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同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 あらすじとネタバレ感想

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

ナチスドイツに殺された母の仇を取るため、狙撃兵となった少女。仲間と共に狙撃兵となり、敵を殺して殺して、殺しまくった先に見るものとは?
2022年本屋大賞受賞作の「同志少女よ、敵を撃て」。感想を書きました。

 

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て
 

2023年12月現在、同志少女よ、敵を撃てはAudibleの聴き放題対象です。

 

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「同志少女よ、敵を撃て」あらすじとネタバレ感想

本作のあらすじと感想です。

 

故郷の村が襲われ、ただ1人救出されたセラフィマが狙撃兵になるまで

1942年、ソ連。

 

大学への進学を夢みる猟師の娘、セラフィマ。

 

突如やってきたナチスドイツ軍の一団によって、セラフィマの母親含め村人は皆殺しに。母親を殺したドイツの狙撃兵、イェーガーと、母の死を侮辱したソ連軍のイリーナ。セラフィマは2人に復讐を誓います。

 

女性だけの狙撃兵養成学校。新たな仲間との出会い。

 

村から救出され、女性だけの狙撃兵養成学校に入校するセラフィマ。クラスメイトとぶつかり合い、切磋琢磨しながら、狙撃の腕を磨きます。

 

ここまでは学園ものという趣き。同級生との対立と友情、模擬戦などは少年漫画を読んでいるよう。狙撃兵としての基本知識や、その特殊な訓練の様子も描写され、読み手を飽きさせません。

 

  • 鬼教官のイリーナ
  • お嬢様のようなシャルロッタ
  • お母さんのような包容力を持つ最年長ヤーナ
  • 抜きん出た狙撃技術を持ちながら、自室は◯◯なアヤ、
  • 優しいようで実は、、、オリガ。

各キャラの特徴が読者に印象付けられたところで、学校パートは終了。

厳しい訓練にも脱落せず耐え抜いたセラフィマ含む5名の生徒と、教師のイリーナ。

彼女らはナチスドイツとの戦場に投入されます。

 

敵味方の死体の山が築かれる戦場。狙撃兵の基本を忘れたものは死ぬ。

まるで見てきたかのような戦場描写パートのリアルさ、全体像のわかりやすさにはおどろきました。これで著者デビュー作ってんだから凄すぎる。

 

少しでも油断したり、あるいは殺戮に酔って基本をおろそかにしたり。そういう兵士は容赦なく命を落とします。それはセラフィマの友人も同様でした。

 

戦場の厳しさと自分の無力さに打ちひしがれながら、セラフィマたちは次の地獄、スターリングラードに投入されます。

 

スターリングラード。極限下で生きる者たちの戦い。

このパートで特に印象的なのは、夫を失いスターリングラードでドイツ兵の愛人となって生き延びる女性「サンドラ」でしょう。

 

夫をドイツ軍に殺されながら、ドイツ兵の愛人となり、食料をめぐまれて生き延びる。

 

その生き方にセラフィマたちは反発します。しかし、サンドラには絶対に生き延びねばならない理由がありました。

 

外から見たら歪に見えても、自分の心を貫き通す。その姿勢は、セラフィマの心に何かをもたらしたのかもしれません。

 

最後の戦い

1945年 ケーニヒスベルグ。セラフィマは最後の戦いに向かいます。

復讐はなされるのか。セラフィマが最後にスコープからみた景色とは。

 

一気読みしてしまうおもしろさ!

狙撃の知識に緻密な市街戦の描写、仲間との友情まできっちり構成され、これがデビュー作!?とは恐れ入ります。

学校パートは、どんな訓練をするのだろう?とセラフィマたちの成長にワクワク。市街戦では、死と隣り合わせの緊迫感あふれる描写にハラハラ。

とにかく読む手がとまらないおもしろさでした。

 

宣伝で「彼女が目にした"真の敵"とは?」と書かれていたので。仲間の裏切り、国家への反逆、などを想像していましたが、そういった平凡な予想を超える結末だったのもよかったです。


若干ドラマチックにすぎる場面もあります(最後まで自宅に残るマクシム、ドイツ兵への尋問シーンなど)が、戦争という、善悪の境目が曖昧な世界を、しっかりと描き切った、すばらしい作品でした。

読んでよかった!

 

「同志少女よ、敵を撃て」著者の逢坂 冬馬さん新作情報

この「同志少女よ、敵を撃て」が、逢坂さんのデビュー作というから驚き。

2022年本屋大賞のみならず、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞時には史上初、選考委員全員が5点満点をつけました。

 

2023/10/8には2作品目となる「歌われなかった海賊へ」が発売決定!

1944年、ナチス体制下のドイツ。実在した反体制派集団「エーデルヴァイス海賊団」の少年少女たちの物語です。

 

「同志少女よ、敵を撃て」関連作品たち

本作を読んだらこちらもおすすめ!な作品を集めました。

 

ストックホルムの密使

佐々木譲を代表する、戦争小説。3部作の2作目ですが、独立した作品として読むことができます。文庫本上下巻。

史実をベースにしつつ、スパイものとしてのワクワク感も盛り込み、こんな歴史があったのかも?と思わずにはいられないリアリティ。

戦争の泥沼におちいっていく、当時の日本が克明にえがかれ、本当にフィクション?と疑いたくなるような、作品です。

 

三体シリーズ 1作目「三体」

三体

 

「同志少女よ、敵を撃て」に名前が登場するスターリン。そのスターリンから大きな影響を受けたのが、中国の毛沢東でした。

 

「同志少女よ、敵を撃て」でスターリンが失脚しフルシチョフが台頭していく様子が描かれますが、フルシチョフが公然とスターリンを批判したことで、毛沢東とソ連の関係は大きく冷え込みます。

 

そのことが、やがて大躍進政策(と、その失敗)、からの「文化大革命」につながり、、、

 

「文化大革命」で父を失った女性が、人類に絶望することで始まる物語が、SF「三体シリーズ」です。

 

三体シリーズ こちらでも解説!

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て