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コンテナ物語 要約と解説

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道路で、海で、鉄道で見かけるあの箱。箱。箱。

ただの箱と侮ることなかれ、こいつが世界の運輸に大きな変革をもたらしたのです。

身近にありながら、目を向けられることがない。そんなコンテナたちに愛おしさを感じたくなる、コンテナの歴史と影響がギュッと詰まった1冊、コンテナ物語を解説します。

 

 

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった
コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった
 

 

KMTCコンテナ船の画像

青い海に浮かぶKMTC(韓国の船会社)のコンテナ船。写真は漁師のパーシーさん、提供

 

コンテナ物語の概要

生産地と消費地を結ぶ箱。コンテナは、輸送の世界に革命を起こしました。

コンテナ発明の歴史、コンテナに適応するための港湾の進化、企業や消費者への影響。ありとあらゆるデータをもとに、世界を変えた箱について解説した書籍です。

 

  • 著者:マルク・レビンソン
  • 翻訳:村井章子
  • 発売:日経BP 2019/10/24
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):対象外

 

コンテナ物語 要約と解説

コンテナ物語では膨大なデータをもとに細かい歴史的経緯を明らかにしています。じっくり書かれている分、結局どうなったの?という結論の部分がちょっとわかりづらい。

自分の勉強を兼ねて、内容を整理しました。

 

コンテナ化する前は

かつて、港に到着した荷物は、ひとつひとつ荷下ろしして、保管して、積み直して……という具合に、作業に膨大なコストが。

さらに、積み込みの完了まで船は1週間、あるいはもっと長く埠頭に係留しなければなりません。

輸送コストの半分は、荷物が移動しない港でのコストという説もあるほどでした。

 

1950年代ころまで、港では沖仲仕といわれる労働者がこの作業を担っていて、港は巨大な労働集約地として、多くの雇用を生み出していました。

最初に降ろす荷物は最後に積み込み。かつ、船の安定性も考えてバランスよく積み込む。頭と肉体、両方がもとめられる沖仲仕という仕事。

 

仕事は過酷だけれど、合間に飲んだり釣りをしたり。彼らの古き良き仕事ぶりが、コンテナ物語ではインタビューも交えていきいきと描かれています。

荷役中に商品が盗まれるなど、リスクも多かったようです。

 

コンテナ化で輸送はどう変わったか

生産地で、商品や、商品になる前のパーツ(仕掛け品)をコンテナに詰めたら、あとは消費地に着くまでコンテナは開封されません。

港ではコンテナをクレーンで決められた通りに上げ下げして、積み下ろしと積み込みを一気に完了。

コンテナを積んだトラックはゲートでナンバーを読み取られ自動管理。コンピュータ化も相まって、港での作業は時間も正確性も大幅に改善しました。

 

コンテナ化の結果、輸送コストは大幅に下がり、商品の選択肢が増え、消費者の生活水準が向上したといえるでしょう。

 

輸送コストの低下で、ただ消費地に近いだけ、都市に近いだけ、では生き残れない時代に突入。製造業は港近くにあるべきで、国産品が安く、輸入品は高い、というイメージが反転することに。

 

そして同時に、多くの港湾労働者が職を失った。労働者と港湾側の労使交渉の様子も、コンテナ物語には書かれている。

 

コンテナ化にはリスクもある

出発地から目的地までコンテナは一度も開けられません。効率が良い分、密輸や密入国のリスクをはらんでいます。

 

機龍警察という警察小説では、コンテナに兵器が隠されていて……というエピソードが登場しますが、兵器どころか、核爆弾がしかけられていて……なんて可能性も否定できず、各国の頭を悩ませています。

 

\コンテナを使った密輸入は2作目自爆条項に登場/

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上
機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上
 

 

 

コンテナを積んだトラックの写真

このコンテナも異国の地から一度も開けられずにやってきた、のかもしれない(管理人わんこたん撮影)

 

マルコム・マクリーン コンテナ界の風雲児

コンテナ輸送の歴史を語ろうとすると、あちこちに名前が登場するのマルコム・マクリーン。トラック1台で運送会社を始めた彼は、会社の成長を模索する中でコンテナ輸送を思いつきます。

このマクリーンさんがね、とにかく何でもやる(部下にやらせる)行動力お化けな経営者。思いついたら即指示即実行。法律をうまいこと使って資金調達、債務圧縮もやってのける。行き詰まったらお金を借りたらさらに新しいことを始めて……

