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(読了)読書感想文/ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか 工学に立ちはだかる「究極の力学構造」

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

どなたかSF作家さんが、こちらの本をTwitterで紹介していて、

気になったのでぽちりました。

概要

 

ショベルカーをはじめとした「ロボット」と「生物」の構造の類似性が示され、
なぜこのように(意図して設計したわけではないのに)
ロボットと生物は似ているのか、

 

あるいは似ていない部分については
なぜ似ていないのか?という考察が展開されます。

 

面白かった点

 

何よりもまず、ロボットと生物の類似性について、
いろいろな事例がたっぷりと紹介されていて、
そこがまずめちゃくちゃおもしろいです。

例えば、ロボットアーム

 

アームを設計するにあたり、場所をとるモーターを胴体側に配置し、
先端部はモーターと接続したワイヤーで動かすというのは
素人の自分でも理解できる理にかなったデザインなのですが、

モーターとワイヤーの関係性は、よくよく考えると
手のひらの筋肉と、それにつながる各指の腱と類似しています。
意図して人間の腕に似せたわけではないのに、なぜか似ている、、、

 

著者はどんなに新しいロボットを考えても、
そこにはいつも生物が先回りしていると嘆いていますが、
この感覚はロボット開発者あるあるなんでしょうか。

 

ちょっと気になるところです笑

 

構造色コンプライアンスなどの聞きなれない用語についても
丁寧に説明されていて、そこだけでも非常に勉強になります。

 

コンプライアンス、というと一般的には法令順守のことを指します。
医療現場的には、患者さんの服薬順守(いわれたとおりにお薬を飲んでいるか)
という意味合いでも使われます。

 

が、ロボット工学的にはコンプライアンスはまた別の意味をもつようです。
(詳細はぜひ本書で!)

 

なぜロボットは生き物ににてしまうのか?

 

タイトルにもある「なぜロボットが生物に似てしまうのか?」という問に対し、
回答についての記述については、詳しく書くと著作権的にアレなので割愛しますが、
なるほどなあ、生き物ってよくできているなあ。と感心すること、請け合いです。



ただし、大変失礼な言い方をすれば、
この「回答」はあくまで筆者の個人的な考察である、という点は
念頭に置いて読むべきかなと思いました。


(そもそも生物の進化自体、解明されていない部分が多いので、
この問い「なぜロボットが生物に似てしまうのか?」に明確に回答するのは
現時点では不可能でしょう)

 
進化は「突然変異」というランダムな現象と、
自然淘汰の繰り返しで進んでいきます。(と私は理解しています)

 

だから、突然変異で、「不要だけど生存には特に影響しない」
変化が発生した場合、それが子孫に受け継がれていく可能性もあるんですよね。


それを後から見て「こういう理由でこの部分が生存に役立っていたんだろう」
と考察することはできますが、
その考察が正しいかどうかは検証が難しい

 

なので、正解はだれもわからない。というのが私の個人的な意見です。

 

※なお本書において一か所だけ、大腿骨の形状の部分については、
後天的な骨形成と進化による骨の形状変化をごっちゃにして記載しているような
気がするので、そこはだけはちょっと注意かな、と思いました。

 

ロボットと生き物 似ているだけじゃない 

 

本の後半には、ロボットと生物の「非類似性」も紹介されています。

類似性、非類似性の両方が紹介されていると、
なんだか公平な感じがして安心します笑

 

ロボットには搭載されているが、生き物にはない機構の代表が
回転機構」です。

 

これを読んだとき、「でも細菌の鞭毛には回転機構が搭載されているよね」と
心の中でふわっとつっこんでしまったのですが、

 

ちゃーんと、細菌の「鞭毛モーター」にも触れられています。
筆者の専門分野はロボットのはずなのに、、、
守備範囲広い。すごい。すてき。

 

なぜ「非類似性があるのか」もちろん明確な答えがあるわけではないのですが、
こちらにも筆者の「考察」が提示されています。 
なるほどなあ、と思わせられます。

 

私の知る範囲で「回転機構」を搭載している生き物は
細菌の「鞭毛」だけだったですが、
一応「回転機構」「生物」で検索してみたところ、

 

生物の体内の「細胞」の移動方法として「回転機構」が利用されていたことが
最近わかってきたようです。

www.nibb.ac.jp

 

でもやっぱ「細菌」の鞭毛はすごいかっこいいと思う。

 

心臓にまつわる個人的妄想

 

(以下は私の個人的妄想になります) 
生き物にとって重要な内蔵である「心臓」は、
ポンプの機構を搭載しています。
ポンプの収縮、拡張が絶えず発生する、ゆえに、生き物には「」が存在します。

 

この「脈」がなかなか曲者で、運動とか肥満とか血液量とかいろいろな理由で、
心臓が通常より「頑張って」収縮しないとならなくなる時があります。
「頑張って収縮」することで、普段より強い「脈」になり(高血圧の状態)
いきおいよく流れてきた血流によって血管がダメージを負うことがあるんですよね。

 

ポンプ式心臓」というシステムを選択した生き物の弱点のひとつかなと思います。

 

心臓の手術とかで人工心臓をつけることがありますが
この時は人工心臓側で血液をながしますから、
血流は常に一定で脈は発生しません。(無拍動タイプの人工心臓の場合です。
現在は拍動ありの人工心臓のほうが主流のようです。)

[42] ここまできた人工心臓 | 心臓 | 循環器病あれこれ | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

 

もし進化の途上で生物が拍動式ではない心臓を採用していたら、
どんな心臓になったのでしょうか。
そもそも心臓がなくて、大量の鞭毛モーターが血管にあって、
微小な血流を絶えず作り出す→全体的には大きな血流を生み出せるシステムとか、、、

 

そんな生き物いたら面白そうですね。

 

一方でポンプ式心臓の利点、、、

 

血流がとまったときに、外部から圧迫して疑似的に
血流復活させられるのは利点ですね。

 

でもそもそも血流が止まる原因のひとつが心臓ですね。
(致死性の不整脈とか)

 

うーん 

 

全体的な感想まとめ

 

ここ最近は、AIとか、スパコンとか、プログラミングだとか、ビッグデータとか、
ソフトウェア系の話題、あるいはハードウェア系でも半導体関連の話題で
ニュース的に盛り上がることが多い気がするのですが、

 

純粋なロボットの奥深い世界について、考えることができたのは
よかったです。

 

ショベルカー油圧ポンプ用のオイルをどうやって動くアームに供給するのか?

 

とか、普段気にも留めないロボットの仕組みに、もっと気を配りたくなる、
そんな本でした。

 

なお本書ではロボット掃除機の仕組みが
カブトガニがえさを食べる動作にそっくりであるとも紹介されています。

 

うちのかわいいルンバが今ではカブトガニにしか見えません。

 

※我が家で所持しているのは860タイプなのですが、amazonで商品が
見つけられなかった
 

ルンバはとっても優秀です。
最近、よく子供のおもちゃのひもを巻き込んでしまって、
途中で力尽きてます。かわいそうなルンバ。
ルンバの形状をカブトガニに似せたら、、、ヒットするかも?

 

おしまい。