妹のミリーが巻き込まれたことによって、ライザの人生は暗くねじくれていき……

 


史実をベースにしつつ、そこからの改変が本当にうまい!メカSFと見せかけて、偽史SFとしても秀逸なのが、この自爆条項だと思います。

 

ライザの人生に現れる、2冊。鉄路と車窓

IRFを率いるテロリスト<詩人>ことキリアン・クイン。彼が執筆した詩集「鉄路」は、いわば経典として、IRF支持者であることを示す証のような存在。

 


一方で、鈴石緑の父親が記した書籍「車窓」。父親含む家族をIRFによるテロで失った鈴石緑にとって、ライザは味方陣営でありながら因縁の存在です。

 


このふたつの本が、思いがけない形でライザの人生に現れるという構成。そして、クライマックスでの緑からバンシーへの通信。

自分自身を裏切るな。あなたならバンシーの性能をもっともっと引き出せる。

 


そして導き出した答えは……ここで妹のミリーの存在がライザの

暗いくらい過去の積み重ねから、手繰り寄せたひとつの奇跡。グッときました。

スパス15で最後の最後にジャムを起こしたのはキリアン。悪運はあなたが連れていけ。かっこいい!手話で意思疎通するのも、妹さんの経験が生きたからこそ。辛いし、ジーンとなる。

 

キリアンクインについての考察

詩人としてカリスマ性を際立たせていたキリアンクインですが、その実、かなり追い詰められていたのでは?と推測します。

パディントン駅のテロの際も、参謀本部が対立していたのでは?という疑惑のあったキリアン。

 

本作では、墓守、猟師、踊子という有力な手札を日本に投入し、しかも捨て石のような使い方をしています。

IRFでの立場が危うくなり、決死の作戦だったのか?

IRF内でも血で血を洗う闘争があったのはライザの回想でもあった通り、有力な手駒を失ってでも、バンシーを入手したいほど、焦っていたと思われます。

 

タイトル 自爆条項について

「自爆条項」というワードの意味が、終盤になって明らかに。龍機兵3機がどういう経緯で警視庁にやってきたのか。という点は相変わらず謎のままですが、3名の龍機兵搭乗員の契約内容が少しだけ明かされました。

 

自爆条項があるため、警察官の中から龍機兵登場要員を選抜できなかったことも明らかに。

  • 姿の附則項目を知ったユーリ。2人の今後の関係性はどうなるのか?
  • ライザとユーリとは別に条項に附則項目が記載されている姿。(1番ギャラも高い。)どういう経緯で龍機兵搭乗者となったのか。
  • 沖津の背景には何があるのか。

などなど、次に繋がる伏線も示しつつ、一応の決着を見せた対IRF戦。次はどのような敵が出てくるのか、気になります。

 

警察組織に巣食う、「敵」についても少しずつヒントが。

1作目からその存在が示唆されていた、警察内部の「敵」

終盤、宮近から重要情報を得た、警備局警備企画課の小野寺課長補佐、とその上司堀田課長。

その後に起きた中国人自爆テロは、何か関係があるのでしょうか。

 


警察の中でも特に異質で排他的な外事三課曽我部さんの存在も不気味。

本意ではないのに、あっさりと特捜部に情報を渡す曽我部さん。外事三課もまた、どこかの圧力を受けているのか?

公安部長の清水さん、警視庁外事課長の長島さん 外情部長の鷺山さん、などなど、重要人物(=怪しい人物)の名前も次々にあがってきました。

 


また、曽我部さんは、狛江事件を沖津がわざと引き起こして特捜部設立を進めた、という大胆な筋書きを披露。

外務省の周防首席事務官(サザートン会談の日本側窓口の人)さんが沖津に不信感を抱くよう仕向けた、その意図は一体?

まだまだ謎が多くて、全貌が見えてきません!

 

その他魅力的すぎるキャラ描写

踊子、イーファオドネル。最後まで引っ張った割には、あっけなく……無邪気で傲慢な過去のライザと一緒。だからこそ、現在のライザが負けるはずない、ということなのでしょうか。

姿に助けられたことを悔しがる。バーナードナッシュ。彼と姿の因縁もいつか描かれないかなあ。

やっぱり高速道路での戦闘シーンは圧巻。超乱戦ながら誰がどう動いているか分かり易い。それでいて緊迫感と迫力もすごい。

 

機甲兵装

デュラハン

イフリータ

イフリート

ニーグル

 

機龍警察 自爆条項の次に読みたい おすすめ作品

機龍警察〔完全版〕自爆条項の次に読みたいおすすめ書籍をまとめました。

 

円 劉慈欣短篇集

 

偽史SFといえばこれ

機龍警察 自爆条項のように、実際の歴史を改変した世界を描いた「偽史SF」

収録作品の「円」は、なんと中国始皇帝の時代に◯◯が……??脳みそとろける極上の歴史改変を、ご堪能あれ!

 

円 劉慈欣短篇集
円 劉慈欣短篇集
 

 

感想記事はこちら▶︎「円 劉慈欣短編集」のネタバレ感想。短編から味わう劉慈欣SFの魅力! - わんこたんと栞の森

 

同志少女よ、敵を撃て

 

ライザのイメージから

同志少女よ、敵を撃て

 

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て
 

 

感想記事はこちら▶︎同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 あらすじとネタバレ感想 - わんこたんと栞の森

 

読み始めたらとまらない作品、揃ってます

 

機龍警察 自爆条項〔完全版〕
機龍警察 自爆条項〔完全版〕