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読み始めたらとまらない、究極のノンストップミステリー 爆弾/呉勝浩

記事内のリンクには広告を含みますが、本の感想は全て正直に楽しく書いてます。ぜひ最後までお楽しみください★

 

酒屋で店員を暴行し連行された、さえない中年男。自称:スズキタゴサク
ただのつまらない男かと思いきや、そいつは希代の爆弾魔だった!

爆発を阻止すべくタゴサクを取り調べる警察。しかしタゴサクの魔の手は捜査官にも及び始め、、、

「このミステリーがすごい!2023年国内篇1位」&「ミステリが読みたい1位」に輝いた怪作「爆弾/呉勝浩」の感想とイラストを書きました。読み始めたらとまらない!

 

爆弾
爆弾
 

 

 

爆弾 あらすじ

酒屋で店員を暴行し連行された、さえない中年男。自称:スズキタゴサク。

彼が取り調べ室でほのめかした「予感」。この予感通りに秋葉原で爆弾が爆発。

「ここから三度、次は一時間後に爆発します」次の爆発を阻止すべくタゴサクを取り調べる警察。しかしタゴサクの魔の手は捜査官にも及び始め、、、

 

  • 著者:呉 勝浩
  • 発売:講談社 2022/4/20
  • Kindle Unlimited:対象外
  • Audible(聴く読書):聴き放題対象
    冒頭5分のサンプルはこちら (リンク先でAudibleサンプルボタンを押下)

    朗読は 星 祐樹 さんと品田 美穂 さんの男女二人体制。

    スズキタゴサク、清宮、類家の取り調べの緊迫感が伝わる、迫力ある朗読に注目です。

    特にスズキタゴサクがすごい。聴き始めは、演技しすぎかも?とも感じましたが、次第に、まとわりつくような声に物語に引きずり込まれること、間違いなし!
    Audibleは月額料金1500円ですが、無料体験の利用で丸ごと聴けちゃいます!ぜひお試しを。

 

著者情報

著者の呉勝浩さんは1981年青森県うまれ。

2015年「道徳の時間」で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。

2018年「白い衝動」で第20回大藪春彦賞、2020年「スワン」で第41回吉川英治文学新人賞と第73回日本推理作家協会賞を受賞しています。

 

何度も直木賞候補にあがる、すごい方ですが、わんこたんはこれまで1作も読んでいませんでした。不覚、、、

「爆弾」が大変おもしろかったので、これをきっかけに他の作品も読んでみます!

 

以下に著書の一部を並べました。この他の作品は、Amazonの著者作品一覧ページから、ぜひチェックしてみてくださいね。

※書影クリックでAmazonの作品ページにジャンプします。

 

道徳の時間
白い衝動
スワン
おれたちの歌をうたえ
素敵な圧迫
Q

 

「素敵な圧迫」と「Q」は2023年刊行の新作です!

 

爆弾 感想

読み始めたらとまらない緊張感!「爆弾」の感想を書きました。

 

スズキタゴサクの底知れなさが怖すぎる

飲み屋の店員を殴った罪で、中野区野方署で取り調べをうけるスズキタゴサク。

当初はただのおっさんという雰囲気ですが、徐々にその本性を現します。

 

取り調べのスキをついて、例えばトイレに同行した刑事に話しかけて、徐々に取り込んだり、油断がなりません。

 

タゴサクと取り調べ担当の刑事との会話も見どころの一つ。警視庁捜査一課の敏腕捜査官によって、徐々にタゴサクの正体が暴かれていく!と見せかけて、実は、、、

 

読者も一緒になって、タゴサクの作り出す世界に取り込まれていくような、手に汗握る心理描写、すさまじかったです。

 

警視庁捜査一課 清宮と類家はタゴサクに勝てるのか?

タゴサクの取り調べを担当する捜査一課の清宮輝次(きよみやてるつぐ)、その部下、類家(るいけ)。タゴサクを加えて、3人による取調室での会話が、本作のメインパートとなります。

 

取り調べといっても、タゴサクに普通の会話は成立せず。序盤はタゴサクの出す心理テストやクイズに清宮たちが答え、その会話の端々にちらつかされるヒントをもとに爆弾のありかを推理します。

 

この「クイズ」がめちゃくちゃいじわるで。

クイズの出題者と回答者という対等な立場での戦いに見せかけて、警察に与えられる情報はタゴサクのサジ加減次第なので、実はかなりアンフェアな戦いを強いられ、、、

 

しかも、清宮を通じて読者の倫理観すらあざ笑うような第1部の結末。「選ばされた結末」これが本当に醜悪で、、、

思わずほっとしてしまった自分の心が、本当に嫌になるよ、、、

 

人としての一線を越えたスズキタゴサクに対し、とうとう警察も一線を越えてしまいます。

 

欲望と欲望のせめぎあい!正義と悪を超えた戦いの先にあるものは?

