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(読了)読書感想文/がん遺伝子の発見

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

<3行感想>

・「はたらく細胞」のその奥、あるいは過去。

・難しい内容はありますが、専門用語を極力使わず書かれています

・「1996年」の出版だが、現代のがん治療に連なる道筋が示されています。すごい。

 

 

「がん遺伝子の発見」は大学時代のとある講義で課題図書として提示された本です。
当時は紙でしたが、保管スペースの都合処分してしまい、、、 


でもすごくいい本だったな!という記憶を頼りにkindleで再度購入して、たまーに読み返したりしています。

 

 ここ最近、というよりは少し前からでしょうか、日本人のノーベル賞などをきっかけに、がんの発生の仕組みをメディアで解説しているのを見る機会が増えたように感じます。

 

最近ではがん細胞がアニメ化(!)されてSNSで話題になってたりもしました。

↓のはたらく細胞です。(原作でがん細胞が登場するのは2巻)

 

せっかくなので、2巻だけ買ってみました。
細胞分裂の失敗で生まれた(イケメン)がん細胞が、排除される自分の運命を呪いながら、モンスター化して増殖したり浸潤したりしながらすんごい力で暴れまわります。

 

でもかっこいいNK細胞とかに追い詰められて、最後は涙ながらにやるせない感情を吐露しつつ、ばっさり排除されます。

 

なんでこんなことになったのでしょうか。マンガでは「細胞分裂のミス」として描かれていましたが、、、

 

前置きがスーパー長くなりましたが、
「がん遺伝子の発見(以下、本書)では、そこから一歩奥に踏み込み、
「がん細胞の遺伝子には何が起きているのか?」を、がん遺伝子の研究者たちの視点に立ちつつ解説しています。

 

メインはがん遺伝子と、その遺伝子を設計図として作られるたんぱく質
つまりはたらく細胞」の中身についてのお話です。

 

「細胞に異常がおきて、どんどん増殖してしまう→がん細胞」という説明は
ちょっと曖昧です。曖昧な部分を細かくわけて、掘り進めて、より正確な知識として再構築してくれる、、、そんな本です。

 

本書の冒頭は、がん遺伝子どころか「遺伝子」のことすらよくわからない、1910年代に
ニワトリのがんから「がんウイルス」が発見されたところから始まります。
(※ちなみに、、、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を明らかにして発表したのが1953年です)

 

 

もう少し具体的に書くと、

がんウイルス(ニワトリ)が発見される

ウイルスのもつ遺伝子「がん遺伝子」が特定される

不思議なことにその「がん遺伝子」がすでにヒト細胞に含まれていることが判明し、、、

 

 という具合に、当時のがん研究者たちが、手探りで一歩一歩踏破した道のりを
そのまま読者に追体験させつつ、謎解き風に解説が進んでいきます。

 

読者も当時の研究者とともに驚き、ともに悩みつつ、
がん遺伝子について理解していく、、、という、見事なデザインになっています。

 研究者たちの人間味あふれる描写も臨場感たっぷりで、その点でもとても面白いです。

 

また、本書では必要以上の情報を盛り込むことを避け、できるだけシンプルに、
がん遺伝子がん抑制遺伝子の発見、そしてそれらの役割に
フォーカスした構成になっています。

 

、、、あれ、タイトルは「がん遺伝子」なのに「がん抑制遺伝子」なるものがでてきてしまいましたね、、、?この正体についてはぜひ、本書を読んでみてください。

 

1996年初版の本なので、情報的には古いところもありますし、
もちろん最新のがん治療薬も登場しません。

 

でも古い本と侮るなかれ、本書の中で研究者たちが明らかにしていく
がん遺伝子が作り出すタンパク質の役割」や
がん抑制遺伝子が作り出すタンパクの役割」という知識がベースとなって、
今現在も、新しいがん治療薬がどんどん作り出されているからです。

 

このことを1990年代、そしてそれ以前のがん研究を知る著者は、
どんな思いで受け止めていらっしゃるのでしょうか、、、

 

なお、後書きによれば、本書では多くの人に理解できるように、
できるだけ専門用語を使わずに書くように努めたとのことです。
用語の説明もかなり充実しているとは思います。

 

 ただ、どうしても内容的に難しい部分はあります。DNAの「転写」とか「翻訳」とか「リン酸化」とか、遺伝子が父母由来の二つセットになっているとか、高校生物あたりの前提知識がないと、理解しづらい部分かもしれません。

 

(逆に、高校で生物Ⅰをとっているのであれば、かなり理解しやすいかとは思います。
高校生、こういう本読んでくれるかな、、、)

 

私自身は高校、大学と生物系の知識を得られる環境ではありましたが、
それでも本書について完全には理解できているわけではないです。

 

実は、本書を読むのは今回3回目ですが、「ここ、すごいじゃん」「なるほど、そういうことか」という新たな発見がたくさんあって、kindle上ではカラーマーカーだらけでとてもカラフルになっております。

 あれ、記憶力がないだけ?

 

日本人の2人に1人はがんになるといわれて久しいですが、、、
ぜひこの本を読んで、「はたらく細胞」の中の、
DNAたち、たんぱく質たち、そして毎日のように生まれ、修復されたり排除されたりする細胞たちに、思いをはせていただければと思います。

 

、、、あ、はたらく細胞も、面白かったですよ。

赤芽球、おまえ、そのポンポン、核だったんか、、、