そんなファンの「三体ロス」の怨念(?)からうまれた、原作者公認二次創作!「三体X 観想之宙/ 宝樹」その感想を書きました。
三体X 観想之宙とは?
大ヒットSFシリーズ「三体」が完結し、悲しみに暮れる三体ファンたち。その一人、宝樹氏は三体ロスを埋めるべく「三体シリーズの同人誌」を執筆し、ネットの海に放ちます。
同人誌でありながら原作を(そんなに)損なわない、むしろ原作を細かく分析し尽くしたファンだからこそ書ける、「三体補完小説」として、ネット上で大人気に!
やがて原作者の目にとまり、公認を得て出版されたのが本作「三体 X 観想之宙」です。
必ず「三体シリーズ」と「三体0【ゼロ】 球状閃電」を読んでから、本作を読んでね
\\三体シリーズの全貌はこちらで解説//
※三体シリーズ未読の方は1作目「三体」から読みましょう。
三体X 観想之宙のあらすじ
三体X 各章のあらすじをこちらにまとめていきます。
第一部 時の内側の過去
「三体Ⅲ 死神永生」のラストでプラネット・ブルーに二人取り残された「雲天明」と「艾AA」。「死神永生」の物語の裏で何が起きていたのか?が「雲天明」の口から語られます。
原作ではっきり描写されなかった部分、あれってどうだったの?な部分がしっかり補完されていて、同人誌であることを忘れそうになるレベル。
気になる「三体人」の身体の外見描写もあり、ファンとしては読むことを強くおすすめします。一方であくまで同人作品であり、俗っぽい表現やカップリング描写も登場するのでご注意を。
ちなみに「三体Ⅲ 死神永生」のストーリーを忘れていても大丈夫!親切なことに、三体X 観想之宙の後ろに「三体Ⅲ 死神永生」の簡易あらすじが掲載されています。
第二部 茶の湯会談
プラネット・ブルーで歳を重ね「艾AA」に先立たれる「雲天明」。彼は不思議な声に導かれ、宇宙#647へ足を踏み入れます。
この三次元宇宙がどのように産まれたのか。「三体」の物語のさらに外側、宇宙レベルの戦い。十次元の世界。次元崩潰。などなど、情報量の洪水に頭がパンクしそうに。
(誉め言葉)
素粒子物理学の世界では、なぜ宇宙誕生時に反物質が消滅したのかを「CP対称性の破れ」で説明する(らしい)のですが、本品ではこれに「SF的な」解答を提示しており、作者の想像力(妄想力)に感服させまくられます。
その一方で、「エンドレスエイト」や、とあるAV女優のDVDなど、他エンタメ作品もちらっと登場。「同人誌」だからこそ書ける物語にくすっとさせられます。
第三部 天萼(てんがく)
太陽系を「のっぺり」させたやつらの、その後の物語。地球と三体世界の戦いなんて、こいつらに比べたらゾウリムシ、いやウイルスレベルの些事だったのでしょう。
そんなやつらの「その後」が描かれます。
登場する「新太陽弾き」ってやっぱり〇〇の子孫たち、ということですよね?彼らが生き延び繁栄しているという事実がとてもうれしい。(これ、同人誌だけど)
終章 プロヴァンス と コーダ
三体ファンがどんなに渇望しても見ることができなかった「結末」がここに。「同人誌」さからこそ書けたであろう、エピローグでした。程心は相変わらず程心でちょっとかわいそうだけど。
まとめ「三体X 観想之宙/ 宝樹」は三体ファンなら読んで損なし!
「同人誌だからこそ書けた」三体シリーズの「世界の続き」。カップリング表現には注意ですが、三体ファンなら三体X 観想之宙は絶対おすすめです。
作者の宝樹氏はこの作品をきっかけにSF作家としてデビューすることになったそうで、すでに短編集も発売決定。
「三体」から生まれたSF小説界の新たなスターの活躍を、これからも楽しみにしています。