第2部から活躍し始めるのが清宮の部下の類家(るいけ)。おまえ、そんなキャラだったの?とばかりに、類家さんがイキイキしはじめます。

 

人としての一線を越えたタゴサクに対し、類家も警察としての、そして人としての一線を越えていく。そこにあるのはもはや正義と悪の戦いではなく、欲望と欲望のぶつかりあい。

 

第1部もすごかったのに、第2部でますます高まる緊張感。

ちなみに、Audible(聴く読書)だと類家さんめちゃくちゃダークでかっこいいのです。読者もタゴサクと一緒に、類家さんに責められること間違いなし!

呉勝浩著 爆弾 より、スズキタゴサクと対峙する類家刑事のイラスト

タゴサクと類家の底知れなさに引き込まれます。Audibleだと類家さんボイスが最高

 

等々力刑事に、目を付ける類家。その真相は?

序盤でタゴサクの取り調べ担当になる、野方署の等々力刑事。

タゴサクからはなぜか気に入られる等々力刑事ですが、捜査一課の登場で早々に取り調べ担当から外されてしまいます。

 

しかし類家は等々力刑事に連絡先をわたし、なにかあれば連絡するよう指示(しかも上司の清宮には内密で)。このことが終盤の展開につながってきます。

 

類家刑事はどうして等々力刑事がキーパーソンになると、序盤から確信していたのでしょうか。タゴサク、類家刑事、等々力刑事に共通する精神=人として欠けているなにか、を察知したため、とか?

 

現場担当コンビ。倖田沙良と矢吹泰斗の運命は?

野方署の取り調べと同時並行で描かれるのが、倖田沙良(こうださら)と矢吹泰斗(やぶきたいと)の若手交番勤務ペア。

 

野方署でのタゴサクの取り調べ情報をもとに、他多くの刑事とともに爆弾の捜索にあたります。しかし、そんな彼らにもタゴサクの魔の手が迫っていました。

 

取調室にいながらにして、遠く離れた二人を翻弄し、欲望にからめとっていくタゴサクの手腕。そのカリスマ的な「悪」に感動すら覚えます。

 

もちろん、ミステリとしても超秀逸です

手に汗握る展開で読者を翻弄しつつも、きちっとミステリとして構成されているのもすごいところ。さすが、このミステリーがすごい!2022年1位受賞作。

「犯人の動機(why)」「犯人あて(who)」「どうやって(how)」の3つの要素をしっかり構成しているのです。

 

著者の呉勝浩さん、「このミステリーがすごい!2022年」の特別インタビューによれば、「取調室で犯人と刑事がやりあう」というところだけで書き始めて、スズキタゴサクが何をやろうとしているのか、何もわからないまま書き進めていた、と語っておられます。

 

そのスタイルで、ここまでのミステリーを組み上げるとは、、、恐れ入りました。

クイズを出す爆弾魔というコンセプトは、ダイ・ハード3から生まれたものなんだって

 

刑事ものとしても楽しめる!定番の見どころ、しっかり押さえてます

爆弾魔と対峙する警察組織の内情もしっかり描かれた本作。刑事ものとして楽しむこともできます。

刑事ものといえば、、、

  • バディものとしての絆
  • 不祥事、あるいは過去の事件などがきっかけで、出世街道から外れた刑事
  • 出世街道から外れつつも、ここぞというシーンで奮起する熱い展開

などなど定番の展開がありますが、「爆弾」でこれらがどのように料理されるのかにも注目です。

 

最も苦労したのは、、、ラスト!

「このミステリーがすごい!2022年」の特別インタビューで、最も苦労したのはラストと、と語っています。それもそのはず、あまりに強すぎる「無敵の人」スズキタゴサクを倒すには、並大抵の展開では、読者は満足できませんから、、、

 

と、呉勝浩さんも苦労したと語るラストシーンですが、タゴサクと類家のやりとり。めちゃくちゃ良かったので、ぜひ未読の方はチャレンジしてほしいです。

 

まとめ 「爆弾」映画化されないかな~

いっき読み必至のノンストップミステリー「爆弾」。

映画化してほしいなあ~。絶対されるだろうなあ~。

 

というわけで、映画化される前にぜひ読んでみてくださいね。

Audibleで聴くのもおすすめ!無料体験できますので、ぜひチャレンジを。

 

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こちらはまさかの映像化決定

映画化が待ち遠しい「爆弾」ですが、こちらは「絶対に映像化不可能」といわれていたのに、映像化決定!

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