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二度読み必至の恋愛小説 イニシエーション・ラブ 乾くるみ 

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

僕とマユの出会いは7月の合コンだった。初めてのデート、たどたどしい会話、愛の深まり、そして……

すべてを裏切る「あの1行」の衝撃。二度読み必至の恋愛小説「イニシエーション・ラブ/乾 くるみ」の感想を書きました。
 
イニシエーション・ラブ
イニシエーション・ラブ

 

イニシエーション・ラブ あらすじ

合コンで出会った、大学4年生の僕=たっくんと、歯科衛生士のマユ。

初々しい2人。徐々に愛を育み、初めてを経験し、しかし、僕の就職、転勤とともに、雲行きが怪しくなり......

 

なーんて、よくある出会いと別れとの恋愛モノと思いきや、物語は思わぬ方向へ。最後の最後まで、気を抜かずに、お楽しみあれ!

 

  • 著者:乾 くるみ
  • 発売:原書房 2004/3/1 → 2007/4/10 文春文庫で文庫化
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):聴き放題対象
    サンプル5分の試聴はこちら
    (リンク先で「▶Audible サンプル」を押してください)

    Audible版は音ならではの演出を加えて、必ず「二度聴きたくなる」作品になっているとのこと。聴け次第、本記事でもレビューします!

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著者 乾くるみさんについて

かわいらしい(?)お名前から間違えそうになりますが、男性のミステリー作家さんです。

1998年に「Jの神話」でメフィスト賞を受賞しデビュー。

イニシエーション・ラブは、タロットシリーズと呼ばれる作品群の1つ。

表紙にタロットカードがあしらわれていたり、共通の登場人物がいたり、という共通点はあるものの、物語としては独立して楽しめます。

 

Jの神話
新装版 塔の断章
イニシエーション・ラブ
リピート
セカンド・ラブ
嫉妬事件

 

イニシエーション・ラブの感想

CAUTION!

以下、本作品の内容に触れる部分があります。未読の方はご注意ください。

 

「恋愛ミステリー」とされる本作。

たしかに読者をだますシカケはありますが、謎解き要素は少なめ。あくまで「恋愛小説」として楽しむのがよさそうです。

 

「あの1行」を読んだ瞬間は、状況がわからなすぎて、放心状態に。やがて、じわじわと真相を理解する脳。

驚愕の事実に「うわあああああ」と叫びたくなること必至!

 

後書きがとっても丁寧

イニシエーション・ラブ巻末には大矢博子さんの後書きが。

作中の「シカケ」についてもこっそり解説されており、「最後まで読んだけど意味がわからなかった…」とならず、安心です。

 

昭和の終わりごろを舞台にした本作。当時の流行り、世相についての描写が多いですが、「カセットテープ」「ファミコン」「国電」などの用語解説も充実。ついていけない平成世代の読者も安心。

 

唯一解説されていないのは、「OHP」くらいでしょうか。

OHP…最後に使ったのは小学生の頃かなあ

OHPとは!

現在は発表、プレゼンの資料投影に「パワーポイント」を使うことがほとんどですが、当時はOHPという透明フィルムに、資料を書いたり印刷したりしていました。

 

OHPフィルムの後ろから、専用の機械で光を当てて、それをスクリーンに拡大投影するんです。

紙資料をOHPフィルムに焼き直す、プリンターみたいな機械もあったなあ

 

女性は怖い?それとも…マユの嘘と本音

マユは嘘をついています。例えば

 

(指輪を)失くしちゃったみたい。126ページ (1987/12/24)

なくしたわけではないんですが……笑 でも、指輪をしれっと使い続けることも、売ったり捨てたりすることもできたのに、ちゃんと返して、すっぱり関係を断ち切るあたりは、いいですね。

 

それだけはっきり「別れたかった」ということでしょうか。おかげで来年は、たっくんから新しいルビーの指輪をゲットできそうです。

 

私、今日のことは一生忘れないと思う……初めての相手がたっくんで、本当に良かったと思う。(114ページ)

、、、、、うん!バレなきゃOKってことかしら!

Xの読書仲間(男性)から、本作について「怖い」という評をいただきました。そりゃあねえ。

 

マユの嘘と、本音と。

怖い、恐ろしいとも言われるイニシエーション・ラブ。でも、最後は登場人物みんな、悪くない結末に落ち着くことに(海藤くんは失恋しちゃったけど)。

なので、真相を知ると、意外と読後感は爽やか。

 

そもそもマユはたっくんから暴力を受けていました。避妊もしてくれないし、そんなやつ、別れて当然。なんとか自分の身を守り、穏便に別れたい、という必死の生存戦略でもあったように思えます。

「乱暴はしないで」というセリフは、マユの心からの悲鳴だったのではないでしょうか。

 

生き残るためにはなんでもする。嘘もつく。優しくて男はしっかりキープしとく。もちろん呼び名だって……そんなマユの強かさ、わんこたん結構好きです。

 

みんな大好き、「十角館の殺人」

イニシエーション・ラブを読み解く「鍵」として登場する「十角館の殺人」。1987年9月に出版され、ミステリ界に驚愕をもたらしました。

「衝撃の一行」で読者を翻弄する点はイニシエーション・ラブとそっくり。

 

マユとたっくんも、十角館、すごかったね!なんて会話をしたのかも。傑作ミステリーと名高い「十角館の殺人」、ぜひイニシエーション・ラブとセット読んでみてくださいね。

 

 

十角館の殺人〈新装改訂版〉

 

十角館の殺人 感想記事はこちら(ネタバレ注意)

 

マユの健気さの表れ?部屋に置かれた「アインシュタインの世界」

たっくんにアインシュタインを知らないことをバカにされ、泣いてしまったマユ。部屋に置かれた「アインシュタインの世界」は、マユが買ったのか、彼から借りたものか。

 

たっくんに追いつくために、アインシュタインについて勉強しようと思ったのであれば、マユ、なかなか健気じゃないですか。

 

この「アインシュタインの世界」残念ながら絶版ですが、中古本は購入可能のようです。今度読んでみようかな。

 

イニシエーション・ラブ 感想まとめ

果たしてこの恋愛は、誰にとっての「イニシエーション(通過儀礼)」だったのか。

この記事を書くために2度読みしながら、そんなことを考えていました。

 

この記事を見て、気になったあなた。ぜひ2度読み、3度読みして、本作の世界に浸ってみてほしい!。

 

次に読みたい!「しかけがすごい」他のおすすめ作品

イニシエーション・ラブのような「しかけがすごい作品」をピックアップしました。

 

真実は音で明らかに「きこえる/道尾秀介」

小説を読み、途中のQRコードを読み取ると……?

文字と音が融合した、新感覚のエンタータイメント小説です。

 

きこえる
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紹介記事はこちら:真実を再生せよ!「きこえる/道尾秀介」の感想と、ほんのり解説 - わんこたんと栞の森

 

透きとおった物語に、あなたは気づける?

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