恐竜の専門家ではない「鳥類学者」である著者が
恐竜についての解説と想像論を語る本書。
著者いわく、
"鳥の研究者が現生鳥類の形態や生態を介して
恐竜の生活をプロファイリングした御伽噺"
とのこと。
・恐竜基礎知識をばっちりおさらい
本書の前半では、恐竜についての基礎情報について、丁寧に解説。
まずここだけでもめちゃめちゃ勉強になります。
後半では現代に生き残った「恐竜」である鳥類の生態をベースにしつつ、
恐竜の生態についてあれやこれやと想像を膨らませていきます。
・わたしたちは恐竜についてなにも知らない。
本書を読むことで突き付けられる事実
それは
わたしたちは恐竜についてなにも知らない。
ということ。
現代では、
ジュラシックパークに代表される映像作品が巷にあふれ、
(少なくとも日本では)毎年のように恐竜展が開かれる影響もあり、
恐竜について詳しくない一般の方であっても、
ある程度、恐竜のイメージを
思い浮かべることができると思います。
恐竜のイメージ例
↓↓
大地に轟く咆哮をあげて襲い掛かる、ちょっと羽毛の生えたティラノサウルス。
乾燥した砂っぽい地面の巣に卵を産み、それを群れで守る草食恐竜。
しかし、このイメージ映像は、
化石というわずかな(本当にわずかな)恐竜の痕跡に、
想像というガスを注入しまくって、
膨らまされたイメージすぎないということを
本書は思い知らせてくれます。
・誰も知らない恐竜の鳴き声
例えば、恐竜の痕跡は骨とか足跡とかしか残っていないわけで。
そこにどんなふうに筋肉がつき、軟部組織があり、
どの程度まで関節が可動したか、、、という点は、全くの未知数です。
もしかすると象の耳介のような大きな軟部組織があって、
集音機能を果たしていたかもしれません。
毒腺なんか持っていたかもしれません。
また、咽頭とか声帯とかの軟部組織が残っていないため、
恐竜の「鳴き声」についてはほとんど手掛かりがありません。
映画などで大型肉食恐竜が轟くようなうなり声をあげるのは
現生の大型動物の鳴き声などからイメージを膨らませているだけなので、
本当はどんな声だったのか、実は全くわかっていない、というわけです。
・固定観念の殻を、1枚ずつはがしていくような
本書では、上述のような「恐竜について本当は分かっていないこと」
(↑めちゃめちゃたくさんある)を
ひとつずつ整理しつつ、
鳥類学者である筆者の知識を生かして、
恐竜の生態について、あれやこれや想像(妄想?)が繰り広げられます。
恐竜はみんな地面に卵を産んで温めて孵したの?
それなら、超大型恐竜はどうやって卵を温めるの?
上に乗ってうっかり力をいれたら、卵割れちゃうんじゃないの?
もしかして卵は産まずにおなかの中で卵を孵していた(卵胎生)んじゃないの?
恐竜について、知ってるつもりにならずに、
ひとつずつ想像して考えていくこと、
そんな「思考」の楽しさを存分に味わえます。
・ひとつだけ気になる点をあげるならば、、、
著者の好みによるものでしょうか、
比喩表現として、「美人」「美女」が多用されております。
「そこに『美人/美女』使う必要ある??」というところにも登場します。
(〇〇サウルスの体長は▲メートル、
これは両手を広げた美女〇人分だ。みたいな)
読み進めながら
「また美女かよ」「また美人かよ」
という感じでワンパターンというか、ダサいというか、、、
気になる方は気になるかもしれません。
とはいえ
恐竜についての固定観念をトリはらい(鳥だけに)
わくわくする想像の世界を広げてくれる本書。
恐竜ファンも鳥ファンも楽しめる、
というか、ファンならむしろ必読の1冊だと思います。