そんなカリスマ経営者としてのエピソードがコンテナ物語にはたくさん登場します。

(ただし、失敗して会社を破綻させることも……)

 

コンテナ輸送アイデアの発案と実用化、両方をやってのけたのが、マルコムマクリーンなにです。

 

厳密には コンテナ輸送と言うアイディア自体は、マクリーンの前から存在していました。けれど、海運業とは、船を運行する産業ではなく、貨物を運ぶ産業だと見抜きコンテナ輸送で覇権を目指したとしたマクリーンの洞察力は、やっぱりすごい。

 

コンテナの規格がバラバラ!

コンテナ輸送が広がりを見せる中で、問題になってきたのが規格。コンテナの大きさが各社で違うと、クレーンのサイズから線路の幅までいろいろなものに影響します。

1958年米会時、管理局はコンテナ企画の統一に向けて動き出す。業界で一致団結して統一規格を作ろう!……などと簡単にいくはずもなく。各社、自社に有利なコンテナ規格にしたいので、議論は紛糾します。(当然、マクリーンギャーギャー言いまくるのですが、結果は果たして………??

 

コンテナ輸送は、港の生存競争にも影響した

多くの船に寄港してもらい、利益を得るのが港湾の使命ですが、そのシェアをめぐり港湾どうしが対立することも。コンテナ物語では、ニューヨークとニュージャージーの対立が取り上げられています。

ニューヨーク港はマンハッタンなどのあるニューヨーク側と、港を挟んで反対側のニュージャージー港に分かれています。

(日本で言うと、ニューヨーク港が江戸川なら、千葉側がニューヨーク、東京側がニュージャージーという感じかな?

 

積み下ろした荷物を運ぶトラックの渋滞、古くてボロボロの埠頭など、問題を抱えていたニューヨーク港。しかし港を開発する港湾局と、ニューヨーク市(行政)が対立するなどして、改修がなかなか進みません。

 

と、ここにも現れるのがマクリーン。マクリーンからコンテナリゼーションのアイデアを聞いた港湾局は、ニュージャージー側をコンテナ港とすることを決めます。

1955年 ニュージャージー州知事はニュージャージー側の湿地をポートエリザベスとして整備することを発表。

1962年にポートエリザベスが開業すると、未来を見据えてコンテナ化に対応した設計のニュージャージー側(ポートエリザベス)と、混載船や客船を意識していたニューヨーク側とでは、決定的な差がうまれていました。

 

1960年代〜1970年代にかけて、ニューヨーク側の取り扱い貨物は減り、ブルックリンの雇用は大打撃を受けたといわれています。

主要な港がさびれ、新たな港が勃興する、と言う変化が世界中で起きた時代でした。

 

じゃあコンテナ対応港を整備するために莫大な費用をかけるのが正解だったかというと、一概にはいえず。せっかくコンテナ対応港にしたのに船が集まらず赤字になる港たくさんあったようです。

コンテナ輸送イコール成功ではない。商売の難しさを痛感させられます。

コンテナ船の写真

今では当たり前に見られるコンテナ船。普及までいろんな歴史がありました 。写真は漁師のパーシーさん提供。

 

歴史の裏に、コンテナあり。

ベトナム戦争では、ベトナムの港を整備して、滞っていた米軍の物資補給を改善したり。コンテナ化による輸送量の急増が日米貿易摩擦の一因になったり。

(ベトナムの港湾開発にも、マクリーンは関与してきます。この経営者、バイタリティがすごい)

(当然マクリーンは日本にも目をつけます。日本政府もまた、1960年代には、世界に追いつけ追い越せと急ピッチで港湾整備を進めていたのでした)

気づかないところで、コンテナ輸送が歴史に影響を与えていた、というのが、いいですね。

 

コンテナ物語 まとめ

タイトル

内容

 

コンテナ物語について改めてまとめてみました。

ここに書いたのはほんの一部。さらなるコンテナエピソードは、ぜひコンテナ物語を読んで、お確かめください。

果たして、コンテナ輸送は今後どのように発展していくのでしょうか。

コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった
コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった
 

 

世界を旅するコンテナたちに、思いを馳せてみてくださいね。

 

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おすすめ1

ファクトフルネス

 

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