折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー  ~「円」が面白すぎて脳汁でました~

この本の概要・ポイント
中国発のSF短編集。
中国のSF作品、いますごいんです。

 

あらすじ~とにかく「円」がおもしろい~

三層に分かれた折りたたみ式の北京を描いた表題作、
中国に史上初のヒューゴー賞をもたらした「円」など
7作家の13作品を、『紙の動物園』著者のケン・リュウが選び収録。
いま一番SFが熱い国・中国の粋を集めたアンソロジー

とにかく「円」がよかった。
衝撃でした。

感想・好きな作品

「円」/劉慈欣(リウ・ツーシン)


SF、、、ですが舞台は紀元前227年。
秦の始皇帝始皇帝の暗殺を目論む荊軻の物語です。
不老不死を求める始皇帝に、
荊軻はある「装置」を提案しますが、、、

(※始皇帝は作中では政王と表記されています)

イデア、おもしろさ、意外性、物語性、、、
どれをとっても超一級。
読み始めると興奮で手が止まらなくなります。

 

実は「円」は、
同作者の大ヒットSF作品「三体」から
一部を抜粋・改変した作品なのです。
「三体」ではどのように「円」が描かれているのか、
気になった方はぜひセットで「三体」を読みましょう~

 

三体についてはこちらの記事で感想をかいています。


なお、本作品で登場する「装置」について、
ちょっとPCに詳しい方にお話を伺ったところ、
「理論はおもしろいが、
どうやって”同期”をとるのか気になる」
という感想をいただきました。

なるほど、実運用には
「同期」をとるための仕組み(クロック)が
必要になりそうですね。奥が深い、、、

 

始皇帝といえば、
FGO(アプリゲーム)の
人智統合真国 シン」
でもおなじみですが、
(おなじみではないか、、、)
FGO始皇帝と「円」の始皇帝
切り口は全く違うのに
どちらも「SF的おもしろさ」にあふれています。
最高でした。

神様の介護係/劉慈欣(リウ・ツーシン)

地球上に突如飛来した、20億人の年老いた「神」!
彼らはかつて地球に生命、
そして人類文明を創造した、創造主であると名乗り、
「創造したお礼に」老いて知能の衰退した自分たちを
「介護」しろと要求しますが、、、

 

図々しい創造主の話かと思いきや、
彼らの切ない来歴にやるせない気持ちに。
そしてラストに人類に待ち受ける難題!
結局この「難題」も、「神様」たちがまいた種が原因
なので、神様に対して「こんにゃろ~」という気持ちになります。

 

日本と同じく高齢化が進む国ならではの物語、
なのかもしれません。

先ほどの「円」に引き続き、
こちらも劉慈欣(リウ・ツーシン)氏の作品ですが、
氏の作品は、本短編集の難解な作品の中でも
群を抜いてわかりやすいです。

「古典的」SFと評されることもあるようですが、
「古典的」なわかりやすさの中に

おもしろさがてんこ盛り、
これぞエンターテイナー!!という作家さんです。

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童童の夏/夏茄(シア・ジア)

※童童はトントンと読みます。

VRと遠隔操作を駆使した「介護」にまつわる物語
この本「介護SF多いなあ」笑

 

物語というより介護ロボットを開発する
ロボット会社のPR動画風ストーリーですが、
介護ロボットを通じて次第に家族と心を通わす
おじいちゃんと童童がいとおしくて、
ほろりとさせられます。


技術はきっと、未来を救うはず。

折りたたみ北京/郝景芳(ハオ・ジンファン)

表題作。

3階層に分かれた折りたたみ型の都市。北京。
都市は1階層ごとに時間を区切って起動させられ、
起動中に人々は働き、
時間が来るとカプセルに入って就寝(スリープ)、
次の都市が起動され、、、
というサイクルを繰り返す。

そんな都市での人間模様が描かれます。

 

物語とか舞台設定はすごくおもしろいんですが、
「そもそも都市を折りたたみにした理由」が
はっきりと描かれず、
読者の想像まかせになっているところはちょっと不満でした。

 

都市を折りたたみにして
毎日毎日必要区画を起動させていくの、
非効率だし、普通に壁で区切ったらいいのでは?

 

国土が狭いならまだしも、舞台は中国。
広い土地はいっぱいあるでしょ。
と、本当に細かい部分をうじうじ考えてしまいました

 

なので

 

「国土の他の部分がめっちゃ汚染されてるから
大量の人口を都市に格納するには

こうするしかなかったんです」


みたいな設定を勝手に考えて
勝手に納得しました(ひどい)

中国という国と、そのSFに思うところ

まえがきで編者のケン・リュウ氏はこう述べています。

"中国の作家の政治的関心が
西側の読者の期待するものとおなじだと想像するのは、

よく言って傲慢であり、悪く言えば危険なのです。"

 

「この描写は共産主義社会への批判なのかな?」

「中国の教育制度への批判を暗に描いているのかな?」

 

中国(の政治)へのイメージを強く持ちすぎるあまり、
私たち(特に日本人)は中国の作家の作品を
政治的メタファーと読み取りがちです。
もちろんそういう側面もあるかもしれません。

 

でも、まずはシンプルにSF作品として楽しんでほしい。
そんな中国の作家たちの思いを感じました。

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ちょっぴり減点するならば

●「読者の想像にお任せします」的な、
結局よくわからないぞ?
という結末の作品も多かった。

 

●短編集全体としては、
ケン・リュウ氏の「紙の動物園」と比較すると
物足りないようにも感じた。

いろんなSFを読みすぎて、
私自身のSFへのハードルが
上がっているのかもしれません~

 

おしまい。

 

最後に。三体はいいぞ~。